弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役四月に処する。
     但し三年間右懲役刑の執行を猶予する。
         理    由
 弁護人山岸龍の上告趣意第二点について。
 原判決が判示第一事実の判示として所論摘示のごとく判示したことは所論のとお
りである。そして、その判示は、多少明瞭を欠くけれども、引用の証拠等をも参酌
すれば、原判決は、結局被告人は、昭和二一年度産米として約九六俵を収穫し、同
年一一月頃居村村長から政府に売渡すべき産米の数量を九三俵一升五合と割当通知
を受け且つ昭和二二年二月二四日青森県告示三七号によつて同年三月一〇日まで政
府に売渡すべき旨定められたにかかわらず右期日までに一六俵九升六合を政府に売
渡しただけで、残り七六俵三斗一升九合については食糧管理法施行規則第二条所定
の証印を受けないでこれが政府えの売渡を為さなかつた趣旨の事実を認定したもの
と解することができる。されば、原判決には、所論のごとき犯罪事実理由の齟齬の
違法は認めることができない。しかし、かような場合には、食糧管理法(昭和二二
年法律二四七号による改正前のもの)三条、三二条、同法施行規則(昭和二二年農
林省令一〇三号による改正前のもの)三条を適用して処断すべきことは当裁判所大
法廷の判例とするところである。(判例集五巻八号一四六五頁以下参照)。しかる
に、原判決は右事実に対し同法三一条、九条、同法施行令八条、同法施行規則二条
等を適用したのは、法律上の理由齟齬の違法があつて、論旨は結局その理由がある
ものといわなければならない。
 よつて、爾除の論旨につき判断を省略し、旧刑訴四四七条により原判決を破棄し、
同法四四八条により更に判決をするものとする。原判決の確定した事実に法令を適
用するに、判示第一の事実は、前掲法令に該当し、判示第二の事実は、昭和二二年
勅令一三三号附則二項により同勅令による改正前の物価統制令一三条、三四条、刑
法五五条(改正前)に該当するから、所定刑中各懲役刑を選択し、以上は刑法四五
条前段の併合罪であるから、同法四七条一〇条により重き後者の罪の刑に法定の加
重をした刑期範囲内において被告人を懲役四月に処し、被告人の年齢その他諸般の
情状を参酌して同法二五条により三年間右懲役刑を猶予すべきものとする。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 茂見義勝関与
  昭和二七年二月二八日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔

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