弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人等の負担とする。
         理    由
 上告代理人清瀬一郎、同内山弘の上告理由二点、同角田正太郎の上告理由三点及
び上告人A1、同A2、同A3の上告理由(五)について。
 論旨は、原判決が訴外D及びEの異議申立書の訂正を以て、単なる陳情書になつ
たものと認定して、都市計画審議会に附議するを要しないものと判断したのは、重
大な法律解釈を誤つた違法があると主張する。
 しかし、原審は、訴外D等の異議申立について、鳥取市長から、右D等の真意が
施行規程に対する異議申立でなく単なる陳情であるなら、そのように文面を訂正し
てもらうよう命ぜられた市吏員が、D家を訪ね、D及びE両名に面接してその真意
を確めたところ、同人等は甲第二号証の二の文言の客観的意義はとにかく、自分等
の主観的意図としては、施行規程に対する異議申立をするつもりではなく、自分ら
個人の土地の換地に対する陳情の趣旨を強調するため、施行規程を変更して実測の
結果を基礎とすることの文言を用いたに過ぎないこと、鳥取火災後の土地区画整理
事業が迅速に且つ円満に進行することはもとより願うところであるとの趣旨を表明
して喜んで右文言の訂正を承諾し、よつて市長依頼の趣旨に従つて文言を訂正した
こと等の経緯を審さに認定し、右認定に基いてD等から提出された異議申立書は、
その当初はとにかく、訂正後においては施行規程に対する異議申立の趣旨は失はれ、
単なる陳情としての申立書となつたものであるからこれを陳情書として扱い都市計
画審議会の議決に付さなかつたからと言つて何等の違法はないと判断した原判決の
判示はこれを首肯するに足り、その認定が経験則に反するというを得ない又所論は
訂正後においてもその申出のなかに、施行規程を変更しなければできないような部
分が含まれている以上は、施行規程に対する異議と解すべきであるというのである
が、都市計画法施行令一七条による異議の申立であるか若くは単なる陳情であるか
は、本件の経緯に照すも、当事者の意思解釈の問題に帰するのであつて、施行規程
を改めなければ出来ないような事項を含むからと言つて、直ちにこれを施行令一七
条による異議申立と解すべき理由はない。なお論旨引用の判例は本件に適切でない。
所論は理由がない。
 上告代理人角田正太郎の上告理由一、二点及び上告人A1外二名の上告理由前半
について。
 論旨は、原判決の引用する第一審判決が、本件において都市計画法施行令一七条
一項による県の告示は、これを掲載した県公報が発送されたときに効力を生ずると
判示したのは違法であるといい、又右公報は鳥取市役所には縦覧期間満了の翌日た
る昭和二七年五月二〇日到達したのであるから縦覧が適法に行はれたというを得な
いし、又縦覧手続もその縦覧場所の表示を欠きその他縦覧に供する処置が不適法で
あつた旨主張する。しかし、原審は県公報が五月八日に発送された事実を確定して
土地所有者及び関係人に対し、適法な告示がなされたものと判示しているのである
から、右告示は少くとも縦覧期間の開始日までには県民に知り得る状態におかれた
ものであることが推認できる。所論公報が五月二〇日に市役所に到達したという事
実は、原審で主張立証のない事項である。又縦覧に供した処置は第一審判決の詳細
説示するところであつて、その縦覧方法が適法であるとの判示もこれを首肯するこ
とができる。論旨は理由がない。
 上告代理人角田正太郎の上告理由四点について。
 論旨は、異議の申立に、民訴法の取下に関する規定が類推適用あることを前提と
し、本件において取下の書類は存在しないから異議申立は依然その効力があると主
張するが、異議申立には民訴法の取下に関する規定の類推適用はないものと解すべ
きである。所論は採用できない。
 同五点及び上告人A1外二名の上告理由(四)について。
 論旨は、原判決が既に廃止された耕地整理法を本件区画整理に適用したのは違法
であると主張するが、土地改良法施行法四条は明白に「この法律施行前……にした
行為に対する罰則の適用については、この法律施行後……でも、耕地整理法の規定
はなおその効力を有する……他の法令において準用される範囲内においてもまた同
様とする」と規定し、都市計画法一二条で準用される限度では耕地整理法はなお効
力を持つていたのである。所論は理由がない。
 上告代理人角田正太郎の上告理由六点について。
 原判決において、市民が一刻も早く火災復旧、区画整理を施行することを熱望し
ていたこと、従つて一々実測地積を基礎として土地区画整理を施行することは、却
て公共の福祉に適合する所以でないとの判示認定は、本件換地予定地指定について
は、これを首肯することができる。所論は独自の見解に立つて原判決を非難するに
過ぎない。論旨は理由がない。
 なお上告代理人清瀬一郎、同内山弘の上告理由第一点、同角田正太郎の上告理由
第七点及び上告人A1、同A2、同A3の上告理由(二)(三)の論旨の理由がな
いことは前記大法廷の判決の判断したところである。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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