弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人諌山傅の上告趣意第一点について。
 しかし原審が確定した事実関係によれば、本件被告人らの所為は、A株式会社E
炭鉱職員労働組合員にして同会社E鉱業所D売店長たるBが、同会社E炭鉱労働組
合の役員及び委員の選挙に際し同会社の指示により右E炭鉱労働組合員たる同売店
従業員の一部の者に対し、被告人らの対立候補に投票を依頼し選挙干渉を行つたの
ではないかと思惟し、右Bを詰問し、会社の命令による選挙干渉の事実を自白させ
るため、多数の組合員を動員し、右B及び同人を救出に来た同じくE炭鉱職員労働
組合員にして同鉱業所F町売店本部係員たるCの両名を取巻き、スクラムを組み旋
回デモを行い、吊し上げをなし、もつてBに対し会社の命令による選挙干渉の事実
につき執拗に自白を迫り、右両名に傷害を加えるなどしたというのであつて、右被
告人らの所為は憲法二八条及び労働組合法一条二項にいう如き、E炭鉱労働組合所
属の労働者が使用者たるA株式会社との間において、労働条件その他につき勤労者
の団体交渉その他の団体行動権の行使としてなした行為に当らない(昭和二四年五
月一八日大法廷判決・刑集三巻六号七七二頁参照)。されば本件につき憲法二八条
及び労働組合法一条二項、刑法三五条が適用あるものとし又は適用あることを前提
とする論旨はすべて採用することができない。
 第二点について。
 しかし本件において、使用者たるA株式会社がE炭鉱労働組合の役員及び委員の
選挙に際し、Bに指示命令して論旨主張の如き選挙干渉を行わせ、もつて被告人ら
勤労者の団結権を侵害したというような事実は原審の認定していないところである
から、本件被告人らの所為をもつて団結権擁護のための正当な組合活動であるとす
る論旨は前提を欠き採用することを得ず、その余の論旨は単なる法令違反及び事実
誤認の主張をいでず、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 第三点及び第四点について。
 本件被告人らの行為をもつて、Bの団結権侵害に対し、団結権を防衛するために
なした行為であるとする論旨の採用し難きことは前述のとおりであり、本段論旨は
単なる法令違反及び事実誤認の主張をいでず、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 第五点及び第六点について。
 所論は単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三四年七月三日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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