弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人両名の弁護人御園生忠男の上告趣意は別紙添付上告趣意書と題する書面記
載の通りであるから当裁判所はこれに対し次のように判断する。
 昭和二十二年五月二十二日附指令商工第二千二百二十二号山口県知事告示による
ときは海藻加里灰に付てはA株式会社B工場の販売価格山口県農業会の販売価格市
町村農業会の販売価格につき夫々その統制額が定められてあるが一般肥料販売業者
の販売価格についてはその統制額につき何等の定めがない従つて一般肥料販売業者
の海藻加里灰を販売するに当つては統制額超過という問題はおこらないがそれかと
いつてその販売価格については何等の制限がないとはいえないもしその販売価格が
不当に高価なりと認められるときは物価統制令第九条の二違反となること勿論であ
るそこで本件の場合被告人のなした取引につきその販売価格が不当に高価なりや否
やが問題となるわけである思うに販売価格が不当に高価なりや否やは一般社会通念
に照し決定さるべきものであつて物品につき統制額の定めのないときには類似の物
品に付定められた統制額、物品については統制額の定めはあるが販売主体との関係
に於て統制額の定めのない場合には類似の販売主体につき定められた統制額、仕入
価格販売価格を参酌しこれに各般の事情特に当事に於ける経済情勢を考慮に入れた
綜合的見地<要旨>より為さるべきものでおる而して本件については一般肥料販売業
者の販売価格については統制額の定めはないがA株式会社B工場県農業会市
町村農業会のそれについてはいずれも販売統制額の定めがあるから最下位にある市
町村農業会の販光統制額は本件販売価格が不当に高価なりや否やの決定につき重大
なる標準となるものと謂はねばならない従つて単に右市町村農業会の販売統制額を
超過するの一事を以て直ちに本件販売価格の不当なりや否やを決することのできな
いこと勿論である原判決が市町村農業会の統制額を以て一般肥料販売業者の販売価
格も社会通念上右価格を以て相当なりとする旨判示しあるは措辞稍簡に失した嫌ひ
であるが右は市町村農業会の統制額が一般肥料販売業者である被告人の本件販売価
格の不当に高価なりや否やを決する重要なる標準となる趣旨の表示と解すべきてと
原判決を通覧すれば明かである而して市町村農業会の統制額は前示告示によれば裸
(十貫)五十三円五十銭叺入(十貫)六十三円五十銭俵入(十五貫)八十四円五十
銭と定められ市町村農業会が農業会事務所又は倉庫で引渡す場合は右の価格に運賃
諸掛の実費を加算し得る旨定められているのであるが原判決によれば被告人は昭和
二十二年六、七月頃他より買入れた海藻加里灰裸三百叺入二百叺をC外数名に対し
一叺百二十円乃至百四十円の価格を以て売渡し市町村農業会の統制額よりも二万二
千十六円を超過した代金六万六千円を受領したというのであるから右販売価格を右
市町村農業会の統制額に参酌考慮するときはとれを以て社会通念上不当に高価なる
価格たりと認めることができる勿論弁護人主張の如く昭和二十二年八月十三日附指
令商工第三千九百八十三号山口県知事告示により一般肥料業販売者の販売格価の統
制額が定められその価格も一叺に付(十貫入)百三十円と定められたがこれを以て
本件被告人の犯行当時の販売価格を律するととはできないから被告人の本件販売価
格を不当に高価なるものと認定するの妨げとなるものではない以上の理由により原
判決がその認定事実につき物価統制令第九条の二を適用したのに付何等の違法はな
い論旨はいずれも理由がない。
 よつて本件上告を棄却することとし刑事訴訟法施行法第二条旧刑事訴訟法第四百
四十六条により主文のように判決する。
 (裁判長判事 横山正忠 判事 秋元勇一郎 判事 大賀遼作)

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