弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を広島地方裁判所庄原支部に差し戻す。
         理    由
 弁護人鈴木惣三郎提出の控訴趣意は別紙控訴趣意書副本記載の通りである。
 第一、 有罪の言渡を為すには罪となるべき事実を示さなければならないことは
刑事訴訟法第三百三十五条の規定する所であるが同法条に所謂罪となるべき事実み
は犯罪の構成に必要なる具体的事実を指称するものであつて公務員の職務執行妨害
の手段としてとられたる犯人の所為が脅迫なることを判示するに当りては犯人が当
該公務員に不法の害悪を告知し之を威嚇したる事実を示さなければならない。勿論
当該公務員が実際畏怖したると否とを問わない又其の言動が必ずしも明示たるを要
しない自己の性行経歴又は職業上不法の勢威を利用し之に応じないときは不利益を
醸される危険あるべしとの危惧の念を抱かしむるべきものであれば足るのであるが
<要旨>右は判示事実自体に於て之を認識し得べきものでたければならない。原判決
は「被告人等は警察官等に対し「十日市のAの者」或は「広島のBの者であ
る旨申向けて同人等を脅迫しと判示し右「十日市のA」或は「広島のB」なる者が
如何なる身分の者なるか又之れにより如何なる威嚇を与えるものかについては何等
の説示をしていない、従つて右判示自体によつて之を威嚇手段として認めるには不
充分たるを免れない結局原判決は理由不備の違法あるものと謂わなければならない
から此の点に於て破棄を免れない。依つて弁護人の自余の主張に対しては判断を省
略し刑事訟訴法第四百条に則り主文の通り判決する。
 (裁判長判事 横山正忠 判事 大賀遼作 判事 秋元勇一郎)

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