弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人小中公毅の上告趣意第一点は、事実誤認の主張であり、同第二点は、違憲
をいう点もあるが、その実質はすべて量刑不当の主張に帰し、また、弁護人海野普
吉、同内田博の上告趣意第一点は、事実誤認の主張であり、同第二点は、量刑不当
の主張であり、被告人本人の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の
主張であつて、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 しかし、職権をもつて調査すると、原判決は、第一審判決挙示の証拠によつて、
被告人が昭和二五年五月上旬頃判示電気通信研究所において同研究所会計課長Aか
ら米ドル九八三ドル位を受け取り所有しながら所定期間内に外国為替銀行等に売却
せず、また、大蔵大臣の許可なく同年六月一四日米国に向け飛行機でこれを携帯輸
出した旨の公訴事実を認容したことは、所論のとおりである。しかるに、原審証人
Bの証言(記録一一四一丁以下)、第一審における証人Cの証言(記録六八六丁以
下)、同Dの証言(記録六一二丁以下)、同Eの証言(記録六二〇丁以下)、原審
証人Fの証言(記録一一六二丁以下)証二七号ないし三一号、証三五号ないし三七
号、原審第四回公判における被告人の供述(記録一一七三丁以下)を総合すれば、
右公訴事実とは異つて却つて次の事実を認定することができるようにも思われる。
すなわち、被告人は、昭和二五年二月二八日頃連合国軍司令部民間通信局勤務のG
より近く被告人を渡米させる旨の内意を聞き、その後電気通信に関する米国の著名
研究所の管理状況の研究のためガリオア資金から旅費、滞在費の支給を受け滞米日
数四五日、出発五月一五日等の予定で渡米することに決し(実際は同年六月一四日
米国に向け飛行機で出発)同年三月九日電気通信研究所の部長会議の席上これを報
告し、次で渡米の際に同研究所に要する専門書籍を購入する費用に充てるため正規
の手続によつて支給金額の外二、三百ドルを調達しようと思い同年五月六日親戚に
当るH株式会社社長Cを訪ずれ優先外貨の手持中より参考書を買うため約二百ドル
譲受方を依頼し、同社長は同社外国課長Dをして通産省に交渉せしめたがこれが許
可を得られなかつたので、被告人の依頼を受けて同会社に赴いた電気通信研究所会
計課長Aにその旨伝言し、被告人はAよりその旨聞知したので(Aが同会社に赴き
Dより断わられた事実はAの認めるところである。証人Aの昭和二九年六月五日の
第一審公判における供述、記録三九四丁裏以下参照)、同年五月一三日夜福島県下
の実兄Eに電話を掛け前記書籍購入費として邦貨十万円ないし十五万円程度の米貨
を融通せられたき旨をロスアンゼルス在住の親戚Fに依頼し呉れたき旨電話し、E
は翌一四日附手紙でFにその旨依頼し、同月末同人より承諾の旨の返事を受けてそ
の頃その旨被告人にこれを通じたので、被告人は米ドルを調達する必要を感じなく
なり、従つて、被告人はAに対し米ドルの調達方を依頼したことはない事実を認定
できるように思われる。そして、右事実その他一件記録によれば、原判決が証拠と
した昭和二六年一〇月三一日附上申書(記録七二三丁以下)は、被告人が弁護士向
江菊松(通称璋悦)の依頼に基き軽々しく虚偽の記載をしたものであり、同Aの昭
和二七年一二月一一日の公判における供述(記録四〇丁以下)、同人の検事に対す
る供述調書謄本五通(ことに昭和二六年一一月一五日附のもの記録二三三丁以下、
同年一二月七日附のもの記録二四一丁以下)竝びに証人Iの第一審における証言二
回は、全く措信できないとの論旨を一概に排斥できないように思われる。
 もし、原判決の判示のように被告人が昭和二五年五月上旬頃Aから米ドル九八三
ドル位を受け取り所有していたものとすれば、前記のように(イ)同年五月六日頃
専門書籍の購入費として正式ルートに依り二、三百ドルを調達するため親戚に当る
H株式会社社長Cに依頼する必要はなかつたはずであり、(ロ)またHの方の金策
が通産省の許可を得られなかつた後においても、同年五月一三日実兄Eを通じて邦
貨十万円ないし十五万円程度の米貨の融通方をロスアンゼルス在住の親戚Fに依頼
する必要はなかつたはずである。しかるに、これらの依頼に努力したことが事実と
すれば、五月上旬頃Aから米ドル九八三ドル位を受け取つたという事実は認めるこ
とができないように思われる。さらに、在米の親戚Fから邦貨十万円ないし十五万
円に相当する米ドルの金融の承諾を得たこと、参考書籍の購入費としては多額の金
を必要とするものではなく、精々二、三百ドルの獲得を目的としていたこと、およ
び被告人は渡米中それ以上さらに九八三弗というような大金を費消した事実は認め
られていず、かつこれを認むべき事情のないことから判断すれば、原判示のように
Aから米ドル九八三ドル位という大金を受け取つた事実は、認めることができない
ように思われる。
 果たして然らば、被告人が昭和二五年五月上旬頃Aから米ドル九八三ドル位を受
取り所有しながら所定の売却をなさず且つ翌月一四日不法に輸出した旨の原判決の
事実認定は、重大な誤認あることを疑うに足る顕著な事由があつて、刑訴四一一条
三号に則りこれを破棄しなければ著しく正義に反するものといわざるを得ない。
 しかし一方原判決認定の有罪部分は一審判決の認定事実を実質的に容認したもの
であつて、一審裁判所は前記A、Iを証人として尋問して事実を認定したものであ
るから、事実の取調をしていない当審において積極的にこれと反する事実を認定す
るのは適当とはいい難く、加うるに一件記録によれば被告人が昭和二五年六月一〇
日頃判示研究所長室において前記Aから米ドル約二百弗入の封筒を受け取つた事実
は認められるところ、検察官が右の点を訴因に含ましめるのか否か釈明する必要も
あり、仮に右事実が本件訴因に含まれるものとしても、被告人はこれが正規の手続
を経た米弗と信じていたと弁疎しており、右弁疏は一審証人月村福一の証言(記録
八三八丁)によつて一応認められるようではあるが、右の点について検察官にこれ
に反する立証の機会が与えられたとは遽に断定できないので、本件は刑訴四一三条
本文に従い原審に差し戻すべきものとし主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
    検察官松村禎彦出席
  昭和三二年一二月二六日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫

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