弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人田中克俊の上告受理申立て理由3について
 1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) 第1審判決別紙物件目録記載(1)及び(2)の各土地(以下「本件土地」と総
称する。)は,農地である。本件土地は,上告人の所有であり,被上告人がこれを
耕作して占有している。
 (2) D(以下「D」という。)は,昭和22年3月31日,自作農創設特別措
置法16条の規定により本件土地の売渡しを受けた。昭和58年10月12日,D
が死亡し,上告人がこれを相続した。
 (3) E(以下「E」という。)は,遅くとも昭和35年に,Dとの間で本件土
地の賃貸借契約を締結した。Eは,それ以降,賃料を支払い,本件土地を耕作して
占有した。Eは,平成元年10月23日に死亡した。また,その妻は,平成5年5
月5日に死亡した。平成8年9月13日,E及びその妻の相続人間で遺産分割の調
停が成立し,被上告人が本件土地の賃借権を取得するものとされた。
 2 本件は,上告人が,本件土地の所有権に基づき,被上告人に対し,その明渡
しを求める訴訟である。上告人は,前記賃貸借契約は,農地法3条1項所定の許可
を受けないでしたものであるから,その効力を生じない旨を主張した。これに対し
,被上告人は,時効による賃借権の取得については上記許可は不要である旨を主張
し,本件訴訟において,賃借権の取得時効を援用した。
 3(1) 他人の土地の継続的な用益という外形的事実が存在し,かつ,それが賃
借の意思に基づくものであることが客観的に表現されているときは,民法163条
の規定により,土地賃借権を時効により取得することができるものと解すべきであ
る(最高裁昭和42年(オ)第954号同43年10月8日第三小法廷判決・民集
22巻10号2145頁)。他方,農地法3条は,農地について所有権を移転し,
又は賃借権等の使用及び収益を目的とする権利を設定し,若しくは移転する場合に
は,農業委員会又は都道府県知事の許可を受けなければならないこと(1項),こ
の許可を受けないでした行為はその効力を生じないこと(4項)などを定めている。
同条が設けられた趣旨は,同法の目的(1条)からみて望ましくない不耕作目的の
農地の取得等の権利の移転又は設定を規制し,耕作者の地位の安定と農業生産力の
増進を図ろうとするものである。そうすると,耕作するなどして農地を継続的に占
有している者につき,土地の賃借権の時効取得を認めるための上記の要件が満たさ
れた場合において,その者の継続的な占有を保護すべきものとして賃借権の時効取
得を認めることは,同法3条による上記規制の趣旨に反するものではないというべ
きであるから,同条1項所定の賃借権の移転又は設定には,時効により賃借権を取
得する場合は含まれないと解すべきである。
 以上によれば,【要旨】時効による農地の賃借権の取得については,農地法3条
の規定の適用はなく,同条1項所定の許可がない場合であっても,賃借権の時効取
得が認められると解するのが相当である。
 (2) これを本件についてみると,前記事実関係によれば,Eにおいて本件土地
の賃借権の時効取得の要件を満たすべき占有がされたことは明らかであるから,そ
の相続人として時効を援用した被上告人は,本件土地の賃借権を時効取得したもの
というべきであり,当該賃借権に基づいて本件土地を占有するものと認められる。
 4 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。所論引用の
判例は,事案を異にし本件に適切でない。論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田
宙靖)

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