弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A弁護人飯田信一の上告趣意第一点について。
 論旨は、原審が被告人Aを懲役三年に処したのは刑の量定甚だしく不当であり正
義感に反するとしてその理由を詳細に述べているのであるが、このような主張は上
告の適法な理由には当らないので採用することができない。
 同第二点について。
 論旨は、本件傷害はB単独の意思に出たもので被告人A等が共謀の上行つたもの
ではないというのであるが、原判決挙示の証拠によれば、被告人が原判示のように
Bらと本件暴行を共謀した事実を認定し得られるのであるから原判示の傷害致死の
結果につき責任あることは明らかである。所論は原審に事実の誤認あることを主張
するものであつて適法な上告の理由に当らないから採用することがでぎない。
 被告人C弁護人堂野達也の上告趣意について。
 論旨は、本件につき被告人等において共謀した事実を認むべき証拠がないばかり
でなく、原審の判決した事実によつても被告人等の共謀はDとEとの間に話合がつ
かず喧嘩となつた場合を仮定し、これに共謀による暴行の意思を条件づけたもので
ある、しかもその条件は成就しなかつたのであるから、被告人等には暴行の意思決
定もなく、又それを行動に現わす余地もなかつたことは判文上明らかである。され
ば、Fの傷害行為は共謀に基くものではなくFの誤解による単独の行為に過ぎない
のであるから被告人等に責任がないのに原判決が被告人に共犯者としての責任を認
定したことは理由齟齬の違法がある。なお、原判決が判示するように二階の物音に
被告人等において喧嘩が起きたと速断して二階に馳せ上つた際には暴行の意思があ
つたとしても二階に上つて喧嘩がない事実を認めてその意思は消滅したものである
というのである。
 しかし、原判決挙示の証拠によれば被告人等が原判示のようにEと争闘すべきこ
とを暗に共謀した事実を認定することができるのであるから、共謀の点につき証拠
がないとの論旨は理由がない。なお、原判示によれば、被告人等の共同暴行の意思
を実行に移す時期については所論のような仮定的事実の発生にかゝらしめたように
見えるのであるが、その趣旨とするところは、被告人等においてE方階下に待期中
突如二階で物音がしたので予期の如く喧嘩が始つたものと速断して二階に押寄せた
のであるから被告人等は既に互に意思を連絡して共同暴行の意思を実行に移す意思
決定をしたことを判示したものと解されるので、原判決には所論のような理由齟齬
の違法はない。そして、共謀者の一員たるFがEに傷害を加え死に致した以上、被
告人もまたその結果につき罪責を免れないことはいうまでもない。論旨においては、
被告人等は仮に二階に馳せ上つた際に暴行の意思を有したとしても、喧嘩のない事
実を認めてその意思は消滅したと主張しているが、かゝる事実は原判決の認定しな
いところであるから所論は採用することができない。
 よつて、本件各上告を理由ないものと認め、旧刑訴法第四四六条に従い主文のと
おり判決する。
 以上は当小法廷裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 茂見義勝関与
  昭和二五年六月二七日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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