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平成27年12月10日判決言渡同日原本受領裁判所書記官
平成27年(行ケ)第10059号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成27年11月12日
判決
原告近江度量衡株式会社
同訴訟代理人弁護士松浦康治
同迫友広
同弁理士楠本高義
同浅野哲平
同竹本松司
同白石光男
同一宮誠
被告シブヤ精機株式会社
同訴訟代理人弁護士永島孝明
同安國忠彦
同朝吹英太
同安友雄一郎
同野中信宏
同弁理士磯田志郎
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2014-800040号事件について平成27年2月25日に
した審決を取り消す。
第2事案の概要
1特許庁における手続の経緯等
(1)被告は,平成10年10月23日,発明の名称を「農産物の選別装置」と
する発明について特許出願(特願平10-302617号。以下「本件出願」とい
う。)をし,平成17年7月22日,設定の登録(特許第3702110号)を受
けた(請求項の数6。甲1。以下,この特許を「本件特許」という。)。
(2)原告は,平成26年3月17日,本件特許の請求項1,2,3,5及び6
に係る発明について特許無効審判を請求し,無効2014-800040号事件と
して係属した。
(3)特許庁は,平成27年2月25日,「本件審判の請求は,成り立たない。」
との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本
は,同年3月5日,原告に送達された。
(4)原告は,平成27年3月30日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提
起した。
2特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲請求項1ないし6の記載は,次のとおりである。以下,
請求項1ないし6に係る発明をそれぞれ「本件発明1」ないし「本件発明6」とい
い,併せて「本件発明」という。また,本件発明に係る明細書(甲1)を,図面を
含め,「本件明細書」という。
【請求項1】
搬送手段に連結されていない受皿と,農産物供給位置から農産物包装作業位置に
渡って農産物を載せた受皿を搬送する搬送手段とを備え,この搬送手段には,この
受皿上の農産物を選別仕分けする情報を計測するために上記搬送手段の途中に設定
された計測軌道領域,及び該計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々の
受皿上の農産物を排出するように所定の仕分区分別の仕分ラインが多数分岐接続さ
れている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を設定し,前記各受皿に,その上に載
せられている農産物の仕分け情報を直接又は識別標識を介して間接的に読出し可能
に記録し,前記仕分排出軌道領域の上流に設けた読出し手段により個々の受皿の農
産物仕分け情報を読出して該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する農産
物の選別装置において,
前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受
皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを設けると共に,このリターン
コンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を,前記計測軌道領域の
終端と前記仕分け情報読出し手段の間としたことを特徴とする農産物の選別装置。
【請求項2】
請求項1において,前記仕分ラインは,仕分けるべき全ての区分毎に少なくとも
一条設けられていることを特徴とする農産物の選別装置。
【請求項3】
請求項1又は2において,搬送手段から各仕分区分の仕分ラインに受皿を排出制
御する排出手段と,各仕分ラインに排出された受皿の貯溜状態を監視する監視手段
とを備え,受皿が満杯状態の仕分区分には受皿を排出させないことを特徴とする農
産物の選別装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて,仕分ラインは搬送手段の水平横方向に分
岐延出して設けられ,リターンコンベアはこれら仕分ラインを構成するコンベアの
下方を前記搬送手段に並行して延設されていることを特徴とする農産物の選別装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて,リターンコンベアで戻された受皿の搬送
手段への送り込みのために,該搬送手段上の受皿が途切れたときに該送り込みを行
う送り込み制御手段を設けたことを特徴とする農産物の選別装置。
【請求項6】
請求項5において,受皿の搬送手段への送り込み制御手段は,搬送手段上の受皿
の途切れが受皿一個分以上であることを検知する途切れ長さ検知手段と,常時はリ
ターンコンベアで戻された受皿を搬送手段への送り込み位置の手前で停止させかつ
前記該検知手段の検知に連動して該停止を解除して送り込みを行わせるストッパ手
段とを備えていることを特徴とする農産物の選別装置。
3本件審決の理由の要旨
(1)本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。要するに,①本
件発明1,2,5及び6は,下記アの引用例1に記載された発明ではない,②本件
発明1,2,3,5及び6は,(a)下記アの引用例1記載の発明及び下記イの引用
例2記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たとはいえない,(b)下記ア
及びイの引用例1及び2記載の発明並びに下記ウないしキの公知例1ないし5に記
載された公知公用の技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たとはいえないこと
から,特許法29条1項3号又は同法29条2項の規定により,本件発明1,2,
3,5及び6についての特許を無効とすることはできない,などというものである。
ア引用例1:特開平5-50041号公報(甲2)
イ引用例2:実願平5-74395号(実開平7-40634号公報)のCD
-ROM(甲3)
ウ公知例1:JA松本ハイランドのスイカ選果包装施設配置図(甲6)
エ公知例2:JA松本ハイランドのスイカ選果包装施設感謝状(甲7)
オ公知例3:JA松本ハイランドすいか集出荷施設のパンフレット(甲8)
カ公知例4:日本農業新聞の平成10年6月19日付けJA松本ハイランドす
いか集出荷施設の記事(甲9)
キ公知例5:施設建設契約書(甲10)
(2)本件審決が認定した引用例1記載の発明(以下「引用発明1」という。)は,
次のとおりである。
搬送手段に連結されていない受皿と,農産物供給位置から自動箱詰装置11に渡
って青果物を載せた受皿を搬送する搬送手段とを備え,この搬送手段には,この受
皿上の青果物を選別するための所定の計測項目を計測するために搬送手段の途中に
設定された読取計測手段3,及び読取計測手段3で計測され判定された仕分クラス
に基づいて個々の受皿上の青果物を排出するように仕分クラスの数よりも所定数少
ない数の排出装置60にそれぞれ対応して設けられたアキュームレート可能なコン
ベアで構成される箱詰プール装置10が接続されている搬送手段下流側の仕分排出
領域を設定し,各受皿に,その上に載せられている青果物の仕分クラスをバーコー
ド(を)介して読み出し可能に記録し,前記仕分排出領域の上流に設けた仕分読取
装置50により受皿の青果物仕分クラスを読み出して該当する箱詰プール装置10
に受皿を排出する青果物の選別装置において,
前記仕分排出領域から,仕分クラスの排出位置が指定されている受皿は箱詰プー
ル装置10に仕分け,仕分クラスの排出位置が指定されてない受皿はプールコンベ
ア82にプールしておき,仕分クラスの排出位置を切り換えるときに仕分読取装置
50の前段へ受皿を還元するリターン手段とからなる青果物の選別装置。
(3)本件発明1と引用発明1との対比
本件審決が認定した本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は,以下のと
おりである。
ア一致点
搬送手段に連結されていない受皿と,農産物供給位置から農産物包装作業位置に
渡って農産物を載せた受皿を搬送する搬送手段とを備え,この搬送手段には,こ
の受皿上の農産物を選別仕分けする情報を計測するために上記搬送手段の途中に
設定された計測軌道領域,及び該計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて
個々の受皿上の農産物を排出するように仕分ラインが分岐接続されている搬送手
段下流側の仕分排出軌道領域を設定し,前記各受皿に,その上に載せられている
農産物の仕分け情報を直接又は識別標識を介して間接的に読出し可能に記録し,
前記仕分排出軌道領域の上流に設けた読出し手段により個々の受皿の農産物仕分
け情報を読出して該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する農産物の選
別装置。
イ相違点
「計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々の受皿上の農産物を排出す
るように仕分ラインが分岐接続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を
設定し」に関して,
本件発明1においては,「該計測軌道上で計測された仕分け情報に基づいて個々
の受皿上の農産物を排出するように所定の仕分区分別の仕分ラインが多数分岐接
続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を設定し」,「前記仕分排出軌道
領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段
の上流側に戻すリターンコンベアを設けると共に,このリターンコンベアにより
戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を,前記計測軌道領域の終端と前記仕
分け情報読出し手段の間としたこと」に対し,
引用発明1においては,「読取計測手段3で計測され判定された仕分クラスに基
づいて個々の受皿上の青果物を排出するように仕分クラスの数よりも所定数少な
い数の排出装置60にそれぞれ対応して設けられたアキュームレート可能なコン
ベアで構成される箱詰プール装置10が接続されている搬送手段下流側の仕分排
出領域を設定し」,「前記仕分排出領域から,仕分クラスの排出位置が指定されて
いる受皿は箱詰プール装置10に仕分け,仕分クラスの排出位置が指定されてな
い受皿はプールコンベア82にプールしておき,仕分クラスの排出位置を切り換
えるときに仕分読取装置50の前段へ受皿を還元するリターン手段とからなる」
点。
4取消事由
(1)新規性判断の誤り(取消事由1)
(2)進歩性判断の誤り(取消事由2)
第3当事者の主張
1取消事由1(新規性の判断の誤り)について
〔原告の主張〕
(1)引用発明1の認定の誤り
引用例1記載の選別装置は,仕分クラスの数よりも所定数少ない数の排出装置を
搬送手段の搬送路に沿って設けるとともに,仕分制御手段により仕分クラスの排出
位置が切換可能で,かつ,所定数の仕分クラスの排出位置が指定されないように設
け,前記排出装置により排出されない前記仕分クラスの青果物を仕分読取装置の前
段ヘ再び還元するように構成したものであり,このように,搬送手段に沿って設け
られる排出装置を仕分クラスの数よりも少なく配置したため,この排出装置に対応
して設けられる箱詰装置は,仕分クラスの数と同数を配置する従来のものと比較し
て少なくて済み,選別装置全体を小型にすることができるとともに,箱詰め作業に
従事する作業者も同様に少なくて済み,合理化及び省力化に効果がある(【004
4】~【0046】)。
引用例1の実施例によれば,仕分排出軌道領域(第2仕分コンベア106)に関
する構成は,受皿の排出されるコンベア(箱詰プール装置10)が仕分クラスより
も所定数少なく設けられること,各排出位置の指定は切換可能であること,排出位
置の指定がないため排出されない仕分クラスの青果物入り受皿(並の受皿)は,リ
ターン手段によって仕分読取装置50の前段ヘ戻されることである。このような構
成を採用することにより,仕分クラスの数と同数の排出装置を配置する従来のもの
と比較して,排出装置に対応して設けられる箱詰装置が少なくて済み,選別装置全
体を小型にすることができるという効果を奏する。
これに対して,引用例1の実施例では,上記構成に加え,排出位置が指定されて
ない受皿を「プールコンベア82にプールしておく」ことや,受皿を「仕分クラス
の排出位置を切り換えるときに」仕分読取装置の前段へ還元するという構成が追加
されている。このような構成を採用すれば,排出位置が指定されてない受皿がリタ
ーン手段を経由して搬送コンベア上を回り続けることになることは回避されるもの
の,この構成は,仕分クラスの数と同数の排出装置を配置する従来のものと比較し
て,排出装置に対応して設けられる箱詰装置が少なくて済み,選別装置全体を小型
にすることができるという引用発明1の効果をもたらすものではない。このように
「プールコンベア82にプールしておく」ことやリターン手段によって戻す時期を
「仕分クラスの排出位置を切り換えるとき」とすることは,引用発明1にとって任
意の構成にすぎないから,引用発明1の認定においては,これらの構成を付加すべ
きではない。
(2)相違点の認定の誤り(オーバーフローについて(その1))
ア本件審決は,本件発明1における「オーバーフロー」とは,仕分ラインなる
仕分箇所が設定されているにもかかわらず,仕分箇所が満杯の場合,仕分箇所へ排
出する手段の動作不良,故障などの場合により,その仕分箇所に受皿が排出されな
いことであり,該「オーバーフロー」した受皿は「リターンコンベア」により再度
仕分け工程に戻されるものであるのに対し,引用発明1における「プールコンベア
82」及び該コンベアの下流側に配置される「リターン手段」は,「受皿」を「仕
分クラスの数よりも所定数少ない数の」「箱詰プール装置10」に仕分けた後に,
「仕分クラスの排出位置を切り換え」て,残りの仕分クラスの仕分に供するために
プールしておいた「受皿」をリターンするものであり,本件発明1のように,いず
れかの「排出装置60」及び「箱詰プール装置10」に排出位置指定があるにもか
かわらず,満杯などの原因により「受皿」が排出されないというものではないと判
断した。
イしかし,本件明細書の【0012】,【0023】,【0025】,【0053】,
【0054】,【0058】の記載によれば,受皿が仕分排出軌道領域で仕分ライン
に排出されないことをもって,「オーバーフロー」とされている。また,本件発明
2との対比から,本件発明1には,仕分ラインの条数が全ての仕分区分数よりも所
定数少ない場合が含まれ,その場合には,排出位置の指定がないために仕分ライン
に排出されずに上流側に返還される受皿も当然に発生し,これも本件発明1の「オ
ーバーフロー」した受皿に含まれる。したがって,本件発明1の「オーバーフロ
ー」とは「仕分排出軌道領域で仕分ラインに排出されないこと」を意味するもので
あって,排出位置の指定がないために仕分ラインに排出されない場合も含む。
引用発明1において,排出位置の指定のない受皿は仕分排出軌道領域で排出され
ないが,このような場合も本件発明1の「オーバーフロー」に該当するから,引用
発明1の「箱詰プール装置10に排出されない受皿」は,本件発明1の「仕分排出
軌道領域で仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿」に含まれる。その
上,箱詰プール装置10上に受皿が満杯で排出できない場合や排出装置60の動作
不良,故障等で排出できない場合というのは,構成のいかんにかかわらず不可避的
に発生する事象であって,引用発明1は,そのような事象にも対応できる構成であ
る。
したがって,引用発明1においても,受皿はオーバーフローしており,その概念
も存在するから,本件発明1と引用発明1との間に,オーバーフローについて,本
件審決が認定する相違点は存在しない。
(3)相違点の認定の誤り(オーバーフローについて(その2))
ア本件審決は,引用発明1の「プールコンベア82」は,「仕分クラスの排出
位置を切り換え」て仕分するといった,次回工程の仕分に必要な「青果物」を載せ
た「受皿」をプールするものであり,「仕分クラスの数よりも所定数少ない数の」
「排出装置60」及び「箱詰プール装置10」への排出位置指定とともに,残りの
「仕分クラス」についても「プールコンベア82」へ排出位置指定を行うものとい
えるから,残りの仕分クラスの仕分には関係のない,「所定数少ない数の仕分クラ
ス」においてオーバーフローした受皿をプールする「プールコンベア82」として,
引用例1の記載を理解することはできないし,該「プールコンベア82」の下流に
配置される「リターン手段」についてもオーバーフローした受皿を還元するものと
して,引用例1が記載されているとはいえないとした上で,「箱詰プール装置1
0」及び「プールコンベア82」における仕分は,「箱詰プール装置10」及び
「プールコンベア82」に貯留可能な範囲の量を前提とした,すなわち仕分全体と
して一定量に調整された状態での仕分であるから,オーバーフローという概念は存
在し得ないと判断した。
イしかし,前記(2)イのとおり,本件発明1においてオーバーフローとは,仕
分排出軌道領域において仕分ラインに排出されないことであり,その原因としては,
仕分ラインが満杯である場合,排出装置に動作不良,故障等がある場合,仕分ライ
ンが指定されていない場合などがあり得る。
そして,引用発明1においても,仕分排出軌道領域(第2仕分コンベア106)
において,箱詰プール装置10の数は仕分けるべきクラスより少ないため,仕分ク
ラスが指定されていない青果物を載せた受皿が箱詰プール装置10に排出されない
が,このような理由で仕分排出軌道領域(第2仕分コンベア106)において排出
されないことも,オーバーフローに含まれる。また,引用発明1においても,箱詰
プール装置10上に受皿が満杯で排出できない場合や排出装置の動作不良,故障等
で排出できない場合が常識的に想定できるのであって,引用発明1は,そのような
場合にも対応できる構成であるところ,本件審決の認定からすれば,このような場
合こそがオーバーフローとなるものである。そうすると,本件審決は,引用発明1
がこのような場合に対応できる点をあえて認定しないものであって,引用発明1に
は「オーバーフローという概念は存在し得ない。」とした前記アの判断は,不当で
ある。
また,引用例1の補正により追加された甲12(特許第3071249号公報)
の請求項1の構成は,本件発明1の構成と実質同一である。そして,引用例1の上
記補正は,引用発明1の「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の
範囲内において」されたものというべきであるから,甲12は,引用例1における
自明事項を証明するものであって,本件審決は,引用例1の記載事項,特に自明事
項の認定を誤るものである。
(4)相違点の認定の誤り(その他)
ア引用発明1において,リターン手段で還元される受皿は,仕分クラスの排出
位置が指定されてない(そのために仕分排出領域から箱詰プール装置10に排出さ
れなかった)受皿だけでなく,箱詰プール装置10の満杯や排出装置の動作不良,
故障等の理由で仕分排出領域から箱詰プール装置10に排出されなかった受皿も含
まれるから,相違点に係る引用発明1の「仕分クラスの排出位置が指定されてない
受皿」との部分は,「仕分排出軌道領域(第2仕分コンベア106)から箱詰プー
ル装置10に排出されなかった受皿」と認定されるべきである。
イ引用例1には,「アキュームレート可能なコンベアで構成される」と記載さ
れているものの,箱詰のためには一定のまとまった数の農産物をプールする必要が
あるので,選別コンベアから分岐して箱詰装置に至るコンベアは,アキュームレー
ト(蓄積すること)が可能なコンベア(一般にプールコンベアと称される)で構成
されるものであって,コンベア上に受皿の蓄積が可能であることが開示されている
にすぎず,どの程度の蓄積が可能かについての記載はない。本件発明1の仕分ライ
ンを構成するコンベアも,実施例では自動箱詰装置に接続しているのであるから,
当然,「アキュームレート可能な」コンベアであると考えられるし,本件明細書の
【0020】に,「仕分ラインをなす仕分コンベアは,貯溜と集積の作用を行うコ
ンベア装置を含むように構成することができる。」と記載されているように,貯
留・集積が可能な仕分ラインの構成を排除しているわけでもない。
したがって,「アキュームレート可能なコンベアで構成される」との点は,相違
点ではない。
ウ受皿がリターン手段で還元される位置は,引用発明1においても,仕分読取
装置50の前段であって,受皿上の青果物の計測は終わっている(再度計測する必
要はない)のであるから,この点は,相違点ではない。
エよって,引用発明1における仕分排出軌道領域に係る構成は,以下のとおり
である。なお,引用発明1の「第2仕分コンベア106」は,本件発明1の「仕分
排出軌道領域」に相当するものである。
「読取計測手段3で計測され判定された仕分クラスに基づいて個々の受皿上の青果
物を排出するように仕分クラスの数よりも所定数少ない数で排出する仕分クラスの
切換が可能な箱詰プール装置10が接続されている搬送手段下流側の第2仕分コン
ベア106を設定し,前記第2仕分コンベア106から箱詰プール装置10に排出
されなかった受皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターン手段を設けると共に,こ
のリターン手段により戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を,前記計測軌道
領域の終端と仕分読取装置50の間としたこと」
そうすると,相違点は,本件発明1にある「オーバーフローした」との文言が,
引用発明1には存在しないことのみである。しかし,この点は,前記(2)及び(3)の
とおり,実質的には相違点ではない。
(5)小括
以上のとおり,本件審決は,引用発明1の認定を実施例に基づいて行っており,
しかも実施例についての理解を誤っているため,引用発明1の認定も誤っている。
そして,引用発明1の仕分排出軌道領域に係る構成と,これに対応する本件発明
1の構成とは,「オーバーフロー」の文言の有無が異なるものの,その意味は,仕
分排出軌道領域(第2仕分コンベア106)から仕分ライン(箱詰プール装置1
0)に排出されなかったことであると解釈すべきであるから,両者の構成は同一で
ある。
したがって,本件発明1は引用発明1と同一であるから,本件発明1に係る特許
は,特許法29条1項3号の規定に違反し,同法123条1項2号に該当し無効で
あって,この点に関する本件審決の判断は誤っており,取り消されるべきである。
〔被告の主張〕
(1)引用発明1の認定について
引用例1の記載によれば,引用発明1は,仕分クラスの数よりも少ない排出装置
を設け,排出位置が指定されている受皿については,該当する排出装置によってア
キュームレート可能なコンベアで構成される箱詰プール装置10に排出され,排出
位置が指定されていない受皿については,リターンコンベア81を介して,アキュ
ームレート可能なコンベアで構成される第2プールコンベア82に送られ,タイミ
ング送り装置により,所定のタイミングで第2プールコンベア82の終端部82b
から合流コンベア105に送出する構成である。
このように,引用発明1では,「排出位置が指定されていない仕分クラス」の受
皿をリターン手段に仕分ける構成であるから,リターン手段は,箱詰プール装置1
0と同様に,アキュームレート可能なコンベアで構成される第2プールコンベア8
2を必要とする。また,引用発明1において,排出位置が指定されていない受皿は,
第2プールコンベア82の終端部82bから合流コンベア105に送出されるが,
排出位置を切り換えない限り,箱詰プール装置10に排出されず,再びリターン手
段に送出されるだけであるから,排出位置を切り換えないで還元させても無意味で
あり,「排出位置が指定されていない仕分クラス」の受皿を箱詰プール装置10に
排出するためには排出位置を切り換えてから還元させることが必要である。
このように,排出位置が指定されてない受皿を「プールコンベア82にプールし
ておく」ことや,このような受皿を「仕分クラスの排出位置を切り換えるときに」
仕分読取装置50の前段へ還元するという構成は,引用発明1の選別装置を実現す
るために必要不可欠な構成であって,これらの構成が引用発明1の「仕分クラスの
数と同数を配置する従来のものと比較して少なくて済み選別装置全体を小型にする
ことができる」という効果をもたらすものではないとの原告の主張には理由がない。
したがって,本件審決が,引用発明1について,「仕分クラスの排出位置が指定
されてない受皿はプールコンベア82にプールしておき,仕分クラスの排出位置を
切り換えるときに仕分読取装置50の前段へ受皿を還元するリターン手段」と認定
したことに誤りはない。
(2)相違点の認定について(オーバーフローについて(その1))
ア本件発明1の「仕分排出軌道領域」に関する請求項1の記載及び本件明細書
の【0023】~【0025】,【0060】の記載によれば,本件発明1における
「オーバーフロー」とは,仕分ラインなる仕分箇所が設定されているにもかかわら
ず,仕分箇所が満杯の場合,仕分箇所へ排出する手段の動作不良,故障等の場合に
より,その仕分箇所に排出できない状態をいい,本件発明1の「リターンコンベ
ア」とは,所定の仕分区分別の仕分ラインに対して「オーバーフロー」した受皿を
再度仕分工程に戻すためのものである。また,本件発明1において,「リターンコ
ンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を,前記計測軌道領域の終
端と前記仕分け情報読出し手段の間としたこと」とは,農産物の仕分排出を行うこ
とに支障がなく,同時に代価の積算集計に支障のない位置に,オーバーフローした
農産物を戻すことを意味する。
これに対し,引用発明1の装置は,「排出位置が指定されている仕分クラス」の
受皿は排出装置(箱詰手段)に仕分け,「排出位置が指定されていない仕分クラ
ス」の受皿はリターンコンベア81により第2プールコンベア82に仕分ける構成
である。引用発明1において,リターンコンベア81により第2プールコンベア8
2に送出される受皿は,仕分クラスの数よりも排出装置の数を少なくしたことに起
因して発生した「排出位置が指定されていない仕分クラス」の受皿であり,本件発
明1における「オーバーフローした受皿」ではない。さらに,引用発明1における
リターンコンベア81及び第2プールコンベア82から構成される「リターン手段
8」は,「排出位置が指定されていない仕分クラス」の受皿を第2プールコンベア
82にプールし,排出位置の指定が切り換えられた後に,第2プールコンベア82
上にプールされていた受皿を仕分けるために,仕分読取装置の前段に還元するもの
であり,本件発明1における「リターンコンベア」とは異なる。引用発明1では,
仕分クラスの数よりも排出装置の数を少なくしたことに起因して,排出位置を指定
できない仕分クラスが発生したため,「排出位置が指定されていない仕分クラス」
の受皿を仕分けるために「リターン手段8」を採用したのである。
したがって,本件審決による本件発明1と引用発明1との相違点の認定に誤りは
ない。
イ原告の主張(2)について
前記アのとおり,本件発明1における「オーバーフロー」とは,仕分箇所が設定
されているにもかかわらず,仕分箇所が満杯の場合,仕分箇所へ排出する手段の動
作不良,故障等の場合により,その仕分箇所に受皿が排出されないことを意味する。
また,「オーバーフロー」という用語は,通常,「水などがあふれ出ること」(広辞
苑)という意味で使用されるものであり,「仕分ラインに排出されずにオーバーフ
ローした受皿」という請求項の記載それ自体から,仕分ラインに受皿が満杯で排出
できずにあふれ出た受皿を意味することが直接的に導出される。
そして,本件発明1は,「仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿」
と記載し,「仕分ラインに排出されないこと」を前提として,「オーバーフローした
受皿」であることを特定しているのであるから,「オーバーフロー」が単に「仕分
排出軌道領域で仕分ラインに排出されないこと」を意味するという原告の解釈は成
り立たない。
また,仕分ラインの条数が全ての仕分区分数よりも所定数少ない場合であっても,
本件発明1では,リターンコンベアによって,仕分箇所が設定されているにもかか
わらず,仕分箇所が満杯の場合,仕分箇所へ排出する手段の動作不良,故障等の場
合により,その仕分箇所に受皿が排出されない受皿(「オーバーフローした受
皿」)を再度仕分工程に戻すのであるから,「オーバーフロー」の解釈に何ら消長
を来すものではない。
(3)相違点の認定について(オーバーフローについて(その2))
ア前記(2)アのとおり,引用発明1のリターン手段は,「排出位置が指定されて
いない仕分クラス」の受皿を第2プールコンベア82にプールし,排出位置の指定
が切り換えられた後に,第2プールコンベア82上にプールされていた受皿を仕分
けるために,仕分読取装置の前段に還元するものである。このように,引用発明1
のリターン手段によって還元される受皿は,「排出位置が指定されていない仕分ク
ラス」の受皿であって,「仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿」で
はない。
そして,引用例1には,「仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿」
について一切記載されておらず,「仕分ラインに排出されずにオーバーフローした
受皿」の取扱いについて何ら言及していない。すなわち,引用発明1は,仕分コン
ベア101を搬送中に第1仕分読取装置5により階級別に分岐コンベア102に排
出しているが,分岐コンベア102及び第1プールコンベア103が満杯になり,
受皿をその分岐コンベア102に排出できなくなった場合において,オーバーフロ
ーした受皿について何の解決手段も示されていない。これは,引用発明1では,仕
分クラスの数よりも排出装置の数を少なくしたことに起因して,「リターン手段
8」を採用したのであり,分岐コンベア102は階級数に応じた数設けているため,
仕分コンベア101にリターン手段を設ける必要がないためである。これらのこと
からも,引用発明1がオーバーフローした受皿に関する技術事項を開示していない
ことは明らかである。
また,引用発明1では,基本的に排出先にアキュームレート可能なコンベア(第
1プールコンベア103,箱詰プール装置10,第2プールコンベア82)を設け
て(【0012】,【0028】【0033】),余剰分も保持できるように構成されて
おり,受皿が満杯になることは想定されていない。
そもそも,引用発明1の装置全体として,受皿はオーバーフローが生じないよう
に構成されており,「オーバーフロー」という概念自体が存在しない。
イ原告の主張(3)について
原告は,本件発明1における「オーバーフロー」とは「仕分排出軌道領域におい
て仕分ラインに排出されないこと」を意味するとの解釈を前提として,引用発明1
においてもオーバーフローの概念が存在する旨主張するが,本件発明1における
「オーバーフロー」の解釈を誤るものであって理由がない。
また,甲12は,平成12年7月31日に発行された公報であり,本件出願日
(平成10年10月23日)よりも後に頒布されたものであるから,本件特許の無
効理由の基礎となるものではないし,本件出願当時の技術水準を構成するものでも
ない。そもそも引用例1に記載された事項は,引用例1自体から把握されるべきも
のであり,本件出願後に頒布された甲12に求めるべきではない。前記アのとおり,
引用例1の記載に基づいて,引用発明1は,装置全体として,受皿のオーバーフロ
ーが生じないように構成されており,「オーバーフロー」という概念自体が存在し
ない。
(4)相違点の認定について(その他)
ア原告の主張(4)アについて
前記(2)アのとおり,引用発明1の装置は,「排出位置が指定されていない仕分ク
ラス」の受皿をリターンコンベア81により第2プールコンベア82に仕分けてい
るのであって,引用例1の【請求項1】,【0006】,【0008】,【0026】~
【0030】,【0032】,【0041】,【0044】においても,リターン手段に
送出され,還元される受皿が「排出位置が指定されていない仕分クラス」の受皿で
あることが明記されている。
したがって,原告の主張は,引用例1の記載を無視するものであり,理由がない。
イ原告の主張(4)イについて
本件審決は,本件発明1の「仕分排出軌道領域」における「リターンコンベア」
の技術的意義と引用発明1の「仕分排出領域」における「リターン手段」の技術的
意義とが相違することを相違点としており,その前提となる引用発明1の「仕分排
出領域」の構成の一部として「アキュームレート可能なコンベアで構成される」と
記載している。
したがって,原告の主張は,本件審決を誤解したものであり,理由がない。
ウ原告の主張(4)ウについて
本件発明1の「仕分排出軌道領域」における「リターンコンベア」と,引用発明
1の「仕分排出領域」における「リターン手段」とは,その技術的意義が相違する
のであり,引用発明1には,農産物の仕分排出を行うことに支障がなく,同時に代
価の積算集計に支障のない位置に,オーバーフローした農産物を戻すことは開示さ
れていない。
したがって,本件発明1における「リターンコンベアにより戻した受皿を前記搬
送手段に送り込む位置を,前記計測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出し手段の
間とした」ことも相違点に含まれることは当然であり,原告の主張は理由がない。
(5)小括
以上のとおり,本件発明1と引用発明1との間には本件審決認定に係る相違点が
存在し,本件発明1は引用発明1ではない。
したがって,取消事由1は理由がない。
2取消事由2(進歩性の判断の誤り)について
〔原告の主張〕
仮に相違点を実質的な相違点と認めたとしても,以下のとおり,引用発明1に基
づいて,本件発明1に想到することは容易である。
(1)引用発明1及び技術常識に基づく容易想到性
引用発明1の「従来の技術」に明らかな記載はないものの,搬送コンベアから仕
分コンベアに排出されずに搬送コンベアの最終部まで搬送された青果物の取り扱い
に労力を要するという課題が存在したことは,引用例1を補正した甲12の【00
02】,【0003】や,本件明細書の【0012】にも記載されているように,当
業者であれば自明な事項であった。また,前記1〔原告の主張〕(2)イのとおり,
引用発明1においても,排出位置の指定のない受皿は仕分排出軌道領域で排出され
ないが,このような場合も本件発明1の「オーバーフロー」に該当するから,引用
発明1にはオーバーフローという課題が自明なものとして存在していた。さらに,
仕分排出軌道領域で仕分ラインに排出されなかった受皿への対応という課題は,引
用発明1におけるオーバーフローの課題の存在の有無とは別に,一般的に搬送装置
の分野において周知である。
この課題の解決に引用発明1の「リターン手段」の技術を用いることは,当業者
であれば,容易に想到し得る。すなわち,引用例1の【0028】には,第2仕分
コンベア106上で排出されない受皿を,前記合流コンベア105の始端部へ還元
するリターン手段が記載されているが,排出位置の指定の有無にかかわらず,第2
仕分コンベア106上で排出されない受皿を,引用発明1の「リターン手段」で戻
す対象とすることは,当業者であれば,容易に想到し得るところであるし,このよ
うな受皿を対象とすることに何ら阻害要因はない。
(2)引用発明1並びに公知例1ないし5,甲19ないし21及び25記載の公
知公用技術に基づく容易想到性
本件審決は,JA松本ハイランドすいか集出荷施設(以下「JA松本施設」とい
う。)のパレタイザー積込工程の構成について,「すいかを収納した製品箱の文字を
文字認識装置により読み取り,製品搬送コンベアにより搬送及び仕分けを行う,す
いか集出荷施設。」と認定したが,原告による資料6ないし資料23を用いた甲8
の補足説明は,新たな証拠で公知公用技術を証明するものであって認められないと
して,プールコンベアに排出されなかった製品箱(すいかを収納した箱)を製品ル
ープコンベアで戻す構成については,公知公用技術として認定しなかった。
しかし,JA松本施設は第三者にも広く見学が許されていた。そして,同施設の
パレタイザー積込工程を見れば,箱詰めされたスイカ(製品箱)が製品箱搬送コン
ベア(甲8の1及び資料2の⑩)で搬送されること,製品箱搬送コンベアから多数
のプールコンベアが分岐していること,各プールコンベアの終端に製品箱をパレッ
トに積み込むロボットパレタイザーが設置されていること,製品箱搬送コンベアに
よる搬送の途中で製品箱文字認識装置(同⑨)により製品箱に印刷された仕分情報
を読み取ること,製品箱は仕分情報に基づいて製品箱搬送コンベアから対応する各
プールコンベアに排出されること,プールコンベアが満杯等で排出されなかった製
品箱は製品ループコンベア(同⑬)により文字読取装置よりも上流の製品箱搬送コ
ンベアに戻されることが,容易に判明する。原告は,上記事実を補足的に立証する
趣旨で資料6ないし資料23を提出したにすぎないから,本件審決の上記判断には
問題がある。
本件訴訟では,甲19ないし21及び25(資料6ないし資料23)を提出して
いるが,上記立証の趣旨から,この証拠が排除される理由はない。したがって,
「搬送される対象物を仕分けるための情報が既に取得されており,かつ,仕分ライ
ンで満杯等が発生したときには,搬送される対象物をリターンコンベアに戻し,文
字認識装置で仕分けるための情報を読み取って仕分ラインを再度探索する」技術は,
本件出願前に公然実施されていた公知公用技術である。そして,パレタイザー積込
工程は,スイカ選果包装施設という引用発明1と共通の技術分野に属し,さらには,
農産物(スイカ)を乗せた受皿(収納した製品箱)を搬送しながら,仕分読取装置
(製品箱文字認識装置)により受皿(製品箱)に付された情報を読み取って,搬送
手段(製品搬送コンベア)から仕分ライン(パレタイザーロボットへ向かうコンベ
ア)に排出する仕分技術においても,引用発明1と共通している。したがって,上
記公知公用技術を引用発明1に適用することは,当業者にとって困難ではない。
(3)引用発明1及び引用発明2に基づく容易想到性
ア本件審決は,引用例2記載の発明(以下「引用発明2」という。)を,「仕分
コンベヤによって搬送される仕分物品を仕分シュートに仕分ける複数の仕分システ
ムの仕分シュートが合流する合流シュートにおいて,合流点より下流に設けられた
満杯検知センサーが滞留仕分物品を検知したとき,その後の,仕分コンベヤからの
仕分物品の投入を停止し,物品の投入を停止された仕分コンベヤは,投入停止が解
除されるまで,投入を停止させられた仕分物品を積載したまま循環移動する合流シ
ュート」と認定した上で,引用発明1は,「搬送手段と受皿は連結されておらず,
青果物は受皿に搭載されたまま仕分排出されるものであり,「球塊状の青果物Fで
も動くことなく安定して載せられるようになっている」…受皿に搭載された青果物
の仕分けと,甲3発明(引用発明2)のように,トレーが傾いて送り込まれた仕分
物品が,シュートを滑り降りる仕分けとは,仕分物品及び仕分態様といった前提と
なる技術が明らかに異なる。」として,引用発明1及び引用発明2に基づき,相違
点に係る本件発明1の発明特定事項に想到することはできない旨判断した。
イしかし,多数の品物を搬送しながら同一目的の仕分先に排出して仕分ける装
置において,仕分先が満杯で排出できないという事態が発生すること,そして,こ
の課題を解決するという技術思想として引用発明2を認定すべきであるから,本件
審決の前記アの引用発明2の認定は誤りであって,引用例2記載の仕分コンベア1
7は,本件発明1におけるオーバーフローした受皿を搬送手段の上流側に戻すリタ
ーンコンベアを含んでいる。
そして,引用発明1における農産物を載せた受皿と,引用発明2における仕分物
品は,搬送手段(仕分コンベヤ)により搬送されている点で共通する。仕分態様に
ついては,仕分の対象物をコンベヤで搬送しながら仕分ける点,対象物は同一の等
階級など同一の仕分目的ごとに仕分ける点,特に仕分手段を限定していない点など,
引用発明1と引用発明2の共通点は多い。したがって,引用発明1と引用発明2は,
仕分物品及び仕分態様といった前提となる技術が,明らかに異なるものではない。
また,引用発明1と引用発明2とは上記のとおり,前提となる技術に共通点が多い
から,技術分野の関連性を有しており,これは両発明を組み合わせることの動機付
けとなり得る。
以上によれば,この引用発明2の技術を引用発明1に適用することは当業者にと
って困難ではない。
(4)小括
以上のとおり,本件発明1は引用発明1に基づいて容易に想到することができた
ものであるから,本件発明1に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反し,同
法123条1項2号に該当し無効であって,この点に関する本件審決の判断は誤っ
ており,取り消されるべきである。
〔被告の主張〕
(1)引用発明1及び技術常識に基づく容易想到性について
原告が主張する課題は,本件出願後に頒布された甲12に記載された事項であり,
本件出願当時の技術水準を構成するものではない。また,本件明細書の記載は,引
用発明1の課題となるものではなく,引用例1には,「オーバーフロー」に関する
何らの技術的な課題も記載されていない。
そして,前記1〔被告の主張〕(3)アのとおり,引用発明1は,装置全体として,
受皿のオーバーフローが生じないように構成され,「オーバーフロー」という概念
自体が存在せず,「オーバーフロー」に対する解決手段も開示していないから,「オ
ーバーフロー」という課題は自明なものではない。
したがって,引用発明1において,相違点に係る本件発明1の構成を採用する動
機付けは全く存在せず,本件発明1は,引用発明1及び技術常識に基づいて,当業
者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)引用発明1並びに公知例1ないし5,甲19ないし21及び25記載の公
知公用技術に基づく容易想到性について
本件審決は,資料6ないし資料23を考慮した上で,「プールコンベアに排出さ
れなかった製品箱(すいかを収納した箱)を製品ループコンベアで戻す構成」が本
件出願前に公然実施されたことが立証されていないと判断したものであり,この点
については,甲6ないし10から,公知公用技術を客観的に把握することはできな
いし,甲19ないし21及び25(資料4ないし資料23)によっても,原告主張
の公知公用技術の内容は立証されていない。
以上の点を措くとしても,本件発明1は,引用発明1及び原告主張の公知公用技
術に基づいて容易に想到できたものではない。すなわち,原告主張の公知公用技術
は,結局,同一の等級及び階級のスイカが箱詰めされた製品箱を搬送するパレタイ
ザー積込工程に関するものであり,本件発明1のように,「農産物が載せられた受
皿」を搬送手段で搬送しつつ,「計測軌道領域」において受皿上の農産物を選別仕
分する情報を計測し,「仕分排出軌道領域」において該当する仕分区分の仕分ライ
ンに該受皿を排出する「農産物の選別装置」に関するものではない。原告主張の公
知公用技術には,本件発明1の構成に係る「前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラ
インに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段の上流側に戻すリター
ンコンベアを設ける」ことも,「リターンコンベアにより戻した受皿を前記搬送手
段に送り込む位置を,前記計測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出し手段の間と
したこと」も開示されておらず,引用発明1と組み合わせても,本件発明1に想到
することはできない。
したがって,本件発明1は,引用発明1及び原告主張の公知公用技術に基づいて
当業者が容易に想到できたものではない。
(3)引用発明1及び引用発明2に基づく容易想到性について
引用発明2は,引用例2の【0001】,【0002】の記載によれば,仕分シ
ュートが合流する合流シュートに関するものであって,具体的には,「倉庫におい
て保管物の仕分」や「運送会社やデパートの集配センターにおいて配達物の仕分」
に使用されることが例示されているだけであり,農産物の選別装置に使用すること
は一切記載されていない。さらに,引用発明2は,「複数の仕分シュートから送ら
れてきた仕分物品同士が合流点において,衝突し,仕分物品の流れが悪くなるとい
う問題点」又は「仕分物品同士が衝突したとき,仕分物品が損傷を受けるという問
題点」を解決するためのものであり(【0003】),合流シュートにおける特有の
課題を解決するためのものである。
これに対して,引用発明1は,「青果物が載せられた受皿」を搬送手段で搬送す
るものであり,従来の選別装置では,計測後の青果物を箱詰めするための手段を仕
分クラス(等級,階級)の数と同数配置して構成していたものを,仕分クラスの数
よりも少なく配置された箱詰手段へ仕分クラスを切り換えて排出する「青果物の選
別装置」に関するものである。このように,引用発明1は,そもそも合流シュート
に関するものではないから,引用発明2を適用する動機付けが存在しない。また,
引用発明2においては,「青果物」を搬送対象とするものでもなく,「青果物が載せ
られた受皿」を搬送手段で搬送するものでもないから,具体的な搬送対象も,搬送
態様も異なり,両者の技術分野は相違し,引用発明2を引用発明1に適用する動機
付けが存在しない。さらに,引用発明1と引用発明2とは,解決すべき課題におい
ても共通点は存在せず,両者を組み合わせる具体的な動機付けを欠く。
また,引用発明2においては,単に満杯になった時に仕分物品の投入を停止させ,
仕分物品を循環移動してアキュームレートしているだけである(引用例2の【00
19】)。前記1〔被告の主張〕(3)アのとおり,引用発明1には,本件発明1にお
ける「オーバーフロー」の概念自体が存在しない点で,引用発明2との組合せを必
要としない。
したがって,本件発明1は,引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易
に想到できたものではない。
(4)小括
以上のとおり,本件発明1は,引用発明1と技術常識,公知公用技術又は引用発
明2とに基づいて当業者が容易に想到することができたものではない。
したがって,取消事由2は理由がない。
第4当裁判所の判断
1本件発明について
(1)本件発明に係る特許請求の範囲は,前記第2の2記載のとおりであるとこ
ろ,本件明細書(甲1)の発明の詳細な説明には,おおむね,次の記載がある(下
記記載中に引用する図のうち,図1,2は別紙1を参照。)
ア発明の属する技術分野
【0001】本発明は農産物を選別仕分けして包装するのに用いられる選別装置に
関し,詳しくは農産物を載せて搬送する受皿がコンベアに連結されていないいわゆ
るフリートレイ式の受皿を用いた選別装置に関するものである。
イ従来技術
【0002】リンゴ,柿,梨等の果実,トマト,茄子,胡瓜等の野菜などの農産物
を包装する農産物選別(包装)装置のうち,コンベアに連結されていない受皿に農
産物を載せて搬送させるフリートレイ式の受皿を用いた装置は,本出願人等により
既に多くの提案がされている。この方式の選別装置は,供給工程から仕分区分判定
要素の計測工程,更に仕分工程に渡って,コンベアと不可分の走行バケット(受皿
)等に農産物を載せて搬送する方式(通常「バケット式」といわれる)のものに比
べ,受皿がコンベアに非連結であるため,計測工程の後段の仕分ラインに農産物を
フリートレイごと排出して包装工程まで一貫して受皿上に載せたまま農産物を搬送
できるので,農産物に対する衝撃等を軽減でき,農産物が傷む虞れを小さくできる
という優れた利点がある。
【0003】また,このフリートレイ方式の農産物選別装置は,仕分け対象の農産
物が多区分に渡り,その分布率が大きく異なる場合であっても,包装装置の稼働効
率をできるだけ平均化する工夫が農産物の品種や品目さらには荷口などに応じて変
更し易いため,生産性に対する対設備投資の削減を実現できる点でも優れている。
例えば,分布比率が大きいために排出農産物(受皿)数が多い仕分区分については,
その比率に応じて仕分ラインを複数として自動包装のための自動箱詰装置に接続す
るなど,分布比率の大小に応じて仕分ライン数を処理量に見合うように設定したり,
仕分区分の排出(集積)数が極端に少ない仕分ラインについては,自動箱詰装置に
接続せずに,作業者によって手詰めするラインに接続する構成の変更が比較的容易
にできるからである。
【0005】なお,フリートレイを搬送するコンベアは,搬送コンベア,供給コン
ベア,仕分コンベア,選別コンベアなど種々に呼称される場合があるが,本明細書
においては仕分ラインに分岐する前の段階のコンベアを「選別コンベア」,受皿に
農産物を載せる段階のコンベアを「供給コンベア」,更に包装作業位置に連なる仕
分ラインのコンベアを「仕分コンベア」というものとする。
ウ発明が解決しようとする課題
【0006】ところで,近時においては市場や消費者の好みなどの様々な観点から,
包装形態が農産物の品目,品種毎に異なる場合や,同じ品目,品種の農産物であっ
ても等級(グレード),階級(サイズ)によって望ましい包装形態が異なる場合も
多くなってきており,上述した仕分区分別の分布比率の大小で自動包装と手作業包
装を振り分けるだけでは,包装処理作業の効率化と生産性に対する対設備投資費用
のバランスを適切に確保することが必ずしも容易でない場合がある。
【0007】これは,選別要素の計測や仕分けの工程は機械化して比較的高速処理
が実現できるのに対し,包装作業(特に手詰めの場合)では高速処理が難しいため,
工程別の処理速度のアンバランスを招くことにその原因の一つがある。
【0010】このような包装形態の多様化に応ずるためには,仕分工程の構成をよ
り柔軟に変更できるようにすることが求められる。このような問題に対処する対策
の一つとして,例えば手詰め包装のための仕分ラインを増設することが考えられる。
しかしこのようにすると,仕分ラインを構成するプールコンベアや付随する装置類
が多くなって設備設置容積の増大,設置設備の大規模化等の問題を招く。
【0011】また,計測,仕分の工程から包装作業位置に仕分けられて送り出され
る各仕分区分のフリートレイ貯溜部(プールコンベア等)の面積を大きくし,処理
速度の差を緩衝することも考えられるが,このようにすると各仕分区分の貯溜部の
面積が夫々大きくなるため選果場全体に必要な面積が極めて大きくなることが避け
られず,特に設置面積に制約のある選果場には適用できない。
【0012】そこで従来は,各仕分ライン毎のプール部は大きく設けずに,選別コ
ンベアの終端に,仕分ラインに排出できなかった受皿を一括して受け入れるプール
部を設けて,オーバーフローした受皿の農産物は手作業で包装することが行われて
いる場合が多い。
【0013】このように,設備の設置面積を大きくせずに,選別,仕分け工程と,
包装作業の工程をバランスよく稼働させる装置の提供は必ずしも容易でない。
【0014】また以上の問題とは別に,農産物選別装置の生産性を向上させる場合
に従来から問題とされているものとして,選別仕分けを行う農産物の荷口の切り替
え時に農産物の搬送間隔を所定の間隔だけ空ける必要があるという問題がある。
【0015】これは,農産物選別作業の本来の目的に由来するものである。すなわ
ち,選別仕分けは,市場に等級,階級の揃った農産物を箱詰めして供給するために
行われるという一面と,もう一つに,各生産農家に支払う代価を選果場に持ち込ま
れた農産物の品質等に応じて適切に積算集計しなければならないという一面があり,
この後者のためには,各農家別の荷口が混在しない状態で積算集計される必要があ
るから,選別装置の供給コンベアから計測工程にフリートレイを送り出す位置で,
荷口切り替えの際に上記のように所定間隔を空けることが行われる。しかしこの送
り間隔を空けることは,仕分け処理の観点からはその分無駄が生ずることを意味す
るから,この無駄をなくすことができれば,選別装置の生産性の向上には有益であ
る。
【0016】本発明は,以上のような異なる課題を一挙に解決することができる新
規な農産物の選別装置を提供することを目的としてなされたものである。
エ課題を解決するための手段
【0017】上記の目的は本願の特許請求の範囲に記載した各請求項の発明により
達成される。
【0018】本願の請求項1の農産物の選別装置の発明は,搬送手段に連結されて
いない受皿(フリートレイ)と,農産物供給位置から農産物包装作業位置(包装ス
テージ)に渡って農産物を載せた受皿を搬送する搬送手段(以下場所によって,「
供給コンベア」,「選別コンベア」,「仕分コンベア」という場合がある)とを備え,
この搬送手段には,受皿上の農産物を選別仕分けする情報を計測するために上記搬
送手段の途中に設定された計測軌道領域,及び該計測軌道上で計測された仕分け情
報に基づいて個々の受皿上の農産物を排出するように所定の仕分区分別の仕分ライ
ン(仕分コンベア)が多数分岐接続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域
を設定し,上記各受皿は,その上に載せられている農産物の仕分け情報を直接又は
受皿に表記された識別標識を介して間接的に読出し可能に記録し,上記仕分排出軌
道領域の上流に設けた読出し手段により個々の受皿の農産物仕分け情報を読出して
該当する仕分区分の仕分ラインに該受皿を排出する農産物の選別装置において,上
記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を
上記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを設けると共に,このリターンコン
ベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を,上記計測軌道領域の終端
と上記仕分け情報読出し手段の間としたことを特徴とする。
【0019】上記において,搬送手段の一部を構成する選別コンベアは,その前段
の農産物を受皿に載せるための供給コンベアの終端から,上記仕分排出軌道領域ま
での範囲のコンベア装置をいい,一つのコンベア装置を用いて構成することもでき
るし,計測作業,仕分排出作業などに適した機能を有する異なるコンベア装置を連
接して構成することもできる。
【0020】仕分ラインをなす仕分コンベアは,貯溜と集積の作用を行うコンベア
装置を含むように構成することができる。この仕分コンベアは,一条の選別コンベ
アに,これに沿って配置された排出装置によりフリートレイ(受皿)が農産物を載
せたまま排出されるように接続される。そしてこの仕分コンベアは,種々の仕分区
分のものを混在状態で搬送する一条の選別コンベアに対して複数設けられ,その下
流端は,機械詰め,手詰めあるいはこれらを切換え可能とした包装ステージなどに
接続される。…
【0022】フリートレイ(受皿)は,農産物を載せて安定して搬送できるもので
あればよく,例えばリンゴ等の球塊状の農産物を対象とする場合には,平面円形の
皿状をなし中央部がリンゴを載せるために凹設されている形状のものが好ましい。
またこのフリートレイは,これに載せている農産物の仕分け情報を直接又は間接的
に読出しできるようにその情報が記録されるようになっている。「直接読出すよう
に記録」というのは,例えばICカードやメモリー装置をこの受皿に搭載して,計
測工程で計測し仕分区分を判定した後の仕分け情報を該メモリー装置等に記録させ
てこれを読出す方式を言い,「間接的に読出すように記録」というのは,例えばバ
ーコード等の識別標識をフリートレイに表記しておき,計測工程で計測し仕分区分
を判定した後の仕分け情報をコンピュータ等に各フリートレイの識別標識とリンク
して記録しておいて,識別標識を読み取ることで該コンピュータに記録した仕分け
情報を読出す方式のものを言う。
【0023】また上記発明の構成において,仕分排出軌道領域で排出されずにオー
バーフローし,リターンコンベアで上流側に戻されたフリートレイを選別コンベア
に送り込む位置を,上記計測軌道領域の終端と仕分け情報読出し手段の間としたこ
とは,この発明の重要な特徴の一つである。すなわち,等級(色,傷,糖度,熟度
等),階級(大きさ,重量等)の必要な要素を計測し,農産物の仕分区分を判定す
る計測工程にあっては,荷口別(農家別)に対価を積算集計するので異なる荷口の
農産物が混在する可能性は極力避ける必要がある。他方,仕分け排出や包装の工程
では,仕分区分別に揃った農産物がまとめられていることが重要であって,個々の
農産物がどの荷口に属するものなのかは基本的に問題とならない。したがって,農
産物の仕分排出を行うことに支障がなく,同時に代価の積算集計に支障のない位置
に,オーバーフローした農産物を戻すことが本発明において必須とされるのである。
【0024】この発明によれば,フリートレイというコンベアに非連結の受皿を用
いる方式の特徴を生かして,仕分排出軌道の領域を通過してしまった受皿を,リタ
ーンコンベアで上流側に戻すようにすることで,各仕分ラインに貯溜すべき受皿数
を大きく設定する必要性を軽減でき,したがって各仕分ラインのプール部を小さく
し,装置全体を小型にできるという利益が得られる。またこれと共に,従来の選別
コンベアの終端部にプール部を設けて手作業で包装していた不具合も同時に解消で
きる。なお,上記仕分ラインは仕分けるべき全ての区分に応じて少なくとも一条づ
つ設けることが一般に望ましい。
【0025】なお,仕分排出軌道領域で仕分ラインに排出されずに受皿がオーバー
フローするのは,仕分区分別に設定されている仕分ラインのうちのいずれかが満杯
でそれ以上の受皿を受け入れられない状態にある場合,排出装置の動作不良,故障
などの場合があり,排出装置の一時的な動作不良の場合にはオーバーフローした受
皿は自動的に再度仕分け工程に戻されるので,処理上の不都合は殆ど生じない。
オ発明の実施の形態
【0034】以下本発明を図面に示した実施形態に基づいて説明する。
【0035】実施形態1
図1は,本発明よりなる農産物の選別装置を設備した選果場の一部(農産物選別の
ための農産物供給-計測-包装箱詰に至る経路)を平面図で示したものであり,こ
の選別装置を含む設備は,大別して,農産物の供給部と,等階級の選別要素に基づ
く仕分け情報を計測・判定する計測部と,等階級選別の仕分け情報が判定された農
産物を各仕分区分の仕分ラインに排出する仕分部と,仕分けられた各仕分区分の一
群(本例では包装の一単位の数)の農産物を包装ステージの箱詰待機位置等に送っ
て箱詰めする包装部とから構成されている。
【0036】上記の農産物の供給部では,空トレイリターンコンベア51により戻
された空のフリートレイ4を供給コンベア52上で搬送させながら,作業者50が
そのフリートレイに,農産物を収容したコンテナを運ぶコンテナコンベア57で供
給された農産物を一つづつ載せるように作業する。図1中では農産物を載せたフリ
ートレイ4はハッチング付きで示し,空フリートレイ4は白抜きで示した。…
【0037】54は撮像装置であり,カラーカメラやセンサカメラ等を用いて農産
物の外観を撮像し,適宜の演算方法で各農産物の等級及び階級の計測結果から仕分
区分を判定するためのものである。55はフリートレイ4に表示させた一つづつ異
なる識別標識,例えばバーコードを読み取るバーコードリーダーである。
【0038】これらの農産物の等級,階級及びフリートレイ4を特定する情報は,
図示しないコンピュータに送られ,特定のフリートレイ4に載っている農産物が等
階級のいずれの仕分区分に属するものかが記録され,この仕分け情報は,一条一列
でフリートレイ4を搬送する選別コンベア1から仕分部の仕分コンベア202にフ
リートレイ4を排出するための情報として図1に示した排出装置201に送られる。
【0039】以上のようにして等階級の仕分区分が判定された農産物を載せたフリ
ートレイ4は,選別コンベア1により様々な仕分区分の農産物がランダムに混在し
て仕分部2に送られる。
【0040】次に本例の選別装置の仕分部2について説明する。
【0041】農産物の供給・等階級選別部で仕分区分が判定された農産物を載せた
フリートレイ4は,選別コンベア1に対して横方向に略直交するように分岐接続さ
れた仕分コンベア202に,該当する仕分区分の農産物を載せたフリートレイ4を
排出させるようになっている。
【0042】また図1に示した本例の設備では,一つの排出装置201が二条の仕
分コンベア202にフリートレイを振り分けて排出するように構成されていると共
に,この二条の二組(計四条)が一つの包装ステージに連係して包装単位の一まと
めのフリートレイ4が集積した時点でフリートレイの送り出しを行う関係に構成さ
れている。なお本例の設備は,包装ステージは九つ設定されていて,図1の下側六
つは機械詰め包装ステージ3として自動包装装置301が設置され,その上側の三
つは手詰め包装ステージ30として作業員が手詰め包装する作業位置とされている。
【0043】農産物の仕分け排出処理を…説明すると,例えば等階級の仕分区分が
判定された農産物(例えば大きさの階級がLで等級がA)は,その仕分区分(A-
L)に設定された仕分コンベア202を有する排出装置201の位置を通過する際
に,コンピュータ等の制御手段(図示せず)からの指令により回転テーブルの電磁
吸着部が励磁されてこれに吸着され,該回転テーブルの回転に従って選別コンベア
1上から横方向に転向し排出されることになる。そして,二つ設けた励磁解除手段
のいずれかで電磁吸着部が励磁解除され,選別コンベア1から排出されたフリート
レイ4は,回転テーブルから離れて二つの仕分コンベアのいずれかに送り込まれる。
【0044】なお,所定の排出装置201で特定の仕分区分の農産物を選別して該
当する仕分コンベア202に排出する操作は,本例では次のように行われる。すな
わち,選別コンベア1の上流に配置したバーコードリーダー5によりフリートレイ
の固有の標識(バーコード)を読み取ることでこの標識と一対一の関係にリンクし
て記録されている農産物の仕分区分を検出し,このバーコードリーダー5の配置位
置から,該当する仕分区分の農産物の受入れが設定されている仕分コンベア202
に対応する排出装置201までの移送距離(あるいは時間)を,エンコーダ装置な
どから上記選別コンベアの移動量と対応して出力されるパルス数に基づいて割り出
して,該当するフリートレイ4がその装置を通過する際に該当する排出装置201
を作動させる。なお,一つの排出装置201で振り分け排出する二条の仕分コンベ
ア202については,例えば同じ仕分区分の農産物Pを受け入れるように設定する
こともできるし,他の仕分区分を受入れるように設定することもできる。
【0052】以上のように,本例においては,選別コンベア1により計測部から仕
分部に搬送され,排出装置201により所定の仕分コンベア202に排出された受
フリートレイ4は,機械詰め包装ステージ3あるいは手詰め包装ステージ30で順
次箱詰包装される。
【0053】ところで,仕分コンベア202が比較的短いために排出を受けて集積
・貯溜できる個数が少ない設備の場合には,一つの仕分区分の農産物を受け入れる
ように設定されている仕分コンベア202上が満杯になっていることがあり,この
場合には,上述したように該当する農産物の排出が行われず,該農産物を載せたフ
リートレイ4は搬送下流側に搬送されることになり,これに対応する仕分区分が下
流側に設定されていなければ,このフリートレイ4は仕分部からオーバーフ(ロ)
ーする。
【0054】そこで,本例では,選別コンベア1の終端にこのオーバーフローした
フリートレイ4を,上記計測装置54と上記バーコードリーダ5の間の選別コンベ
ア1まで戻すリターンコンベア6を延設して,このフリートレイ4を再度,上述し
たバーコードリーダ5を通過させた後の仕分け処理に供するようにしている。…
【0055】図2は,このリターンコンベア6で戻されたフリートレイ4を選別コ
ンベア1に合流させる位置の構成を平面図で示したものであり,リターンコンベア
6の終端は,選別コンベア1に対してフリートレイ4の合流がし易い斜めの角度で
連接され,その終端位置には常閉型のストッパ装置601が設けられている。この
ストッパ装置601は,常時は,返送された農産物入りフリートレイ4をその位置
で停止させ,合流指令を受けることでストップを解除して合流を行わせるものであ
る。なお602は,返送された農産物入りフリートレイ4があることを検出するた
めの検出センサである。
【0056】そして,上記の合流指令は次のようにして出力される。すなわち,選
別コンベア1の上記合流位置よりも若干搬送手前側を中心として,選別コンベア1
を斜めに挾むように投光センサ603と受光センサ604を対をなすように設置し,
該選別コンベア1上にフリートレイ4がほぼ途切れなく搬送されているときにはこ
の投・受光の光線がフリートレイ4で遮られて途切れのないことを検出し,フリー
トレイ4の前後間隔が所定距離以上に開いた場合には,投・受光光線が遮られずに
受光センサ604が光線を受光し,フリートレイ4の途切れを検出するようになっ
ている。したがって,この途切れが検出された時に,上記常閉型のストッパ装置6
01を作動させてリターンコンベア6上で待機されているフリートレイ4を選別コ
ンベア1に送り出し合流させる。
【0057】なお,上記の光線の投・受光によるフリートレイ4の途切れの検出を
行う前後間距離の開きは,フリートレイ4一つを合流させるのに適した大きさに設
定されることは言うまでもない。
【0058】以上のように構成された農産物入りフリートレイのリターン機構及び
合流機構を設けた本例の選別装置によれば,何らかの理由で仕分部で仕分コンベア
に排出されずにオーバーフローしたフリートレイを,再度仕分けの工程にスムース
に戻すことができる。
【0059】したがって,仕分コンベア202を長く設けなくても,効率のよい選
別仕分けの処理を行うことができるという効果が得られる。また,荷口の切り替え
時に比較的大きく開くフリートレイの前後間隔を,この部分にリターンされた農産
物入りフリートレイを合流させることでうめることができるので,仕分部,包装部
の処理を効率化できるという利点も得られる。
カ発明の効果
【0060】以上述べたように,本願の各発明によれば,フリートレイというコン
ベアに非連結の受皿の特徴を生かして,仕分排出軌道の領域を通過してしまった受
皿をリターンコンベアで上流側に戻すようにすることで,各仕分ラインに貯溜する
受皿の数を大きく設定する必要性を軽減でき,したがって装置全体を小型にできる
という利益が得られると共に,仕分排出軌道領域で仕分ラインが満杯で受皿が排出
されずにオーバーフローする場合,あるいは排出装置の動作不良,故障などの場合
に,オーバーフローした受皿は自動的に再度仕分け工程に戻されるので,従来の選
別コンベアの終端部にプール部を設けて手作業で包装していた不具合を解消できる。
【0061】請求項3の発明によれば,監視装置で仕分ライン上の受皿の貯溜状態
を監視できるので,受皿が仕分ラインであふれる不具合を確実に防ぐことができる
という効果が得られる。
【0063】請求項5及び請求項6の発明によれば,リターンコンベアにより戻さ
れた受皿を選別コンベアに円滑に乗り移させることができる。そして荷口の切り替
え時など,搬送される受皿が比較的大きく離れて途切れる位置に受皿を合流させる
ことができるので,仕分ラインなどに大きなプール部を設けることなく,設備全体
を効率よく稼働させることができるという利点が得られる。
(2)前記(1)の記載によれば,本件発明の技術的意義は,以下のとおりのものと
認められる。
本件発明は,農産物を選別仕分けして包装するのに用いられる選別装置に関し,
詳しくは農産物を載せて搬送する受皿がコンベアに連結されていない,いわゆるフ
リートレイ式の受皿を用いた選別装置に関するものである(【0001】)。
従来の選別装置は,各仕分ライン毎のプール部は大きく設けずに,選別コンベア
の終端に,仕分ラインに排出できなかった受皿を一括して受け入れるプール部を設
けて,オーバーフローした受皿の農産物は手作業で包装することが行われている場
合が多く,設備の設置面積を大きくせずに,選別,仕分工程と,包装作業の工程を
バランスよく稼働させる装置の提供は必ずしも容易でなく,また,農産物選別装置
の生産性を向上させる場合に従来から問題とされているものとして,選別仕分を行
う農産物の荷口の切替え時に農産物の搬送間隔を所定の間隔だけ空ける必要がある
との課題を有していた。本件発明は,上記課題を解決することができる新規な農産
物の選別装置を提供することを目的としている(【0010】~【0016】)。
このため,本件発明は,搬送手段に連結されていない受皿と,農産物供給位置か
ら農産物包装作業位置に渡って農産物を載せた受皿を搬送する搬送手段とを備え,
この搬送手段には,受皿上の農産物を選別仕分けする情報を計測するために上記搬
送手段の途中に設定された計測軌道領域,及び該計測軌道上で計測された仕分情報
に基づいて個々の受皿上の農産物を排出するように所定の仕分区分別の仕分ライン
が多数分岐接続されている搬送手段下流側の仕分排出軌道領域を設定し,上記各受
皿は,その上に載せられている農産物の仕分情報を直接又は受皿に表記された識別
標識を介して間接的に読み出し可能に記録し,上記仕分排出軌道領域の上流に設け
た読み出し手段により個々の受皿の農産物仕分け情報を読み出して該当する仕分区
分の仕分ラインに該受皿を排出する農産物の選別装置において,上記仕分排出軌道
領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を上記搬送手段の
上流側に戻すリターンコンベアを設けるとともに,このリターンコンベアにより戻
した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を,上記計測軌道領域の終端と上記仕分け
情報読出し手段の間としたことを特徴とする(【0018】)。
殊に,本件発明は,従来の選別装置が,オーバーフローした受皿用のプール部を
必要としていたこと及び荷口の切替え時に農産物の搬送間隔を所定の間隔だけ空け
る必要があることに鑑みて,「仕分排出軌道領域から仕分ラインに排出されずにオ
ーバーフローした受皿を搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを設けると共に,
このリターンコンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を,前記計
測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出し手段の間としたこと」により,各仕分ラ
インに貯留すべき受皿の数を大きく設定する必要性を軽減でき,各仕分ラインのプ
ール部を小さくし,装置全体を小型にできるという利益が得られるとともに,従来
の選別コンベアの終端部にプール部を設けて手作業で包装していた不具合を解消で
き,さらに,荷口の切替え時に比較的大きく開くフリートレイの前後間隔を,この
部分にリターンされた農産物入りフリートレイを合流させることでうめることがで
きるので,仕分部,包装部の処理を効率化できる利点が得られるようにした点
(【0023】,【0024】,【0059】~【0061】,【0063】)に技術的意
義があるものと認められる。
2引用発明1について
引用例1(甲2)の記載によれば,引用発明1に関し,以下の点が開示されてい
ることが認められる。
(1)産業上の利用分野
引用発明1は,青果物の選別装置に係り,詳しくは受皿上に載せられた青果物を
選別するとともに,選別後の青果物を仕分クラスの数よりも少なく配置された箱詰
手段へ仕分クラスを切り換えて排出する青果物の選別装置に関する(【0001】)。
(2)従来の技術
従来,青果物の選別装置は,青果物が載せられた受皿を搬送コンベアで搬送する
途中に,計測装置により受皿上の青果物の所定項目を計測して等級及び階級を判定
し,この判定結果に基づき,計測後の青果物を搬送路の側方に等級別階級別に設け
た果実受け部に排出するように構成され,果実受け部に排出された青果物は,人手
又は箱詰ロボット等の箱詰手段により段ボール箱内へ箱詰めされて製品として送り
出されている(【0002】)。
(3)発明が解決しようとする課題
上記従来の選別装置は,計測後の青果物を搬送して仕分ける搬送ラインの側方に,
箱詰めするための手段を仕分クラス(等級,階級)の数と同数配置して構成したも
のであるが,果実,そ菜類等の青果物は,産地や季節及び年によって等級比率が異
なるため,前記箱詰めするための手段を,仕分クラスの数と同数配置することは,
比率が高い仕分クラスについては効率がよいが,比率が低い仕分クラスについては
設備に対する効果が低く改善が望まれている。また,近年,市場,消費者の多様化
する要望により仕分クラスの数が増える傾向にあり,従来のごとく仕分クラスの数
と同数の箱詰めする手段を配置することは選別装置が長大化するとともに,箱詰め
に従事する作業者の人手不足を招き改善が望まれている(【0002】~【000
5】)。
(4)課題を解決するための手段
上記課題を解決するために,引用発明1の青果物の選別装置は,各々が固有情報
を有する多数の受皿と,この受皿に載せられた青果物を受皿ごと搬送する搬送手段
と,該搬送手段の搬送路に沿って設けられ受皿の固有情報を読み取るとともに,青
果物の所定の計測項目を計測する読取計測手段と,この読取計測手段からの計測情
報より仕分クラスを判定し,この仕分クラスを受皿の固有情報とともに更新記憶す
る演算処理手段と,前記読取計測手段の後段で搬送中の青果物入り受皿の固有情報
を読み取る仕分読取装置と,この仕分読取装置の後段で搬送路に沿って仕分クラス
の数よりも所定数少ない数設けられ,送られてくる排出信号により作動して青果物
入り受皿を前記搬送手段から排出させる排出装置と,仕分クラス別の排出位置の指
定が切換可能で,かつ,該仕分クラスのうち排出位置の指定ができない排出位置設
定部を有し,前記仕分読取装置が読み取った固有情報から前記演算処理手段に記憶
された仕分クラスを読み出し,該読み出した仕分クラスの排出位置が前記排出位置
設定部に指定されているとき,その排出位置の排出装置へ当該青果物入り受皿の進
行と同期して排出信号を送る仕分制御手段と,前記搬送手段に接続され排出装置に
より排出されない仕分クラスの青果物入り受皿を,前記仕分読取装置の前段へ還元
するリターン手段とからなることを特徴とする(【請求項1】,【0006】)。
(5)作用
引用発明1の青果物の選別装置によれば,青果物が載せられた受皿は,搬送手段
上を搬送中に読取計測手段により受皿の固有情報を読み取るとともに,受皿上の青
果物の所定項目を計測し,それぞれの情報を演算処理手段へ入力する。そして,演
算処理手段により,前記計測情報から仕分クラスを算出し,この仕分クラスを受皿
の固有情報とともに更新記憶しておく。そして,選別後の青果物が載せられた受皿
は,搬送手段上を搬送中に仕分読取装置により受皿の固有情報を読み取って,この
情報を仕分制御手段へ送る。そして,仕分制御手段は,前記読み取った固有情報か
ら前記演算処理手段に記憶された仕分クラスを読み出すとともに,この読み出した
仕分クラスが排出位置設定部にその排出位置が指定されているか否か判別し,指定
されているとき,その排出位置の排出装置へ当該青果物入り受皿の進行と同期して
排出信号を出力する。この排出信号により前記搬送手段上を搬送される青果物入り
受皿は,該当する排出位置に達したときに排出装置が作動して搬送手段上から排出
される(【0007】)。
一方,前記仕分制御手段は,前記読み出した仕分クラスの排出位置が排出位置設
定部に指定されていないときは排出信号を出力せず,したがって,その仕分クラス
の青果物入り受皿は,排出装置の前を通過してリターン手段へ送られ,前記仕分読
取装置の前段ヘ還元される。また,排出位置設定部の仕分クラスの排出位置の切換
えは,例えば,仕分読取装置が受皿の固有情報を読み取る都度その数を積算してお
くことにより,この積算値に基づき仕分クラスの排出位置を切り換えることができ
る。したがって同一の排出位置に異なる仕分クラスの青果物入り受皿を切り換えて
排出することができ,この排出位置で排出される青果物は箱詰手段を共用すること
ができる(【0008】)。
(6)実施例
ア構成(別紙2の図1及び6を参照。)
(ア)1は受皿2を搬送する搬送手段であり,実施例では各種コンベアの組み合
わせにより構成する(【0010】)。
100a,100bは選別コンベアであり,その搬送路において受皿2上に載せ
られた青果物Fの所定の計測項目が計測されるようになっている。101a,10
1bは仕分コンベアであり,前記選別コンベア100a,100bの後段に接続さ
れ,計測後の青果物F入り受皿2を搬送するとともに所定の仕分クラスに基づき搬
送路の側方に仕分けるようになっている(【0011】)。
102a,102bは分岐コンベアであり,前記仕分コンベア101a,101
b上から階級別に等級を混在して仕分けられた青果物F入り受皿2を受けて先方の
第1プールコンベア103へ搬送するようになっている。この第1プールコンベア
103は,二条型の仕分コンベア101a,101bから仕分けられて分岐コンベ
ア102a,102bによって搬送される同一階級で等級が混在した青果物F入り
受皿2を,所定数プール可能なようにアキュームレート可能なコンベアで構成する。
この第1プールコンベア103は,青果物Fの分布率の違いにより仕分コンベア1
01から集中的に仕分けられて供給過剰になったときにこの余剰分をプールしてお
くとともに,この余剰分をまばらに仕分けられたときに次工程に送り出して次工程
に送り出す量を一定にするごとく構成する(【0012】)。
104は搬出コンベアであり,前記第1プールコンベア103から送り出される
青果物F入り受皿2を合流のタイミングを計って合流コンベア105上に搬出する
ようになっている。106は第2仕分コンベアであり,前記合流コンベア105か
ら送り出される青果物F入り受皿2を受けて搬送するとともに搬送路の側方に等級
別に仕分けるようになっている(【0013】)。
(イ)3は前記選別コンベア100の搬送路の所定位置に設けられた読取計測手
段であり,搬送中の受皿2のバーコードマーク22を読み取る読取装置31と受皿
2上の青果物Fの所定の計測項目を計測する計測装置32とを組み合わせて構成し
ている(【0016】)。
4は演算処理手段であり,CPUを内蔵した処理回路で構成されており,演算判
定部41とアドレスメモリ部42とからなり,演算判定部41は前記読取計測手段
3の計測装置32から入力される計測情報信号から予め設定した区分値と比較して
仕分クラス(等級及び階級)を算出するようになっている。アドレスメモリ部42
は,前記演算判定部41で算出された仕分クラスを,前記読取装置31が受皿2の
バーコードマーク22を読み取ったコード番号とともに更新記憶するようになって
いる(【0019】)。
(ウ)5aは第1仕分読取装置であり,前記読取計測手段3の後段で仕分コンベ
ア101aの所定位置に前記読取装置31と同様のバーコード読取装置(バーコー
ドリーダ)を用いて構成する。符号5bで示される第1仕分読取装置は,前記第1
仕分読取装置5aと同様である。この第1仕分読取装置5aで読み取ったときの固
有情報信号は,階級仕分制御装置51へ入力されるようになっている。そしてこの
階級仕分制御装置51は,前記第1読取装置5aが読み取った受皿2のコード番号
から演算処理手段4のアドレスメモリ部42に記憶された階級の読み出しを行い仕
分信号を後述の排出装置6aへ向けて受皿2の進行と同期させて出力するようにな
っている(【0021】)。
50は第2仕分読取装置であり,前記第2仕分コンベア106の上流側所定位置
に前記第1仕分読取装置5aと同様のバーコード読取装置(バーコードリーダ)を
配置し,第2仕分コンベア106上を搬送される受皿2のバーコードマーク22を
読み取るようになっている。そして,この第2仕分読取装置50で読み取ったとき
の固有情報信号は後述する仕分制御手段7と切換制御手段9へ入力されるようにな
っている(【0022】)。
(エ)6aは仕分コンベア101aの搬送路に沿って設けられた排出装置であり,
仕分信号により作動して仕分コンベア101a上で搬送される受皿2を搬送路の側
方へ排出するもので,仕分コンベア101aの搬送路に沿って階級数に応じた数を
所定間隔に配置しており,仕分コンベア101a上の青果物F入り受皿2を階級別
に等級を混在して搬出する(【0023】)。
60は前記符号6aで示されるものと同様の排出装置であり,第2仕分コンベア
106の搬送路に沿って等級の数よりも所定数少ない数,実施例では4等級(秀,
優,良,並)に対して1つ少ない数(3個)を所定間隔に配置している。すなわち,
この第2仕分コンベア106に沿って設けられた排出装置60は,階級別に等級を
混在して仕分コンベア106で搬送される青果物F入り受皿2を等級別に仕分ける
ように構成する(【0024】)。
(オ)7は仕分制御手段であり,等級読出部71と排出位置設定部72と排出制
御部73とからなり,等級読出部71は,前記第2仕分読取装置50で読み取った
受皿2のコード番号が入力されるようになっており,コード番号が入力されるとこ
の番号とともに演算処理手段4のアドレスメモリ部42に記憶されている等級の読
み出しを行うようになっている(【0025】)。
排出位置設定部72は,等級別の排出位置が切換可能で,かつ,所定の等級の排
出位置が指定されないように予めプリセット装置にセットするようになっている。
この排出装置設定部72によれば例えば,秀,優,良,並の等級のうち並の等級の
排出位置を指定しない場合,この並の等級のものは第2仕分コンベア106上で排
出されずに先方ヘ送られるようになる(【0026】)。
排出制御部73は,前記等級読出部71で読み出した等級信号が入力されると,
この等級が前記排出位置設定部72で設定した排出位置のいずれに属するか判別し,
排出位置の指定がある場合に該当する排出装置60へ向けて排出信号を受皿2の進
行と同期させて出力する。一方,前記入力された等級が排出位置設定部72に排出
位置の指定がない場合は排出信号は出力されず,したがって,第2仕分コンベア1
06上を通過して次工程ヘ送られる(【0027】)。
(カ)8は前記第2仕分コンベア106上で排出されない排出位置の指定がない
青果物F入り受皿2を,前記合流コンベア105の始端部へ還元するためのリター
ン手段であり,前記第2仕分コンベア106の終端部と前記合流コンベア105の
始端部とをリターンコンベア81と第2プールコンベア82とで接続している。こ
の第2プールコンベア82は,前記第1プールコンベア103と同様の構造のアキ
ュームレート可能なコンベアで,前記第1プールコンベア103から送り出される
青果物F入り受皿2と合流コンベア105上でスムースに合流するごとく,終端部
82bに合流のためのタイミング送り装置を設けて構成する(【0028】)。
この第2プールコンベア82は,排出位置の指定のない等級の青果物Fを所定量
になるまでプールしておき,所定量に達したときに前記第1プールコンベア103
からの送り出しを停止させるとともに,この第2プールコンベア82からの送り出
しを開始するごとく所定量を交互に送り出すように構成することもできる(【00
29】)。
(キ)9は切換制御手段であり,前記排出位置設定部72における等級別の排出
位置の切換えを,前記第2仕分読取装置50が受皿2のバーコードマーク22を読
み取った信号に基づき行うものである。この切換制御手段9は,前記第2仕分読取
装置50が読み取ったコード番号から前記排出位置が指定されない等級についてそ
の個数を積算し,この値が予め設定した個数に達したときに排出位置の切換えを指
示するようになっている。この指示は例えば排出位置設定部72の図示しないプリ
セット装置に切換信号出力するように構成すれば自動的に切り換えることができる
(【0030】)。
また,本実施例は排出位置が設定されない等級つまりリターンされるものの個数
について積算するごとく説明したが,限定するものでなはく,例えば,同じ排出位
置で良と並を切換えて排出させる場合で,並の等級がリターンにまわって良の等級
が箱詰め部に排出されているとき,この排出されたものの個数を積算しておき,こ
の個数がある設定数に達したときに排出位置の切換えを指示するごとく構成するこ
ともできる(【0032】)。
(ク)10は前記排出装置60にそれぞれ対応して設けられた箱詰プール装置で
あり,排出装置60から排出された青果物F入り受皿2をそれぞれ等級別にプール
するごとくアキュームレート可能なコンベアで構成する(【0033】)。
11は前記箱詰プール装置10の終端部に設けられた自動箱詰装置である(【0
034】)。
イ動作(別紙2の図6を参照。)
選別コンベア100上で搬送される受皿2に,例えば人手の作業により青果物F
が載せられると,搬送途中に読取計測手段3の読取装置31により受皿2のバーコ
ードマーク22を読み取られてその固有情報信号(コ―ド番号)が演算処理手段4
のアドレスメモリ部42へ入力される。そして,計測装置32により,階級判定要
素として青果物Fの形状寸法と,等級判定要素として色,傷等の外観表面形態をそ
れぞれ計測し,それぞれの計測信号を演算処理手段4の演算判定部41へ入力する。
この演算判定部41は,入力されたそれぞれの計測信号から仕分のためのデータと
して青果物Fの等級及び階級を判定し,それぞれのデータをアドレスメモリ部42
ヘ入力する。このアドレスメモリ部42は前記読取装置31から入力される固有情
報信号(コード番号)と前記判定された仕分けのためのデータ(等級,階級)とを
それぞれ合わせてアドレス毎(コード番号)に更新記憶しておく(【0037】)。
そして,読取計測手段3を通過して仕分コンベア101上に送り出された青果物
F入り受皿2は,仕分コンベア101上を搬送中に第1仕分読取装置5により受皿
2のバーコードマーク22が読み取られて固有情報信号(コード番号)が階級仕分
制御装置51へ入力される。この階級仕分制御装置51は前記読み取ったコード番
号を抽出して前記アドレスメモリ部42に記億された階級の読み出しを行い,階級
別仕分信号を該当する階級の排出装置6へ向けて受皿2の進行と同期させて出力す
る(【0038】)。
この階級別仕分信号により該当する排出装置6が作動すると,その階級の青果物
F入り受皿2は仕分コンベア101上から階級別に等級を混在して分岐コンベア1
02上ヘ排出される。そして,この分岐コンベア102により搬送されて第1プー
ルコンベア103上にプールされた青果物F入り受皿2は,この第1プールコンベ
ア103の終端部103bから所定数を切り出して搬出コンベア104により一列
に合流コンベア105へ搬出される(【0039】)。
この合流コンベア105により第2仕分コンベア106上ヘ送られた青果物F入
り受皿2は,第2仕分読取装置50により受皿2のバーコードマーク22を読み取
られて固有情報信号(コード番号)が仕分制御手段7の等級読出部71へ入力され
る。等級読出部71はこのコード番号からアドレスメモリ部42に記憶された等級
を読み出して等級信号を排出制御部73ヘ入力する。排出制御部73はこの等級が
予め排出位置設定部72で指定された排出位置のいずれに属するか判別し,排出位
置の指定がある場合に該当する排出装置60ヘ向けて等級別排出信号を受皿2の進
行と同期させて出力する(【0040】)。
一方,前記入力された等級が排出位置設定部72に排出位置の指定がない場合に
は排出信号は出力されない。このため排出位置の指定がない青果物F入り受皿2は,
第2仕分コンベア106上から排出されずにリターンコンベア81へ送られる
(【0041】)。
そして,リターンコンベア81により第2プールコンベア82上に送られた青果
物F入り受皿2は,前記第1プールコンベア103から合流コンベア15上に送ら
れる青果物F入り受皿2と合流のタイミングを計ってその終端部82bから切り出
すように送出される。また,この第2プールコンベア82は,その終端部82bに
おいて青果物F入り受皿2の送出を一時ストップさせておき,プールされる青果物
F入り受皿2の数が所定量になったとき,前記第1プールコンベア103の終端部
103bからの送出をストップさせるとともに,第2プールコンベア82上の青果
物F入り受皿2を送り出すように構成すれば所定量ごと交互に切り換えて送出すこ
ともできる(【0042】)。
一方,前記排出位置設定部72における等級別の排出位置の切換えは,第2仕分
読取装置50が受皿2のバーコードマーク22を読み取ると,その都度,前記排出
位置が設定されない等級についてのみその個数を積算し,この値が予め設定した個
数に達したときに排出位置の切換えを指示する。この切換えのために予め設定され
る数値は,リターンされる青果物Fが第2プールコンベア82上でほぼ満杯になる
ときの個数や,等級比率から割出された単位時間当たりの個数等目的に応じて任意
に決めることが好ましい。そして,前記等級別排出信号により等級別に箱詰プール
装置10上へ排出された青果物F入り受皿2は,自動箱詰装置11により所定数を
まとめて段ボール箱12に箱詰めされて製品となって送り出される(【0043】)。
(7)発明の効果
引用発明1の青果物の選別装置によれば,仕分クラスの数よりも所定数少ない数
の排出装置を搬送手段の搬送路に沿って設けるとともに,仕分制御手段により前記
仕分クラスの排出位置が切換可能で,かつ,前記所定数の仕分クラスの排出位置が
指定されないように設け,前記排出装置により排出されない前記仕分クラスの青果
物を仕分読取装置の前段ヘ再び還元するごとく構成したものである。このように,
搬送手段に沿って設けられる排出装置は仕分クラスの数よりも少なく配置したため,
この排出装置に対応して設けられる箱詰装置は,仕分クラスの数と同数を配置する
従来のものと比較して少なくて済み,選別装置全体を小型にすることができるとと
もに,箱詰め作業に従事する作業者も同様に少なくて済み合理化及び省力化に効果
があり,また,同一排出位置で複数の仕分クラスを切り換えて排出可能に構成した
ことにより,例えば等級比率の低いもの同志を組み合わせて一台の箱詰装置に対す
る稼動効率を高めて使用することができる(【0044】~【0046】)。
3取消事由1(新規性判断の誤り)について
(1)本件発明1の新規性について
ア引用発明1の認定について
(ア)原告は,本件審決が,引用発明1を前記第2の3(2)のとおり認定したこ
とについて,「プールコンベア82にプールしておく」ことやリターン手段によっ
て戻す時期を「仕分クラスの排出位置を切り換えるとき」とすることは,引用発明
1にとって任意の構成にすぎず,引用発明1の認定においては,これらの構成を付
加すべきではない旨主張する。
(イ)そこで,検討するに,前記2の引用例1の記載によれば,引用発明1は,
「選別後の青果物を仕分クラスの数よりも少なく配置された箱詰手段へ仕分クラス
を切換えて排出する青果物の選別装置に関する」発明であり(【0001】),箱詰
めするための手段を仕分けクラスの数と同数配置することに起因する,比率が低い
仕分クラスについて設備に対する効果が低いこと,選別装置の長大化及び箱詰めに
従事する従事者の人手不足といった課題を解決するものである(【0002】~
【0005】)。
そのため,搬送手段である仕分コンベア101a,101b及び排出装置6aの
下流で階級別に仕分を行った後の工程に位置する第1プールコンベア103は,
「青果物Fの分布率の違いにより仕分コンベア101から集中的に仕分けられて供
給過剰になったときにこの余剰分をプールしておくとともに,この余剰分をまばら
に仕分けられたときに次工程に送り出して次工程に送り出す量を一定にするごとく
構成する」ものであり(【0012】),第2プールコンベア82は,「前記第1プー
ルコンベア103と同様の構造のアキュームレート可能なコンベア」(【002
8】)であり,箱詰プール装置10は,「排出装置60から排出された青果物F入り
受皿2をそれぞれ等級別にプールするごとくアキュームレート可能なコンベアで構
成する」ものである(【0033】)。このように,引用発明1は,排出装置下流に
受皿をプールすることが可能な領域(第1プールコンベア103,第2プールコン
ベア82,箱詰プール装置10)を設けることにより,排出装置6aと選別装置の
最下流である自動箱詰装置10までの間の各コンベア(工程)を,受皿が貯留可能
な量とすることを前提とした仕分を対象としたものであると認められる。
そして,排出制御部73は,等級が予め排出位置設定部72で指定された排出位
置のいずれに属するかを判別し,排出位置の指定がある場合には,該当する排出装
置60ヘ向けて等級別排出信号を受皿2の進行と同期させて出力し,排出位置の指
定がない場合には,排出信号は出力されず,排出位置の指定がない青果物F入り受
皿2は,第2仕分コンベア106上から排出されずにリターンコンベア81へ送ら
れる一方,排出位置設定部72における等級別の排出位置の切換えは,排出位置が
設定されない等級についてのみその個数を積算するなどして,この値が予め設定し
た個数に達したときに排出位置の切換えを指示し,リターンコンベア81により第
2プールコンベア82に送られた青果物F入り受皿2は,その終端部82bから切
り出すように送出され,合流コンベア105上に搬出され,第2仕分読取装置50
の前段へ還元される(【請求項1】,【0006】,【0008】,【0027】~【0
030】,【0040】~【0043】)。
以上によれば,引用発明1は,上記課題の解決のために,プール機能を有する第
1プールコンベア,箱詰プール装置,第2プールコンベアを設けるとともに,第2
プールコンベアを含み仕分読取装置の前段へ受皿を還元するリターン手段を設けて,
排出装置から自動箱詰装置に至る仕分工程の間に排出位置の指定がない受皿を貯留
可能なスペースを確保するとともに,仕分クラスの排出位置の切換手段を設けたこ
とにより,搬送手段に沿って設けられる排出装置及び箱詰装置を仕分クラスの数よ
りも少なく配置でき,選別装置全体の小型化を可能とした点に特徴があると認めら
れる。
そうすると,本件審決が,引用発明1について,「仕分クラスの数よりも所定数
少ない数の排出装置60にそれぞれ対応して設けられたアキュームレート可能なコ
ンベアで構成される箱詰プール装置10が接続されている搬送手段下流側の仕分排
出領域を設定し,」及び「前記仕分排出領域から,仕分クラスの排出位置が指定さ
れている受皿は箱詰プール装置10に仕分け,仕分クラスの排出位置が指定されて
ない受皿はプールコンベア82にプールしておき,仕分クラスの排出位置を切り換
えるときに仕分読取装置50の前段へ受皿を還元するリターン手段とからなる青果
物の選別装置」と認定した点は,引用発明1にとって任意の構成にすぎないものと
いうことはできない。したがって,本件審決が,「引用発明1においては,…仕分
クラスの排出位置が指定されてない受皿はプールコンベア82にプールしておき,
仕分クラスの排出位置を切り換えるときに仕分読取装置50の前段へ受皿を還元す
るリターン手段とからなる」と引用発明1を認定したことに誤りはないというべき
である。
原告の前記(ア)の主張は,採用することができない。
イ相違点の認定(オーバーフロー)について
(ア)原告は,本件明細書の【0012】,【0023】,【0025】,【005
3】,【0054】,【0058】の記載によれば,本件発明1の「オーバーフロー」
とは「仕分排出軌道領域で仕分ラインに排出されないこと」を意味するものであっ
て,排出位置の指定がないために仕分ラインに排出されない場合も含むところ,引
用発明1においても,受皿はオーバーフローしており,本件発明1と引用発明1と
の間に,オーバーフローについて,本件審決が認定する相違点は存在しない旨主張
する。
(イ)「オーバーフロー」とは,「広辞苑第六版」(岩波書店)によれば,「水
などがあふれ出ること」との語義を有するものとされている。
そして,本件明細書には,「オーバーフロー」に関し,以下の記載がある。
【0006】,【0007】,【0011】,【0012】には,仕分区分別の分布比
率の大小で自動包装と手作業包装を振り分けるだけでは,選別要素の計測や仕分け
の工程は機械化して比較的高速処理が実現できるのに対し,包装作業(特に手詰め
の場合)では高速処理が難しいため,工程別の処理速度のアンバランスを招くこと,
そのために,計測,仕分の工程から包装作業位置に仕分けられて送り出される各仕
分区分のフリートレイ貯留部(プールコンベア等)の面積を大きくし,処理速度の
差を緩衝することも考えられるが,このようにすると各仕分区分の貯留部の面積が
それぞれ大きくなるため選果場全体に必要な面積が極めて大きくなることが避けら
れず,特に設置面積に制約のある選果場には適用できないことから,従来は,各仕
分ライン毎のプール部は大きく設けずに,選別コンベアの終端に,仕分ラインに排
出できなかった受皿を一括して受け入れるプール部を設けて,オーバーフローした
受皿の農産物は手作業で包装することが行われている場合が多いことが記載されて
いる。
【0025】には,仕分排出軌道領域で仕分ラインに排出されずに受皿がオーバ
ーフローするのは,仕分区分別に設定されている仕分ラインのうちのいずれかが満
杯でそれ以上の受皿を受け入れられない状態にある場合,排出装置の動作不良,故
障等の場合があり,排出装置の一時的な動作不良の場合にはオーバーフローした受
皿は自動的に再度仕分け工程に戻されるので,処理上の不都合はほとんど生じない
ことが記載されている。
【0053】には,仕分コンベアが比較的短いために排出を受けて集積・貯留で
きる個数が少ない設備の場合には,一つの仕分区分の農産物を受け入れるように設
定されている仕分コンベア上が満杯になっていることがあり,この場合には,該当
する農産物の排出が行われず,該農産物を載せたフリートレイは搬送下流側に搬送
されることになり,これに対応する仕分区分が下流側に設定されていなければ,こ
のフリートレイは仕分部からオーバーフローすることが記載されている。
【0060】には,仕分排出軌道領域で仕分ラインが満杯で受皿が排出されずに
オーバーフローする場合,あるいは排出装置の動作不良,故障等の場合に,オーバ
ーフローした受皿は自動的に再度仕分け工程に戻されるので,従来の選別コンベア
の終端部にプール部を設けて手作業で包装していた不具合を解消できることが記載
されている。
以上の記載によれば,本件発明1における「オーバーフロー」とは,「選別コン
ベアの下流(終端)ないし仕分コンベア(仕分ライン)上流に生じ得る態様であっ
て,仕分箇所が設定されており,仕分しようとしていたが,仕分箇所が満杯の場合,
仕分箇所への排出装置の動作不良,故障等の理由により,その仕分箇所に受皿が排
出されない態様」を意味するものと解するのが相当である。
本件明細書の【0023】,【0054】,【0058】の記載も,上記の「オーバ
ーフロー」の意味を離れて,受皿が仕分排出軌道領域で仕分ラインに排出されない
態様の全てを含むものとして,「オーバーフロー」の用語を使用していると解する
ことはできない。
また,本件明細書の【0024】には,仕分ラインは仕分けるべき全ての区分に
応じて少なくとも一条ずつ設けることが一般に望ましいことが記載されていること,
及び本件発明2の請求項の文言との対比によれば,本件発明1は,仕分ラインの条
数が全ての仕分区分数よりも所定数少ない場合も含むものというべきであるが,そ
のような場合であっても,仕分箇所が設定されているにもかかわらず,その仕分箇
所が満杯の場合,その仕分箇所へ排出する手段の動作不良,故障等の理由により,
その仕分箇所に受皿が排出されない態様を想定できることは同様であるから,これ
が上記「オーバーフロー」の解釈を変更すべき根拠となるものではない。仕分ライ
ンの条数が全ての仕分区分数よりも所定数少ないために,仕分箇所が設定されずに
仕分箇所に排出されなかった態様のものは,上記「オーバーフロー」の概念に該当
しないというにすぎない。
(ウ)これに対して,引用発明1は,前記ア(イ)のとおりのものであって,引用
例1によれば,リターン手段8(リターンコンベア81,第2プールコンベア8
2)へ受皿が流れる態様は,排出装置6a,6bで第1段階の排出として階級別に
排出された受皿の中から,排出位置を指定しないもの(【0024】。図1において
は「並」と記載され,仕分箇所を設定せず最初から排出装置60への排出を予定し
ていないもの)を単にプールさせるものにすぎず,仕分コンベア101a,101
b(本件発明1の選別コンベアに相当するもの)から,分岐コンベア102a,1
02b(本件発明1の仕分コンベアに相当するもの)に入った後の工程であって,
仕分コンベア101a,101bの下流(終端)ないしは分岐コンベア102a,
102bの上流に生じ得る態様ではない。その上,仕分箇所が設定されており,仕
分しようとしていたが,仕分箇所が満杯の場合,仕分箇所への排出装置の動作不良,
故障等の理由により,その仕分箇所に受皿が排出されない態様に当たるものでもな
い。したがって,引用発明1において,リターン手段8(リターンコンベア81,
第2プールコンベア82)へ受皿が流れる態様は,本件発明1の「オーバーフロ
ー」に該当するものではなく,引用発明1の「箱詰プール装置10に排出されない
受皿」が,本件発明1の「仕分排出軌道領域で仕分ラインに排出されずにオーバー
フローした受皿」に含まれるとすることはできない。
また,箱詰プール装置10上に受皿が満杯で排出できない場合や排出装置60の
動作不良,故障等で排出できない場合というのも,仕分コンベア101a,101
b(本件発明1の選別コンベアに相当するもの)から,分岐コンベア102a,1
02b(本件発明1の仕分コンベアに相当するもの)に入った後の工程であって,
仕分コンベア101a,101bの下流(終端)ないしは分岐コンベア102a,
102bの上流に生じ得る態様ではないから,本件発明1の「オーバーフロー」に
該当するということはできない。
(エ)原告は,引用発明1においても,箱詰プール装置10上に受皿が満杯で排
出できない場合や排出装置の動作不良,故障等で排出できない場合が常識的に想定
できるのであって,引用発明1は,そのような場合にも対応できる構成であり,本
件審決の認定からすれば,このような場合こそがオーバーフローとなるものである
から,本件審決は,引用発明1がこのような場合に対応できる点をあえて認定しな
いものであって,引用発明1には「オーバーフローという概念は存在し得ない。」
とした判断は,不当である旨主張する。
しかし,前記(ウ)のとおり,箱詰プール装置10上に受皿が満杯で排出できない
場合や排出装置60の動作不良,故障等で排出できない場合の受皿の流れの態様は,
本件発明1の「オーバーフロー」に該当するものではない。
これに対して,引用例1の記載からすれば,第1段階の排出を行う排出装置6a,
6bに動作不良,故障等があった場合,受皿は分岐コンベア102a,102bに
排出されず,仕分コンベア101a,101b上を進行していくと考えられること
から,本件発明1の「オーバーフロー」の状態になる可能性がある。しかし,引用
例1には,その後どのように当該受皿が取り扱われるのかといった対処手段に関す
る記載は全くない。したがって,引用例1には,この場合については,少なくとも
「仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を
前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを設けると共に,このリターンコン
ベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を,前記計測軌道領域の終端
と前記仕分け情報読出し手段の間とした」構成(相違点に係る本件発明1の構成)
は,記載されていない。
(オ)原告は,引用例1の補正により追加された甲12の請求項1の構成は,本
件発明1の構成と実質同一であり,引用例1の上記補正は,引用発明1の「願書に
最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」されたものとい
うべきであるから,甲12は,引用例1における自明事項を証明するものであって,
本件審決は,引用例1の記載事項,特に自明事項の認定を誤るものである旨主張す
る。
しかし,引用発明1は,あくまでも引用例1に記載された発明であって,原告の
主張も本件発明1と引用発明1とが同一であるというものであるから,甲12は本
件特許の無効理由の基礎となるものではない。また,甲12は,本件出願日(平成
10年10月23日)よりも後に発行されたものであるから,特許法29条1項3
号に係る刊行物には該当しない。
(カ)以上のとおりであるから,原告の前記(ア)の主張は,採用することができ
ない。
ウ原告の主張について
(ア)原告は,引用発明1において,リターン手段で還元される受皿は,仕分ク
ラスの排出位置が指定されてない(そのために仕分排出領域から箱詰プール装置1
0に排出されなかった)受皿だけでなく,箱詰プール装置10の満杯や排出装置の
動作不良,故障等の理由で仕分排出領域から箱詰プール装置10に排出されなかっ
た受皿も含まれるから,相違点に係る引用発明1の「仕分クラスの排出位置が指定
されてない受皿」との部分は,「仕分排出軌道領域(第2仕分コンベア106)か
ら箱詰プール装置10に排出されなかった受皿」と認定されるべきである旨主張す
る。
確かに,引用例1の記載からすれば,第1段階の排出を行う排出装置6a,6b
に動作不良,故障等があった場合,受皿は分岐コンベア102a,102bに排出
されず,仕分コンベア101a,101b上を進行していくと考えられることから,
本件発明1の「オーバーフロー」の状態になる可能性がある。しかし,前記イ(エ)
のとおり,引用例1には,第1段階の排出を行う排出装置6a,6bに動作不良,
故障等があった場合,その後どのように受皿が取り扱われるのかといった対処手段
に関する記載は全くないことから,この場合については,少なくとも「仕分排出軌
道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段
の上流側に戻すリターンコンベアを設けると共に,このリターンコンベアにより戻
した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を,前記計測軌道領域の終端と前記仕分け
情報読出し手段の間とした」構成は記載されていない。
これに対して,引用例1において,箱詰プール装置10の満杯の理由で第2仕分
コンベア106から箱詰プール装置10に排出されなかった受皿は,リターンコン
ベア81,第2プールコンベア82,リターンコンベア81,合流コンベア105
を経て,再び第2仕分けコンベア106に戻されることとなる。また,第2段階の
排出を行う排出装置60に動作不良,故障等があった場合も,同様に,第2仕分コ
ンベア106から箱詰プール装置10に排出されず,リターンコンベア81,第2
プールコンベア82,リターンコンベア81,合流コンベア105を経て,再び第
2仕分けコンベア106に戻されることとなる。しかしながら,前記イ(ウ)のとお
り,上記いずれの場合の受皿の流れの態様も,そもそも「オーバーフロー」には当
たらない。
そうすると,仮に,相違点に係る引用発明1の「仕分クラスの排出位置が指定さ
れてない受皿」との本件審決による認定部分を,「仕分排出軌道領域(第2仕分コ
ンベア106)から箱詰プール装置10に排出されなかった受皿」としたとしても,
「仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を
前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを設けると共に,このリターンコン
ベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を,前記計測軌道領域の終端
と前記仕分け情報読出し手段の間とした」との本件発明1に係る構成は,引用例1
には記載されていないことから,この点が相違点であることに変わりはない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(イ)原告は,引用例1には,「アキュームレート可能なコンベアで構成され
る」と記載されているものの,箱詰のためには一定のまとまった数の農産物をプー
ルする必要があるので,選別コンベアから分岐して箱詰装置に至るコンベアは,ア
キュームレート(蓄積すること)が可能なコンベア(一般にプールコンベアと称さ
れる)で構成されるものであって,コンベア上に受皿の蓄積が可能であることが開
示されているにすぎず,どの程度の蓄積が可能かについての記載はないこと,本件
発明1の仕分ラインを構成するコンベアも,実施例では自動箱詰装置に接続してい
るのであるから,当然,「アキュームレート可能な」コンベアであると考えられる
し,本件明細書の【0020】に,「仕分ラインをなす仕分コンベアは,貯留と集
積の作用を行うコンベア装置を含むように構成することができる。」と記載されて
いるように,貯留・集積が可能な仕分ラインの構成を排除しているわけでもないこ
とから,「アキュームレート可能なコンベアで構成される」との点は,相違点では
ない旨主張する。
しかし,前記1(2)のとおり,本件発明は,「仕分排出軌道領域から仕分ラインに
排出されずにオーバーフローした受皿を搬送手段の上流側に戻すリターンコンベア
を設けると共に,このリターンコンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込
む位置を,前記計測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出し手段の間としたこと」
により,各仕分ラインに貯留すべき受皿の数を大きく設定する必要性を軽減でき,
各仕分ラインのプール部を小さくし,装置全体を小型にできるという利益が得られ
るなどの課題を解決した点に技術的意義がある。
これに対して,前記ア(イ)のとおり,引用発明1は,プール機能を有する第1プ
ールコンベア,箱詰プール装置,第2プールコンベアを設けるとともに,第2プー
ルコンベアを含み仕分読取装置の前段へ受皿を還元するリターン手段を設けて,排
出装置から自動箱詰装置に至る仕分工程の間に排出位置の指定がない受皿を貯留可
能なスペースを確保するとともに,仕分クラスの排出位置の切換手段を設けたこと
により,搬送手段に沿って設けられる排出装置及び箱詰装置を仕分クラスの数より
も少なく配置でき,選別装置全体の小型化を可能とした点に特徴があるものであっ
て,そのため,「仕分クラスの数よりも所定数少ない数の排出装置60にそれぞれ
対応して設けられたアキュームレート可能なコンベアで構成される箱詰プール装置
10が接続されている搬送手段下流側の仕分排出領域を設定し,」及び「前記仕分
排出領域から,仕分クラスの排出位置が指定されている受皿は箱詰プール装置10
に仕分け,仕分クラスの排出位置が指定されてない受皿はプールコンベア82にプ
ールしておき,仕分クラスの排出位置を切り換えるときに仕分読取装置50の前段
へ受皿を還元するリターン手段とからなる青果物の選別装置」との点は,引用発明
1にとって不可欠の構成である。
そして,前記イ(イ)及び(ウ)のとおり,本件発明1における「仕分排出軌道領
域」における「リターンコンベア」と,引用発明1における「仕分排出領域」にお
ける「リターン手段」とは,「オーバーフロー」した受皿を搬送手段の上流側に戻
すものであるか否かという点で技術的意義が相違するものである。そうすると,そ
の前提となる引用発明1の「仕分排出領域」の構成として,本件審決が,「アキュ
ームレート可能なコンベアで構成される箱詰プール装置10が接続されている搬送
手段下流側の仕分排出領域」と認定したことに誤りはないというべきである。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(ウ)原告は,受皿がリターン手段で還元される位置は,引用発明1においても,
仕分読取装置50の前段であって,受皿上の青果物の計測は終わっている(再度計
測する必要はない)のであるから,この点は,相違点ではない旨主張する。
しかし,前記イ(イ)及び(ウ)のとおり,本件発明1における「仕分排出軌道領
域」における「リターンコンベア」と,引用発明1における「仕分排出領域」にお
ける「リターン手段」とは,「オーバーフロー」した受皿を搬送手段の上流側に戻
すものであるか否かという点で技術的意義が相違するものである。すなわち,本件
発明1においては,「仕分排出軌道領域から仕分ラインに排出されずにオーバーフ
ローした受皿を搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを設けると共に,このリ
ターンコンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を,前記計測軌道
領域の終端と前記仕分け情報読出し手段の間とした」ものである。これに対して,
引用発明1においては,リターン手段8へ受皿が流れる態様は,仕分コンベア10
1a,101b(本件発明1の選別コンベアに相当するもの)から,分岐コンベア
102a,102b(本件発明1の仕分コンベアに相当するもの)に入った後の工
程であって,仕分コンベア101a,101bの下流(終端)ないしは分岐コンベ
ア102a,102bの上流に生じ得る態様ではなく,リターンコンベアにより戻
した受皿を送り込む位置も,分岐コンベア102a,102bに入った後の工程で
ある第2仕分読取装置50の前段である。
そうすると,本件審決が,本件発明1は,「リターンコンベアにより戻した受皿
を前記搬送手段に送り込む位置を,前記計測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出
し手段の間としたこと」に対し,引用発明1は,「仕分読取装置50の前段へ受皿
を還元するリターン手段とからなる」点を相違点として認定したことに誤りはない
というべきである。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
エ小括
以上のとおりであるから,引用発明1の認定の誤り及び相違点の認定の誤りに係
る原告の主張はいずれも理由がなく,本件発明1は引用発明1と同一ではない。
(2)本件発明2,5及び6の新規性について
本件発明2,5及び6は,本件発明1の発明特定事項を全て含み,本件発明1に
他の限定を付加したものである。そうすると,本件発明2,5及び6と引用発明1
とは,少なくとも,本件発明1と引用発明1との相違点と同一の相違点を有し,か
つ,本件発明1について前記(1)で説示した事項は,全て本件発明2,5及び6に
も妥当する。
したがって,本件発明2,5及び6も,引用発明1と同一ではない。
(3)以上によれば,取消事由1は理由がない。
4取消事由2(進歩性判断の誤り)について
(1)引用発明1及び技術常識に基づく本件発明1の容易想到性について
ア原告は,搬送コンベアから仕分コンベアに排出されずに搬送コンベアの最終
部まで搬送された青果物の取り扱いに労力を要するという課題が存在したことは,
引用例1を補正した甲12の【0002】,【0003】や,本件明細書の【001
2】にも記載されているように,当業者であれば自明な事項であり,引用発明1に
おいても,排出位置の指定のない受皿は仕分排出軌道領域で排出されないが,この
ような場合も本件発明1の「オーバーフロー」に該当するから,引用発明1にはオ
ーバーフローという課題が自明なものとして存在しており,さらに,仕分排出軌道
領域で仕分ラインに排出されなかった受皿への対応という課題は,引用発明1にお
けるオーバーフローの課題の存在の有無とは別に,一般的に搬送装置の分野におい
て周知であることから,かかる課題の解決に引用発明1の「リターン手段」の技術
を用いることは,当業者であれば,容易に想到し得る旨主張する。
イしかし,引用例1には,本件発明1における「オーバーフロー」の課題につ
いての記載も示唆もない。
また,前記3(1)イ(ウ)のとおり,引用発明1においてリターン手段8(リター
ンコンベア81,第2プールコンベア82)へ受皿が流れる態様は,本件発明1に
おける「オーバーフロー」には該当しないから,引用発明1のリターン手段8(リ
ターンコンベア81,第2プールコンベア82)は,本件発明1の「仕分排出軌道
領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段の
上流側に戻すリターンコンベア」に相当するものではない。
そして,前記3(1)イ(エ)のとおり,引用発明1において,第1段階の排出を行
う排出装置6a,6bに動作不良,故障等があった場合には,その後の受皿の流れ
の態様が,本件発明1の「オーバーフロー」の状態になる可能性があるものの,引
用例1には,その後どのように当該受皿が取り扱われるのかといった対処手段に関
する記載は全くなく,少なくとも「仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出さ
れずにオーバーフローした受皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを
設けると共に,このリターンコンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む
位置を,前記計測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出し手段の間とした」構成は
記載されていない。
さらに,本件発明の従来技術として,「従来は,各仕分ライン毎のプール部は大
きく設けずに,選別コンベアの終端に,仕分ラインに排出できなかった受皿を一括
して受け入れるプール部を設けて,オーバーフローした受皿の農産物は手作業で包
装することが行われている場合が多い。」(【0012】)と記載されていることから
すれば,従来は,プール部を設けてオーバーフローの対処を行う場合が多いことが
把握できるから,仮に搬送コンベアから仕分コンベアに排出されずに搬送コンベア
の最終部まで搬送された青果物の取り扱いに労力を要するという課題自体が自明で
あったとしても,当該課題の解決に引用発明1の「リターン手段」の技術を用いる
ことを容易に想到し得たとすることはできない。
したがって,原告の前記アの主張は,採用することができない。
(2)引用発明1並びに公知例1ないし5,甲19ないし21及び25記載の公
知公用技術に基づく本件発明1の容易想到性について
ア原告は,甲19ないし21及び25(資料6ないし資料23)によれば,
「搬送される対象物を仕分けるための情報が既に取得されており,かつ,仕分ライ
ンで満杯等が発生したときには,搬送される対象物をリターンコンベアに戻し,文
字認識装置で仕分けるための情報を読み取って仕分ラインを再度探索する」技術は,
本件出願前に公然実施されていた公知公用技術であるところ,上記公知公用技術を
引用発明1に適用することは,当業者にとって困難ではない旨主張する。
イしかし,そもそも原告主張に係る「搬送される対象物を仕分けるための情報
が既に取得されており,かつ,仕分ラインで満杯等が発生したときには,搬送され
る対象物をリターンコンベアに戻し,文字認識装置で仕分けるための情報を読み取
って仕分ラインを再度探索する」公知公用技術は,スイカを仕分けした後に箱詰め
された製品箱を搬送するパレタイザー積込工程に関するものであることは,その主
張自体から明らかであって,本件発明1のように,「農産物を載せた受皿」を搬送
手段で搬送しつつ,「計測軌道領域」において受皿上の農産物を選別仕分けする情
報を計測し,「仕分排出軌道領域」において該当する仕分区分の仕分ラインに該受
皿を排出する「農産物の選別装置」に関するものではなく,本件発明1及び引用発
明1とは,その前提となる技術が相違するというべきである。
そうすると,原告主張に係る上記公知公用技術には,本件発明1の構成に係る
「前記仕分排出軌道領域から前記仕分ラインに排出されずにオーバーフローした受
皿を前記搬送手段の上流側に戻すリターンコンベアを設ける」ことも,「リターン
コンベアにより戻した受皿を前記搬送手段に送り込む位置を,前記計測軌道領域の
終端と前記仕分け情報読出し手段の間としたこと」のいずれも開示されておらず,
仮に,原告主張に係る公知公用技術が認められたとしても,前提となる技術が相違
し,引用発明1と組み合わせることによって,相違点に係る本件発明1の構成に想
到することはできない。
したがって,原告の前記アの主張は,採用することができない。
(3)引用発明1及び引用発明2に基づく本件発明1の容易想到性について
ア原告は,多数の品物を搬送しながら同一目的の仕分先に排出して仕分ける装
置において,仕分先が満杯で排出できない事態が発生するとの課題を解決するとい
う技術思想として引用発明2を認定すべきであって,引用例2記載の仕分コンベア
17は,本件発明1におけるオーバーフローした受皿を搬送手段の上流側に戻すリ
ターンコンベアを含んでいるところ,引用発明1と引用発明2の共通点は多いこと
から,引用発明1と引用発明2とは技術分野の関連性を有しており,これは両発明
を組み合わせることの動機付けとなり得るのであって,引用発明2の技術を引用発
明1に適用することは当業者にとって困難ではない旨主張する。
イ引用発明2について
引用例2(甲3)の記載によれば,引用発明2に関し,以下の点が開示されてい
ることが認められる(下記記載中に引用する図1は別紙3を参照。)。
(ア)特許請求の範囲
【請求項1】
仕分コンベヤによって搬送される仕分物品を仕分シュートに仕分ける1つ又は複
数の仕分システムの前記仕分シュートが複数合流する合流シュートにおいて,合流
する前記複数の仕分シュートの内何れか1つの仕分シュートは鉄板,樹脂等で形成
され且つ当該仕分シュートを滑り降りる仕分物品を検知する第1物品検知センサー
を有し,合流する前記複数の仕分シュートの内残りの仕分シュートは仕分物品を搬
送する搬送コンベヤと前記搬送コンベヤ上の仕分物品を検知する第2物品検知セン
サーとを有し,前記第1,第2物品検知センサーは前記複数の仕分シュートの合流
点より上流に設けられ,前記第2物品検知センサーは前記第1物品検知センサーが
作動した後,所定の時間内に作動したとき前記搬送コンベヤを停止させることを特
徴とする,合流シュート。
【請求項2】
前記合流点より下流で満杯になった仕分物品を検知し,前記仕分コンベヤからの
物品の送り込みを停止させる満杯検知センサーを前記合流点より下流に具えた,請
求項1の合流シュート。
(イ)産業上の利用分野
引用発明2は,仕分コンベヤによって搬送される仕分物品を仕分シュートに仕分
ける複数の仕分システムの仕分シュートが合流する合流シュートにおいて,いずれ
か1つの仕分シュートを流れる仕分物品の流れを,他の仕分シュートを流れる仕分
物品の流れより優先させて,合流点での仕分物品同士の衝突を回避するための合流
シュートに関する(【0001】)。
(ウ)従来の技術
従来から,仕分システムは,例えば,倉庫において保管物の仕分に使用されたり,
運送会社やデパートの集配センターにおいて配達物の仕分に使用されたりしている。
この場合,仕分けられる保管物,配達物等の仕分物品は,形状や大きさが同じ物同
士,又は,形状や大きさが異なっても配達地域が同じ物同士等の様に,仕分目的が
同一な物同士に仕分けられる。このため,1つ又は複数の仕分システムの複数の仕
分シュートの内,仕分物品の仕分目的が同一な仕分シュートは,1箇所で合流して
合流シュートを形成している(【0002】,【0003】)。
(エ)考案が解決しようとする課題
ところが,このような合流シュートであると,複数の仕分シュートから送られて
きた仕分物品同士が合流点において,衝突し,仕分物品の流れが悪くなるという問
題点を有している。また,最悪の場合には仕分物品が合流点に詰まり,仕分物品の
流れが止まるという問題点も有している。そのほか,仕分物品同士が衝突したとき,
仕分物品が損傷を受けるという問題点も有している(【0004】)。
(オ)課題を解決するための手段
引用発明2は,仕分コンベヤによって搬送される仕分物品を仕分シュートに仕分
ける1つ又は複数の仕分システムの前記仕分シュートが複数合流する合流シュート
において,合流する前記複数の仕分シュートの内いずれか1つの仕分シュートは鉄
板,樹脂等で形成され,かつ,当該仕分シュートを滑り降りる仕分物品を検知する
第1物品検知センサーを有し,合流する前記複数の仕分シュートの内残りの仕分シ
ュートは仕分物品を搬送する搬送コンベヤと前記搬送コンベヤ上の仕分物品を検知
する第2物品検知センサーとを有し,前記第1,第2物品検知センサーは前記複数
の仕分シュートの合流点より上流に設けられ,前記第2物品検知センサーは前記第
1物品検知センサーが作動した後,所定の時間内に作動したとき前記搬送コンベヤ
を停止させる合流シュートにより,前記の課題を解決した(【0005】)。
(カ)実施例
a図1に示す第1実施例の合流シュートについて説明する。第1実施例の合流
シュート11は,1つの仕分システム12の仕分シュートが複数合流して形成され
ている。仕分システム12は,仕分物品Wを自動的に仕分けるシステムであり,仕
分コンベヤ17,仕分シュート13,15等を有している(【0008】)。
仕分コンベヤ17は,軌道上を循環移動する複数のトレー19を有している。ト
レー19は,指定された仕分シュートの所まで移動してくると,自動的に傾いて積
載している仕分物品Wを仕分シュートに送り込むようになっている(【0009】)。
合流シュート11を構成している仕分シュートの内,1つの仕分シュート13は
主流シュートであり,残りの仕分シュート15は副流シュートである。副流シュー
ト15は,主流シュート13に連続的に仕分物品Wが送り込まれたとき,主流シュ
ートに仕分物品が滞留する恐れがあるため,補助的に仕分物品Wを受け取るために
設けられている。このため,主流シュート13上の仕分物品W1の流れは,副流シ
ュート15上の仕分物品W2の流れよりも優先される(【0010】)。
主流シュート13は,仕分物品W1が滑り易い鉄板によって断面コ字状に形成さ
れ,傾斜して設置されている。主流シュート13の入口の両側には,主流シュート
13に仕分物品W1が投入されたことを検知する投入検知センサー21,21が取
り付けられている。また,主流,副流シュート13,15の合流点22のやや上流
の両側には,主流シュート13を滑り降りる仕分物品W1を検知する通過センサー
(第1物品検知センサー)23,23が取り付けられている(【0011】)。
副流シュート15は,「く」の字状に屈曲している部分に複数の搬送コンベヤ2
4を有している。搬送コンベヤ24の両端には,鉄板製或いは樹脂製の案内シュー
ト25,26が接続されている。副流シュート15の入口の両側にも,副流シュー
ト15に仕分物品W2が投入されたことを検知する投入検知センサー31,31が
取り付けられている(【0012】)。
また,合流点22のやや上流の副流シュート15の両側には,搬送コンベヤ24
によって搬送される仕分物品W2を検知するタイミングセンサー(第2物品検知セ
ンサー)32,32が取り付けられている。このタイミングセンサー32は,通過
センサー23が主流シュート13を滑り降りる仕分物品W1を検知した後,所定の
時間(オフ・ディレータイム)内に搬送コンベヤ24上に仕分物品W2があること
を検知したとき,搬送コンベヤ24を停止させるようになっている(【0013】)。
合流点22より下流の両側には,満杯検知センサー40,40が設けられている。
満杯検知センサー40は,合流点2の下流側に詰まって滞留した仕分物品W1,W
2を検知し,仕分コンベヤ17からの仕分物品Wの投入を停止させるようになって
いる(【0014】)。
b次に動作を説明する。仕分目的が同一な仕分物品Wは,仕分コンベヤ17か
ら主流シュート13又は副流シュート15に送り込まれる。主流シュート13に送
り込まれた仕分物品W1は,まず,投入検知センサー21によって,主流シュート
13に投入されたことが検知される。その後,仕分物品W1は,主流シュート13
の傾斜によって滑り降りて通過センサー23の前をする。通過センサー23は仕分
物品W1の通過を検知する。そして,仕分物品W1は,合流点22を通過して1箇
所に集められる(【0015】)。
一方,副流シュート15に送り込まれた仕分物品W2も,まず,投入検知センサ
ー31によって,副流シュート15に投入されたことが検知される。その後,仕分
物品W2は,搬送コンベヤ24によって合流点22に送り込まれ,主流シュート1
3によって送り込まれてきた仕分物品W1と同じ場所に集められる。この間に,タ
イミングセンサー32は,搬送コンベヤ24上の仕分物品W2の通過を検知する
(【0016】)。
このとき,通過センサー23が作動した後,ある一定の時間内にタイミングセン
サー32が作動した場合には,タイミングセンサー32は,搬送コンベヤ24を直
ちに停止させ,副流シュート15上の仕分物品W2が合流点22に送り込まれない
ようにする。これによって,主流シュート13の仕分物品W1の流れが優先され,
合流点22における,主流シュート13の仕分物品W1と副流シュート15の仕分
物品W2との衝突が回避される。また,合流点22における仕分物品W1,W2の
詰まりも回避され,仕分物品W1,W2は円滑に流れる。さらに,仕分物品W1,
W2の損傷も防止される(【0017】)。
このようにして,主流シュート13と副流シュート15とによって仕分物品W1,
W2は1箇所に集められるが,集められた仕分物品W1,W2を作業員が処理しき
れない場合,仕分物品W1,W2は,滞留し,満杯検知センサー40によって検知
される。満杯検知センサー40は,仕分物品W1,W2を検知し,ある一定の時間,
ON状態が続いた場合に,その仕分物品W1,W2を,滞留仕分物品として検知す
る(【0018】)。
満杯検知センサー40は,滞留仕分物品を検知したとき,仕分コンベヤ17から
の投入された新たな仕分物品が投入検知センサー21,31の前を通過した場合,
その後の,仕分コンベヤ17からの仕分物品の投入を停止させる。物品の投入を停
止されられた仕分コンベヤ17は,投入停止が解除されるまで,投入を停止させら
れた仕分物品を積載したまま循環移動する。そして,仕分物品の滞留が解消される
と,仕分コンベヤ17からの仕分物品の投入が再開される(【0019】)。
(キ)考案の効果
請求項1の合流シュートは,例えば,複数の仕分シュートの内,仕分物品の流れ
の多い主流シュートを仕分物品が滑り易い鉄板製,樹脂製等で形成された仕分シュ
ートとし,主流シュートより仕分物品の流れの少ない副流シュートを搬送コンベヤ
を有し制御機能を備えた仕分シュートとしたので,主流シュートの仕分物品の流れ
が優先され,合流点における仕分物品同士の衝突が回避されるという効果を奏する。
また,仕分物品の詰まりと,損傷も防止することができる。
請求項2の合流シュートは,満杯センサーによって,仕分シュートの合流点より
下流で満杯になった仕分物品を検知し,仕分コンベヤからの物品の送り込みを停止
するようになっているため,仕分物品のさらなる滞留を防止することができる
(【0030】)。
ウ引用発明2は,引用例2の前記イの記載,殊に【0019】の記載に照らせ
ば,滞留仕分物品を検知したときに,投入を停止させられた仕分物品は,仕分コン
ベアの最上流端に戻されると解される。しかし,前記3(1)イ(ウ)のとおり,引用
発明1においてリターン手段8(リターンコンベア81,第2プールコンベア8
2)へ受皿が流れる態様は,本件発明1における「オーバーフロー」には該当せず,
引用例1には,本件発明1の「オーバーフロー」の課題についての記載も示唆もな
いことから,引用発明1に引用発明2を適用する動機付けがないというべきである。
この点を措いても,引用例2には,「農産物を選別仕分けする情報を計測するた
めに上記搬送手段の途中に設定された計測軌道領域」,「各受皿に,その上に載せら
れている農産物の仕分け情報を直接又は識別標識を介して間接的に読出し可能に記
録し,前記仕分排出軌道領域の上流に設けた読出し手段」が何ら記載されていない
ため,少なくとも本件発明1の構成である「リターンコンベアにより戻した受皿を
前記搬送手段に送り込む位置を,前記計測軌道領域の終端と前記仕分け情報読出し
手段の間」に特定する構成は記載も示唆もない。そうすると,引用発明1に引用発
明2を組み合わせても,相違点に係る本件発明1の構成に想到することはできない。
(4)本件発明1の進歩性について
以上(1)ないし(3)によれば,本件発明1は,引用発明1に技術常識,公知例1な
いし5,甲19ないし21及び25記載の公知公用技術,又は引用発明2を組み合
わせることにより容易に発明できたものであるということはできない。
(5)本件発明2,3,5及び6の進歩性について
本件発明2,3,5及び6は,本件発明1の発明特定事項を全て含み,本件発明
1に他の限定を付加したものである。そうすると,本件発明2,3,5及び6と引
用発明1とは,少なくとも,本件発明1と引用発明1との相違点と同一の相違点を
有し,かつ,本件発明1について前記(1)ないし(4)で説示した事項は,全て本件発
明2,3,5及び6にも妥当する。
したがって,本件発明2,3,5及び6も,引用発明1に技術常識,公知例1な
いし5,甲19ないし21及び25記載の公知公用技術,又は引用発明2を組み合
わせることにより容易に発明できたものであるということはできない。
(6)小括
以上によれば,取消事由2は理由がない。
5結論
以上によれば,原告主張に係る取消事由は全て理由がないから,原告の本訴請求
は棄却を免れない。
よって,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官髙部眞規子
裁判官田中芳樹
裁判官柵木澄子
別紙1
【図1】
【図2】
別紙2
【図1】
【図6】
別紙3
【図1】

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