弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人二宮喜治の上告趣意第一点について。
 記録について見るに、札幌地方裁判所において本件に関し昭和二三年四月一九日
に判決言渡しがあり、被告人から札幌高等裁判所へ控訴の申立があつたので、札幌
高等検察庁から同裁判所へ一件記録の送付があつたのは同年一二月二一日であつて、
同裁判所は翌二四年八月三日本件に関する公判期日を同年九月一二日と指定したこ
とが判るのである。かように右期日の指定が八月後になつている事実は同裁判所に
おいて事案が輻輳していることを示すものであつて、不幸にしてかような客観的情
勢の結果により審判が遅れ憲法第三七条第一項に違反したとしても、それは判決に
影響を及ぼさないことが明らかであるから、上告の理由とすることができないこと
は当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一〇七一号同年一二月
二二日大法廷判決参照)論旨は理由がない。
 同第二点について。
 所論は原審の公判調書には、その第一回、第二回共何れも公開せられた旨の記載
を欠くというのである。しかし公判調書に特に裁判を公開しなかつた旨の記載がな
い限り公判廷は公開せられたものと解すべきことは既に当裁判所の判例とするとこ
ろである。(昭和二二年(れ)第二一九号同二三年六月一四日大法廷判決)論旨は
理由がない。
 同第三点について。
 所論は本件に関する追公判請求書の記載によればその第一の(四)として「被告
人三名は共謀の上昭和二三年一月二二日頃北海道庁農地部農地課内より同課保管に
係る計算器一台及び現金六千円を窃取した」となつているにかかわらず、第一審判
決及び第二審判決ともに右に関する判断を逸脱しているというのである。然るに記
録を精査すると、追公判請求書第一の(二)として「被告人三名は共謀の上昭和二
二年一二月二三日頃北海道庁農地部農地課内より同課保管に係る西洋紙二〇〆(約
二万枚)を窃取した」とあり、第一審公判において裁判長が追公判請求書記載の第
一(二)及び(四)の事実を読聞けたのに対し被告人は「只今お読聞の事実につい
て、西洋紙と計算器を盗んだのは同じ日でありましてそれは本年一月二〇日頃であ
ります」(一九二丁、一九三丁)と供述し更に盗むときの模様として「A君が部屋
から西洋紙を運んでいる間B君が私の側に居りました、そのとき私は農地課の部屋
から現金六千円を盗んできてバツクに詰めました。そのうちにA君が同課の部屋に
計算器があるから盗つてこいと言つたので私は計算器を盗つて来たのであります」
(一九三丁)と供述しているのであつて、右の供述に基き一審判決(原判決も同様)
は判示第一の(三)事実として昭和二三年一月二〇日右道庁農地部農地課で同課保
管にかゝる西洋紙二〇〆(約二万枚)を窃取したと認定したことが判るのである。
してみれば右(三)の事実は右追公判請求書記載第一の(四)の事実をも含んでい
る趣旨であること明であつて原判決並に第一審判決には所論事実に関する判断を逸
脱したということはできないのであるから論旨は理由がない。
 よつて刑訴施行法第二条、旧刑訴法第四四六条により主文の通り判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 田中巳代治関与
  昭和二五年七月七日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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