弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原略式命令中、「公訴事実第三につき、被告人を科料八〇〇〇円に処す
る。右科料を完納で きないときは金五〇〇〇円を一日に換算(端数を生じたと
きはこれを一日に換算)した期 間被告人を労役場に留置する。」との部分を破
棄する。
     被告人を科料三九〇〇円に処する。
     右科料を完納することができないときは、金三九〇〇円を一日に換算し
た期間被告人を労役場に留置する。
         理    由
 本件記録によると、富山簡易裁判所は、平成三年一一月一日、被告人に対する狂
犬病予防法違反、富山県犬の危害防止条例違反被告事件(同庁平成三年(い)第四
四〇号)について、(一)飼い犬の登録不申請(公訴事実第一)、(二)飼い犬に
対する狂犬病予防注射の不接種(公訴事実第二)の狂犬病予防法違反の各事実及び
(三)「被告人は、昭和五三年一二月ころから富山市a(b区)c番地のdの自宅
において、雑種犬(雄犬、呼名ちび)一頭を所有し、飼養管理するものであるが、
法定の除外事由がないのに、平成三年八月一七日午前一〇時三〇分ころ、同市ac
番地のd付近道路において、同犬を放し飼いにし、もって係留しなかった」旨の富
山県犬の危害防止条例違反の事実(公訴事実第三)を認定した上、(一)の事実に
つき狂犬病予防法四条一項、二七条一号その他関係法令を、(二)の事実につき狂
犬蒲予防法五条一項、二七条二号その他関係法令を、(三)の事実につき平成四年
三月二七日条例第一号による改正前の富山県犬の危害防止条例三条、一六条二項一
号その他関係法令を適用して、「公訴事実第一、第二につき、被告人を罰金三万円
に処する。公訴事実第三につき、被告人を科料八〇〇〇円に処する。右罰金、科料
を完納できないときは金五〇〇〇円を一日に換算(端数を生じたときはこれを一日
に換算)した期間被告人を労役場に留置する。第一項、第二項の金額を仮に納付す
ることを命ずる。」旨の略式命令を発布し、同略式命令は平成三年一二月二五日確
定したことが認められる。
 ところで、右各事実のうち、(三)の富山県犬の危害防止条例三条違反に対する
罰則は、同条例一六条二項一号により科料であり、平成三年法律第三一号(罰金の
額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律)により改正されるまで、科料
の額は、改正前の刑法一七条及び罰金等臨時措置法二条二項により「二〇円以上四
〇〇〇円未満」とされていたが、右改正によって、刑法一七条に定める科料の額が
「一〇〇〇円以上一万円未満」に引き上げられるとともに、右罰金等臨時措置法二
条二項は削除され、右改正法は、平成三年四月一七日公布され、平成三年五月七日
施行されたものであるところ、被告人の右(三)の行為は、平成三年八月一七日で
あって、右改正法施行後の犯行であり、原略式命令は、右(三)の行為につき、右
改正後の刑法一七条を適用して、科料八〇〇〇円に処したものと認められる。
 しかしながら、右改正法附則二項前段によれば、「条例の罰則でこの法律の施行
の際現に効力を有するものについては、この法律による改正後の刑法第一五条及び
第一七条の規定にかかわらず、この法律の施行の日から一年を経過するまでは、な
お従前の例による。」とされているので、右改正法施行の日から一年を経過する前
の犯行である右(三)の行為に適用すべき法条は、右改正法施行の際現に効力を有
する富山県犬の危害防止条例(平成四年三月二七日条例第一号による改正前の富山
県条例第二八号)三条、一六条二項一号、右改正法による改正前の刑法一七条及び
罰金等臨時措置法二条二項である。そして、右法条によれば、右罪に対する科料の
最高額は四〇〇〇円未満であり、これを超過して被告人を科料八〇〇〇円に処した
原略式命令は、法令に違反し、かつ被告人のため不利益であるといわなければなら
ない。
 よって、刑訴法四五八条一号により、原略式命令中、富山県犬の危害防止条例違
反被告事件につき、「被告人を科料八〇〇〇円に処する。右科料を完納できないと
きは金五〇〇〇円を一日に換算(端数を生じたときはこれを一日に換算)した期間
被告人を労役場に留置する。」との部分を破棄し、右被告事件について更に判決す
ることとする。
 原略式命令の確定した富山県犬の危害防止条例違反の事実に法令を適用すると、
被告人の右行為は、平成三年法律第三一号(罰金の額等の引上げのための刑法等の
一部を改正する法律)附則二項により、平成四年三月二七日条例第一号による改正
前の富山県犬の危害防止条例三条、一六条二項一号、同法による改正前の刑法一七
条及び罰金等臨時措置法二条二項に該当するので、その所定金額の範囲内で被告人
を科料三九〇〇円に処し、右科料を完納することができないときは、刑法一八条に
より金三九〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、主文
のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官清水勇男 公判出席
  平成四年一一月六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    坂   上   壽   夫
            裁判官    貞   家   克   己
            裁判官    佐   藤   庄 市 郎
            裁判官    可   部   恒   雄

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