弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
○ 事実
一 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(一) 原判決を取り消す。
(二) 被控訴人の請求を棄却する。
(三) 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
本件控訴を棄却する。
二 当事者双方の主張は、当審における主張を次のとおり付加する外、原判決第二
「事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。
1 控訴人
(一) 改正前国籍法の下における国籍離脱は、同法一〇条、一二条により法務大
臣に対する国籍離脱の届出行為に対して法務大臣の受理行為を介在させ、その後に
行う官報告示の日から国籍離脱の効力が発生するものとされている。この「受理」
という行為は、講学上、一般に準法律行為的行政行為とされ、その意義について
は、単なる事実行為である届出を受け付ける行為と異なり、当該届出が法に定める
届出として有効な行為であることを確認、判断して受領する行為をいい、受動的な
意思行為であるとされている。そして、改正前国籍法が右のとおり国籍離脱の効力
発生につき「受理」を前提としていることからすると、法務大臣が国籍離脱の要件
を実質的に審査し、その適法性を確認して有効なものと判断した場合のみ届出を受
理して、その効力を発生させるとしたものと解するのが文理に素直な解釈である。
また、国籍離脱は創設的身分行為に属するものであるところ、同様に創設的身分行
為であり、届出を要する婚姻及び離婚についても、法律上「受理」行為を介在させ
ており、この届出の受理あるいは不受理について、戸籍法一一八条で「戸籍事件に
ついて、市町村長の処分を不当とする者は、家庭裁判所に不服の申立てをすること
ができる。」と規定して不服申立ての対象となる処分としていることに照らして
も、改正前国籍法一二条一項の「受理」の法的性質が、右婚姻及び離婚の届出の受
理と同じ性質を持つものと解するのが相当である。
したがって、改正前国籍法の下における国籍離脱は、国籍離脱の届出だけによって
発生するのではなく、右届出について法務大臣が受理するという行政処分により効
力が発生するものであり、ただ、その発生時期が同法一二条三項により官報告示の
日からとされている。
(二) (一)に述べたとおり、国籍離脱の効力は、「受理」という行政処分によ
り生じるのであって、法務大臣が二重国籍要件等の存否につき判断し、右要件が存
在するとして受理した場合には、その要件が存在するとの判断につき公定力が生ず
ることになる。したがって、受理された国籍離脱の届出につき実体的に要件を充足
していないという瑕疵があっても、それが行政処分を無効とする瑕疵でない限り、
行政処分の公定力により、当該受理が権限ある行政庁または裁判所により取り消さ
れないうちは有効とされるものである。本件は未だ権限ある行政庁や裁判所により
取り消されていないのであるから有効である。それゆえ、二重国籍要件が国籍離脱
の実体上の要件であり、これが満たされていなければ国籍離脱の効力が生ずる余地
はないという解釈は採用できない。
(三) 瑕疵ある行政行為が無効となるためには、行為に内在する瑕疵が重大であ
ることのほか、瑕疵の存在が明白であることが必要であり、瑕疵が明白であるとい
うのは、処分成立の当初から、誤認であることが外形上、客観的に明白である場合
を指すものと解すべきである。そして、多数の届出を迅速に処理しなければならな
い国籍離脱届出の受理にあたっては、届出の際に添付される、届出人の外国国籍を
有することを当該外国官憲の発行した国籍証明書等によって審査するのが限度であ
り、その国籍取得の原因となった身分行為の効力にまで立ち入って審査をすること
は事実上不可能であるという実体にかんがみれば、添付された書類に明白な誤りが
ある場合等、外国国籍を有することを疑わしめる事情が、右書類等から外見上明ら
かに窺われない限り、二重国籍要件の欠如という瑕疵が処分成立の当初から外形
上、客観的に明白であるとはいえない。本件においては、外形上被控訴人の中華民
国国籍の取得を疑わせる事情はなかったのであるから、二重国籍要件欠如の瑕疵は
外形上客観的に明白であったということはできず、本件国籍離脱は無効とならな
い。
2 被控訴人
控訴人の主張を前提とすると、受理が効力要件となる場合の一般論として、受理要
件が欠缺している場合にも、受理さえなされれば確定的に効力が発生し、受理とい
う行政行為が有効である限りもはや受理要件の有無は問題とならないということに
なるが、このような考えを支持することはできない。
法形式の上からも、控訴人のような解釈が成り立つものではなく、法の規定によれ
ば、国籍離脱の要件を満たしている者のみが法的に意味を持つ届出をなしうるとさ
れていることは明らかであり、本件の場合、法務大臣の受理の前提となる届出自体
が無効であって、法的には存在しないのと同じなのである。
したがって、本件の受理は、右のような法的に無意味な届出を受理しただけのもの
に過ぎず、被控訴人の国籍離脱という法的効果が発生していないことは明らかであ
る。
控訴人の主張は、受理行為の違法を理由に国家賠償を求めているようなケースでは
意味を持つものといえるが、被控訴人は、受理行為の違法を主張しているのではな
く、本件受理行為にもかかわらず国籍離脱という法的効果が発生していないことを
述べているだけである。
三 証拠関係(省略)
○ 理由
一 当裁判所も、被控訴人の本訴請求は正当として認容すべきものと判断する。そ
の理由は原判決第三「争点に対する判断」に説示するとおりであるから、これを引
用する。ただし、次のとおり付加する。
原判決書四枚目裏四行目の次に、行を改め左のとおり付加する。
「なお、控訴人は、改正前国籍法の下における国籍離脱届出の受理行為が準法律行
為的行政行為であることを前提に、法務大臣が国籍離脱の要件を実質的に審査し、
判断した受理行為には公定力があり、当該受理が権限ある行政庁または裁判所によ
り取り消されないうちは有効であると主張する。
国籍離脱の効力が生ずるためには、届出人が外国国籍を有すること(二重国籍者)
と法務大臣に対する届出とこれに対する法務大臣の受理行為と官報での告示行為が
必要であるが、法務大臣が受理行為をするか否かを決するに当たっては届出人の外
国国籍の有無の要件を審査・判断の対象とし、届出人には外国国籍を有することが
処分の前提として判断されているといえる。そして、法務大臣の国籍離脱届出の受
理行為には公定力があることは控訴人主張のとおりであるが、右の公定力は当該処
分の有効性を特段の事由がない以上、何人も否定し得ないというもので、当該処分
を行うに当たり判断した前提要件の存否について生ずるものではないから、届出人
の外国国籍の有無についてまでその効力が及ぶものではない。このことは、控訴人
が本件受理行為と同様の法的性質を持つと指摘する婚姻及び離婚届の受理において
も同様である。すなわち、婚姻あるいは離婚の効力が生ずるためには、その届出が
受理されることが必要であると同時に、実体的要件として右届出時にその当事者に
婚姻あるいは離婚意思が存在することが必要である。したがって、当事者に婚姻あ
るいは離婚意思が存在しない場合には、右届出の受理が有効であったとしても、婚
姻あるいは離婚の効力は否定されるのであり、右受理が有効であることは当事者の
婚姻あるいは離婚意思の存否という実体的要件の判断に影響をもたらすものではな
い。
控訴人は法務大臣が二重国籍要件等の存否につき判断し、右要件が存在するとして
受理した場合には、その要件が存在するとの判断につき公定力が生ずることになる
と主張するが、法務大臣の受理行為が有効である限り、何人も右判断に拘束され実
体的要件の判断をすることが許されないということであるならば、右主張が失当で
あることは、すでに述べたとおりである。行政行為の公定力は、当該受理行為が権
限ある行政庁または裁判所により取り消されないうちは有効であるとする効力であ
って、その前提要件の存否の判断についてまで生ずるものではないからである。
本件国籍離脱の届出は、当時届出人が外国国籍を有することは明らかであったとこ
ろ、後日認知が無効となり、届出の時点においては外国国籍を有しなくなったが、
法務大臣の受理行為には重大明白な瑕疵があるとは認められない場合の国籍離脱の
効力が問題となった事案である。改正前国籍法は、国籍離脱の自由は認めるもの
の、無国籍者の発生を防止するために、国籍離脱をすることができる場合として、
二重国籍者であることを明示している。しかし、本件のように後発的に二重国籍要
件を欠く場合が発生することは十分予想されるところ、このような場合に控訴人主
張のように解すると、必然的に無国籍者が生じることとなるが、これに対処するた
めの規定は存しない。このような事態は無国籍の発生防止を目指す改正前国籍法の
趣旨に反するものといわなければならない。しかも、本件国籍離脱届出は、被控訴
人の両親が提出したものであり、被控訴人が当時三歳であるから、被控訴人の意思
によらずに誤った届出がなされたものである。そして、昭和五九年法律第四五号の
現行国籍法によれば、国籍離脱はその届出によって当然に効力を生ずるとされてい
る。これらの事情を考慮するならば、改正前国籍法における国籍離脱の効力要件と
して実体的要件を充たすことも要求していると解すべきところ、被控訴人は外国国
籍を有するものでなかったのであるから、国籍離脱の効力は生ぜず、現在も日本国
籍を有しているものである。」
二 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、
行政事件訴訟法七条、民事訴訟法三八四条、九五条、八九条を適用して、主文のと
おり判決する。
(裁判官 岡田 潤 安齋 隆 森 宏司)

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