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裁判例


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○ 主文
一 原告らの被告らに対する請求はいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
○ 事実
第一申立
一 原告ら
1 被告大阪陸運局長が原告らに対し、昭和四四年一二月二六日付でなした各懲戒
戒告処分をいずれも取消す。
2 被告人事院が原告らに対し、昭和五〇年五月二九日付でなした請求棄却の判定
(人事院指令一三-二二)をいずれも取消す。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
二 被告ら
主文と同旨。
第二 主張
一 請求の原因
1 原告Aは昭和四四年一一月一三日当時(他の原告も同じ)和歌山県陸運事務所
整備課に、同Bは奈良県陸運事務所整備課に、同Cは兵庫県陸運事務所輸送課に、
同Dは同事務所整備課に、同Eは京都府陸運事務所整備課に、同Fは大阪府陸運事
務所整備課に、同Gは大阪陸運局鉄道部保安課にそれぞれ勤務していた職員であ
る。
2 被告大阪陸運局長(以下、被告局長という。)は、原告らに対し、原告らが昭
和四四年の給与改定に関する人事院勧告の完全実施を要求して同年一一月一三日早
朝に行われた職場大会に参加したことが国家公務員法(以下、国公法という。)九
八条二項(争議行為の禁止)に違反し、八二条一号に該当するとの理由をもつて、
同年一二月二六日付で原告らをそれぞれ戒告に処する旨の懲戒処分(以下、本件各
処分という。)をした。
3 原告らは、本件各処分が違法不当であるとして被告人事院に対し、不利益処分
審査請求(昭和四五年第二三八号等併合事案)をなしたが、被告人事院は、昭和五
〇年五月二九日付人事院指令一三-二二をもつて原告らの右審査請求を棄却する旨
の判定(以下、本件判定という。)をなし、右判定書は同年七月二日以降の日に原
告らにそれぞれ到達した。
4 本件各処分及び判定は後記五記載の事由により違法であり、又、本件判定は次
の事由によつても違法である。
(一) 本件判定は、原告らが人事院に対し最終陳述書を提出した昭和四八年三月
から二年四か月を経過した昭和五〇年七月以降に原告らに送達されたものである。
(二) ところで、国公法三条二項は、「人事院は、法律の定めるところに従い、
給与その他の勤務条件の改善・・・・・・懲戒、苦情の処理その他職員に関する人
事行政の公正の確保及び職員の利益の保護等に関する事務をつかさどる。」と定
め、人事院が公務員の利益擁護、権利救済を目的として設置された機関であること
を明言しているところ、これをもつて人事院制度が公務員の争議権に代わる「代償
措置」であるといわれる所以であり、人事院の機能のうち人事院勧告にかかわる給
与関係と不利益処分についての不服申立てにかかわる公平審理関係とがこれに属す
るものである。
(三) 公務員は、その意に反する不利益処分を受けたときは、まず人事院に対し
て行政不服審査法による不服申立をしなければならず、裁判所に提起する抗告訴訟
との関係では、審査請求が前置されているのである。その趣旨は、民間労働者に比
して種々の制約が課されている公務員労働者に対し、懲戒処分等の事由を制限し
(国会法八二条)、これらの不利益処分に対しては、人事院で直接争える方法を認
め、その身分保障を民間労働者以上に厚くしようとするところにあると立法関係者
によつて説かれている。
ところが、公平審理判定内容の実態は、決して不服を申立てた公務員労働者の期待
にこたえるものとなつていない。すなわち、争議行為禁止規定違反を理由とする不
利益処分について原処分を取消した判定は一例にとどまり(昭和四二年指令一三-
二三)、又、修正した判定でさえ一例しか見当たらないのであり(昭和四一年指令
一三-一二)、かつ、全体としてみても、昭和二四年に公平審査制度が設けられて
以来二一年間の総計では人事院判定一五二三件中「処分の取消し修正は六・三パー
セントであり、残りの九三・七パーセントは承認又は棄却という結果に終つてい
る。
(四) 右のような公平審理の実態は、人事院が公務員の争議権に代わる代償機能
をもつとされる趣旨と大きく隔たるものといわざるを得ない。
右実態を前提とするとき、少なくとも審査請求に対する判定は、可及的すみやかに
なされるべきであつて、本件判定のごとく最終陳述から判定までに二年四か月を経
過するということは、極めて大きな不利益を公務員労働者に与えることとなり、審
査請求の前置されることが代償機能どころか、逆に裁判所において早く審理を受け
たいと望む原告らの意思を長期間に亘つて奪うという枠桔以外の何ものでもないこ
ととなるのである。
さらに、国公法九一条一項は、「第九〇条第一項に規定する不服申立てを受理した
ときは、人事院又はその定める機関は、直ちにその事案を調査しなければならな
い。」と定め、人事院規則一三-一の五二条一項は、「人事院は、公平委員会が提
出した調査に基づいて、すみやかに指令で判定を行うものとする。」と定めてい
る。
(五) 以上の諸点からすると、最終陳述書提出後二年四か月という長期間経過後
になされた本件判定は、それ自体違法というべきである。
5 よつて、原告らは、本件各処分及び本件判定の取消しを求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1ないし3は認める。
2 同4は争う。
(一) 裁決(判定)の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消し
を求めることができない(行政事件訴訟法(以下、行訴法という。)一〇条二項)
ところ、原告らが主張する本件判定の違法事由のうち本件各処分の違法事由につい
ての主張は、主張自体失当というべきである。
(二) 本件判定が遅延したことが違法であるとの主張について
判定が不当に遅延したかどうかは具体的な事案ごとに処分の性質・内容、審査の規
模など諸々の事情との関係において論じられるべきであり、原告ら主張のごとく期
間の長短のみによつて論じられるべきものではない。なるほど、本件判定は、原告
らの最終陳述書提出から二年四か月後に原告らに送達されているが、本事案が原告
ら六名の請求書を併合して審査した事案であること、同種事案(一一・一三闘争に
関する他省庁事案)についての審査の進捗状況などに鑑みれば、右期間が不当に長
期に亘つているということはできない。
なお、審査請求人は、三か月を経てもなお判定がないときは、判定を待つことなく
直接処分の取消しを求めて裁判所に出訴することができ(行訴法八条二項一号)、
判定遅延による審査請求人の不利益救済の途が確保されているのであるから、判定
までにある程度の期間を費したとしても、その故をもつて判定自体を違法とすべき
ではない。
三 抗弁
被告局長が原告らに対し本件各処分をした理由は、次のとおりである。
1 昭和四四年一一月一三日実施の職場大会(以下、本件ストライキ、又は本件職
場大会ともいう。)に至るまでの経緯
(一) 全運輸省労働組合の組織
全運輸省労働組合(以下、全運輸という。)は、運輸省の内部部局・附属機関(港
湾技術研究所・海技大学校・航海訓練所・海員学校及び運輸研修所を除く。)及び
地方支分部局(港湾建設局を除く。)に勤務する職員(国公法一〇八条の二の三項
ただし書に規定する管理職員等に該当する職員を除く。
)の大多数をもつて組織する職員団体であつて・本件ストライキ当時の組合員の総
数は約七五七〇名であつた。
全運輸は、中央本部の事務所を東京都千代田区<地名略>運輸省内に置き、その下
部組織として、地域別、機関別に本件ストライキ当時三〇支部一七一分会を置いて
いた。
(二) 全運輸の昭和四四年度秋期闘争方針
全運輸は、昭和四四年八月三一日から同年九月二日まで伊豆今井浜において、第八
回定期大会を開催し、同年八月一五日行われた人事院勧告の内容及び実施時期をめ
ぐる諸般の情勢から、秋の賃金確定期に向けて実力行使をもつて闘う必要があると
して、全運輸もその一員として加盟している日本国家公務員労働組合共闘会議(以
下、国公共闘という。)の統一要求事項(賃上げは五月から実施することなど)を
当面の賃金要求事項とすること、その実現を図るため、国公共闘・公務員労働組合
共闘会議(以下、公務員共闘という。)の配置する統一行動に積極的に参加して闘
い、特に同年一〇月中旬以降に早朝から勤務時間にくい込む職場大会を行うことな
どの基本方針を決定した。
(三) 全運輸の秋期闘争方針の具体化
国公共闘は、昭和四四年九月二三日の臨時拡大評議員会において、秋期闘争方針と
して、賃上げは五月から実施すること、賃上げに当たつては最低引上げ四〇〇〇円
を保障すること、諸手当を改善すること、賃金体系を改善することなどを内容とす
る「当面の統一賃金要求」を確認決定し、又秋の統一行動日を一一月一三日とし、
その戦術を「早朝から職場大会を開き始業時から二九分以内の勤務時間にくい込む
職場大会」とすることを決定した。
全運輸も前記国公共闘の決定したことを受けて、同年九月二四日さん下各支部・分
会に対し国公共闘の決定の内容を伝達すると共に各支部・分会における実力行使体
制確立を指示した。
さらに、同年一〇月一日及び同月二六日中央闘争委員会を開催して、一一月一三日
の実力行使の具体的行動を決定し、一〇月二日及び同二九日に各支部・分会に指令
した。
(四) 全運輸の賃金要求と闘争宣言
全運輸は、昭和四四年九月一九日運輸省当局に対し、前記秋期闘争方針に基づく賃
金要求として、前記統一賃金要求事項を内容とする「要求書」を提出し、政府が右
要求を入れないときは、二〇〇万公務員労働者と共に同年一一月一三日早朝から勤
務時間に二九分くい込む実力行使を行う旨の闘争宣言を発するに至つた。
(五) 本件ストライキの実施
全運輸は、このような賃金引き上げ要求を行う一方において、要求の貫徹を目標に
ストライキ体制の確立を図るため、昭和四四年九月下旬及び同年一〇月上旬さん下
の各組織に対し、いわゆる一票投票の実施、教宣活動の強化などにより、組合員の
闘争意欲の盛上げを図つたうえで公務員共闘統一ストライキとして一一月一三日早
朝勤務時間にくい込む職場大会(本件ストライキ)を開く準備を行うよう指令し、
一一月一三日当局の警告を無視してストライキを実施させた。
2 全運輸近畿陸運支部における本件ストライキの概況
(一) 全運輸近畿陸運支部の組織
全運輸近畿陸運支部(以下、近陸支部という。)は、大阪陸運局管内に勤務する職
員で組織され、本件ストライキ当時その下部組織として和歌山、奈良、滋賀、兵庫
(ただし、姫路支所を含む。)京都、大阪(ただし、和泉支所を含む。)各府県陸
運事務所及び本局に七分会が置かれ、その組合員数は約三八〇名であつた。
各分会の組織は次のとおりである。
(1) 和歌山分会は、和歌山県陸運事務所に勤務する職員で組織され、組合員数
は約二一名であつた。
(2) 奈良分会は、奈良県陸運事務所に勤務する職員で組織され、組合員数は約
一七名であつた。
(3) 滋賀分会は、滋賀県陸運事務所に勤務する職員で組織され、組合員数は約
一六名であつた。
(4) 兵庫分会は、兵庫県陸運事務所(本所)及び同姫路支所に勤務する職員で
組織され、組合員数は約六七名であつた。
(5) 京都分会は、京都府陸運事務所に勤務する職員で組織され、組合員数は約
四〇名であつた。
(6) 大阪分会は、大阪府陸運事務所(本所)及び同和泉支所に勤務する職員で
組織され、組合員数は約一二七名であつた。
(7) 本局分会は、大阪陸運局総務部、鉄道部、自動車部及び整備部に勤務する
職員で組織され、組合員数は約九六名であつた。
(二) 近陸支部及びさん下各分会における本件ストライキ体制の確立
近陸支部及びさん下各分会は、本件ストライキの闘争体制の確立を図るため、概要
次のような事前行動を行つた。
(1) 昭和四四年一〇月二〇日から同月二五日にかけてストライキに対する参加
決意表明のための一票投票などにより組合員の意思確認を行つた。
(2) 同月七日から同月三一日にかけて近陸支部及び各分会から、被告局長外そ
れぞれの陸運事務所長らに対し、統一賃金要求などの要求書を提出した。
(三) 本件ストライキに対し当局がとつた措置
(1) 昭和四四年一〇月二三日総理府総務長官は、国公共闘議長に対し警告を発
すると共に談話を発表して公務員の自覚と反省を促し、違法な行動を行うことのな
いよう自重を求めた。
(2) 同年一一月一二日運輸事務次官は、全運輸中央執行委員長に対し警告を発
し、違法行為を行うことのないよう自重を求めた。
(3) 同月八日から同月一〇日にかけて被告局長、総務部長及び各陸運事務所長
らは近陸支部長及び各分会長に対し、文書による警告を発し、違法な職場大会を行
うことのないよう自重を求めた。
(4) 同月八日から同月一一日にかけて各職員に対し、同月六日付け運輸事務次
官名による警告書を交付し、違法な職場大会に参加することのないよう自重を求め
ると共に警告した。
(5) 本件ストライキ当日、各所属長は、それぞれの職場大会代表者に対し、無
許可集会の解散命令を発すると共に職場大会参加者全員に対し就業命令を発した。
(四) 近陸支部及びさん下各分会の本件ストライキの実施状況
近陸支部及びさん下各分会は、当局の度重なる警告にもかかわらず、昭和四四年一
一月一三日次の職場において勤務時間にくい込む職場大会を実施した。
(1) 和歌山分会は、和歌山県陸運事務所宿直室前の中庭において、午前八時三
〇分頃から勤務時間に約一五分くい込む職場大会を実施し、組合員約一六名が参加
し、その間職務を放棄した。
(2) 奈良分会は、奈良県陸運事務所宿直室において、午前八時二十五分頃から
勤務時間に約二十分くい込む職場大会を実施し、組合員約一七名が参加し、その間
職務を放棄した。
(3) 兵庫分会(本所)は、兵庫県陸運事務所玄関前横庭において、午前八時二
〇分頃から勤務時間に約一二分くい込む職場大会を実施し、組合員約四六名が参加
し、その間職務を放棄した。
(4) 兵庫分会(姫路支所)は、兵庫県陸運事務所姫路支所構内入口横の空地に
おいて、午前八時三三分頃から勤務時間に約一七分くい込む職場大会を実施し、組
合員約一五名が参加し、その間職務を放棄した。
(5) 京都分会は、京都府陸運事務所玄関前広場において、午前八時二〇分頃か
ら勤務時間に約一九分くい込む職場大会を実施し、組合員約三三名が参加し、その
間職務を放棄した。
(6) 大阪分会(本所)は、大阪府陸運事務所玄関前広場において、午前八時二
〇分頃から勤務時間に約二〇分くい込む職場大会を実施し、組合員約七五名が参加
し、その間職務を放棄した。
(7) 本局分会は、大阪陸運局自動車部事務室において、午前八時四五分頃から
勤務時間に約一二分くい込む職場大会を実施し、組合員約七五名が参加し、その間
職務を放棄した。
3 処分理由たる原告らの所為
(一) 原告A
原告Aは、本件ストライキ当時全運輸近陸支部和歌山分会分会長の地位にあつたと
ころ、右分会が昭和四四年一一月一三日和歌山県陸運事務所宿直室前の中庭におい
て、給与に関する人事院勧告の完全実施などの要求貫徹を目的として行なつた勤務
時間にくい込む職場大会に就業命令を無視して参加し、このため当日の勤務時間
中、午前八時三〇分から同四五分までの約一五分間にわたり職務を放棄し、その際
分会長としての「あいさつ」を行い主たる役割を果した。
(7) 原告B
原告Bは、本件ストライキ当時全運輸近陸支部奈良分会分会長の地位にあつたとこ
ろ、右分会が右同日奈良県陸運事務所宿直室において、右要求貫徹を目的として行
なつた勤務時間にくい込む職場大会に就業命令を無視して参加し、このため当日の
勤務時間中午前八時三〇分から同五〇分までの約二〇分間にわたり職務を放棄し、
その際分会長として「所長交渉の経過報告」を行い主たる役割を果した。
(三) 原告C
原告Cは、本件ストライキ当時全運輸近陸支部兵庫分会副分会長の地位にあつたと
ころ、右分会が右同日午前八時三三分から同五〇分までの約一七分間にわたり兵庫
県陸運事務所姫路支所構内人口横の広場において、右要求貫徹を目的として行なつ
た勤務時間にくい込む職場大会に参加し、その際副分会長として「所長交渉の経過
報告及び決議文の朗読」を行い主たる役割を果した。
(四) 原告D
原告Dは、本件ストライキ当時全運輸近陸支部兵庫分会分会長の地位にあつたとこ
ろ、右分会が右同日兵庫県陸運事務所庁舎玄関前横において、右要求貫徹を目的と
して行なつた勤務時間にくい込む職場大会に就業命令を無視して参加し、このため
当日の勤務時間中午前八時三〇分から同四二分までの約一二分間にわたり職務を放
棄し、その際分会長として「あいさつ及び職場大会の意義」について演説を行い主
たる役割を果した。
(五) 原告E
原告Eは、本件ストライキ当時全運輸近陸支部京都分会分会長の地位にあつたとこ
ろ、右分会が右同日京都府陸運事務所庁舎玄関前広場において、右要求貫徹を目的
として行なつた勤務時間にくい込む職場大会に就業命令を無視して参加し、このた
め当日の勤務時間中午前八時三〇分から同四九分までの約一九分間にわたり職務を
放棄し、その際分会長としてがんばろう三唱の音頭とりを行い主たる役割を果し
た。
(六) 原告F
原告Fは、本件ストライキ当時全運輸近陸支部大阪分会分会長の地位にあつたとこ
ろ、右分会が右同日大阪府陸運事務所庁舎玄関前広場において、右要求貫徹を目的
として行なつた勤務時間にくい込む職場大会に就業命令を無視して参加し、このた
め当日の勤務時間中午前八時三〇分から同五〇分までの約二〇分間にわたり職務を
放棄し、その際分会長として「あいさつ及び人事院勧告関係の報告」を行い主たる
役割を果した。
(七) 原告G
原告Gは、本件ストライキ当時全運輸近陸支部支部長の地位にあつたところ、右支
部本局分会が右同日大阪陸運局自動車部事務室において、右要求貫徹を目的として
行なつた勤務時間にくい込む職場大会に就業命令を無視して参加し、このため当日
の勤務時間中午前九時五分から同一七分までの約一二分間にわたり職務を放棄し、
その際支部長として「あいさつ及び人事院勧告関係の報告」を行い主たる役割を果
した。
4 適条
原告らの各行為は、組合役員として他の者と共に勤務時間にくい込む各職場大会に
参加した点において国公法九八条二項前段所定の争議行為に該当し、右大会におい
て組合役員として参加者に対し、あいさつ、経過報告、決議の朗読、演説、がんば
ろう三唱の音頭とりなどを行なつた点において同法九八条二項後段所定の「そその
かし」、「あおり」行為に該当するので、同法条項に違反し、同法八二条一号に該
当する。そして、原告らは、事前に上司から勤務時間にくい込む職場大会は明らか
に違法であるから参加しないよう警告されたにもかかわらず、右各行為を行なつた
ことは情状重いものである。
よつて、被告局長は、国公法八二条一号により原告らに対し本件各処分をしたので
ある。
四 抗弁に対する認否等
1 抗弁1は認める。
2 同2は認める。
3 (一)同3(一)のうち、就業命令を無視したとの点は否認し、その余は認め
る。就業命令は発せられていなかつた。
(二) 同3(二)のうち、分会長として「所長交渉の経過報告」を行なつたとの
点は否認し、その余は認める。
(三) 同3(三)ないし(七)は認める。
4 同4は争う。
5 本件ストライキの背景と経緯
(一) 国公共闘の組織と運営
国公共闘は、本件当時、国家公務員労働者(以下、国公労働者という。)で組織さ
れる各省庁一七の労働組合とこれに準ずる三つの労働組合がオブザーバーとして加
盟する一四万人の組織人員をもつ共闘組織の労働組合である。
その機関としては、各加盟組合から選出される評議員と幹事会で構成される決議機
関としての評議員会、拡大評議員会によつて選出される議長以下の幹事で構成され
る執行機関としての幹事会がある。
運営は、各機関とも原則として万場一致で決定されることになつており、一単組で
も反対があれば討議が継続され、すべての加盟組合が賛成はしないまでも反対だけ
はしないところまでの意思統一をはかるよう運営されている。決定された事項は各
組合の責任のもとに実施に移されるが、その際各組合の条件に応じて具体化され、
評議員会で決定された事項に反する行動をとつてはならないことが確認されてい
る。
(二) 本件職場大会に向けての国公共闘の取組み
国公共闘は、昭和四四年二月二五日から同月二七日までの間第一二回全国活動者会
議を、同月二六日臨時拡大評議員会を開催し、昭和四四年の賃金闘争方針として
「国公労働者もストライキで結集できる態勢をきずきあげてゆく第一歩をふみだ
す」ことなどを決定し、同年五月二七日第九回評議員会を開催し、当面の統一賃金
闘争方針を決定したが、その中で先の臨時拡大評議員会の確認を具体化し、「国公
共闘は、主体的条件と客観的条件をふまえ、政府が要求を入れない場合は、秋の統
一行動として実力行使を配置してたたかいます。」と決定した。
国公共闘は、同年三月二二日政府に提出した「一九六九年国公統一賃金要求」の実
現を目ざして署名運動などの方法を駆使して政府、人事院と交渉を重ねていたが、
同年七月、政府は人事院勧告が提出される前から、春闘相場が予想より上回つてい
るので勧告の完全実施は財政上困難である旨ほのめかした。これに対応し、国公共
闘は、同年七月一〇、一一日の両日、第一一回評議員会を開催し、人事院勧告前の
闘争を強化する方針と共に人事院勧告後の闘争の具体的戦術について「早朝から始
業時より時間内にくい込む職場大会をする。その時間は二九分以内とする。その時
間をいくらにするかの決定は八月勧告後の評議員会で行い、大衆討議のうえで九月
二〇日頃の定期拡大評議員会で最終決定する。」ことを決定し、各加盟組合が七月
以降開かれる定期大会で右方針を十分討議する手だてを講ずることを確認した。
人事院は、同年八月一五日、国家公務員の給与について一〇・二パーセントの五月
からの引上げ勧告を政府に行なつたが、国公労働者にとつて右勧告は、まことに不
満なものであり、国公労働者の生活を改善するなどということはとうていできない
ものであつた。
国公共闘は、右勧告直後の八月一七、一八日の両日、第一二回評議員会を開催し、
「当面の統一賃金要求案」を決定すると共に賃金要求と実力行使などについて全国
公労働者の討議を組織し、意見を求めるためのアンケートを行うこと及び実力行使
は、一〇月中旬以降の公務員共闘によつて決定される日時とし、評議員会の決定に
基づき各単組が指令して決行することなどを決定した。
公務員共闘の幹事会は、同年八月一九日及び九月五日、「第一波ストライキを総評
最大の統一行動日である一一月一三日とし、結着がつかなければ第二波を臨時国会
段階で実施する」との方針のもとに、重点要求を、(1)五月からの賃上げ実施、
(2)地方公務員、地方公営企業職員の賃上げ財源確保、(3)最低保障四〇〇〇
円、(4)期末手当の〇・二か月分増額と決め、一一月一三日のストライキは二時
間を目標とすることを決定した。
国公共闘は、実力行使の方針についてアンケート活動を中心にさまざまな方法で職
場討議を深め、一票投票による闘争態勢の確立に努めつつ、九月三日に行われた第
一四回評議員会で人事院勧告後の「当面の統一賃金要求」を決定し、同月八日これ
を政府に提出した。
国公共闘は、公務員共闘の決定と政府、各省との交渉状況をふまえて、同年九月二
二日から二四日までの間第一三回全国活動者会議を、同月二三日臨時拡大評議員会
を開催し、「当面の統一賃金要求」を最終的に確認すると共に、当面の政府への闘
争を強化するための具体策として、所属長交渉、上申闘争の強化、組合員一人一枚
の要求葉書の実施、各職場での実力行使決議の実施、一〇月七日に統一行動として
の時間外職場集会の実施、全国動員による中央決起集会と各省交渉などを行うこと
を決め、既に決定されていた秋の実力行使については、「政府が国公労働者の賃金
要求をいれず誠意を示さない場合は、公務員労働者二〇〇万人と固く団結し、総評
の統一行動日に当面の統一賃金要求実現のために実力行使を実施します。
要求の前進、わけても実施時期の解決がみられない場合は、臨時国会段階でさらに
全国統一行動(実力行使をも含む)を実施する。」との基本態度を確認し、
「(1)当面の統一賃金要求解決をたたかう実力行使の実施日は、一一月一三日と
する。(2)戦術は早朝から職場大会を開き、『始業時より二九分以内の勤務時間
にくいこむ職場大会』とする。(3)一一月一二日朝から一一月一三日早朝の実力
行使終了時まで全員がリボンまたはプレート行動を実施する。」という内容を決定
し、実力行使体制確立を目ざす活動として、「実力行使参加表明を含む一票投票」
と「実力行使参加の決意表明署名」を重視して取組むことも併せて確認された。そ
して、同年一〇月一六日に行われた一九七〇年度第一回評議員会で確認された内容
に基づいて、同月二三日公務員共闘がスト宣言集会において「ストライキ宣言」を
発したのと同時に、内外に「闘争宣言」を発表した。政府は、公務員労働者が右の
ようにストライキ宣言を発して大規模な統一闘争を実施することを明らかにした段
階においても、人事院勧告に対する態度を決定せず、国公共闘の右賃金要求に対し
ても誠意を示そうとしなかつた。そして、同年一一月一一日、公務員賃金について
「俸給表などは人事院勧告の内容のままとし、実施時期については六月とするが夏
期一時金へのはね返り抜き」という閣議決定を行なつた。右決定は、基本的には国
公労働者の切実な要求と深刻な生活実態に目を向けず、ストライキ権はく奪の「代
償措置」として作られた人事院勧告制度の建前さえ踏みにじる不当なものであり、
加えて夏期一時金へのはね返り分を除外するという点は全く承服できないものであ
つた。
国公共闘は、直ちに第二回評議員会を開いて、右政府の不当な態度に抗議するなど
の声明を発し、一一・一三統一行動を既定方針どおり実施することを決定した。
このように、国公共闘の九年ぶりの統一実力行使は、二月から九か月近くにわたる
大衆討議と機関討議を経て、最終的には一票投票など民主的方法によつて組合員の
総意を結集し、一方、政府交渉の進展状況をも十分考慮に入れながら実施されるに
至つたものである。
(三) 全運輸における本件職場大会に至る経過と状況
全運輸は、昭和四四年八月三一日から三日間にわたつて開催した第八回大会におい
て、国公共闘の「当面する統一賃金闘争について」の方針提起をうけて、中央執行
委員会が提案した勤務時間内くい込み職場大会を中心とする秋の賃金確定期に向け
ての闘争方針を右提案どおり決定した。
そして、第八回大会以降、第一三回国公全国活動者会議には全支部から一名以上の
代表者が参加すると共に、これに引続いて開催した支部代表者会議において具体的
な取組みについての意思統一をはかつたのを初めとして、右闘争に向けての取組み
はすべての職場で進められた。
同年九月二三日、国公臨時拡大評議員会で当面の統一要求が決められ、実力行使行
動日が一一月一三日と決められるに及んで各職場における闘争組織固めが急速に強
められ、支部、分会では賃金や権利、とりわけ四・二判決(最高裁昭和四四年四月
二日大法廷判決)の学習会が組織され、職場討論会、階層別懇談会、所属長への要
求上申行動、ビラ貼り、ビラ配りなどが本件職場大会当日まで展開された。
同年一〇月一日、第八回大会決定に基づいて設置した中央闘争委員会の第一回会議
が開催され、実力行使戦術をとる職場の範囲や一票投票の内容、実施方法につい
て、より具体的に決定すると共に一票投票の位置づけを明確にした。ちなみに、中
央闘争委員会は、第八回大会での決議により、闘争の指令・収拾、犠牲者の救援、
闘争の指導など一一・一三闘争に関する一切の権限をもつものとして設置されたも
のであり、中央執行委員会全員によつてなる常任中央闘争委員と在京六支部から各
一名、各支部協議会からそれぞれ一名の割で選出された非常任中央闘争委員によつ
て構成され、当時の中央執行委員長であつたHが中央闘争委員長の、中央執行副委
員長であつたIが中央闘争副委員長の、書記長であつたJが事務局の任にそれぞれ
当つていた。
そして、同年一〇月二〇日から二五日までの間全国において一票投票を行なつた
が、その結果は七一・六パーセントという高率で実力行使闘争の批准が行われた。
このような闘争批准を受けた中央闘争委員会は、同月二六日、第二回中央闘争委員
会をもち、翌日から開催する中央委員会に向けて闘争方針の最後決定に当つた。第
九回中央委員会は、「国公の当面の統一賃金要求をかちとるため、総評・公務員共
闘、国公共闘の統一闘争に『早朝から勤務時間に二九分くい込む実力行使』で参加
する」との方針を満場一致で決定した。
全運輸は、本部段階において、同年九月一七日のK人事課長交渉、同月一九日のL
運輸大臣との交渉、同年一〇月二五日のM事務次官との交渉をそれぞれもち、統一
賃金要求を中心とした要求書を提出して要求実現を求めた。右交渉において、L運
輸大臣は、組合員の要求の正当なことを認め、これが実現しないときには実力行使
を行うとの申し入れに対しても否定し得ない状況であつた。
新聞論調も「人事院勧告実施時期の完全実施」については人事院勧告の尊重を筆を
そろえて求めていた。
しかるに、政府は同年一一月一一日前記のごとく不当な閣議決定を行なつたのであ
り、これに併せ、職場において「職員の皆さんへ」と題する書面を理由も説明もな
いまま配り、又、「警告」なるものを支部、分会機関の長に手交しようとした。
しかし、右書面の配付などにかかわらず、ほとんどの組合員は同月一二日までに実
力行使参加決意署名を行なつていた。
全運輸は、右閣議決定当日開催された第三回中央闘争委員会において、実力行使突
入を決定すると共に、実力行使戦術を行うとしていた二〇支部について闘争組織状
況を点検し、最終的に一〇支部突入を決めたのである。そして、突入指令電報は、
国公各単組の動向をみて常任中央闘争委員会が打電することとし、同月一二日午後
二時過ぎ、右委員会は、全運輸指令第三号をもつて実力行使突入指令を近陸支部を
はじめ一〇支部に打電した。ただし、くい込み時間については、国公他単組との調
整の上、一三日午前零時頃それぞれの支部に電話で指令した。
(四) 近陸支部における本件職場大会実施の経過とその状況
(1) 近陸支部の組織は被告ら主張のとおりであるが、その機関は定期大会及び
臨時大会が最高の議決機関であり、評議員会が中間の議決機関として設置され、日
常の組合活動の運営を執行する機関として、支部長、副支部長、書記長のいわゆる
三役と執行委員とで構成される支部執行部がある。本件職場大会当時の執行部は、
支部長が原告G、副支部長がN、書記長がOであり、他に執行委員六名で構成され
ていた。
(2) 昭和四四年当時の陸運事務所の職場では、低賃金と物価上昇で生活が年毎
に苦しくなつているという不満が強く、それと同時に交通機関の急速な発達に伴な
う行政需要の増加で過度の労働強化が進行してきていた。このような状況下におい
て、近陸支部では人事院勧告後直ちに国公共闘の方針決定を受けて全運輸の「勧告
後の要求とたたかい方に関するアンケート」を実施したが、その結果では、アンケ
ートを実施した組合員数三〇二人のうち重点要求についての賛成が二七六名、反対
七名、二九分以内の時間内にくい込む職場大会で闘うという方針については、賛成
が一八八名、反対五八名といいう圧倒的な支持を組合員が表明した。そして、全運
輸第八回大会後、近陸支部は、同年九月一九日に第二一回定期大会を開き、新年度
の運動方針をはじめとする全運輸の方針を同支部で具体化した諸方針、すなわち、
秋の賃金闘争を二九分以内の実力行使で闘つていくことなどが全員一致で承認、可
決された。
(3) 同支部においては、近陸支部第二一回定期大会後、決定された要求と闘争
方針についてより深い意思統一が得られるよう学習会、活動者会議、討論集会など
を実施し、又、給与関係閣僚協議会メンバーの各閣僚あての要請葉書活動を行つ
た。
一方、近陸支部執行部は同年一〇月九日被告局長Pに対し、賃上げは五月から実施
することをはじめとした全運輸の統一要求書を提出したが、これに対し、同局長は
「趣旨はよくわかつた。私も陸運局を代表する責任として何か積極的に努力した
い」「私自身も特に人勧完全実施については正当性を認めるし、早期に解決しなけ
ればならない」と回答し、運輸本省へ上申する旨約束した。又、各分会においても
前後して対所属陸運事務所長交渉を行い、それぞれの所長に右同旨の上申を約束さ
せた。
(4) 近陸支部は、同年一〇月二日付全運輸指令第一号によつて、同月二三日か
ら二五日にかけて全分会において一票投票を実施したが、その結果は、投票有権者
組合員数に対する賛成意思を投票した組合員の比率(批准率)は七五・二パーセン
トであり、投票した組合員数に対する賛成率は七九・一パーセントであり、しか
も、全分会において批准された。
そして、同年一一月七日から一〇日にかけて、同年一〇月二六日に開催された第二
回中央闘争委員会の決定に基づく同月二九日付全運輸指令第二号により、一一・一
三実力行使への参加決意署名を全組合員に対し分会毎で一斉に実施した。
その結果は、長期欠勤者三名を除く組合員総数三八六名中三六二名が署名をしたの
であり、右実力行使に対しての支持と決意を表明したのである。
このような状況下において、大阪陸運局は、同年一一月八日から一二日かけて近陸
支部支部長をはじめ全分会の分会長に対し、「警告」なるものを発し、又、組合員
個々人に対しても本件職場大会に参加しないようにとの運輸事務次官名の「職員の
みなさんへ」なる文書を配布し、もつて近陸支部の組織的団結に妨害を加え、混乱
をひき起すごとき策謀を加えてきた。しかし、近陸支部及びさん下各分会では、右
「警告」及び「職員のみなさんへ」を突返し、団結と連帯を一層強めていつた。
以上の経過を経て、近陸支部執行部は、同月一二日、常任中央闘争委員会から「一
一・一三は早朝時間内くい込みの大会の実力行使を実施せよ。くい込み時間につい
ては追つて電話にて指令する」との電報による全運輸指令第三号を受け、さらに、
同夜半「本局分会はくい込み時間一五分、その他の分会は二〇分」との電話指令を
受け、右各指令を各分会に伝達したのである。
(5) 和歌山分会における本件職場大会は、午前八時二五分から同四五分までの
間一六名の組合員が参加し、庁舎宿直室横の中庭において行われた。右大会は、近
陸支部Q執行委員の司会で進められ、原告A分会長が一、二分間あいさつをし、続
いてR副分会長が全運輸本部のメツセージを、S書記長が和歌山県国公のメツセー
ジを朗読した。続いて祝電が三通紹介され、来賓の共産党和歌山地区委員会代表の
あいさつを受けた後、Qが宿日直問題についてアンケートの報告を行い、その後、
R副分会長が決議文の朗読、S書記長が要求項目の確認を提案し全員一致で確認さ
れ、最後に、Qが閉会のあいさつをし右大会を終了した。
以上で明らかなように、右大会のスケジユールはあらかじめ分会執行委員で相談し
決められたもので、そのほとんどの時間は、共産党代表のあいさつで終始してい
た。
右大会における原告Aの行為は、分会長としてわずか一、二分のあいつさをしたに
とどまり、後は司会者であるQの隣に終始位置していたものである。しかも、その
あいさつは、午前八時二七分までに終つているのである。本件処分において被告局
長が「主たる役割を果した」と主張するのは余りにも理由がない。
又、右大会当時の出勤時間をみると、所長が午前九時五分から一〇分頃、一般職員
が九時頃に出勤し就業していたが、右大会は、午前八時四五分に解散しているので
あるから、通常の日よりも早く業務開始ができ得る出勤状況にあつたのであり、何
ら業務阻害はなかつた。
(6) 奈良分会における本件職場大会は、午前八時二〇分頃から同五〇分までの
間、全員一七名の組合員が参加して奈良県陸運事務所宿直室において行われた。大
会は、T書記長の司会で始まり、まず原告B分会長が全運輸本部及び近陸支部長の
メツセージと祝電を朗読し、その後同二五分頃からN中央闘争委員(近陸支部副支
部長)が一一・一三闘争の意義について述べ、ついで同四〇分から同四七分頃まで
U副分会長が要求諸項目の正当性とそれについての所長交渉の経過を報告し、その
後二、三の組合員から年末対策についての報告がなされ、同五〇分T書記長が閉会
を宣言して解散した。
右大会は、ごく短時間、整然と実施されたのであり、その進め方や原告B、N、
U、Tの役割については、前日に打合わせがなされた結果に基づいて行われたもの
である。
分会は、右大会に右宿直室を使用することについて、一一月一〇日及び一二日の所
長交渉において通告していたが、これに対し所長から使用を認めないなどの意向は
全く示されず、分会も使用許可願を提出することもなく、当然に使用を承認されて
いた。
又、管理者は、右大会を解散させるなどの積極的な対策を特にとらなかつたが、こ
れは所長らが組合の要求の正当性を肯認し、不当な閣議決定に対して組合が抗議と
要求実現のために職場大会を実施することもやむを得ないと考えていたことによる
ものである。もつとも、右大会の途中、午前八時四二、三分頃、U副分会長が経過
報告をしているときに、V輸送課長が入つてきて、ほんの一、二秒の間、「B君こ
の集会は違法だからやめて下さい」と一言述べてにこつと笑つて出て行つた事実が
ある。しかし、V課長の右行為は、前日の分会との交渉において、所長が上局から
三、四回位警告せよと言われているものを一回だけにとどめるという、分会との話
合いのとおり行われたものであり、それも何ら強い積極的なものではなく、上局か
ら言われたことをやむなく形式的に恰好を付けたという程度にとどまるものであつ
た。
右大会における原告Bの行動は、右のように午前八時三〇分までの間に、激励のメ
ツセージと電報を朗読したのみである。にもかかわらず、被告局長は、同原告が経
過報告をなし、右大会において「主たる役割を果した」という理由によつて本件処
分をなしたのであつて、事実の歪曲、誤認も甚だしいものである。
又、奈良県陸運事務所において、職員は、通常の場合午前八時四五分頃から同九時
一五分頃にかけて出勤してくる状況であり、業務開始時間も受付が午前九時から、
車検が同九時三〇分からと一般に告示されており、従つて、午前九時までは来所者
もなく、平常業務も開始されることがなかつた。そして、右大会当日も、職員は特
に午前八時三〇分から出勤しなければならない業務上の必要や特段の事情もなかつ
たのであり、右大会は、平常の出勤及び業務実態からみて業務阻害を惹起するおそ
れさえあり得ないものであつた。
(7) 兵庫分会(本所)における本件職場大会は、午前八時二〇分から同四七分
までの間、兵庫県陸運事務所玄関前において、四七名の分会員が参加して開催され
た。右大会は、開会宣言に始まり、分会長あいさつ、経過報告、激励電報、メツセ
ージ紹介、闘争宣言朗読、がんばろう三唱、労働歌合唱の順序で進行して閉会した
が、整然と秩序ある形で行われた。ただ、通常の職場大会と異なつたところは、右
大会中に三度にわたつて当局側から妨害がなされたということである。すなわち、
W総務課長が午前八時二五分頃、あいさつを行なつていた分会長に近づき、「この
大会は無許可であるからすぐ解散せよ。」とか、同三六分頃にも、分会長に対し
「時間内にくい込む大会は違法であるからすぐ解散しなさい。」とか申入れ、さら
には、同四〇分頃、同人自らがプラカードを持つて分会員の中を歩き回つたことで
ある。
原告Dは、右大会において同二二分頃から二九分までの間あいさつを行なつたが、
これは分会長として当然の正当な行為であつて、これをもつて他の者と区別し、こ
とさら「主たる役割を果した」とは目し得ない。
又、右大会は、何ら業務の正常な運営を阻害していない。
すなわち、通常兵庫県陸運事務所の職員は、午前九時から同一五分の間に出勤し
(課長の中には同三〇分頃に出勤する者もあつた)、就業していた。登録事務の受
付は午前九時であり、車検の受付は同三〇分から開始されており、職員の右出勤に
よりその業務が正常に運営されていた。
ところが、当局は、右大会の前日、職員に対し「明日は八時半出勤である。」旨伝
えているが、通常の出勤時間を当日に限つてことさら八時三〇分とする業務上の必
要性は全く存在しなかつた。
さらに、右大会に使用した場所は、右時刻頃当局において使用する必要性がなかつ
たし、従来の例からいつてその使用を不許可とされたこともなかつたのであり、分
会長及び分会員が右のような無届使用を理由とする解散命令や、何ら業務上の必要
がない出勤時刻の変更に基づいてなされた就業命令に従うことなく、右大会を続行
しても何らその責を問われるいわれはない。かえつて、分会は、当局が何らその措
置をとつていないのに保安要員を置いて、右大会中に業務が発生した場合に備えて
いたのである。
(8) 兵庫分会(姫路支所)における本件職場大会は、午前八時三五分頃から同
五〇分頃までの間、分会員一五名が参加して同支所構内入口横の空地で行われた。
原告Cは、当時本所勤務であつたが、所属長の承認を受けて年次有給休暇をとつた
うえ、副分会長として右大会に参加していた。
右大会は、開会宣言に始まり、闘争経過報告、メツセージ朗読、大会のまとめの後
団結がんばろう三唱、労働歌合唱で終り、極めて整然とした秩序あるものであつ
た。
ところが、当局は、右大会中の午前八時三五分及び同四〇分頃、X支所長が「時間
内にくい込む集会は違法であるから直ちに解散せよ」とY副分会長に告げ、同四九
分頃にも参加者に対し、「違法だから早く解散せよ」などと言つて大会の妨害行為
をした。
原告Cは、午前八時三〇分から同四六分頃までの間、前日出席した所長交渉の経過
報告や決議文の朗読を行なつたが、これは副分会長として当然の行為である。
ところで、右大会は、何ら業務の正常な運営を阻害していない。すなわち、平素、
同支所の職員は九時一〇分頃出勤し執務していたが、登録・検査申請者は同二〇分
頃から来所し、検査業務は同三〇分から開始されていた。
右大会は、午前八時五〇分頃終了し、その後参加者は直ちに執務しており、むしろ
平素よりも早い時間から執務しているのである。
(9) 京都分会における本件職場大会は、午前八時二〇分から同四八分頃までの
間、京都府陸運事務所玄関前広場において、出張、休暇及び長欠者六名並びに不参
加者一名を除いた三三名の組合員が参加して行われた。右大会の進行は、前日の分
会執行委員会で決めたところに従い、午前八時二〇分にZ執行委員が開会のあいさ
つを行なつた後、基調報告をP1書記長、決議文朗読をZが、要求スローガン確認
をP2副分会長がそれぞれ行い、来賓の共産党あいさつ、全員で労働歌合唱と進
み、最後に原告E分会長が団結がんばろう三唱の音頭をとり同四八分頃閉会とな
り、終始整然とした職場大会が進行した。
当局は、いつになく右大会の進行に介入してきた。すなわち、職場大会開会の直
前、P3総務課長が原告E分会長のそばに近づき、「解散命令」なるものを渡そう
としたが、同原告は受け取らなかつた。その後、午前八時三六分頃、P3総務課長
がプラカードを持つて庁舎軒下の回廊を歩いたが、原告Eをはじめ分会役員は全員
回廊に背を向け組合員と相対していたのでその文面を知るよしもなかつた。その後
再びP3総務課長は、原告E分会長のそばに歩寄り、「就業命令」なるものを持つ
て行つたがこれ又受け取つてはいない。
以上のように、当局のこれらの行為は、積極的に右大会を解散させるというよりも
形式的に「解散命令」「就業命令」を発し、処分の理由をつくり上げることを企図
したと判断し得るのである。
右大会の開催によつて、何ら業務に支障をきたしておらず、又、右大会の解散や就
業させなければならない業務上の必要性は全くなかつた。
(10) 大阪分会(本所)における本件職場大会は、午前八時二〇分から同四五
分頃までの間、大阪府陸運事務所正面玄関前広場で七五名の組合員参加のもとに開
催された。右大会は、P4執行委員の開会宣言に始まり、議長団選出、分会長あい
さつ、経過報告、決意表明、大会スローガン朗読、閉会宣言、がんばろう三唱の順
に行われ、従来の職場大会と同じような形式で極めて整然とした秩序ある集会であ
つた。
ただ、右大会中に当時の次長であるP5が、八時一二五分頃経過報告を行なつてい
た際にプラカードらしきものを持つて集会の回りをぶつぶついいながら歩いたこと
がこれまでの集会とは異つた点である。
原告Fは、右大会において、午前八時二一分頃から同二六分頃までの間、わずか約
五分足らず分会長としてのあいさつを行なつたが、これは分会長として当然の正当
な行為であつて、これをもつて何ら「主たる役割を果たした」とは目し得ない。
又、右大会は、何ら業務の正常な運営を阻害していない。しかも、管理者は通常業
務ではない出勤状況のチエツク(現認のためか)に追われ、業務に対処しようとす
る姿勢は全く見受けられなかつたのに、組合側は万一を慮つて保安要員すら配置し
ていたのである。
大阪府陸運事務所における本件当時の職員の通常の出勤状況は、午前八時五五分か
ら九時一〇分の間に出勤(所長は九時三〇分頃出勤)していた。業務の受付開始時
間は午前九時からとされていたが、九時三〇分頃にならないと来客がないのが通常
で、実質的な受付開始時間は九時三〇分頃であつたのである。右大会は午前八時四
五分頃には終了し執務できる態勢にあつたことからして、阻害が起らないことは明
々白々であつた。
しかるに、当局は、右大会の前日職員に対し、ことさらに「明日は八時半出勤であ
る」と伝えているが、通常の出勤時間を当日に限つて八時三〇分としなければなら
ない業務上の必要性は全く存在しなかつたのであり、「処分」の口実にするための
ものであつたことがこれまた明白である。又、職場大会の会場もこれまで組合で使
用していた場所であつたし、当日、この時刻に当局が必要としたことも全くなかつ
た。
以上の事実からして、業務上の必要性がないにもかかわらず、一方的な出勤時間の
変更によつて発せられたと称する「就業命令」に組合員が従う必要はないし、その
「命令」なるものに従わず職場大会を続行しても何らその責を問われるいわれはな
い。
そもそも、右のような「就業命令」なるものは、形だけのもので、実質的に合理的
な理由は全く、職務命令として正当性がないばかりか、むしろひとえに組合活動を
ことさらに妨害することのみ目的とした違法不当なものである。
(11) 本局分会における本件職場大会は、午前八時四五分から同九時二〇分ま
での間大阪陸運局自動車部事務室において、八二名の組合員が参加して行われた。
右大会は、P6書記長の司会で始まり、P7分会長挨拶、原告G支部長挨拶、メツ
セージ朗読、激励電報の紹介の後、P6書記長の閉会の挨拶で終つた。
その間、当局は、組合役員の了解を得て、総務課長と人事課長が一度ずつ局長命令
なるものを伝達したが、注意を向ける者もおらず、無視され、誰も席を立たず、同
室の他の管理職は、ただ傍観していただけであつた。当局のこのような態度は、極
めて形式的なもので、本気で集会の解散を求めるものではなかつた。
又、大阪陸運局において、平常職員が出勤してくるのは午前九時三〇分頃であり、
右大会程度の勤務離脱は諸種の慣行にも認められ、当日も何ら具体的な業務上の支
障はなかつた。
五 再抗弁
被告局長のなした本件各処分は、次のとおり違法であるから、取消されるべきであ
る。
1 国公法九八条二項は、憲法二八条に違反し、無効である。
(一) 争議権保障の根源的性格
従来、憲法二八条の保障する労働基本権は、労働者が労働条件の維持、改善によつ
てその生存を確保することを目的とする生存権的基本権であるとする考え方が支配
的であつた(最高裁昭和四一年一〇月二六日大法廷判決・刑集二〇巻八号九〇一頁
参照)が、右のような考え方に従うと、労働基本権は生存権確保の「手段」にすぎ
ないから「代償」をもつて「制約」という名の実は剥奪をも可能なのだとする極め
て歪曲した解釈を許す余地がある(最高裁昭和四八年四月二五日大法廷判決・刑集
二七巻四号五四七頁参照)。近時、右のような解釈に対し、憲法二八条を専ら生存
権確保のための権利の保障とみるのではなく、さらに自由権的、根源的な性格の権
利であることを強調する見解が有力となり、今日では争議権を右のような両側面を
併せもつ根源的性格の権利として全人権秩序のなかに位置付けようとする考え方が
定着してきたとみられるのである。
(二) 国公法九八条二項の制定経過
昭和二一年三月一日から施行された旧労働組合法(昭和二〇年一二月二二日法律五
一号)は、その三条において「本法ニ於テ労働者トハ職業ノ種類ヲ間ハズ賃金、給
料其ノ他之ニ準ズル収入ニ依り生活スルモノヲ謂フ」と定義し、法適用の対象であ
る労働者について、官吏と私企業労働者の区別を全く認めないことを宣言し、その
四条一項において「警察官吏、消防職員及監獄ニ於テ勤務スル者ハ労働組合ヲ結成
シ又ハ労働組合ニ加入スルコトヲ得ズ」と規定され、同条二項において「前項ニ規
定スルモノノ外、官吏、待遇官吏及公吏其ノ他国又ハ公共団体ニ使用セラルル者ニ
関シテハ本法ノ適用ニ付命令ヲ以テ別段ノ定ヲ為スコトヲ得、但シ労働組合ノ結成
及之ニ加入スルコトノ禁止又ハ制限ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ」と規定していたもの
の、実際にはそのような命令は制定されず、官公吏も団結して次々と争議を行うこ
とができた。なお、右の官公吏について「命令ヲ以テ別段ノ定ヲ為ス」との意味内
容は、争議行為の全面禁止ではなく、今日でいうところの「条件附付与」を意図し
ていたものであることはその立法者の説明により明らかである(昭和二〇年一二月
一六日貴族院労組法案特別委員会第二回)。
昭和二一年一〇月一三日から施行された労働関係調整法(昭和二一年九月二七日法
律二五号。以下、労調法という。)は、昭和二四年法律一七五号によつて削除され
た旧三八条において「警察官吏、消防職員、監獄において勤務する者その他国又は
公共団体の行政又は司法の事務に従事する官吏その他の者は、争議行為をなすこと
はできない」と規定し、現業以外の公務員の争議行為を禁止したが、禁止違反者に
対しては「その違反行為について責任のある使用者若しくはその団体、労働者の団
体又はその他の者若しくはその団体は、これを一万円以下の罰金に処する」(旧三
九条一項)としつつ、右の罪は「労働委員会の請求を待つてこれを論ずる」(旧四
二条)こととした。従つて、右段階においては、なお、その制限は集団的労働関係
を承認したうえでの行政的規制の範囲にとどまつていたのである。
次いで、昭和二一年一一月三日に公布され、昭和二二年五月三日から施行された日
本国憲法は、労働基本権を憲法上の権利として保障し、同年一〇月二一日に公布さ
れ、附則二条を除いて昭和二三年七月一日から施行された国公法(昭和二二年一〇
月二一日法律一二〇号)も、公務員の労働基本権について何ら制限を加えていなか
つた。
ところがアメリカの対日占領政策の転換を根本原因とする労働法制の改悪が行われ
ることとなり、昭和二三年七月三一日から施行された政令二〇一号(昭和二三年七
月二二日附内閣総理大臣宛連合国最高司令官書簡に基く臨時措置に関する政令)に
よつて、公務員は、国家公務員、地方公務員を通じてその現業・非現業を問わず従
前保有していた協約締結を含むいわば完全な団体交渉権を否定され、業務の運営能
率を阻害する一切の争議行為を禁止され、しかも、禁止違反の行為をした者に対し
ては懲役刑を含む罰則が適用されることになつたのである。
そして、右政令の趣旨にそい昭和二三年一二月三日法律二二二号により全面改正の
うえ施行された国公法は、従前二条三項で特別職としていた現業職員を一般職と
し、これに国公法を適用するものとしたうえ、九八条において「職員は、政府が代
表する使用者としての公衆に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は
政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このよう
な違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはな
らない。」(五項)、「職員で同盟罷業その他前項の規定に違反する行為をした者
は、その行為の開始とともに、国に対し、法令に基いて保有する任命又は雇用上の
権利をもつて、対抗することができない。」(六項)(なお、昭和四〇年五月一八
日法律六九号により、五項は二項に、六項は三項にそれぞれ改正された。)と規定
し、一一〇条一項一七号において「何人たるを問わず第九八条第五項前段に規定す
る違法な行為の遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおり、又はこれらの行為を
企てた者」は三年以下の懲役又は一〇万円以下の罰金に処する旨規定し、又一〇八
条の五において団体協約の締結を目的とする団体交渉を禁じ、現在に至つている。
以上のように、現行国公法九八条二項は、占領軍の命令による管理法令たる政令二
〇一号をそのままに承継したものであり、まさに反憲法的な遺産なのである。
(三) 公務員の争議権の制約とその限度
(1) 判例によれば、勤労者の団結権、団体交渉権、争議権等の労働基本権は、
すべての勤労者に通じ、その生存権保障の理念に基づいて憲法二八条の保障すると
ころであるが、これらの権利であつても、もとより、何らの制約も許されない絶対
的なものではないのであつて、国民生活全体の利益の保障という見地からの制約を
当然の内在的制約として内包しているものと解釈しなければならない、として内在
的制約の観点から労働基本権と国民生活全体の利益・他の基本権との調整をなすこ
との必要性が指摘される。
しかしながら、争議権は、使用者の「業務の阻害」を実体とする権利である以上、
仮に、その使用者が国や地方自治体であろうとも、その業務が停滞し、損失を蒙る
ということは当然の前提であつて、そのこと自体をもつて争議権を否認することは
できない。問題は、その業務の停廃止によりどのような結果が生じ、いかなる権利
が侵害されるからなのかを具体的に検討しなければならないのである。
又、労働基本権は、「国民生活全体の利益」という表現によつて、内実は単なる大
衆の便益とか、迷惑にしかすぎない程度の損失と無原則的に比較衡量され制約され
てはならず、あくまでも憲法的価値観による権利の質の比較が前提とされねばなら
ないのであり、これが労働基本権の内在的制約を論ずる場合の憲法論上の要請であ
り、基本である。
(2) 制限の必要最小限度性
一般に諸々の憲法上の基本権が最大限の尊重を要求され、その制限が合理的な必要
最小限度のものでなければならないことは当然のことであるが、特に労働基本権に
ついては、それが他の市民的権利の修正、優越として生成し、承認されてきた歴史
的経過からしても、そして、その権利が人間の労働という精神上、肉体上の支配を
内容とするものにかかわるものであるだけに、人間の尊厳に深くかかわるという見
地からも、これと比較衡量される価値ある権利や利益、そしてその結果としての制
限がどのような原理に立たねばならぬかは右の様に一層厳密に考究されねばならな
いのである。すなわち、結論的にいえば、公務員の争議行為の制限と禁止について
は、公務員の争議権の行使がひき起す国民生活に及ぼす不利益、影響は、例えば予
告制度(労調法三六条)或いは調停制度の活用などによつて調整して対応すべきで
あるし、又、緊急例外的に公務員の争議権行使を部分的、一時的になりと禁止し得
る場合というのは、例えば、他人の生命身体の安全、健康に危険のある場合を典型
的な例とする、まさに労働基本権という根源的な基本権と同等か或いはこれに優越
するような法益との衝突を避けるためやむを得ない場合であつて、それ以外には争
議権の行使を制度的にも個別的にも否認し禁止することはできないのである。
(四) スト権承認の国際的動向
(1) ILOは、公務員ストという世界的傾向を背景としてようやく公務員の争
議権承認の方向に本格的な動きを始めたことを指摘し、特に一九七五年六月の理事
会において、一九七七年ILO総会の正式議題として公務員の労働基本権問題を取
上げることを決定し、一九七八年にはこれが条約、勧告化することが予想されてい
る。
(2) 労働基本権の基本的性格からして、その保障と規制についての国際的比較
が重視されるべきであるところ、イギリスにおいては一九七一年の「労使関係法」
及び「一九七四年法」によつて公務員のスト権が民間労働組合と同じ取扱いを受け
ることとなり、フランスにおいては一九五〇年七月のコンセイユ・デタの判決以来
原則的に公務員のストライキは合法とされており、イタリアにおいては一九四七年
共和国憲法四〇条により、又、一九七〇年の「労働者憲章」法により公務員を含む
労働者のストライキ権に強い保障が与えられ、ノルウエー、スエーデン、ベルギ
ー、オーストリアにおいては一九六〇年から七〇年代にかけて公務員のストライキ
権が承認されるという大きな傾向を示し、西ドイツにおいては官公労働者が官吏、
雇員、労務者という三つに区別され、法律で禁止されてはいないものの官吏のスト
ライキだけが違法とされてきたが、ごく最近では、右官吏についても争議権を現実
に承認する動きが強まつており、アメリカにおいても、一九六〇年代後半からバー
モント、ペンシルバニア、ハワイ、アラスカ、ミネソタ、オレゴン、モンタナの各
州などで次々に州公務員の争議権が承認され、カナダにおいては一九七六年に連邦
公務員にも争議権が承認された。
このような世界の状況をみるとき、近代工業国の中でわが国が全公務員のストライ
キを完全に禁止している点において異例の法制をしいている唯一の国であることが
明白である。
(五) 以上のような諸点を総合すると、職務、職種の差異区別を問わず、かつ争
議行為の形態、内容にも一切かかわりなく、一律全面的に争議行為を禁止する国公
法九八条二項は、憲法二八条に違反する無効なものであることは明らかである。
(六) さらに、最高裁判例を概観するに、同裁判所大法廷は、昭和四八年四月二
五日、全農林警職法事件判決において、改正前の国公法九八条五項等の合憲性に関
し、国家公務員の争議権の一律全面禁止規定とあおり行為等の処罰規定は、何らの
限定解釈を要せず合憲である旨判示したが、これは歴史の流れに逆行し、かつ、公
務員の労働基本権を全面一律に制限、禁止することの合憲性の理論的根拠とされて
いた「全体の奉仕者論」「公共の福祉論」を否定した最高裁昭和四一年一〇月二六
日判決(全逓中郵事件判決)、同昭和四四年四月二日判決(都教組事件判決)及び
右両判決に従う下級審の判例の流れに反するものであつた。そして、最高裁大法廷
は、右判決に続いて昭和五一年五月二一日、地方公務員の争議行為禁止等に関し
(岩教組学テ事件判決)、昭和五二年五月四日、三公社五現業の職員の争議行為禁
止に関し(名古屋中郵事件判決)いずれも合憲である旨判示し、異常な後退を示し
た。
右最高裁三判例の論拠は、要するに、公務員等の地位の特殊性と職務の公共性が争
議権制約原理の一つであること、公務員等の労働基本権は国民全体の共同利益の見
地からする制約を免れないこと、公務員等の勤務条件は法律、予算によつて決定さ
れるのであるから、政府に対し争議行為を行うことは的はずれであつて、財政民主
主議に表われている議会制民主主義に背馳すること、そのため、公務員等は、労使
による勤務条件の共同決定を内容とするような団体交渉権ひいては争議権を憲法上
当然には主張することができないことにある。
しかしながら、右論拠はいずれも理由がなく、特に、財政民主主義を理由とする争
議行為禁止の合憲性の裏付けは、統治規定としての財政民主主義の原則が、その沿
革からしても国民の人権保障規定を裏付け、それを伸長させる方向でこそ運用され
るという前提に立つものであつて、それが反対に人権保障を抑圧する論理として使
われるということは予想もされていないし、誤りである。
又、右最高裁三判例後の下級審裁判例をみても、右最高裁判例に必ずしも従わず、
前記全逓中郵事件判決を一つの画期とした前進的傾向に歯止めをかけ得ない状況に
なつていることからしても、右最高裁判例は先例としての価値をもたないものとい
わなければならない。
2 本件職場大会は国公法九八条二項で禁止された争議行為に該当しない。
(一) 本件職場大会は争議行為ではない。
争議行為の歴史をみるならば、争議行為は、当初市民法の原理そのものを否定する
ものとして厳しい国家の刑罰権の対象とされてきたが、それは争議行為の実体が単
に消極的な労務の集団的停止にとどまらず、使用者を労働市場一般から遮断するこ
とにより企業活動を停滞又は麻痺せしめるものであつたからである。それが争議権
として保障されたことは、歴史的に形成せられた争議行為の市民法秩序からの違法
性を排除することを最低限の要請とし、加えて刑罰からの解放、さらに、民事上の
免責、すなわち争議行為労働者の契約上及び使用者又は第三者に対する不法行為上
の免責を内容としていた。そして、わが国の憲法における争議権保障の理念として
は、労働者の自由権的側面のみならず労働者の社会的、経済的地位に即して憲法二
五条の生存権を実現せんとしたものである。
以上のような争議行為の歴史的実体とそれに対する権利としての保障確立の経緯を
みる限り、争議行為の内容には本質的に使用者・第三者の権利侵害、すなわち業務
阻害性を含まざるを得ない。
本件職場大会は、出勤簿整理時間(出勤猶予時間)に最大限二〇分くい込んで行わ
れたものであるが、前記のごとく、それによつていかなる業務阻害も生じていない
し、又そのおそれすら存在しないのであり、かつ、組合には当初から業務阻害の企
図・目的も存在しなかつたのであるから、そもそも争議行為といえないことは明ら
かであり、むしろ、人事院勧告実施の国会決議を無視した政府に対する組合のやむ
にやまれぬ抗議の意思を表示するための争議行為に至らない団結活動・組合活動で
ある。
(二) 国公法九八条二項が禁止している争議行為は、長時間かつ大規模な職場放
棄を行つたため、右業務に大混乱が生ずる場合であつて、本件職場大会はいずれも
右規定にいう争議行為に該当しない。すなわち、
(1) 本件職場大会は、前記のごとく、国公労働者の苦しい生活実態と劣悪な労
働条件の中で出された切実な賃上げ要求に基づいて、国公共闘、全運輸などの各機
関において十分討議を尽くしたうえ決定し、さらに、全組合員の意思を結集する徹
底した職場討議と一票投票、赤加決意署名などを行ない、組合員の圧倒的多数の賛
同を得て実施されたものである。
原告らを含む国公労働者が本件職場大会を行わざるを得なかつた理由は、政府が公
務員労働者にも憲法上保障された争議権を禁止しながら、その代償措置として講ぜ
られたとされる人事院勧告すら国会の度重なる附帯決議にもかかわらず、これを尊
重して完全に実施しようとしなかつたことにある。政府は、内容については人事勧
告どおりとしながらも、その実施時期について毎年五月実施の勧告に従わず、二か
月ないし五か月も遅らせ続けたのである。しかし、右実施時期が昭和三五年以来、
年と共に早まつてきたのは、国公労働者が団結して闘つてきたからにほかならな
い。
かくして、国公労働者は、人事院勧告にその望みを託し、その実施について拱手傍
観していても自らの要求は実現されないことを知り、右勧告作成前の段階からその
実施に至る段階まで、たえず団結し、闘うことが必要であることを実感した。
本件職場大会は、前記のごとく政府が人事院勧告の実施時期を六月一日(ただし、
六月の期末、勤勉手当へのはねかえりを除く。)とする旨の不当な閣議決定をなし
たため、これに抗議する意味をもつて実施されたものであり、右大会の目的である
人事院勧告の完全実施は誰がみても当然であり、正当であつた。
(2) 本件職場大会は、出勤簿整理時間(出勤猶予時間)内に、整然と、何らの
業務阻害を生じさせることもなく、かつ、従来の同種職場大会と差異のない態様に
おいて行われたものであつた。
出勤簿整理時間(その時間帯については被告らの後記主張のとおり)は、職員が正
規の出勤時刻より遅れて出勤しても出勤簿整理時間内であれば、遅刻その他の不利
益を受けず、又、実際大多数の職員が出勤簿整理時間終了まぎわに出勤し、あたか
も出勤簿整理時間終了時点が出勤時刻であるかのような外観を呈していること、出
勤簿整理時間内には窓口業務も開始されていないことなどの実態からみると、各官
署の長が勤務時間監理員に対してなした職務命令というにとどまらず、職員との関
係においても、この時間帯には特別の合理的な必要性がないかぎり、職員に対して
職務命令を発することができない時間であつて、特別の合理的な必要性がないかぎ
り、職員にとつて出勤簿整理時間内の勤務は免除されているものと解すべきであ
る。
本件各職場大会の開催中、当局から「解散命令」や「就業命令」なるものがプラカ
ード等の方法により発せられてはいるが、当局側に、右各命令を発しなければなら
ない特別の理由や必要性は何ら存在しなかつたのであるから、右各命令は何ら職員
を拘束するものではない。
又、本件職場大会は、いずれも前記のごとく出勤簿整理時間内に終了しており、客
観的に業務阻害をもたらし得るような性格のものではなく、現に具体的な業務阻害
は全く存在しなかつた。
さらに、本件職場大会は、本局や各陸運事務所の事務室、宿直室、前庭等で行なわ
れたが、大会開催中、いずれも前記のように「解散命令」や「就業命令」なるもの
が発せられるということがあつた外は、極めて整然と何の混乱もなく行われた。大
会開催前夜も、当局の各現場管理者と組合側役員は、和気藹藹のふん囲気で談笑し
ており、右各命令も当局側の職務命令に基づきやむなく形だけ整えるというような
ものであつた。
全運輸近陸支部では、本件職場大会の一年位前からも、早朝職場集会が五回は開催
されていた。右集会の開催時間帯、場所、参加人員等は、本件職場大会とほとんど
異ならず、むしろ、陸運事務所では、本件職場大会よりもいわゆる時間内に長くく
い込んでいたのである。ただ、右集会と本件職場大会が異なる点は、同大会が全国
一斉の統一行動として行われたという点にのみあるのである。
3 原告Cは、年次有給休暇の承認を得て、兵庫分会(姫路支所)における本件職
場大会に参加した。労働者は、年次有給休暇日において使用者の指揮命令から離脱
し、これを全面的に自由に利用することが許されているのであるから、ストライキ
その他組合活動に利用したとしても違法ではない。よつて、原告Cが本件職場大会
に参加し、経過報告などをしたことは、国公法九八条二項に該当するものではな
い。
4 本件各処分は、不当労働行為であり、違法無効である。
本件各処分は、原告らの所属する全運輸の運営に対する支配介入であると共に、当
然の組合活動を行つたことを理由とする不利益取扱いであり、憲法二八条、国公法
一〇八条の七に違反する不当労働行為である。
(一) 国公法違反を理由とした本件各処分の真のねらいは、職場段階の全運輸の
組合役員である原告らを大量に処分することによつて、第一に全運輸組合員と執行
部を分断し、組合員を動揺させて組織の団結を破壊しようとしたものであり、第二
に昇給延伸などの不利益を伴う本件各処分を行うことによつて全運輸に経済的な打
撃を与え闘争力を後退させ、第三に「ストライキは悪なり」との思想によつて公務
員を引続き権力に忠実無定量な労働を強いられる下僕として支配機構の中に抑えこ
ももうと、第四に当時最高裁昭和四四年四月二日大法延判決が規範的効力を有して
いたにもかかわらず、政府が依然として国家公務員の労働基本権を尊重する意思の
ないことを示すことによつて威圧を加え、闘争の発展を押止めようとしたものであ
る。そして、大局的には一九七〇年代に向かつて大きく前進しようとしていた国家
公務員の労働組合運動とその中における国家公務員の要求と闘争を抑圧しようとす
る政治的ねらいをもつたものということができる。
(二) 本件各処分の対象となつた原告らの各行為は、いずれも団結維持のために
不可欠の行為であり、これを処分事由とすること自体、職場から団結そのものを排
除する意図を示しているということができる。すなわち、被告局長は、原告らが、
「あいさつ」、「所長交渉の経過報告」、「決議文の朗読」、「職場大会の意義の
演説」、「がんばろう三唱の音頭とり」、「人事院勧告関係の報告」を行つたこと
が主たる役割を果たしたことに当たるとするのである。
しかしながら、労働組合は、労働条件の維持向上の目的のもとに労働者が自主的に
結成した団体であるところ、右各所為は右目的をもつた団結体がその団結を維持す
るうえから日常的に最低必要な行為であり、又、右各所為がないならば、集会それ
自体が不可能になり、団結の維持或いは団結の行動としての機能は全く停止すると
いうべきである。
よつて、原告らの右各所為は、いずれも団結維持のための日常的、不可欠行為であ
り、これにねらいをすえた本件各処分は団結そのものを嫌悪し、それを破壊する意
図を示す以外の何ものでもない。
(三) 原告らは、各職場組織における長たる役員であり、右組織と最も密着した
者であり、それ故組合団結の要にいた者ということができる。本件各処分は、右の
ような者に対してなされたものであつて、職場組織を破壊し、団結の土台を突き崩
すためにしくまれた不当労働行為である。
(四) 本件各処分は、出勤猶予時間内に行われた職場大会における原告らの各行
為を対象とするものであつて、組織敵視そのものである。すなわち、出勤猶予時間
は、本来労働者の自由時間であり職務指揮権に服さない時間であるにもかかわら
ず、当局は本件職場大会当日に限つて通常の勤務形態を変更し、出勤猶予時間を否
認して午前八時三〇分になるや間髪を入れずに就業命令を発したのであり、当局の
右行為の意図が組合の集会をつぶすこと、組合の団結を破壊することにあることは
おのずから明らかである。
(五) 当局は、組合の本件職場大会に向けて警告書を出し、運輸事務次官の「職
員の皆様へ」なる文書を配布し、いくつかの職場では職場大会の前日に何らの業務
上の必要性もないのに、明日は八時半出勤である旨伝達し、さらに、大会中受領を
拒絶されたところも含めて各職場において就業命令等を発し、従来の闘争やそれ以
後の同種闘争時には見られなかつた周到な準備をして本件各処分に臨んだのであ
り、又、政府は国公共闘さん下の各組合に対し、一一・一三闘争に関して六五〇〇
名に上る処分(ただし、厳重注意処分を含む。)を断行したのである。
当局は、労働者の労働基本権と同等或いは優越する法益が全く存しないばかりか、
国民大衆の便益・迷惑さえも全く存しなかつた本件職場大会に関し、ただ弾圧のた
めにのみ公務員の労働運動に支配介入し、原告らに不利益を与える本件各処分をな
したのであり、かかる処分行為は、その発想法と準備過程をも含めて団結への弾圧
であり、不当労働行為そのものである。
5 原告らの本件職場大会における行為は、労働組合としての団体行動であるか
ら、右行為について組合員個人として、或いは組合幹部としての懲戒責任(個人責
任、幹部-支部長・分会長-責任)を問うことができない。
争議行為は、労働組合という団結体の行為であるという意味での集団的性格と組合
員の集団的活働によつてのみ実現されるという意味での集団的性格とを有している
ところ、憲法二八条が保障する労働基本権は、右のような労働団結活動の二面的、
集団的本質に照応した団結そのものの権利であると共に、個別労働者の権利でもあ
り、そのいずれの側面も否定し得ない統一体というべきである。この意味で、労働
団結活動の二面的、集団的本質は、単なる社会的・歴史的概念たるにとどまらず法
規的概念というべきである。よつて、争議行為の基本的構造が争議行為に対する違
法評価によつて変化するものでない以上、団体的違法争議行為においていかなる個
人責任も生じ得ないのである。
原告らの本件各行為は、全運輸近陸支部の支部長又は分会責任者として組合中央か
らの方針、指令を忠実に実行したものであり、組合中央によつて勤務時間へのくい
込み時間、集会の具体的態様まですべて定められ、右中央の方針が職場の労働者の
気持や感情と合致していることを知つていた原告らは、右方針を承認し、これに自
動的に組入れられていつたのである。ちなみに、中央闘争本部から出される方針に
原告らが従わず、これに反した行動をとれば、原告らは組合の団結を破壊したこと
となり組合内の統制処分を受けることは当然である。
従つて、原告らは、中央闘争本部などの指令に基づく組合員としての当然の義務を
果しただけであつて、使用者たる国との関係で決して原告らを特別に選択して懲戒
処分に付する合理的理由は存しない。
6 本件各処分は、処分権の濫用として無効である。
(一) 本件職場大会の違法性について
本件職場大会は、前記のとおり、国会決議も政府に要請していた人事院勧告の完全
実施などを目的として行われたものであり、その目的の正当性は、当局はもとより
のこと運輸大臣ですらこれを認めざるを得なかつたものである。本件職場大会を開
催し抗議の意思表示をせざるを得ないところに追い込んだ使用者である政府にも大
きな責任がある。
そしてその実態は、前記のとおり出勤簿整理時間内に終了し、業務阻害は全く存在
せず、極めて整然と行われたものである。従つて、そもそも、かかる職場大会に参
加したことなどを理由として懲戒処分を行うことは許されないものである。
(二) 本件各処分の苛酷性について
仮に、懲戒処分が許されるとしても、その処分は公務員関係の秩序を維持するため
に最低限必要なものに限られることはもとよりのこと、処分の対象となる行為の違
法性の程度と処分の程度との間に均衡がとれていることが必要である。
ところで、本件職場大会が国公法九八条二項に違反するとしても、その違法性の程
度は極めて軽微である。本件各処分は職場大会開催について何らの権限もない支部
長、分会長、副分会長に対する処分であり、しかも本件処分により昇給延伸の措置
がとられ、原告らが受ける給与上の損失は、通算すると一人当たり二八万円から一
四〇万円に達することとなる。国公法九八条二項違反の罰金刑でさえ、最高一〇万
円とされている(同法一一〇条一項)ことからしても、いかに本件処分が原告らに
苛酷な処分となつているかが明らかである。そのうえ、本件職場大会の約一年前か
ら行われていた早朝職場集会については、その目的、態様などがいずれも本件職場
大会と同様であるにもかかわらず、何らの処分もなされていないのである。
(三) 本保各処分の不公正、不均衡性について
本件において使用者である政府が国会決議をも無視して、自らの責任を棚に上げて
おいて、やむを得ず立ち上つた組合の団結活動に対して処分をもつてのぞむこと自
体が極めて不公正であるが、このことは本件職場大会による統一した全国的な取組
みのなかで昭和四五年以降は政府が人事院勧告は完全実施をする旨表明し、かつ実
行してきたことによつて一層増大される。
さらに、本件各処分は、昭和四五年以降の全運輸が取組んだ争議行為(本件職場大
会により態様において一層長時間の)に対する処分との比較において不公正となつ
ている。なぜなら、本件以降の処分においては分会長らに対する処分は一切行われ
ていないからである。これについて被告局長は現認の有無、指令書入手の違いなど
を理由にしているが、課長以上のみが非組合員であり、職制を通じて充分現認はで
きているし、できうることからしても全くの口実である。
又、本件職場大会と同時に行われている全運輸の他支部との処分の比較においても
不公正である。すなわち、東北海運支部においては一〇分会が同じ取組みを行なつ
たのに戒告処分を受けたのは支部長のみである。これについて当局側は現認はした
が参加者の人数が少なく車座になつて行なつており違法性が少ないとの判断にたつ
た旨を主張するようであるが、同じ取組みであつても参加人数の多寡に応じて集会
のもち方が異なり、多いときはマイクを使う場合もあるのであり、そうした理出で
違法性、責任の大小を判断することは全く根拠がない。むしろ、そうしたことを理
由に本件各処分が真実行われたとするならば、それこそ団結権侵害としての処分の
不当労働行為性を明らかにするものである。
(四) 原告Cに対する処分について
被告局長が何としても本件各処分を行うことを優先し、無理な非合理的、不公正な
処分を行なつたことは原告Cに対する戒告処分によつて明らかになつている。原告
Cの年休権行使の目的が本件職場大会の参加にあることは、組合員でもあるP8庶
務係長がよく知つていたのであり、兵庫県陸運事務所の総務課長が局人事課に打診
したうえで「家事都合との理由を書いてもらえれば認めよう」ということになつた
のである。にもかかわらず原告Cへの処分がなされたことはだまし打ち的な処分で
あるとも言えるのであつて、本件処分の違法性を物語るなにものでもない。
(五) まとめ
以上の諸事由及び前記のごとく本件各処分が職場大会を開催するについて権限のな
い分会長に対してなされたこと、原告らの団結活動、正当な組合活動に対してなさ
れたものであることを総合すると、本件各処分は処分権を濫用したものであり、無
効たるを免れない。
六 再抗弁に対する認否及び反論
再抗弁はすべて争う。
1 国公法九八条二項は合憲である。(再抗弁1)
国公法九八条二項が合憲であることは、全農林警職法事件判決(最高裁昭和四八年
四月二五日大法廷判決)により実証されたところである(なお、最高裁昭和五一年
五月二一日大法廷判決-岩教組学テ事件-、同昭和五二年五月四日大法廷判決-名
古屋中郵事件-参照)。
よつて、本件ストライキは、国公法九八条二項に違反する違法なものといわなけれ
ばならない。
2 本件職場大会は国公法九八条二項で禁止された争議行為である。(再抗弁2)
(一) 争議行為という言葉は、実定法上、労働組合法(以下、労組法という)八
条などに出ており、これにつき種々の規定を設けているが、争議行為一般について
の明確な概念規定は存しない。労調法七条は、争議行為の具体的定義付けをしてい
るが、右は、労調法上の問題として、労働委員会による争議の調整との関連におい
て定められたもので、他の法律には妥当しないのであるが、ただ右労調法七条の定
義を基として、他の法律の規定がこれと抵触する範囲でこれを修正し解釈すべきで
ある。
一般に、国公法においても、争議行為であるためには業務の正常な運営を阻害する
ことを要するとされているが、その内容を解釈するについては公務の性質などを考
慮すべきである。すなわち、公務は、政府・地方公共団体の機関が、その公務を行
うとされている日には、とくに権限ある機関の長より正当にその停止を許された場
合を除いて、執行されているべきものと考えるべきであり、また、公務はその性質
上当然に国民生活と密着しているものであつて、その停廃は、直ちに国民生活に重
大な影響をもつものである。従つて、右の業務阻害とは、労調法などの場合とは異
なり業務阻害の危険性をもつて足りると解すべきである。
そして、本件職場大会において、業務阻害があつたことは後記のとおりであり、仮
に右事実がないとしても、少なくとも業務の運営能率を阻害する危険性はあつたと
いわなければならない。
(二) 原告らの本件各行為が国公法九八条二項の禁止する争議行為に当たらない
との主張は、前記全農林警職法事件判決によつて否定された最高裁昭和四四年四月
二日大法廷判決(都教組事件、全司法事件)が採用した限定的解釈を前提とするも
のであつて、その立論自体失当なものである。
次に、原告らの出勤簿整理時間に関する主張について反論する。
国家公務員の給与、勤務時間その他の勤務条件については、いわゆる勤務条件法定
主義の立場から、その基礎事項は法律によつて定め、細目については法律の委任に
基づく人事院規則によつて定めることとされている(憲法七三条四号、国公法二八
条、一〇六条)。
これを勤務時間について見るに、一般職の職員の給与に関する法律(以下、給与法
という。)一四条によつて、「職員の勤務時間は、休憩時間を除き、一週間につい
て四十時間を下らず四十八時間をこえない範囲内において、人事院規則で定め
る。」とし、その「勤務時間は、特に支障のない限り、月曜日から土曜日までの六
日間においてその割振を行い、日曜日は、勤務を要しない日とする。」として基礎
事項を定め、国公法及び給与法の委任に基づく人事院規則一五-一(職員の勤務時
間等の基準)は、その四条において「給与法第十四条第一項の規定に基づく勤務時
間は、一週間について四十四時間とする。」と規定し、同規則五条及び六条によつ
て「前条に規定する勤務時間の割振りについては、・・・・・・内閣総理大臣
が・・・・・・定める。」ものとし、その割振りの基準についても「特に支障のな
い限り、月曜日から金曜日までの五日間においては一日につき八時間となるよう
に、土曜日においては四時間となるように割り振るものとする。」と定めており、
この人事院規則の規定を受けて、内閣総理大臣は、政府職員の勤務時間に関する総
理庁令(昭和二四年総理庁令第一号)一項により、政府職員の勤務時間の割振りと
して、月曜日から金曜日までについては午前八時三〇分から午後五時まで(その間
に三〇分の休憩時間を置く。)、土曜日については午前八時三〇分から午後〇時三
〇分までと決定し、又、同総理庁令二項及び三項により、通勤のため利用する交通
機関が著しく混雑する地域に所在する官庁に勤務する政府職員及び現業その他特別
の勤務に従事する政府職員の勤務時間の割振りについては、当該主務大臣に委任す
るなど、それぞれ細目にわたつて定めている。このような勤務時間制度の下にあつ
ては、各官署において右の法令に基づく勤務時間を独自に変更することは許され
ず、また、右の勤務時間と異なる労働慣行の成立する余地もない。
出勤簿整理時間、出勤簿管理(人事院細則九-五-一(給与簿取扱細則)三条及び
四条の規定に従い、勤務時間管理員が所属の職員の出勤状況を確認し、出勤してい
ない職員については出勤簿上に年次休暇、特別休暇その他当日の勤務状況を表示す
るに必要な事項をその都度記入して管理すること。)の事務上の必要に基づき、各
官署の長が勤務時間管理員に対して発した職務命令により定められているものであ
り、その趣旨は、正規の出勤時刻から一定時間内に出勤簿の整理を完了することを
命ずると共に、出勤した職員がこの時刻までに出勤簿に押印したときは、正規の出
勤時刻に出勤したものとして事実上取り扱つているものにすぎず、もとより職員と
の関係において正規の出勤時刻を変更するとか、あるいは出勤簿整理時間内の勤務
を免除するという性質のものではない。ちなみに、本件ストライキ当時の出勤簿整
理時間は、大阪陸運局本局にあつてはおおむね午前九時二〇分頃まで、各陸運事務
所にあつてはおおむね午前九時頃までというのが実態であつた。
右のように、出勤簿整理時間といえども勤務を要する時間であることに変わりはな
いのであるから、出勤簿整理時間内であつても、既に登庁している職員は当然勤務
に服しなければならない義務を負うのであり、又、出勤簿整理時間の終了時までに
出勤簿に押印せず、勤務にもつかなかつた職員は、出勤時刻から欠勤したものとし
て取り扱われるのは当然である。さらに、職員に対しその勤務の報酬として支給さ
れる俸給も勤務時間を基準として計算されるのである(給与法四条、五条一項)。
従つて、職員は出勤簿整理時間を他の目的のために自由に利用し得るものではな
く、こ9時間内に出勤した職員は直ちにその職務に従事する義務があり、当局側も
その者に対しその職務に従事することを命じ得るものといわなければならない。そ
して、出勤簿への押印は単に職員が定時に出勤したことを証明するための手段にす
ぎない(人事院細則九-五-一、四条参照)のであるから、仮に既に出勤した職員
が出勤簿への押印を遅らせているとしても、その職員は右義務を免れるものではな
い。
よつて、国家公務員たる者が当局の許可なく勤務時間内に職場大会を開催しこれに
参加することは、国公法九八条二項にいう同盟罷業に当り、仮にそれが出勤簿整理
時間内に開かれたものであるとしても、国公法九八条二項に違反することは明らか
である。
さらに、本件職場大会が出勤簿整理時間内に行われたものであつても、業務阻害が
なかつたとすることはできない。
すなわち、陸運局や陸運事務所の窓口には、受付開始前の出勤簿整理時間帯にあつ
ても、外部からの電話照会や外来者は皆無ではなく、受付開始を待つて窓口で申請
などの相談をする外来者もあるのであり、それ故に原告らも自認しているとおり、
本件職場大会の開催に当つては、組合側は電話照会などに備えて、一・二名の要員
を職場に配置していたのであり、又、原告らも自認するように、出勤簿整理時間は
受付開始時間が到来すれば、直ちに正常業務に入れるように来客受付体制を整える
べき時間であるのに、右時間帯に職場大会を開催すれば、右のような体制を整える
ことは不可能であり、従つて必然的に受付開始時間が到来しても直ちに正常な業務
に入ることはできないのであり、加えて、全運輸中央闘争委員会から各支部長等宛
の「一一・一三実力行使に向けての準備指令(追加)」によつて「前日からの出張
及び当日の出張については、事前にすべてやめさせることを基本とし、当日出張の
場合は、実力行使終了後行くこととすること。・・・・・・・・・当局が突然に出
張命令を発する場合は拒否すること」と準備指令しており、右はまさに業務を阻害
するものといわざるを得ない。さらに、「陸運事務所の窓口を利用されるみなさま
へ」「当日は、みなさま方になにかと迷惑をかけることになると思いますが、私た
ちのせつぱつまつた気持ちを理解して下さるようお願いします。」と記載したビラ
を一般国民に配付しており、右は、本件職場大会は国民生活に障害をもたらすこと
を慮ぱかつての措置であることが認められ、業務阻害のあるを根拠づけるものとい
わねばならない。又、当局が再三かかる職場大会の違法性を警告し執務命令を出し
たことは、前記のとおりである。
以上の事実から明白なように、本件職場大会により業務阻害はあつたのであり、少
なくとも業務の運営能率を阻害する危険性はあつたのである。よつて、原告らの主
張は失当である。
3 原告Cは、年次有給休暇をとつて本件職場大会に参加したのであるから、国公
法九八条二項に該当せず、本件処分は違法であるとの主張(再抗弁3)について
年次有給休暇中の者は、使用者に対する労務の提供義務を免除されているものの、
国家公務員として当然負う服務上の規律には従わなければならないことは言うまで
もないところであり、国家公務員に対しては、国公法上争議行為等法令に違反する
行為を行なつてはならない義務、その他の職員として守るべき義務が課せられてい
るが、原告Cは支部の副分会長として争議行為たる職場大会に終始参加し、かつ、
経過報告及び決議文の朗読を行うことによつて、これを「あおり」「そそのかす」
行為をなしているのであるから国公法九八条二項に違反したものというべく、同条
によつて問責されることは当然である。
4 本件各処分が不当労働行為であるとの主張は、何ら正当な根拠のない独自の意
見であつて失当である。(再抗弁4)
不当労働行為制度上の保護は、正当な組合活動についてだけなされるものであると
ころ、本件ストライキの実施が憲法二八条に基づく正当な団体行動であるといえな
いことは、前記のところから明らかであり、本件各処分は、原告らの行為が国公法
九八条二項に違反し、同法八二条所定の懲戒事由に該当することを理由になされた
ものであつて、原告ら主張のように団結破壊ないし組合弾圧を意図してなされたも
のでないことは明らかである。
5 違法争議行為と懲戒処分について(再抗弁5)
原告らの主張は、要するに、争議行為は労働組合という一個独立の団体行動である
から、それが違法な場合にもすべて団体が責任を負うべきで、その構成員個人の行
為は組合の行為に吸収され、独立の評価を受ける余地がないということにあるが、
その団体性をいかに強調しようとも、そのことから、直ちに個々の参加者が違法の
責任を負担しないという結論を導き出すことはできない。
争議行為が、一般的に、労働者の団結体たる労働組合の統一的、集団的行為である
ことは原告らの主張のとおりであるが、他面において、争議行為は団体構成員たる
組合員の共同に意欲された個別行為の集合であることも否定できない事実である。
すなわち、争議行為は個々の組合員の積極的、具体的行為なくしては成り立ち得な
い。これを端的に表現すれば、争議行為は労働組合の行為であると同時に、個々の
組合員の行為でもある。そして、個々の組合員は労働組合とは別個独立の法的主体
であり、従つて、違法な争議行為については、労働組合が団体としての責任を負う
のとは別に、個々の組合員が責任を負うのは当然である。
違法争議行為の責任はすべて労働組合にのみ帰せられるべきであるという見解から
すれば、違法争議行為が刑罰法規に触れるときも、刑事責任を負うべきは組合のみ
ということになる。このような帰結が、個々の違法行為者がそのなした行為につい
て刑事責任を負わなければならないという刑事法の一般原則に背馳するものである
ことは論ずるまでもない。又、不法行為責任について、近代法の下においては、人
は自己の行為についてのみ責任を負うという自己責任又は個人責任の原則が確立さ
れている。
違法な争議行為が不法行為をも構成するとき、第一次的にその責任を負うべきは行
為者個人であり、その行為者が組成する団体が責任を負うのは別個の法理によらね
ばならず、決してその逆ではあり得ない。さらに、違法な争議行為が労働契約上の
債務不履行を構成するとき、その責任は契約当事者たる個々の労働者について生ず
るものであり、組合がかかる債務不履行責任を負うことはない。原告らの主張は右
に述べたような近代法の建前を無視した立論で、何ら根拠のないものといわなけれ
ばならない。
元来、争議権の保障は、正当な争議行為に限り、これを労働法上団体行動として保
護することである。争議行為は業務の正常な運営を阻害する行為であるから、一般
市民法上は刑事、民事の責任が生じ得べきものであるが、これらの責任を免責し、
又は争議行為を理由とする解雇などの不利益取扱いを禁止することに、争議権の権
利性が認められる。このような争議権の保障は正当な争議行為に限られており、争
議行為が不当、違法なときには、それは労働法上もはや団体行動として保護され
ず、右に述べたような正当な争議行為に与えられる免責的利益を享受し得ないので
ある。換言すれば、違法争議行為は労働法上の団体行動ではなく、法的には個々の
労働者の個別行為として契約秩序や服務規律に服することとなる。もちろん、争議
行為が労働組合の行為でもあるという側面から、組合としても責任を負うべきこと
が生じ得るが、この組合としての責任と個々の労働者の責任とは、別個独立のもの
として併存するのである。
正当な争議行為の民事免責を定める労組法八条は、「労働組合又はその組合員」に
対し賠償を請求することができない旨規定し、本来免責なき場合に組合員個々人が
使用者に対し債務不履行ないし不法行為による責任を負うことあるべきを当然予定
している。又、同法一二条は、法人の不法行為能力に関する民法四四条の規定を、
法人たる労働組合に準用するものとしているが、民法の右規定の解釈上、法人と共
に機関個人の責任が生ずるものと解されている。そして、労組法一二条は、同法八
条に規定する組合の正当な争議行為については、右準用を除外する旨明らかにして
いる。原告らの主張からすれば、このような労組法上の規定は、誤りであるか、適
用ないし準用の余地がないこととならざるを得ないが、かかる解釈が法条の文理に
著しく抵触し、とうてい成り立つものでないことは明らかであろう。
なお、原告らの主張は、「労働組合が争議行為を行う場合には、組合員たる個々の
労働者は企業秩序の支配から離脱し、組合の統制に服することとなるから通常の企
業秩序を前提とする懲戒処分を課することはできない」との趣旨を含むものとも解
される。
しかしながら、個々の労働者は使用者と労働契約を締結することによつて、企業組
織内に編入され企業秩序に服することとなるのであつて、このような関係は労働契
約の存続する限り継続するものである。他方、労働者が労働組合に加入すれば、労
働組合の団体統制に服することとなるが、この両者の法律関係は別個独立のものと
して併存し、その間に優劣の関係はない。労働者を企業秩序の支配から離脱させる
ことはたとえ労働組合であつても使用者の意思にかかわりなく自由になし得るもの
ではない。従つて、争議行為が、労働組合の団体行動として展開されるものである
からといつて、争議行為によつて使用者と個々の労働者との間の労働契約関係が消
滅するわけでなく、それが争議行為であるということのみによつて、組合員たる労
働者が企業秩序の拘束から離脱するという効果を生ずる理由はない。
ただ、一般的にみて、二重の法律関係が存在する場合に、それぞれの法律関係から
生ずる義務の内容が矛盾すると、一方の統制に服するときは他方の統制に違反する
という結果が生ずるわけであるが、争議行為の場合には労働者に争議権が保障され
ている関係上、争議行為が正当なものである限り、当該行為の故に労働者が企業秩
序違反の責を問われることはない。しかし、争議行為が違法なものであれば、それ
が企業秩序に違反するものと評価され、当該労働者がその責を負うのを妨げる理由
はないわけである。
一般的に懲戒は、企業秩序、服務規律の維持、確保を目的とするが、かかる目的達
成の必要は企業の存続する限り存在するのであつて、労働組合が争議行為と決定し
実施したからといつて当然に失われるものではない。正当な争議行為に対して問責
し得ないのは別として、違法な争議行為についてまで使用者の統制が及ばないとす
る根拠はない。原告らの主張からすれば、争議行為として行いさえすれば、どのよ
うに違法であろうとも、およそ懲戒などはあり得ないということになる。しかし、
このような結果が常識に反し是認し得ないことは明らかである。従つて、違法な争
議行為が行われ、企業秩序が侵害された場合には、当然懲戒の対象となり得るもの
である。
違法争議行為一般について、懲戒責任を否定する見解の失当なることは、以上に述
べたとおりであるが、公務員の争議行為とその懲戒責任については、なお次の点が
注意されるべきである。
一般に私企業における企業秩序ないし服務規律は、労務の提供に関連する事項に限
定され、私企業における懲戒処分は原則として、このような企業秩序の維持の目的
の範囲において行うことができるものと解されている。これに対し、公務員関係に
おける秩序は、公務員の地位の特殊性から、単に労務を提供することに関連する義
務に限らず、公務員たる地位に伴う様々な服務義務、例えば、信用失墜行為の禁
止、政治的行為の制限、営利企業への従事制限などの義務を課しているという意味
において、私企業の労働関係における企業秩序とは異なる特殊性をもつものであ
る。従つて、法の禁止に違反する争議行為についても、単に職務秩序違反というに
とどまらず、法によつて課せられた公務員としての服務・義務に違反する側面をも
つことを、看過することができない。
又、国公法は、国家公務員たる職員について適用すべき各般の根木基準を確立する
などの目的(一条)から、九八条二項において職員の争議行為を禁止しているので
あつて、その趣旨は、団体的に行われる争議行為を組成する個々の職員の行為を違
法なものと評価し、これを禁じていると解せざるを得ない。従つて争議行為が集団
的な性格をもつということを理由に、個々の職員の行為について、法律の規定に基
づきその懲戒責任を問うことを妨げるべき理由は全くない。
6 懲戒権濫用の主張について(再抗弁6)
(一) 公務員の懲戒処分における懲戒権者の裁量権
公務員に対する懲戒処分は、当該公務員に職務上の義務違反、その他単なる労使関
係の見地においてではなく、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務する
ことをその本質的な内容とする勤務関係の見地において、公務員としてふさわしく
ない非行がある場合に、その責任を確認し、公務員関係の秩序を維持するため、科
される制裁である。
ところで、国公法は、同法所定の懲戒事由がある場合に、懲戒権者が懲戒処分をな
すべきかどうか、又、懲戒処分をするときに如何なる処分を選択すべきかを決する
については、公正であるべきこと(七四条一項)を定め、平等取扱いの原則(二七
条)及び不利益取扱いの禁止(一〇八条の七)に違反してはならないことを定めて
いる以外に、具体的な基準を設けていない。
従つて、懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、
態様、結果、影響等の外、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の
処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響など、諸般の事情を考慮
して懲戒処分をすべきかどうか、又、懲戒処分をする場合に如何なる処分を選択す
べきかを決定することができるのであるが、その判断は、右のような広範な事情を
総合的に考慮してされるものである以上、平素から庁内の事情に通暁し、部下職員
の指揮監督の衝に当たる者の裁量に任せるのでなければ、とうてい適切な結果を期
待することができないのである。
それ故、公務員につき、国公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行
うかどうか、懲戒処分を行うときに如何なる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任
されているものというべきである。
もとより、右の裁量は、恣意にわたることを得ないものであることは当然である
が、懲戒権者が右の裁量権の行使としてなした懲戒処分は、それが社会観念上著し
く妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合
でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とはならないものという
べきである。
従つて、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場
に立つて懲戒処分をすべきであつたかどうか、又、如何なる処分を選択すべきであ
つたかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきもの
ではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、
裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきである(最高裁
昭和五二年一二月二〇日第三小法廷判決・民集三一巻七号一一〇一頁、最高裁同日
第三小法廷判決・民集三一巻七号一二二五頁各参照)。
(二) 本件争議行為は、当局側の再三にわたる事前の警告や中止の勧告、解散命
令、就業命令等を無視し、国公共闘のなかでも勤務時間外の職場大会を行なつた組
合が多数存在するなかで、これとは別にあえて勤務時間にくい込む職場大会を行な
つたことに特別の意味があつたのであり、勤務時間にくい込むことをねらつた点に
特質がある。
しかして、原告らは、何れも勤務時間にくい込む違法な職場大会において、一定の
主たる役割りを果したものであつて、その責任は大きいというべきである。
本訴において、原告らは、「本件争議行為による業務への影響はなかつた」とし
て、違法な争議行為に関する責任を逃れようとするが、出勤簿整理時間の存在は、
その時間内の職員の勤務義務を免除するものではなく、出勤簿整理時間であつて
も、当局の支配管理に服すべきものであり、登庁した職員を集めて集団で職場を離
脱するが如きことは違法であり許されないことである。
又、本件各処分は、原告らが主張するように団結破壊ないし組合弾圧を意図してな
されたものでないことは明らかであり、かつ、その処分も懲戒処分のうちで最も軽
い戒告を選択してなされたものである。
以上要するに、本件各処分は、懲戒権者たる被告局長において、国公法上の懲戒処
分の趣旨に則し、違法な争議行為を旋任すべきではないとの観点、その他諸般の要
素を慎重に考慮したうえで、法律によつて認められている裁量権に基づき、適正、
かつ、妥当に行われたものであり、これには、恣意にわたり社会観念上著しく妥当
を欠き、裁量権を濫用したと認めらられるような要素は全く存在しないのである。
第三 証拠(省略)
○ 理由
第一 被告局長に対する請求について
一 請求原因1ないし3については当事間に争いがない。
二 右争いのない事実によれば、本件各処分は、原告らが国公法九八条二項に違反
したとして同法八二条一号を適用してなされたものであることが明らかであるか
ら、本件各処分の違法性の有無を考えるに際し、国公法九八条二項の合憲性が先決
問題となり、原告らは憲法二八条に違反する旨主張(再抗弁1)するので、まず国
公法九八条二項の合憲性について判断することとする。
国公法九八条二項が合憲であることは、すでに最高裁判所大法廷判決(昭和四八年
四月二五日。なお、昭和五一年五月二一日判決及び昭和五二年五月四日判決参
照。)が明示するところであり、当裁判所も原告ら主張の諸点を熟慮検討するも右
最高裁判所判例を相当と思料するので、これに従うものである。
よつて、原告らの右主張は採用することができない。
三 すすんで、本件各処分事由たる争議行為(抗弁)について検討する。
1 本件職場大会に至るまでの経緯(抗弁1(一)ないし(五))については当事
者間に争いがなく、当事者に争いのない事実並びに成立に争いのない甲第四号証、
第一二号証、第五二号証及び弁論の全趣旨を総合すると、人事院は昭和四四年八月
一五日、国会及び内閣に対し、国公法二八条及び給与法二条の規定に基づき一般職
の職員のの給与について勧告を行つたが、その内容は、一般職国家公務員の給与を
平均一〇・二パーセント引上げることなどとし、その実施時期を同年五月一日から
とするものであつたこと、国公共闘は、右勧告におおける給与引上げ率について
は、昭和三五年以来九年ぶりの二桁勧告であるとして一定の評価をしたものの、一
律八〇〇〇円と体系改善一万円以上の賃金引上げという要求に満たないものとして
全体として不満を示し、同年九月八日、政府に対し、「賃上げは五月から実施する
こと、賃上げの実施にあたつては、最低賃上げ四〇〇〇円を保障すること、扶養手
当は被扶養者のすべてに七〇〇円増額すること、期求手当増額は〇・二か月とする
こと、住宅手当を支給すること」などの当面の統一賃金を提出したこと、政府は、
同年一一月一一日、公務員の給与改定に関する取扱について「一般職の職員の給与
に関する法律の適用を受ける国家公務員の給与については、さる八月一五日に行わ
れた人事院勧告どおり俸給表等の改定を行うものとする、右改定は昭和四四年六月
一日から適用する(すでに支給した六月期の期末・勤勉手当については、適用しな
い)こととし、関係法律の改正案は次期国会に提出するものとする」ことなどの閣
議決定を行つたことを認めることができ、他に右認定を左右するに足る証拠はな
い。
2 近陸支部における本件職場大会の実施について
0抗弁2(一)(近陸支都の組織)については当事者間に争いがなく、成立に争い
のない乙第二号証の一ないし七及び弁論の全趣旨によると、昭和四四年一一月当時
の、近陸支部長は原告G、副支部長はN、書記長はOであり、近畿陸運局(本局)
分会長はP7、副分会長はP9、書記長はP6であり、大阪分会長は原告F、副分
会長はP10及びP11、書記長はP12であり、京都分会長は原告E、副分会長
はP2、書記長はP1であり、兵庫分会長は原告D、副分会長は原告C(本所勤
務)及びY(姫路支所勤務)、書記長はP13であり、奈良分会長は原告B、副分
会長はU、書記長はTであり、和歌山分会長は原告A、副分会長はR、書記長はS
であることが認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
(二) 近陸支部及びさん下各分会における本件職場大会体制の確立状況とこれに
対する当局のとつた措置について
当事者間に争いのない事実並びに成立に争いのない甲第一三、一四号証、第二一な
いし二四号証、第二六、二七号証、第二九号証、乙第一号証の一ないし八、前掲乙
第二号証の一ないし七、証人O、同P14、同Nの各証言、原告D本人尋問の結果
及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができ、他に右認定を左右
するに足る証拠はない。
近陸支部は、全運輸第八回定期大会後の昭和四四年九月一九日、大阪陸運局会議室
において第二一回定期大会を開催し、国公共闘及び全運輸の前記のような実力行使
を中心とした闘争方針を全面的に支持し、積極的に闘つていくことを確認し、全運
輸中央本部の闘争日程をふまえストライキ体制を確立していくことなどの闘争方針
を全員一致で承認・可決し、以後同支部においては、右ストライキ体制を確立する
ために学習会、討論集会などの諸活動が行われ、又、同年一〇月七日から同月三一
日にかけて近陸支部及びさん下各分会から大阪陸運局長及び同管内各陸運事務所長
等に対し、賃上げは五月から実施することをはじめとした全運輸の統一要求書を提
出し、運輸大臣にあてた右要求を取次ぐよう求め、これを上申するとの約束を得る
などした。
近陸支部は、同月二三日から同月二五日にかけて、全運輸指令第一号に従い、全分
会において本件統一行動(実力行使)に対する賛否を問う一票投票を実施したが、
その結果は、投票有権者組合員に対する賛成意思を投票した組合員の比率(批准
率)が七五・二パーセント(ちなみに、本局分会・五八・三パーセント、大阪分
会・八一・三パーセント、京都分会・七五・〇パーセント、兵庫分会・八三・六パ
ーセント、滋賀分会・七六・五パーセント、奈良分会・九四・四パーセント、和歌
山分会・七二・七パーセント)であり、投票した組合員数に対する賛成率は七九・
一パーセント(ちなみに、本局分会・六〇・八パーセント、大阪分会・八六・〇パ
ーセント、京都分会・七五・〇パーセント、兵庫分会・九〇・三パーセント、滋賀
分会・八六・七パーセント、奈良分会・一〇〇パーセント、和歌山分会・七二・七
パーセント)であり、かつ全分会において右実力行使一票投票は批准され、さら
に、同年一一月七日から一〇日にかけて全運輸指令第二号に従つて実施された本件
統一行動(実力行使)に対する参加決意署名が行われた。右参加決意署名とは、
「私は左記の国公統一賃金要求をかちとるため、一一・一三統一行動日に全運輸指
令に基づいて『早朝から勤務時間に二九分くい込む職場大会』に参加します」と記
載し、「賃上げは五月から実施すること」などの要求事項を列挙したものであつた
が、右署名の結果は、組合員数三八六名(長期欠勤者三名を除く)中三六二名が署
名し、その署名率は九三・八パーセント(ちなみに、本局分会・八九・五パーセン
ト、大阪分会-本所・九五・七パーセント、和泉支所・九三・九パーセント、兵庫
分会-本所・九四・三パーセント、姫路支所・一〇〇パーセント、京都分会・九
七・四パーセント、奈良分会・九四・四パーセント、滋賀分会・八八・二パーセン
ト、和歌山分会・九五・五パーセント)であつた。
このようにして本件職場大会に対する組合員の意思確認が行われ、その実施の気運
が高まる中において、同年一〇月二三日、総理府総務長官は国公共闘議長に対し、
公務員の自覚と反省を促し、違法な行動を行うことのないよう自重を求める旨の警
告を発すると共に談話を発表し、同年一一月一二日、運輸事務次官は、全運輸中央
執行委員長に対し、違法行為を行うことのないよう自重を求める旨の警告を発し
た。さらに、同月八日から一〇日にかけて被告局長から近陸支部長である原告Gに
対し、大阪陸運局総務部長から本局分会長P7に対し、同局管内各陸運事務所長
(兵庫県陸運事務所姫路支部においては同支所長)から各分会長(右姫路支所にお
いては兵庫分会副分会長Y)に対し、それぞれ「伝えられるところによれば、貴組
合においては来たる11月13日勤務時間内職場大会を計画している模様である
が、いうまでもなく国家公務員には、かかる争議行為は法令によつて禁止されてい
るところであります。当局は貴組合がもし伝えられるような違法行為を行なつた場
合には、関係法令に基づき必要な措置をとらざるをえないので、貴組合の自重を強
く要望します。」と記載した警告書を交付して警告し、さらに、当局は、同月八日
から同月一一日にかけて各職員に対し、同月六日付運輸事務次官名による本件職場
大会に参加しないようにとの内容を含んだ「職場のみなさんへ」と題した警告書を
交付して、本件職場大会に参加することのないよう自重を求めた。これに対し、近
陸支部及びさん下各分会は、右警告書をあえて受取らず、或いは交付されたものを
分会役員などにおいてまとめて当局に返還するという状況であつた。右に加えて、
和歌山県陸運事務所においては、同月一二日に、所長交渉の際、原告Aから翌一三
日に勤務時間内にくい込む職場大会を中庭で行う旨通告があつたのに対し、同所長
は勤務時間内にくい込む職場大会は違法であるのでとりやめること、庁舎管理規程
に基づく目的外使用の許可を受けることについて口頭で警告し、奈良県陸運事務所
においては、同月一二日、所長交渉の際、同所長から原告Bらに対し、本件ストラ
イキをとりやめるように重ねて警告し、本件ストライキが実施されれば処分問題が
生ずる旨伝え、兵庫県陸運事務所においては、同月一二日、同所長から分会長原告
D及び副分会長原告Cらに対し、本件職場大会を中止するように口頭で強く警告
し、京都府陸運事務所においては、同月一一日、所長交渉の際、本件職場大会によ
る実力行使の通告がなされたのに対し、違法である旨回答し、右同日、全職員に対
し、総理府総務長官から国公共闘議長あての前記警告文を回覧閲読させ、大阪陸運
局(本局)においては、同月一一日、原告Gから本件職場大会実施の通告があつた
のに対し、当局から勤務時間にくい込む職場大会は違法であるからとりやめるよう
警告すると共に勤務時間中は職務に専念する義務がある旨強調し、さらに同月一二
日、同局総務部長から原告Gらに対し、再度勤務時間にくい込む本件職場大会を中
止するよう説得した。又、大阪陸運局及び管内各府県陸運事務所において、同月一
二日、当局は、全職員に対し、勤務時間は午前八時三〇分から午後五時まで(本局
においては午前九時五分から午後五時二〇分まで)であること及び勤務時間内にく
い込む職場大会に参加することは違法である旨伝えた。
同月一二日、近陸支部執行部は、常任中央闘争委員会から、「ボーナス抜六月実施
の閣議決定に断固反対し、一一・一三は早朝時間内くい込み職大の実力行使は実施
せよ。ただし、くい込み時間については追つて電話にて指令する」との電報による
全運輸指令第三号を受け、さらに同夜半、本局分会はくい込み時間一五分、その他
の分会は二〇分とするとの電話指令を受け、右各指令をさん下各分会に伝達した。
(三) 近陸支部さん下各分会における一一月一三日の本件職場大会の実行及び同
大会における原告らの役割並びに当局のとつた措置について
当事者間に争いのない事実並びに成立に争いのない甲第四六、四七号証、第六二号
証、前掲乙第二号証の一ないし七(ただし、乙第二号証の二のうち後記採用しない
記載部分を除く。)、証人P14、同Nの各証言、原告C、同D各本人尋問の結果
及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができ、乙第二号証の二の
うち右認定に反する記載部分は右掲記の証拠と記載方法に照らして採用できず、他
に右認定を左右するに足る証拠はない。
(1) 和歌山分会における本件職場大会の状況
和歌山分会における本件職場大会は、和歌山県陸運事務所宿直室前の中庭におい
て、午前八時三〇分頃から同四五分頃まで一六名の組合員が参加して行われた。右
大会の進行は、近陸支部Q執行委員の司会で進められ、まず原告Aが分会長として
一、二分間あいさつをした後、R副分会長からメツセージ、祝電の紹介がされるな
どし、最後に右副分会長が決議文の朗読、S書記長が要求事項の確認を提案して全
員一致で確認され、最後にQ執行委員が閉会のあいさつをして右大会を終了した。
その間、P15和歌山県陸運事務所長は、午前八時四〇分頃、分会長である原告A
を呼び、右大会が勤務時間内にくい込んでおり、許可のない場所で行われているの
で、解散するよう口頭で命令した。しかし、原告Aらは、右命令に従つて解散する
ことはなかつた。
(2) 奈良分会における本件職場大会の状況
奈良分会における本件職場大会は、奈良県陸運事務所宿直室において、午前八時二
五分頃から同五〇分頃まで一七名の組合員が参加して行われた。右大会の進行は、
T書記長の司会で始まり、まず分会長である原告Bが全運輸本部及び近陸支部のメ
ツセージと祝電を朗読し、その後N中央闘争委員会委員(近陸支部副支部長)が一
一・一三闘争の意義について述べ、続いてU副分会長が所長交渉の経過を報告する
などした後、T書記長が閉会を宣言して解散した。
その間V輸送課長は、午前八時四〇分頃、原告Bをはじめとする大会参加者に対
し、
勤務時間内の無許可集会であるから解散するよう口頭で命令した。
(3) 兵庫分会(本所)における本件職場大会の状況
兵庫分会(本所)における本件職場大会は、兵庫県陸運事務所玄関前横庭におい
て、午前八時二〇分頃から同四二分頃まで四七名の組合員が参加して行われた。右
大会の進行は、開会宣言に始まり、分会長原告Dがあいさつ及び職場大会の意義に
ついて約七分間演説を行い、その後書記長らから経過報告、メツセージの紹介、闘
争宣言の朗読がなされ、がんばろうを三唱し、労働歌を合唱して終了した。
その間、W総務課長は、分会長原告Dに対し、午前八時二五分頃「この大会は無許
可であるからすぐ解散せよ」との、又、同三六分頃「時間内にくい込む大会は違法
であるからすぐ解散しなさい」との各解散命令を口頭で伝え、さらに同四〇分頃、
全参加者に対し、プラカードに解散・職場復帰命令を記紛して伝達した。
(4) 兵庫分会(姫路支所)における本件職場大会の状況
兵庫分会(姫路支所)における本件職場大会は、兵庫県陸運事務所姫路支所構内入
口横の空地において、午前八時三三分頃から同五〇分頃まで一五名の組合員が参加
して行われた。右大会の進行は、Y副分会長の開会の言葉で始まり、副分会長であ
る原告Cが所長交渉の経過について演説すると共に兵庫分会職場大会の「決議文」
を朗読し、その後メツセージ朗読がなされ、がんばろうを三唱し、労働歌を合唱し
て終了した。
その間、X姫路支所長は、午前八時三五分頃、Y副分会長に対し、組合旗が立てて
あること及び勤務時間内にくい込む右大会は違法であることを口頭で注意し、さら
に同四九分頃、参加者全員に対し、解散するよう口頭で命じた。
原告Cは、勤務場所が兵庫県陸運事務所(本所)輸送課であるが、右当日は、一一
月一二日に行われた所長交渉に姫路支所勤務のY副分会長が出席しなかつたため、
右交渉経過を本件職場大会において報告などするために、家事都合との理由をもつ
て年次有給休暇の承認を得たうえで、前日(一二日)夜から姫路分会に泊り込んで
参加したものである。
(5) 京都分会における本件職場大会の状況
京都分会における本件職場大会は、京都府陸運事務所玄関前広場において、午前八
時二〇分頃から同四九分頃まで三三名の組合員が参加して行われた。右大会の進行
は、Z執行委員が開会のあいさつを行なつた後、P1書記長が経過報告し、決議文
朗読、要求スローガン朗読、来賓のあいさつ、労働歌合唱と進み、最後に分会長で
ある原告Eが音頭をとつて団結がんばろうの三唱をした後閉会した。
その間、P3総務課長は、八時二五分頃、分会長である原告Eに対し、解散命令書
を手交しようとしたが同原告はこれを拒否し、同三六分頃、同課長が参加者全員に
対し、解散命令及び職場復帰命令をプラカードに記載して提出し、同四五分頃、原
告Eに対し、解散命令書を手交したが、同原告はこれを受領することを拒んだ。
(6) 大阪分会(本所)における本件職場大会の状況
大阪分会(本所)における本件職場大会は、大阪府陸運事務所玄関前広場におい
て、午前八時二〇分頃から同五〇分頃まで七五名の組合員が参加して行われた。右
大会の進行は、開会宣言の後議長団が選出され、まず分会長原告Fが人事院勧告を
完全に実施させるために本件統一行動の推進を行う旨のあいさつをした後、経過報
告、決意表明、大会スローガン朗読、閉会宣言、がんばろう三唱の順で行われ終了
した。
その間、午前八時三五分頃、P5次長は右大会参加者に対し、始業時間に入つたの
で、それぞれの職場に戻るよう伝え、本件職場大会の解散を二度にわたりくり返し
口頭で命令したが、依然として右大会は続けられたので、分会長原告Fに対し、所
長名による解散命令を手交しようとしたが、がんばろう三唱の後直ちに解散したの
で右命令書を手交するに至らなかつた。
(7) 本局分会における本件職場大会の状況
本局分会における本件職場大会は、大阪陸運局自動車部事務室において、午前八時
四五分から九時一七分頃まで八二名の組合員が参加して行われた。右大会の進行
は、本局分会書記長P6の開会宣言に始まり、本局分会長P7があいさつと経過報
告を行つた後、近陸支部長原告Gがあいさつをし、人事院勧告に対する閣議決定の
不当性を説明し、続いてメツセージ等の紹介、大会宣言を拍手で採択した後閉会の
あいさつをもつて終了した。
その間、右大会参加者に対し、午前八時五一分頃、T総務課長が「無許可集会に付
き直ちに解散せよ」との局長命令を大声で二度くり返して伝え、午前九時四分頃、
P16人事課長が「九時五分が勤務時間であるから直ちに解散して勤務に就くよう
に」との局長命令を二度にわたりくり返し大声で伝えた。
3 原告らの行為と国公法九八条二項違反
被告局長は、原告らが本件職場大会に参加した点において国公法九八条二項前段の
争議行為をなした場合に当たるとし、右大会において、あいさつ、経過報告、決議
文の朗読、演説を行い、がんばろう三唱の音頭をとつた点において同項後段の「あ
おり」、「そそのかし」行為に当たるとして本件各処分を行つたものであるとこ
ろ、原告らは、本件職場大会は争議行為の概念にすら該当せず、団結活動・組合活
動であり(再抗弁2(一))、又、国公法九八条二項所定の争議行為にも該当しな
い(同2(二))旨主張し、右あいさつ等の行為は「あおり」「そそのかし」行為
に当たるものでない旨抗争するので、この点について検討する。
(一) 争議行為の意義については、労調法七条が「この法律において争議行為と
は、同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹する
ことを目的として行ふ行為及びこれに対抗する行為であつて、業務の正常な運営を
阻害するものをいふ」と定義付けているのであるが、右定義は、いうまでもなく労
調法の適用にかかる争議行為の意義を明らかにしたものにすぎないから、これをも
つて争議行為一般の定義規定となすことはできず、他に実定法上、争議行為一般に
ついての意義を明らかにする規定は存しない。そこで、従来、労調法の右規定を手
がかりとして、争議行為の概念を明確にするどの方法が一般にとられ、講学上諸説
の展開をみるところではあるが、結局のところ、争議行為について規定する当該法
規の趣旨、目的等に照らし個別的に解するのが最も妥当であると考える。そして、
本件において問題視されるべきは、要するに本件職場大会が国公法九八条二項所定
の争議行為に該当するかどうかであつて、本件職場大会が争議行為の一般概念に該
当するかどうかについて考察を加えることは、本件解決のうえにおいてさして有意
義なこととも思われないので、ここでは、以下において本件職場大会が国公法九八
条二項に規定する争議行為に該当するかどうかについて検討することとする。
(二) 前記認定事実によると、本件職場大会は、国公共闘及び全運輸が統一賃金
要求として掲げる「賃上げは五月から実施すること」などの要求を貫徹するため
に、近陸支部さん下の各分会において、午前八時三〇分(本局分会において午前九
時五分)前後数十分にわたり、
就業命令等を無視して行われたものであることは明らかである。
ところで、大阪陸運局本局においては午前九時五分からおおむね午前九時二〇分頃
まで、その他の府県陸運事務所においては午前八時三〇分からおおむね午前九時頃
まで出勤簿整理時間と称する取扱いがなされていることは当事者間に争いがない
(ただし、原告らは、その法的評価を含めてこれを出勤猶予時間とも主張するが、
右呼称における取扱いがなされている限度において争いがない。)ところが、原告
らは、職員は特別の合理的な必要のない限り、右出勤簿整理時間内の勤務を免除さ
れていると主張する。
そこで、職員(一般職国家公務員)の勤務時間についての法令上の定めをみてみる
に、国家公務員の勤務時間等勤務条件については、その基礎事項を法律によつて定
め、細目については法律の委任を受けた人事院規則によつて定めることとされてお
り(憲法七三条四号、国公法二八条、一〇六条)、一般職国家公務員の給与及び勤
務時間に関する事項を定めることを目的として制定された給与法一四条一項は、
「職員の勤務時間は、休憩時間を除き、一週間について四十時間を下らず四十八時
間をこえない範囲内において、人事院規則で定める。」と規定し、同条四項は
「・・・・・・勤務時間は、特に支障のない限り、月曜日から土曜日までの六日間
においてその割振を行い、日曜日は、勤務を要しない日とする。」と定め、国公法
及び給与法の委任に基づく人事院規則一五-一(職員の勤務時間等の基準)四条
は、「給与法第十四条第一項の規定に基づく勤務時間は、一週間について四十四時
間とする。」と規定し、正規の勤務時間の割振りについて、同規則五条一項は、会
計検査院及び人事院の職員以外の「職員にあつては内閣総理大臣が・・・・・・定
めるものとする。」とし、勤務時間の割振りの基準について、同規則六条一項は、
「・・・・・・特に支障のない限り、月曜日から金曜日までの五日間においては一
日につき八時間となるように、土曜日においては四時間となるように割り振るもの
とする。」と定め、右規則の規定を受けて内閣総理大臣は、政府職員の勤務時間に
関する総理庁令(昭和二四年総理庁令第一号)一項は、「政府職員の勤務時間は、
休日を除き次の通りとし、日曜日は勤務を要しない日とする。月曜日から金曜日ま
で、午前八時三十分から午後五時まで。但し、その間に三十分の休憩時間を置く。
土曜日午前八時三十分から午後零時三十分まで。」と定め、その二、三項におい
て、通勤のため交通機関が著しく混雑する地域に所在する官庁に勤務する政府職員
及び現業その他特別の勤務に従事する政府職員の勤務時間は、主務大臣が(内閣総
理大臣の承認を得て)別に定めることができる旨規定している。
そして、運輸大臣は、通勤のため利用する交通機関が著しく混雑する地域にある東
京、大阪の運輸省関係機関の職員の勤務時間について、右総理庁令二項、人事院規
則一五-一の九条に基づき、所定の手続を経たうえ、勤務時間を月曜日から金曜日
まで午前九時五分から午後五時二〇分まで、土曜日午前九時五分から午後一時五分
までと変更し、大阪陸運局(本局)に勤務する職員は右変更された勤務時間の適用
を受けているのである(成立に争いのない甲第一七号証及び弁論の全趣旨)。
右のように法令上定められた勤務時間に対し、出勤簿整理時間という取扱いがなさ
れていることは前記のとおりであるが、右出勤簿整理時間とは、出勤簿管理(人事
院細則九-五-一の三条及び四条)の事務の必要上、各官署の長が勤務時間管理員
に対して発した職務命令により定められているものであり、右出勤簿整理時間と称
される前記時間内に出勤簿の整理を完了することを命ずると共に右時間内に出勤し
た(出勤簿に押印した)職員に対しては、正規の出勤時刻に出勤したものとして取
扱い、遅刻扱いにはしないというものであり、従つて、右時間内に出勤した職員は
就業義務があるものとして取扱われている(証人P14の証言及び弁論の全趣
旨)。
右法令の規定及び右認定事実から明らかなごとく、職員の勤務時間(始業)につい
ては法令等によつて、午前八時三〇分から(大阪陸運局勤務の職員については午前
九時五分から)と規定され、各省庁においてそれぞれの都合で独自に変更すること
は許されないものといわなければならず、それ故、出勤簿整理時間の設定が職員の
勤務時間を変更するものでないことは明らかである。そして、各陸運事務所におい
ては午前八時三〇分以降、大阪陸運局においては午前九時五分以降の出勤簿整理時
間と称される時間の実態が、原告ら主張のごとく出勤簿整理時間終了時点が出勤時
刻であるかのような外観を呈し、出勤簿整理時間内には窓口業務も開始されず、そ
の他いまだ勤務につかないものであつたとしても、右事実をもつて勤務時間を変更
する旨の明示又は黙示における当局の意思を表示する事実とさえなし得ないし、
又、右のような実態が巷間慣行と称される程度に継続されたものであつたとして
も、右法令に明らかに反するものであるから、何らの規称的効力を有する慣行とし
て成立する余地がないのである。
しかして、出勤簿整理時間の設定は、職員の勤務時間を変更し、当該時間内の勤務
を免除するとの効力を有するものでない(よつて、原告ら主張の出勤猶予時間では
ない。)から、職員は、出勤簿整理時間内に出勤した場合には、当然に当局の支配
管理下にあり、労務供給義務を負うものというべきであり、右時間終了まで職員が
他の目的のために自由に使用・行動し得る時間ではないのである。それ故、当局
は、出勤簿整理時間内に出勤した職員に対し、職務命令を発することができるのは
当然であり、まして、出勤簿整理時間内に開催された本件職場大会に参加している
職員に対し「解散命令」或いは「職務命令」を発したことについては何ら瑕疵はな
く、職員は右命令に拘束され、従うべき義務を負うものというべきである。
(三) 以上説示したところから明らかなごとく、本件職場大会は、「賃上げは五
月から実施すること」などの統一賃金要求を貫徹するために、勤務時間内におい
て、公務員として負担する職務専念義務に違反し、労務供給義務の提供を拒否した
ものということができ、右のような態様における職務専念義務の違反行為、労務供
給義務の提供拒否行為(同盟罷業)は、それ自体必然的に業務の正常な運営を阻害
する行為ということができるから、現に業務の正常な運営を阻害したかどうかを問
うまでもなく、国公法九八条二項所定の争議行為に該当するというべきであり、単
なる団結活動・組合活動であるとの原告らの主張は何ら根拠のない主張といわなけ
ればならない。
原告らは、国会法九八条二項所定の争議行為は、長時間かつ大規模な職場放棄を行
つたため、右業務に大混乱が生ずる場合である旨主張するのであるが、公務員の行
う争議行為である限り、同法条項に規定する争議行為に該当し、その規模、状況等
によつて区別すべき理由のないことは明らかである(前掲最高裁昭和四八年四月二
五日大法廷判決参照)。よつて、原告らの右主張は理由がない。
又、原告らは、本件職場大会の目的が正当であり、本件職場大会が整然と行われた
ものであり、以前にも本件職場大会と同様の大会で、勤務時間内くい込み時間が右
大会よりも長い職場大会が行われていたことをもつて、本件職場大会が国公法九八
条二項所定の争議行為に該当しない旨主張するかのごとくであるが、右事情は本件
職場大会参加者に対する処分を科するかどうかについての情状として考慮されこそ
すれ、右争議行為該当性の判断については右事情の存否によつて左右されるもので
ないこと前記説示より明らかである。
(四) 次に、原告らの行為が国公法九八条二項後段所定の「あおり」「そそのか
し」行為に該当するかどうかについて考察する。
国公法九八条二項後段所定の「あおり」「そそのかし」とは、国公法九八条二項前
段に定める違法行為を実行させる目的をもつて、他人に対し、その行為をなさしめ
るよう仕向ける行為を総称し、必ずしもこれによつて現実に相手方が影響を受ける
こと及び業務の正常な運営を阻害する行為が行われることを要しないものと解すべ
きである。
そこで、右のような考え方に立つて原告らの行為が右「あおり」「そそのかし」行
為に該当するかどうかについて判断するに、前記認定、説示のごとく、本件職場大
会は、給与に関する人事院勧告の完全実施などの要求貫徹を目的として行われた国
公法九八条二項に違反する違法な大会であるところ、同大会参加者はいずれも右大
会の目的及び右目的貫徹のために勤務時間(出勤簿整理時間)にくい込んで右大会
を行うものである旨の意思を確認したうえで右大会に参加しているのであり、又、
原告らは近陸支部及び各分会において同支部等の指導者或いはこれに準ずる地位を
有し、右地位にあるものとして右各行為をなしていること、さらには原告らの右各
行為が右大会遂行のうえで積極的な意義を有するものといえることからすると、本
件職場大会において、原告Aが分会長としてあいさつをした行為、原告Bが分会長
としてメツセージと祝電を朗読した行為、原告Dが分会長としてあいさつと職場大
会の意義について演説した行為、原告Cが副分会長として所長交渉の経過について
演説し、決議文を朗読した行為、原告Eが分会長として団結がんばろう三唱の音頭
をとつた行為、原告Fが分会長としてあいさつをした行為、原告Gが支部長として
あいさつをし、人事院勧告に対する閣議決定の不当性を説明した行為は、いずれも
国公法九八条二項後段所定の争議行為の「あおり」或いは「そそのかし」行為に該
当するものということができる。
(五) 原告Cは、本件職場大会当日は年次有給休暇の承認を得ていたから、使用
者の指揮命令から離脱し、労働者の自由な利用に委ねられていた時間であるから、
本件職場大会に参加したことなどをもつて国公法九八条二項に該当するものといえ
ないし、右行為に違法な点はないと主張する(再抗弁3)ので検討する。
原告Cが年次有給休暇の承認を得たうえで本件職場大会に参加したことは当事者間
に争いがない。一般に、労働者は、労働基準法三九条の規定に従つて年次有給休暇
が成立した場合、当該日における就労義務を免れるものと解することができる。従
つて、原告Cは、本件職場大会当日、年次有給休暇をとることによつて就労義務を
免れたものということができるのであるが、だからといつて公務員として国公法九
八条二項に違反する争議行為を行うことまで許されるものではないのである。
兵庫分会(姫路支所)における本件職場大会が国公法九八条二項所定の争議行為に
該当する違法な行為であることは前記説示のとおりであるところ、原告Cは、前記
認定のごとく右大会を実効あらしめるために一定の役割をになつて参加し、所長交
渉の経過について演説し、決議文を朗読した行為を行つたのであるから、これを全
体として考察し、争議行為を構成するものということができ、又右演説、朗読の行
為が「あおり」「そそのかし」行為に該当すること前記説示より明らかなところで
ある。よつて、原告Cの右主張は理由がない。
(六) なお、原告C、同E、同Gを除くその余の原告らの本件職場大会における
あいさつ等の行為は、午前八時三〇分以前に行われたのであるから、右行為には違
法性がない旨主張するかのごとくであるので附言するに、前記説示のごとく本件職
場大会が違法なものであるから、原告らの右行為が本件職場大会における一行為と
して行われたものである限り、それが行われた時期如何によつて違法性の有無が左
右されるものではないのである。
(七) そうすると、原告らの本件各行為は、国公法九八条二項前後段(ただし、
原告Bについては、「所長交渉の経過報告」をしたとの点は認め難く、前記のとお
りメツセージ等を朗読したとの事実を認めることができるのであるが、右事実につ
いては処分事由として主張がないので、結局同法条項前段該当事実のみ)の行為に
該当し、前記認定事実からすると、原告らは本件職場大会において主たる役割を果
したものというべきである。
被告局長は、原告らに対し、国公法九八条二項違反を理由として本件各処分に及ん
だのであるが、原告らは、原告らの主張(再抗弁)4ないし6の理由をもつて本件
各処分の違法性を主張するので、以下に項を改めて順次判断することとする。
四 本件各処分が不当労働行為であるとの原告らの主張について
原告らが本件各処分をもつて不当労働行為と主張する所以は、要するに、1本件各
処分の真のねらいが全運輸の団結を破壊し、闘争力を弱めようとするところにある
こと、2原告らの本件職場大会における前記行為は団結維持のために不可欠な行為
であるにもかかわらず、これを処分事由とすること自体職場から団結そのものを排
除する意図を示しているものであること、3それぞれの職場組織の長たる役員であ
る原告らを処分することは、職場組織を破壊し、団結の土台を崩すためにしくまれ
たものであること、4出勤猶予時間中の本件職場大会に対し、当日に限り就業命令
を発することは組合の団結を破壊する意図のあることを示すものであること、5本
件職場大会前に警告書を発し、周到な準備をしたうえで、かつ労働基本権以上の法
益が存しないのに本件各処分をしたことは団結に対する弾圧であること、以上の諸
点にあるものということができる。
しかしながら、前記第一の三において認定、説示したごとく、被告局長は、原告ら
が近陸支部長、分会長或いは副分会長として違法な争議行為である本件職場大会に
参加し、他の参加者らに対し右争議行為をなすように「あおり」「そそのかし」た
ものとして国公法九八条二項前後段、八二条一号に基づき、本件各処分の意思表示
をしたのであり、原告ら主張のごとく前記1ないし5記載の意図、目的のもとにな
されたものとはとうてい認めることができないし、前記2ないし5記載のごとく本
件職場大会における原告らの行為が不可欠のものであり、原告らが職場組織の長た
る地位にあり、当局が出勤簿整理時間内(これを出勤猶予時間と解することができ
ないことは前記説示のとおりである。)において行われていた本件職場大会に対し
就業命令を発し、又、本件職場大会前に右大会に参加しないようにとの警告書を発
したとしても、前記説示のごとく本件職場大会が国公法九八条二項に違反する違法
な行為である限り、被告局長らが右違法行為を看過することなく右のような措置を
とり、或いは本件各処分を行うことは当然のことというべきであり、これをもつて
原告ら主張のごとく不当労働行為意思を推認することもできないのである。よつ
て、原告らの右主張は認めることができない。
五 原告らは、本件職場大会における原告らの行為は、労働組合としての団体行動
であるから、右行為について個人責任或いは幹部責任を問うことができないと主張
する。
しかしながら、集団的労働関係である争議行為の場においても個別的労働関係が解
消されるものではないから、当該違法争議行為における組合員の行為を個人的行為
の側面でとらえたうえで、そのことを理由に組合員に対し、個別的労働関係上の責
任である懲戒責任を追求することができるものというべきである。本件において、
原告らは、前記のごとく違法な争議行為である本件職場大会に参加し、支部長、分
会長等としてそれぞれ当該大会における主たる役割と目される行為をなしたもので
あるから、これをもつて国公法九八条二項に違反し同法八二条一号に該当するとし
て懲戒処分の対象となし得るものといわなければならない。
原告らは、原告らの行為はいずれも組合中央からの方針、指令に従い、組合員とし
ての当然の義務を果したにすぎないから、原告らを特に選択して懲戒処分に付する
合理的理由がないとも主張するが、既に説示したごとく本件職場大会は国公法に違
反する違法な争議であるから、仮に組合の指令があつたとしても、それは国公法に
優先するものでないこと当然というべきであり、右指令に従つたことをもつて違法
な争議行為に参加したなどの原告らの行為を何ら正当化するものではないし、前記
のような役割をした原告らが他の組合員と区別して本件各処分を受けるに至つたと
しても、何ら不合理なものということはできない。よつて、原告らの右主張はいず
れにしても採用することができない。
六 処分権濫用の主張について
1 裁判所は、公務員に対する懲戒処分の適否を審査するにあたり、懲戒権者と同
一の立場に立つて、懲戒処分をすべきであつたかどうか、又、懲戒処分をする場合
にいかなる処分を選択すべきであつたかについて判断し、その結果と懲戒処分とを
比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分
が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法で
あると判断すべきものである(最高裁昭和五二年一二月二〇日第三小法廷判決・民
集三一巻七号一一〇一頁、最高裁同日第三小法廷判決・民集同巻同号「三五頁参
照)。
2 右の見地に立つて、本件各処分が社会観念上著しく妥当を欠き、処分権を濫用
したものと認められるかどうかについて検討する。
原告らは、処分権の濫用の事由として再抗弁6(一)ないし(五)のごとく主張す
るので、まず右主張から順次判断を加えることとする。
(一) 原告らは、本件職場大会の目的が正当であり、態様も業務阻害は全くなか
つたから、右大会の違法性が軽微であり、懲戒処分の対象になし得ないものである
旨主張する。当裁判所も、国家公務員が人事院勧告の完全実施を求め要求活動をす
ることは理解できない訳ではない。
しかしながら、仮に、原告ら主張のごとく本件職場大会の目的が正当であるとの評
価を受け得るものであつたとしても、その実現のために国公法の禁止する争議行為
に訴えて要求を貫徹せしめようとすることは許されるものではなく、又、現に業務
阻害を生ずることがなかつたとしても、広く国民一般に窓口を開いた陸運局及び陸
運事務所の有する公共性と保安要員として一人を残した以外は全員が全職場から離
脱したものであること、さらに、本件職場大会に先立ち、又、大会中においても当
局が再三にわたり警告、就業命令及び解散命令を発しているにもかかわらず、これ
らを無視してあえて強行・続行されたことは、本件職場大会の違法性が決して軽微
なものでないことを示すものといえるのである。
(二) 原告らは、原告らが本件各処分を受けることによつて昇給延伸の措置がと
られ、通算一人当り二八万円ないし一四〇万円もの給与上の損失を受けることとな
り、又、国公法九八条二項後段違反の罰金刑の最高額が一〇万円であることに比し
ても苛酷な処分である旨主張する。そして、原告らが本件各処分を受けたことによ
つて昇給延伸の措置がとられたことは証人P17の証言により認めることができ、
右措置がなかつたならば原告らが退職時までに受け得るであろう給与の額が相当額
(一人当たり二八万円ないし一四〇万円)に達するであろうことは原告D本人尋問
の結果及び同結果により真正に成立したものと認められる甲第六四号証により認め
ることができる。
しかしながら、前記説示のごとく本件職場大会の違法性に鑑みるとき、原告らが右
のような不利益を受けるに至つたとしても、いまだこれをもつて原告らの本件各行
為との間の均衡を失した苛酷な処分とまでいうことはできないし、又、国公法九八
条二項後段に違反する行為をした者に対する刑罰のうち罰金刑の最高額が金一〇万
円である(国公法一一〇条一七号)ことは明らかであるが、右罰金刑はあくまでも
犯罪に対する刑罰として科されるものであり、これと性格の異なる懲戒処分によつ
て事実上蒙るであろう経済的損失額とを単純に比較して均衡を云々すること自体失
当という外なく、さらに附言するならば、右規定に違反した者に対する刑罰とし
て、罰金刑の外に選択的に三年以下の懲役刑が規定されていることからみても、右
違反行為に対する刑事処分としての評価も軽微なものでないというべきである。
(三) 原告らは、本件職場大会以前に行われた右大会と目的、態様等が同様な早
朝職場大会の開催については、何ら処分されていないことをもつて、本件各処分と
の間に均衡を失する旨主張する。
しかしながら、前記当事者間に争いのない事実及び認定事実から明らかなように、
全運輸は、本件職場大会を勤務時間内にくい込む職場大会、実力行使或いはストラ
イキとして把握し、組合員の十分な意思確認を行うなど万全の準備体制を整えたう
えで本件職場大会に臨んだものであつて、この点に従前の職場大会と異る意義があ
るとの評価をしていたものというべきであり、又、現に全運輸が当局に対し、勤務
時間内にくい込む旨通告したうえで勤務時間内に職場大会を催して争議行為を実施
したのは本件職場大会が初めてのことであり、従前において原告ら主張のような職
場大会が開催されていたとしても、全運輸自体の右大会に対する取組み方が時間外
職場大会とのことであり、そのため当局の現認確知するところに至らず、懲戒処分
に付されることがなかつたものということができるのである(証人O、同P14の
各証言)。従つて、本件職場大会以前の職場大会については右のように本件職場大
会におけるとは異る事情があるのであるから、被告局長が本件職場大会に関し本件
各処分を行つたことをもつて、従前の取扱いとの間に不均衡があるということ自体
失当といわなければならない。
(四) 原告らは、政府が人事院勧告完全実施との国会決議を無視しながら、原告
らの団結権活動に対し、処分をもつて臨むこと自体極めて不公正であると主張す
る。
人事院勧告及び国会決議を尊重しこれを実行し得ることが最も望ましいところであ
るが、公務員の給与についてはその財源が国の財政とも関連して主として税収によ
つて賄われているところから、政治的、財政的、社会的その他諸般の合理的な配慮
のうえに立つて適当に決定されなければならないという特殊性を慮るとき、右勧告
等を完全に実行し得なかつたとしても、その政治的責任を追求されるに至るはとも
角、原告らの違法な争議行為に対する懲戒権の行使を何らかの意味においても阻害
する事由とはならない。よつて、被告局長が原告らに対し、本件各処分を行つたこ
とをもつて不公正であるとの主張は理由がない。
(五) 原告らは、本件各処分は昭和四五年以降の争議行為及び本件職場大会と同
時に行われた他支部に対する処分との比較において不公平がある旨主張する。
まず、本件各処分と昭和四五年以降の争議行為に対する処分との比較をみてみる
に、成立に争いのない甲第六一号証、証人P17の証言によると、昭和四四年一一
月一三日の本件職場大会の闘争においては、戒告処分に処せられた者四三名の内訳
は、全運輸本部役員一名、支部三役八名、分会三役三四名であること、昭和四八年
から同五〇年までの闘争においては、分会役員が処分されておらず、合計人数で全
運輸本部役員一五名、支部三役二〇名の者が戒告処分を受けていること、当局は、
昭和四四年の本件闘争において、全運輸中央本部の責任者らについては企画指導の
立証を十分にする資料を収集できなかつたので、右企画指導者に対する処分をなさ
ず、各職場大会毎に実行行為者をとらえ、主たる役割を果した者を各職場大会に原
則一人として戒告に、従たる役割を果した者を訓告に、参加者を厳重注意に処する
との基本方針をたて、これに従つて本件各処分がなされたこと、昭和四八年以降の
闘争については、職場大会等の争議行為を陸運事務所等の構内で行わなかつたため
実行行為を現認できず、遅刻して出勤した職員がその理由を交通ストによるとの申
告をしたため、右争議行為の事実を認定するに至らず、他方、企画指導者について
は、これを立証するに足る資料を入手することができたため、全運輸中央本部及び
支部の役員を処分の対象者とし、分会役員らについては右対象者としなかつたもの
であること、以上の事実を認めることができ、他に右認定を左右するに足る証拠は
ない。
右認定事実によると、原告ら指摘のごとく本件闘争における処分とそれ以降の闘争
における処分に差異が生じたとしても、合理的理由があるということができるか
ら、右差異の存することをもつて不公平ということはできない。
次に、本件職場大会と同時に行われた他支部における職場大会に関する処分との対
比をみてみるに、証人P14、同H、同P17の各証言及び弁論の全趣旨を総合す
ると、近陸支部さん下の分会である滋賀分会において、本件職場大会と同様に職場
大会が開催されたが、同分会の右大会に関して処分された者がいないこと、被告局
長が同分会に関し処分をしなかつたのは、同分会における職場大会が午前八時三〇
分から若干勤務時間にくい込んだにすぎず、その際に話合われた内容が年末の業務
対策についてであつたことを考慮し、同分会については処分しないこととしたこ
と、東北海運支部においては、さん下一〇分会において職場大会が開催されたが、
処分されたのは支部長一人であつたこと、右支部さん下分会について分会長らを処
分しなかつたのは、各分会に対応する支局の職員の人数が少なく、その集会の態様
が車座になつて話合う程度であり、指導的役割を果す者を認めることができず、
又、管理職員が一人であつて十分に集会の態様を現認することができなかつたこと
によるものであること、以上の事実を認めることができ、他に右認定を左右するに
足る証拠はない。
右認定事実から明らかなように、滋賀分会及び東北海運支部における処分について
は、被告局長の裁量権の範囲内において、合理的な理由のもとになされた措置とい
うことができるから、形式上本件各処分との間に差異があることをもつて不公平と
いうことはできない。
(六) 原告らは、原告Cに対する処分について、同原告の年次有給休暇権行使の
目的が本件職場大会への参加にあることを知りながら、年休を賦与したうえで、処
分したことはだまし打ち的な処分であり違法であると主張する。
しかしながら、原告Cに対する処分は、違法な争議行為である本件職場大会に参加
し主たる役割を果したことをもつてなされたものであり、他方、年次有給休暇の権
利は労働基準法三九条一、二項の要件の充足により、法律上当然に労働者に生ずる
ものであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自
由である(最高裁昭和四八年三月二日第二小法廷判決民集二七巻二号二一〇頁参
照)ことからすると、被告局長が本件処分をしたことをもつてだまし打ち的である
との指摘は失当であるという外ない。
(七) 原告らは、本件各処分が職場大会を開催するについて権限のない分会長に
対してなされたことをもつて失当と主張する。しかし、本件各処分が分会長である
ことの故をもつて、或いは分会長が本件職場大会開催の権限があり、開催したこと
の故をもつてなされたものでないことは前記説示から明らかであるから、右主張は
失当という外ない。
又、原告らは、本件各処分が団結活動、正当な組合活動に対してなされたことをも
つて失当と主張する。しかし、本件各処分が原告らの団結活動、正当な組合活動に
対してなされたものでないことは前記説示から明らかであるから、右主張は失当で
ある。
以上のとおり、原告らが懲戒権の濫用であるとして指摘する事由はいずれも認める
ことができない。
(八) そして、本件職場大会が国公法九八条二項に違反する争議行為であるこ
と、同大会における原告らの行為の性質、態様、情状及び本件各処分が国公法八二
条所定の懲戒処分のうち最も軽いものであること、又、原告Bについては国公法九
八条二項後段の事実が認められないものの、本件職場大会に参加して主たる役割を
果したことには変りがないことを考慮すると、本件各処分が社会観念上著しく妥当
を欠くと認められるほどに裁量権を濫用したとは認め難いといわざるを得ず、原告
らの懲戒権濫用の主張も採用し難い。
七 よつて、被告局長が原告らに対してなした本件各処分は適法というべきであ
る。
第二 被告人事院に対する請求について
一 請求原因1ないし3については当事者間に争いがない。
二 原告らは、本件裁決の取消事由として、(一)再抗弁1ないし6記載の事由、
(二)本件裁決は時期に遅れた裁決であるから違法である旨主張する。
そこで、右(一)の取消事由について検討するに、右事由はいずれも原処分である
本件各処分についての違法事由であつて、裁決固有の違法を主張するものではな
い。ところで、行訴法一〇条二項によると、処分の取消しの訴えとその処分につい
ての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、
裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることがで
きないと規定しているところ、本件の場合、処分の取消しの訴えとその処分につい
ての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができるのであるか
ら、原告らの右違法事由の主張は右規定に反し許されないものであり、主張自体失
当といわなければならない。
次に、右(二)の取消事由について検討する。
国公法は、懲戒処分等に対する不服申立(同法九〇条一項)を受理したときは、
「人事院又はその定める機関は、ただちにその事案の調査をしなければならない」
(同法九一条一項)と定め、右審査請求審理手続を定める人事院規則は、「公平委
員会が提出した調書に基づいて、すみやかに指令で判定を行なうものとする。」
(同規則一三-一第五二条一項)と規定している。右規定の趣旨と人事院における
不利益処分に対する不服申立制度の趣意を併せ考えると、人事院は裁決を社会通念
上相当と認められる期間内になさなければならないことを義務付けられていること
は明らかであり、本件のごとく原告らが人事院に対し最終陳述書を提出した後裁決
がなされるまでに二年四か月を経過したことは、仮に本件事案の複雑さを考慮する
も、既に社会通念上許容された期間を経過しているものとの批判が生ずるところで
ある。
しかし、行訴法は、審査請求による権利救済と裁判による権利救済の調整として、
審査請求前置主義をとる処分についても、審査請求があつた日から三か月を経過し
ても裁決がないときは、裁決を経ないで右取消しの訴えを提起できる(八条二項一
号)とし、又、審査庁を相手として裁決をしないことを理由に不作為の違法確認の
訴えを提起することができる(三条五項)と規定しているところからすると、裁決
が社会通念上相当の期間経過後になされたことだけをもつて、右裁決を違法である
として取消さなければ権利保護に欠けるとまでいうことはできない。よつて、裁決
が遅滞したことは、裁決固有の瑕疵として取消しを求め得る違法事由には当らない
といわなければならない。
原告らの右主張は、主張自体失当というべきである。
第三 以上の次第で、原告らの被告らに対する本訴請求は、いずれも理由がないか
ら棄却することとし、訴訟費用については行訴法七条、民訴法八九条、九三条を適
用して主文のとおり判決する。
(裁判官 上田次郎 松山恒昭 下山保男)

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