弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
2上記の部分につき,被控訴人の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
主文同旨
第2事案の概要
1本件は,栃木県において,栃木県県土整備部交通政策課(以下,同部を「県
土整備部」,同課を「交通政策課」ともいう。)の課長であったA(以下「A
課長」という。)の決裁に基づき,民間団体からの署名協力依頼に応じて栃木
県内の行政機関等に署名協力を依頼する文書が発せられ,取りまとめた署名が
依頼元である民間団体に送られ,この署名協力(以下「本件署名協力」という。)
のために栃木県のコピー用紙,封筒等が使用されたこと(以下「本件物品使用」
という。)につき,栃木県の住民である被控訴人が,控訴人に対し,(1)A課
長の行為は,物品を使用している職員が故意又は重大な過失によりその使用に
係る物品を亡失又は損傷したときに該当し,また,栃木県に対する不法行為に
該当すると主張して,主位的に,地方自治法242条の2第1項4号ただし書
に基づき,A課長に本件物品使用代相当の損害の賠償(133円及びこれに対
する平成20年2月14日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅
延損害金の賠償)の命令をすることを求め,予備的に,同号本文に基づき,A
課長に本件物品使用代相当の損害賠償(133円及びこれに対する平成20年
2月14日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の賠償)
を請求することを求める(以下,(1)の請求を「請求1」という。)とともに,
(2)栃木県知事であるB(以下,損害賠償請求の相手方としての同人を「B知
事」という。)は,A課長の上記行為に関し指揮監督上の義務を怠り栃木県に
損害を与えたと主張して,同号本文に基づき,B知事に本件物品使用代相当の
損害賠償(133円及びこれに対する平成20年2月14日から支払済みまで
民法所定年5分の割合による遅延損害金の賠償)を請求することを求める(以
下,(2)の請求を「請求2」という。)事案である。
被控訴人の主張する損害133円の内訳は,コピー用紙が①受診したメール
のプリントアウトに8枚,②起案・決裁に7枚,③県土整備部内各課への送付
に61枚の合計76枚で100円,封筒が④署名の送付に1枚で33円であ
る。
原審は,請求1につき,④の封筒使用は地方自治法243条の2第1項前段
の「物品を亡失し,又は損傷したとき」当たるが,①②③の用紙使用はこれに
当たらないとして,32円(④の封筒使用分)及びこれに対する平成20年2
月14日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の賠償の命令を求
める限度で主位的請求を認め,③の用紙使用については不法行為責任が認めら
れるが,①②の用紙使用については認められないとして,78円(③の用紙使
用分)及びこれに対する平成20年2月14日から支払済みまで年5分の割合
による遅延損害金の損害賠償の請求を求める限度で予備的請求を認め,その余
をいずれも棄却し,請求2につき,これを棄却した。
控訴人は,控訴人敗訴部分を不服として控訴したが,被控訴人の控訴がない
ので,当審の審理の対象は,原審の認容部分(④の封筒使用についての主位的
請求及び③の用紙使用分についての予備的請求の認容)の当否のみである。
2前提事実(以下の事実のうち,証拠等を掲記したもの以外は,当事者間に争
いのない事実である。)
(1)当事者
被控訴人は,栃木県の住民である。
控訴人は,栃木県知事である。
A課長は,平成19年度当時,交通政策課長であった者,B知事は,同年
度当時,栃木県知事であった者である。
(2)C協議会(乙7)
C協議会(以下「本件協議会」という。)は,地域の自立と交流の一層
の推進や大都市等の交通混雑を解消するため,高速道路ネットワーク1万
4000キロの高速道路が,計画的にかつ最も合理的な方法で整備される
ことを目的に設立された,全国46の促進団体で構成され,各都道府県の
知事と議会議長等が理事を,部長等が幹事を務める組織である。後記D同
盟会は上記促進団体の一つであり,栃木県知事は理事を,栃木県県土整備
部長は幹事を務めていた。
(3)D同盟会(乙13,14)
D同盟会(以下「本件同盟会」という。)は,栃木県,茨城県及び群馬
県の北関東3県の主要都市を結び北関東地域の発展を担う基幹的施設であ
る北関東自動車道の早期実現を図ることを目的として設立された,北関東
自動車道の建設促進に関する事業等を行う組織で,本件協議会の構成団体
となっており,3県の知事が会長及び副会長を,関係市町村の長,各議会
議長,3県及び関係市町村の部課長らが委員及び幹事を務め,本件同盟会
の事務を処理するため,会長所在県の担当部に事務局が置かれている。
本件署名協力が行われた当時,本件同盟会の会長は栃木県知事が務めて
おり,栃木県の県土整備部に本件同盟会の事務局が置かれ,同部交通政策
課高速道路対策室長が事務局長を,その上司である交通政策課長(A課長)
は幹事を務めていた。
(4)交通政策課の事務分掌(乙15)
栃木県行政組織規程には,交通政策課の事務分掌として,「道路整備の
総合的な企画,調整及び推進に関すること」とともに「高速自動車国道の
建設促進に関すること」が掲げられており,交通政策課は,これらの事務
を分掌し,これらの予算を主管する課である。この事務分掌により,本件
同盟会の事務局は交通政策課に置かれていた。
(5)ガソリン税をめぐる状況
ア暫定税率適用期間の延長問題
揮発油税法及び地方道路税法(平成21年法律第13号により地方揮発
油税法に名称が変更された。以下「地方道路税法」という。)は,揮発油
及び揮発油税法6条により揮発油とみなされる物に揮発油税及び地方道
路税(以下,両者を併せて「ガソリン税」ということがある。)を課して
いる(揮発油税法1条,地方道路税法1条)。
昭和39年法律第32号による改正後の揮発油税法における揮発油税
の税率は,揮発油1キロリットルにつき2万4300円(同法9条),同
改正後の地方道路税法における地方道路税の税率は,揮発油1キロリット
ルにつき4400円(同法4条)であった。
昭和49年法律第17号による改正後の租税特別措置法は,昭和49年
4月1日から昭和51年3月31日までの間に揮発油の製造場から移出
され,又は保税地域から引き取られる揮発油に係る揮発油税及び地方道路
税の税額は,揮発油税及び地方道路税の税率に係る上記各規定にかかわら
ず,揮発油1キロリットルにつき,揮発油税にあっては2万9200円の
税率により計算した金額とし,地方道路税にあっては5300円の税率に
より計算した金額とする旨規定し(同改正後の同法89条1項。以下,同
法に基づく揮発油税及び地方道路税の税率を「暫定税率」という。),以
後,同法は暫定税率適用期間の満了日が迫るたびに改正され,時に課税物
件の拡大や税率の引上げ又は引下げを伴いながら,暫定税率適用期間は延
長されてきた。
平成15年法律第8号による改正後の租税特別措置法における暫定税
率適用期間の満了日は平成20年3月31日であり(同改正後の同法89
条2項),同日が迫っていた同年1月ころには,暫定税率適用期間を延長
する法案が国会において成立するか否かが国民の大きな関心事になって
いた。
イ道路特定財源の一般財源化の問題
また,揮発油税等,自動車利用者が自動車に関連して納める税の全部又
は一部は,その使途が道路の整備に関する事業に制限されていたが(平成
15年法律第21号による改正後の道路整備費の財源等の特例に関する
法律3条等。以下,使途が道路の整備に関する事業に制限された財源を「道
路特定財源」という。),平成20年1月ころには,このような使途の制
限を撤廃すべきか否か(いわゆる道路特定財源の一般財源化の問題)が暫
定税率適用期間の延長と併せて議論され,国民の大きな関心事になってい
た。
ウ栃木県知事等の要請行動
後記本件署名活動への協力の依頼があった平成20年1月当時,栃木
県知事,栃木県市長会,栃木県町村会,栃木県市議会議長会,栃木県町村
議会議長会,全国知事会,全国都道府県議会議長会,全国市長会,全国市
議会議長会,全国町村会,全国町村議会議長会及び本件協議会等は,暫定
税率適用期間の延長及び道路特定財源の枠組みの堅持を強く求め,国会や
政府に対し,その旨の要望書等の提出や提言を行っていた。(乙1の1な
いし4,乙2の1ないし6,乙3の1ないし9,乙7,弁論の全趣旨)
(6)本件署名協力
ア本件署名活動への協力の依頼
平成20年1月9日,交通政策課は,栃木県東京事務所から,「道路特
定財源に係る10万人署名への協力依頼等について」と題する電子メール
を受信した。この電子メールは,「E会」という団体(以下「本件団体」
という。)がガソリン税の暫定税率の維持(租税特別措置法を改正して暫
定税率適用期間を延長することを意味する。)を求める署名活動(以下「本
件署名活動」という。)への協力を本件協議会に依頼し,これを受けた本
件協議会が本件団体の作成した下記内容の趣意書,署名協力依頼文,署名
用紙等を本件協議会の会員である他県の東京事務所に転送し,それが栃木
県東京事務所に転送されたものであった。また,本件団体の作成した趣意
書によれば,本件署名活動の目的は,暫定税率,道路特定財源の維持や必
要な道路整備の計画的な実施であった。(乙4の1,2)
(ア)趣意書
「おかげさまで,皆様のご協力により【○○大会】を無事実施すること
ができました。皆さんから頂いたメッセージも取りまとまりましたので,
年内には事業報告をまとめたいと思います。
今回の活動後,11月には,国土交通省から中期計画の素案が提示さ
れ,12月7日には政府・与党において,道路特定財源の暫定税率の延
長や私たちが主張した必要な道路整備を計画的に実施していくことが合
意されました。
しかしながら,未だに,新聞紙上では,道路特定財源の暫定税率の廃
止や一般財源化が大きな問題となっており,中央マスコミにおいては地
方の道路整備はムダだとの報道がされています。
政府・与党で合意はされたものの,最終的には,今後の国会での議論
を経て,法案が成立するまでは,私たちもこれまでの主張や活動を続け
て行く必要があります。
そこで,再度皆さんのご理解ご協力を得ながら署名活動を実施してい
きたいと考えました。目標は,1月末までに10万人の署名を集めます。
この皆さんのご意志を国や国会議員の方々に届けていきたいと思います
のでご協力をお願いします。」
(イ)署名協力依頼文
「日頃から,当会の活動に対しご協力頂きましてありがとうございます。
おかげさまで,皆さんのご協力により11月に【○○大会】に参加する
ことができました。
今回の大会・要望活動後に,国土交通省からは中期計画の素案が提示
され,12月7日には政府・与党において,私たちが主張してきた,道
路特定財源の暫定税率の延長や必要な道路整備を計画的に実施していく
ことが合意されています。
しかしながら,未だに,新聞紙上では,道路特定財源の暫定税率の廃
止や一般財源化が大きな問題となっており,中央マスコミにおいては地
方の道路整備はムダだとの報道がされています。
政府・与党で合意はされたものの,最終的には,今後の国会での議論
を経て,法案が成立するまでは,私たちもこれまでの主張や活動を続け
て行く必要があります。
そこで再度,皆さんのご理解ご協力を得ながら署名活動を実施してい
きたいと考えました。目標は,1月末までに10万人の署名を集めます。
この皆さんのご意志を国や国会議員の方々に届けていきたいと思います
のでご協力をお願いします。」
(ウ)署名用紙
「請願書
ガソリンの暫定税率の維持をお願いします!
今,ガソリンがとっても高騰しています。そんな中,ガソリン税など
の暫定税率(これは道路の渋滞の緩和や道路環境の改善のためにガソリ
ン等に上乗せして課せられている税で,道路利用者が受益者負担の原則
のもとに支払っているものです。今まで道路整備に重要な役割を果たし
てきました。)を,維持をするべきか,廃止すべきかが大きな問題にな
っています。
私たちにとっては,税金が少なくなれば家計の上では大変助かります
ので歓迎したいところです。しかし,ここでガソリン税が下がったら,
私たちが待ち望んでいた道路整備はどうなるのでしょうか?急病の患者
さんを一刻も早く運べる命の道,こどもたちが事故に遭わないですむ道,
トラックにすれ違うたびに怖い思いをしなくてもいい道,都会に新鮮で
おいしい農水産物を傷まずに早く運べる道,遠くの町に安心して通える
道,壊れそうな橋の補強,災害に安全・安心な道…
私たちの住む地域には,まだまだ必要な道路が不足しています。それ
らの道路は,こどもや孫たちの未来のために,地域の未来のために,何
としても整備して頂かなければ困る道路です。
だから,私たちはガソリンの暫定税率を維持することに我慢します。
生活は苦しいけれど,私たちは,こどもや孫たちの未来に悔いを残さな
いために,ガソリン税を払って,大人の,親の責任を果たしたいと思い
ます。
その代わり,私たちが待ち望む道路を一日も早く,計画通りにつくっ
て下さい。
私たちの地域では,(例)
そのことを,ここに賛同頂いた多くの方々の署名と合わせて,切にお
願い申し上げます。
平成20年1月日
E会
(参加団体名)」
イ本件団体
本件団体は,F会,G会,Hフォーラムの3団体の代表が発起人とな
って平成19年10月に発足させた団体である。
ウA課長の決裁
A課長は,本件同盟会の事務局として本件署名活動に積極的に協力すべ
きであると考え,同月15日までに,下記(ア),(イ)の内容の署名協力依
頼文及び署名用紙を添えて,下記(ウ)の文案で栃木県内の各市町長宛て
に,下記(エ)の文案で県土整備部各課宛てに,それぞれ本件署名活動への
協力依頼を行う旨の決裁をした。(乙8)
(ア)署名協力依頼文
前記ア(イ)の署名協力依頼文と同じ
(イ)署名用紙
前記ア(ウ)の署名用紙の「私たちの地域では,(例)」の部分を下記
のとおりとし,末尾の「(参加団体名)」の次に「○○期成同盟会」と
記載したもの

「私たちの地域では,
一子供たちや地域住民が安全に安心して通れるように,歩道の整備
などの安全対策や渋滞対策,橋の補修など,生活を支える道路の
整備を進めてください。
一地域支援のため東北道の6車線化,北関東道の全線開通などの高
速道路をはじめとする基幹ネットワークの整備を進めてくださ
い。」
(ウ)各市町村長宛ての依頼文書案
宛名:各市町村長
差出人名:栃木県県土整備部交通政策課長
表題:道路特定財源に係る署名への協力について(依頼)
依頼文:「日頃から県道路行政にご協力をいただき厚くお礼申し上げま
す。さて,「E会」から,ガソリンの暫定税率の維持を求める署名の
依頼がありました。本県においても道路整備を行う財源は必要であ
り,署名活動には積極的に協力すべきであると考えています。つきま
しては,貴市町村の構成する期成同盟会による署名のご協力お願いし
ます。」
(エ)県土整備部各課宛ての依頼文書案
宛名:関係各位
差出人名:D同盟会事務局長
表題:道路特定財源に係る署名への協力について(依頼)
依頼文:「「E会」から,ガソリンの暫定税率の維持を求める署名の依
頼がありました。本県においても道路整備を行う財源は必要であり,
署名活動には積極的に協力すべきであると考えています。つきまして
は,貴所属職員による署名のご協力お願いします。」
依頼元に関する記載:「依頼元の「E会」は,「G会」他2団体が発起
人となり,一般財源化の流れが進む道路特定財源を守ろうと,全国か
ら賛同者を募り,緊急総決起大会が平成19年11月9日(金)にα
で開催した民間主体の会です。決起大会に続く第2弾の活動として,
今回の署名活動を実施しているところです。」
エ本件署名協力
交通政策課の職員は,同決裁に基づき,栃木県内の31市町長に対して
平成20年1月15日付けで,県土整備部内の12課に対して同月21日
付けで,それぞれ,電子メールを利用して本件署名活動への協力依頼を行
い,A課長は,平成20年2月14日,本件団体に対し,上記協力依頼の
結果集まった署名を送付した。(乙8)
(7)本件物品使用
本件署名協力依頼の電子メールを受信した県土整備部内12課において,
同メールをプリントアウトするために栃木県のコピー用紙61枚が使用さ
れ,A課長は,集まった署名を本件団体に送付するために栃木県の封筒1枚
を使用した。
(8)住民監査請求
被控訴人は,平成20年3月31日,栃木県監査委員に対し,本件署名協
力は地方公務員法35条及び36条2項2号に違反しており,B知事及びA
課長はこれによって栃木県が被った損害を賠償する責任があるとして,地方
自治法242条1項に基づく住民監査請求を行った。
これに対し,栃木県監査委員は,同年5月28日付け書面(甲1)をもっ
て,被控訴人に対し,本件署名協力は地方公務員法35条及び36条2項2
号に違反せず,被控訴人の主張は理由がないとの監査結果を通知した。
(9)本訴提起
被控訴人は,平成20年6月9日,地方自治法242条の2に基づき,本
件訴えを提起した。
第3争点及び争点に関する当事者の主張
1争点
(1)本件署名協力が違憲・違法なものであるか否か
ア憲法15条2項,地方公務員法30条に違反するか否か
イ地方公務員法36条2項2号,同条3項に違反するか否か
ウ地方公務員法35条に違反するか否か
(2)栃木県の損害の有無
(3)A課長の損害賠償責任の有無
2被控訴人の主張
(1)本件署名協力の違法性
ア憲法15条2項,地方公務員法30条違反
本件団体の行った本件署名活動は,当時,政府・与党と野党との間で
政治的対立があった暫定税率適用期間の延長問題について,政府・与党
の政策を支持する意思を表明することによって,暫定税率の維持を実現
させようとするものであり,このような署名活動への一般職公務員の協
力は,「全ての公務員は,全体の奉仕者であって,一部の奉仕者ではな
い。」と規定する憲法15条2項,これを受けて「すべての職員は,全
体の奉仕者として公共の利益のために勤務し,且つ,職務の遂行に当た
っては,全力を挙げてこれに専念しなければならない。」と規定する地
方公務員法30条に違反するものであり,適法な職務行為には当たらな
い。
平成20年1月当時は,暫定税率適用期間の延長問題及び道路特定財
源の一般財源化の問題について,国民又は住民全体の利益,すなわち公
共の利益が何であるかが争われていたのであり,このように公共の利益
が何であるかが争われている中で,国民又は住民の中に有力な反対意見
が存在するにもかかわらず,暫定税率適用期間を延長し,道路特定財源
を維持するという政府・与党の立場を明確に支持している私的団体の行
う署名活動に協力することは,国民又は住民全体の利益,すなわち公共
の利益に反するといわざるを得ず,これに従事した職員の行為は適法な
職務行為とはいえない。
イ政治的行為の制限違反(地方公務員法36条2項2号,同条3項違反)
本件署名活動は,当時,政府・与党と野党との間で政治的対立があっ
た暫定税率適用期間の延長問題について,政府・与党の政策を支持する
意思を表明することによって,暫定税率の維持を実現させようとするも
ので,「政治の方向に影響を与える意図」で行われたものである。この
ような署名運動に一般職公務員が積極的に関与することは地方公務員法
36条2項2号に違反し,また,政治的中立を求められる一般職公務員
に対し本件署名を強いる行為は,暫定税率廃止を期待している個々の公
務員の信条の自由をも侵す違法な行為であり,同条3項に違反する。
ウ職務専念義務違反(地方公務員法35条違反)
本件署名協力は,交通政策課とは無関係な民間団体からの署名協力依
頼に応じるもので,A課長の職務とは無関係な行為であり,また,前記
のとおり,一般職公務員の政治的中立性に反する行為であるから,地方
公務員法35条の定める職務専念義務に違反する。
本件で問題とすべきは,暫定税率が地方の利益かどうかではなく,実
体の分からない本件団体の要請に即時に応じ,政治的中立を求められる
県職員,市・町の職員に対し,当時の政局の鋭い対立であった暫定税率
の是非について,その渦中の一方に与する署名を強いたことの是非であ
る。
(2)栃木県の損害
本件物品使用(コピー用紙61枚,封筒1枚の使用)により,栃木県に
112円相当の損害が生じた。
(3)A課長の損害賠償責任
A課長は,本件署名協力が地方公務員法35条,36条2項2号,同条
3項に違反する行為であることを知っていたか,重大な過失によりこれを
知らず,本件署名協力に関する決裁をし,電子メールによる本件署名協力
依頼を受信した県土整備部内12課においてプリントアウトのために栃木
県のコピー用紙61枚を使用させ,集まった署名を本件団体に送付するため
に栃木県の封筒1枚を使用したのであるから,A課長の行為は,地方自治法
243条の2第1項所定の物品を使用している職員が故意又は重大な過失
によりその使用に係る物品を亡失し,又は損傷したときに該当する。した
がって,A課長は,栃木県に対し,同法243条の2第1項に基づき11
2円の損害を賠償する責任がある。
仮に,A課長の行為がこれに該当しないとしても,A課長は,本件署名
協力が地方公務員法35条,36条2項2号,同条3項に違反する行為で
あることを知っていたか,過失によりこれを知らず,上記行為をしたもの
であり,A課長の行為は,栃木県に対する不法行為に該当する。したがっ
て,A課長は,栃木県に対し,不法行為に基づき112円の損害を賠償す
る責任がある。
よって,被控訴人は,控訴人に対し,A課長の上記行為によって栃木県
に生じた損害につき,A課長に,主位的に地方自治法243条の2第3項
に基づき損害の賠償を命ずることを求め,予備的に不法行為に基づく損害
賠償請求をすることを求める。
3控訴人の主張
(1)本件署名活動への協力の依頼元及び本件署名協力の主体
ア本件団体
前提事実(6)イのとおり,本件団体は,F会,G会,Hフォーラムの3
団体の代表が発起人となって平成19年10月に発足させた団体であ
る。上記3団体は,いずれも従来から地元の道路整備の促進をめざして
地道な活動をしている団体である。
交通政策課は,本件署名協力にあたって,本件団体が平成19年11
月9日に「○○大会」を開催したこと及び政治資金規正法による政治団
体の届出を行っていない団体であることを確認した。
イ本件協議会
前提事実(2)のとおり
ウ本件同盟会
前提事実(3)のとおり
エ交通政策課の事務分掌
交通政策課は,道路整備の総合的な企画,調整及び推進に関すること,
高速自動車国道の建設促進に関することなどの事務を分掌し,これらの予
算を主管する課であり,これらの事務分担に基づき,職務として暫定税率
の維持に関する業務を行ってきた。交通政策課が職務として暫定税率の
維持に関する業務を行っていた理由は,道路特定財源が栃木県及び県内
各市町村にとって貴重な歳入財源であり,平成20年3月末をもって暫
定税率が廃止されれば,平成20年度予算において大きな歳入欠陥が生
じることとなり,県民生活や県政運営に重大な支障を及ぼすこととなる
からである。そのような情勢下において,交通政策課は,本件署名協力
を行う前から,知事による道路特定財源の堅持に関する要望活動に従事
するなど,職務として暫定税率維持に関する業務を行っていた。
また,前提事実(3)のとおり,交通政策課には,本件同盟会の事務局が
置かれており,交通政策課課長であるA課長が本件同盟会の事務を行う
ことは,適法な職務行為であった。
オ本件署名協力の主体
A課長は,本件署名活動の内容が道路特定財源・暫定税率の維持とと
もに道路整備の促進を目的とするものであり,北関東自動車道の建設促
進に関する事業を行う本件同盟会の活動と一致したこと,本件署名活動
への協力の依頼が本件団体から本件協議会を通じて行われたことから,
本件協議会の構成団体である本件同盟会の事務の遂行として,本件署名
協力を行った。
本件署名協力依頼については,「栃木県事務決裁及び委任規則」に基
づき,事務処理について最終的にその意思を決定する決裁権限が交通政
策課長にあったことから,A課長の判断で行ったものである。
(2)本件署名協力の違法性について
ア憲法15条2項,地方公務員法30条違反について
地方公務員法30条の解釈にあたり重要なのは,「公共の利益のため
に」勤務しなければならないとされている点にあり,「全体の奉仕者」
としての行為なのか「一部の奉仕者」としての行為なのかを判別する基
準は,「公共の利益のため」の行為か否かである。したがって,地方公
務員の行為が,「一部の奉仕者」として職務の範囲を逸脱しているか否
かを判定する基準は,それが「公共の利益のため」にされたものか否か
であり,私的な団体に協力する行為であっても,それが「公共の利益の
ため」にされたものであれば,地方公務員法30条に違反しないという
べきである。私的な団体の活動が地方公共団体の施政方針に合致し,そ
れに協力することが「公共の利益」に資すると考えられる場合には,そ
れに協力することは何ら違法ではなく,それに従事した職員の行為は,
職務行為として適法なものであり,地方公務員法30条に違反するもの
ではないというべきである。
そして,何が「公共の利益」であるかは,時々の政治的,経済的,社
会的状況と国民,住民の価値観を前提として,具体的に決定されていく
べきものである。
ところで,本件団体は,私的団体であるが,依頼された署名の内容は,
道路特定財源・暫定税率の維持という「公共の利益」の実現をめざすも
のであり,同団体の会員の私的利益を図ろうとするものではなかった。
また,道路特定財源・暫定税率が廃止された場合,県予算に大きな歳入
欠陥が生じることとなり,県民生活や県政運営に重大な支障を及ぼすこ
とは明らかであり,交通政策課は,本件署名運動への協力を依頼される前
から,栃木県知事による道路特定財源の堅持に関する要望活動に従事する
など,職務として暫定税率適用期間の延長に関する業務を行っていた。
A課長は,以上を踏まえ,本件署名運動への協力依頼に応じたものであ
り,本件署名協力は,「公共の利益」の実現のための行為であって,地方
公務員法30条に違反するものではない。
イ政治的行為の制限違反(地方公務員法36条2項2号,同条3項違反)
について
A課長は,暫定税率適用期間の延長という特定の政策を支持するため本
件署名協力を行ったのであり,同法36条2項にいう「特定の政党その他
の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し,
又はこれに反対する目的」をもって本件署名協力を行ったのではないし,
「公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し,又はこれに反対
する目的」をもって本件署名協力を行ったのでもない。したがって,本件
署名協力は,同条2項2号及び同条3項に違反しない。
ウ職務専念義務違反(地方公務員法35条違反)について
前記(1)オ,(2)アのとおり,A課長は,本件署名活動への協力の依頼
が本件団体から本件協議会を通じて行われたこと,本件署名活動の内容
が道路特定財源・暫定税率の維持とともに道路整備の促進を目的とする
ものであり,北関東自動車道の建設促進に関する事業を行う本件同盟会
の活動と一致することから,本件協議会の構成団体である本件同盟会の
事務の遂行として,本件署名協力を行ったものであり,A課長の同行為
は,交通政策課長としての適法な職務行為であって,地方公務員法35条
に違反しない。
第4当裁判所の判断
1事実関係
本件事実関係は,前提事実記載のとおりであり,さらに,前提事実(4)の交
通政策課の事務分掌,同(5)の諸問題及び栃木県知事の要請行動,同(6)アの
本件署名活動への協力依頼が,本件団体から本件協議会になされ,本件協議
会から他県の東京事務所を経由して本件協議会の構成団体である本件同盟会
の事務局である交通政策課に届いたものであること,同(6)ウ(ウ)の依頼文に
は,依頼内容として「貴市町村の構成する期成同盟会による署名のご協力を
お願いします」との記載があり,同(エ)の依頼文書の依頼元が本件同盟会事
務局長と記載されていること,A課長の陳述書(乙9),証人Aの証言及び
弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められ,これを覆すに足りる証拠
はない。
(1)交通政策課は,道路整備の総合的な企画,調整及び推進に関すること,
高速自動車国道の建設推進に関することなどの事務を分掌し,これらの予
算を主管しているところ,高速自動車国道の建設推進に関することという
分掌事務の一部として,交通政策課に,北関東自動車道の早期実現を図る
ことを目的として設立され北関東自動車道の建設促進に関する事業等を行
う本件同盟会の事務局が置かれて,課長が幹事を務め,A課長を含む同課
の職員は,職務として本件同盟会の事務も行っていた。
(2)A課長は,平成20年3月31日をもって暫定税率が廃止されれば,同
課が住民全体の便益のために分掌事務として行っていた高速自動車国道の
建設推進の妨げになるばかりでなく,平成20年度予算において大きな歳
入欠陥が生じ,県民生活や県政運営に重大な支障を及ぼすことが予想され
たため,高速自動車国道の建設推進に関することという同課の分掌事務の
遂行として,暫定税率適用期間の延長及び道路特定財源の枠組みの堅持を
求める栃木県知事の要請行動に関する業務に従事するなど,職務として暫
定税率維持に関する業務を同課課員とともに行っていた。
(3)A課長は,本件署名活動への協力依頼を受けて,本件団体に関し,前提
事実(6)イの情報を得たほか,平成19年11月9日に緊急総決起大会を開
催したこと及び政治資金規正法による政治団体の届出を行っていない団体
であることを確認した上,本件同盟会として本件署名活動への協力を求め
る旨の上記各依頼文を発して,その結果集まった署名を本件団体に送付す
る本件署名協力に係る行為を行ったものであるが,上記依頼に至る経緯,
上記各依頼文の内容,依頼が本件同盟会から行われたことに照らせば,A
課長は,同課の分掌事務である本件同盟会の事務の遂行として,本件同盟
会の行為として本件署名活動への任意の協力の依頼を行ったものと認めら
れる。そして,A課長は,本件署名活動が,暫定税率,道路特定財源の維持
や必要な道路整備の計画的な実施のため,暫定税率適用期間を延長する法律
の制定を求めるものであり,上記法律が制定されなければ,北関東自動車
道の早期実現及び高速自動車国道の建設推進の妨げとなるので,本件署名協
力に係る行為が,北関東自動車道の早期実現,暫定税率維持及び高速自動車
国道の建設推進に資するものであり,本件同盟会の目的に合致し,交通政策
課が分掌事務として行ってきた暫定税率維持に関する業務に資するもので
あり,高速自動車国道の建設推進に関することという同課の分掌事務の遂
行にも当たるとして,これを行ったものである。
(4)暫定税率適用期間を延長する法律が制定されず,平成20年3月31日
をもって暫定税率が廃止されたことについて,栃木県は,同年4月17日
付けで県の財源不足350億円(道路特定財源148億円,国補助金20
2億円)に対応するため,道路事業の執行停止(200億円相当)を含む
措置を行うことを発表した。
2地方公務員法36条2項2号,同条3項に違反するか
(1)職員の公務員としての全体の奉仕者という立場からの要請に基づき,同
法36条2項本文は,「職員は,特定の政党その他の政治的団体又は特定
の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し,又はこれに反対する目
的をもって,あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持
し,又はこれに反対する目的をもって,次に掲げる政治的行為をしてはな
らない。」と定め,同項2号に「署名運動を企画し,又は主宰する等これ
に積極的に関与すること。」を掲げているが,同項本文の文理から明らか
なとおり,同項が禁止するのは,同項本文で定める目的をもって行う同項
各号所定の行為であって,同項各号所定の行為であっても同項本文で定め
る目的をもって行うものでない行為については,同項の禁止は及ばないの
である。
また,同条3項は,「何人も前2項に規定する政治的行為を行うよう職
員に求め,職員をそそのかし,若しくはあおってはならず,」と定めてい
るが,同項にいう同条2項に規定する政治的行為も,同項本文で定める目
的をもって行う同項各号所定の行為であることは明らかである。
そして,法律の制定や政策の実現を支持する行為が同項本文にいう「支
持し,又はこれに反対する目的をもって」する行為に当たるためには,単
に特定の政党その他の政治的団体が主張し,内閣が制定や実現を図り,地
方公共団体の執行機関が支持する法律や政策と同一の法律の制定や同一の
政策の実現を支持するのみでは不十分であって,これを超えて,「特定の
政党その他の政治的団体」については,それらの団体自体を支持する目的
をもって行われることを要し,「特定の内閣若しくは地方公共団体の執行
機関」については,これらの機関自体の存続又は成立の目的をもって行わ
れることを要するものと解すべきであり,支持する対象となる特定の政党
その他の政治的団体,内閣,地方公共団体の執行機関が具体的且つ明確に
表示されなければならないと解すべきである。
(2)前判示の事実関係によれば,前提事実(6)ウ(ウ),(エ)の各依頼文の文
面には,特定の政党その他の政治的団体,特定の内閣,地方公共団体の執行
機関名が表示されているとは認められず,また,上記依頼文書に添付された
同(ア),(イ)の署名協力依頼文及び署名用紙にも,さらに,本件団体作成の
同(6)ア(ア)の趣意書にも,前記法律の制定や政策の実現を支持することを
超えて,特定の政党その他の政治的団体自体を支持する目的をもって本件署
名活動が行われる旨が記載されているとは認められず,特定の内閣,地方公
共団体の執行機関自体の存続又は成立の目的をもって本件署名活動が行わ
れる旨が記載されているとも認められない。そして,前判示のとおり,A
課長は,本件署名活動が,暫定税率,道路特定財源の維持や必要な道路整備
の計画的な実施のため,暫定税率適用期間を延長する法律の制定を求めるも
のであり,上記法律が制定されなければ,北関東自動車道の早期実現及び
高速自動車国道の建設推進の妨げとなるので,本件署名協力に係る行為が,
北関東自動車道の早期実現,暫定税率維持及び高速自動車国道の建設推進に
資するものであって,本件同盟会の目的に合致し,交通政策課が分掌事務と
して行っていた暫定税率維持に関する業務に資するものであり,高速自動
車国道の建設推進に関する分掌事務の遂行にも当たるとして,交通政策課
の分掌事務である本件同盟会の事務の遂行として本件署名協力に係る行為
をしたものであるところ,本件署名協力に至る経緯,各依頼文の内容,宛
先,依頼が本件同盟会から行われたこと,栃木県における県知事,市長会,
町村会,市議会議長会,町村議会議長会等の要請行為の内容など前判示の
事実関係によれば,本件署名協力に係る行為が北関東自動車道の早期実現と
いう本件同盟会の目的に合致し,暫定税率維持及び高速自動車国道の建設推
進にも資するものとして行われたことは,本件署名協力の依頼を受けた者
も了知したものと推認される。
以上によれば,特定の政党が上記法律の制定を支持し,本件署名活動の
主張する政策の実現を求めていたとしても,このことから直ちに,A課長
の本件署名協力に係る行為が,単にその政党の主張するものと同一の法律
の制定を求め政策の実現を支持することを超えて,上記政党自体を支持す
る目的をもって行われたとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠
はない。また,内閣がこの法律の制定を図り,地方公共団体の執行機関が
これを支持していたとしても,同課長の本件署名協力に係る行為が内閣や
上記執行機関の存続又は成立の目的をもって行われたとも認められない。
したがって,A課長の本件署名協力に係る行為は,同法36条2項本文の
規定する「特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公
共団体の執行機関を支持し,又はこれに反対する目的」で行われた行為に
当たるとは認められず,同項に違反することを認めるに足りる証拠はない。
以上によれば,A課長の本件署名協力に係る行為は同法36条2項2号,
同条3項に違反するとは認められず,これが上記各規定に違反するもので
あるから適法な職務行為とはいえないとする被控訴人の主張は採用するこ
とができない。
3憲法15条2項,地方公務員法30条に違反するか
(1)憲法15条2項は,「すべて公務員は,全体の奉仕者であって,一部の
奉仕者ではない。」と定め,これを受けて,地方公務員法30条は,「す
べて職員は,全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し,且つ,職務
の遂行に当っては,全力を挙げてこれに専念しなければならない。」と定
めている。
同条の規定は,地方の政治が,住民の全体から信託を受けたものであり,
この信託に基づく政策を実施する公務員は,住民全体に対して,住民全体
の利益,すなわち公共の利益を増進するために奉仕すべきであることを明
らかにしたものである。
他方,普通地方公共団体が特定の団体の行う活動に協力すること自体を
明文で禁止する法の定めがなく,地方自治法232条の2が,「普通地方
公共団体は,その公益上必要がある場合においては,寄附又は補助をする
ことができる。」と定め,公益上必要がある場合に普通地方公共団体が特
定の団体に寄附又は補助して利益を与えることまで許容していること及び
地方公務員法30条の文理も考え併せると,同条は,地方公務員がその職
務として特定の団体の行う活動に協力することを一切禁止するものではな
く,同条により禁止されるのは,住民全体の利益である公共の利益のため
に行われるのではなく,協力の相手方など一部の者の利益のために行われ
る行為であると解するのが相当であり,このような行為は,公共の利益の
ために行われるものとはいえず,適法な職務行為には当たらないというべ
きである。
(2)そして,前判示の事実関係によれば,交通政策課の高速自動車国道の建
設推進に関する分掌事務の一部として,交通政策課に本件同盟会の事務局
が置かれ,A課長を含む同課の職員は職務として本件同盟会の事務も行っ
ていたところ,A課長がその職務として本件同盟会の事務を遂行する行為
は,同会に協力し利益を与えるものではあるが,同会の目的,構成員,同
課の分掌事務など前判示の事実関係に照らせば,普通地方公共団体の機関
など他の構成員と協力して,住民全体の利益のため北関東自動車道の早期
実現を目的とする事業等を行うものであり,住民全体の利益ではなく一部
の者の利益のために行われるものとは認められず,公共の利益のために行
われるものでないということはできない。なお,被控訴人もA課長が本件
同盟会の事務を扱うこと自体が地方公務員法30条,35条に違反するも
のでないことは認めているところである(被控訴人平成22年9月30日
準備書面)。そして,本件署名活動が,暫定税率,道路特定財源の維持や必
要な道路整備の計画的な実施のため,暫定税率適用期間を延長する法律の制
定を求めるものであり,上記法律が制定されなければ,高速自動車国道の
建設推進の妨げとなるばかりでなく,北関東自動車道の早期実現の妨げと
なることも予想されたのであるから,A課長の本件署名協力に係る行為は,
本件同盟会の目的に合致するものと認められ,その目的を達成する上で必要
性のない行為とはいえないものである。
また,本件署名活動への協力の依頼があった平成20年1月当時,暫定
税率適用期間の満了日が同年3月31日に迫っており,暫定税率適用期間
を延長する法案が国会で審理され,道路特定財源の一般財源化についても
議論がされており,栃木県においては栃木県知事,栃木県市長会,栃木県
町村会,栃木県市議会議長会,栃木県町村議会議長会等が,全国において
は全国知事会,全国都道府県議会議長会,全国市長会,全国市議会議長会,
全国町村会,全国町村議会議長会等が,また本件協議会も,暫定税率適用
期間の延長及び道路特定財源の枠組みの堅持を強く求め,国会や政府に対
し,その旨の要請行動等を行っていたところ,これらの要請行為が,住民
全体の利益のためでなく一部の者の利益のために行われたとは認めるに足
りる証拠はない。そして,A課長は,道路整備の総合的な企画,調整及び
推進に関すること,高速自動車国道の建設推進に関することなどの事務を
分掌し,これらの予算を主管する交通政策課の課長として,同年3月31
日をもって暫定税率が廃止されれば,住民全体の便益のために同課が分掌
事務として行っている高速自動車国道の建設推進の妨げになるばかりでな
く,平成20年度予算において大きな歳入欠陥が生じ,県民生活や県政運
営に重大な支障を及ぼすことになるとして,同課の上記分掌事務の遂行と
して,栃木県知事の上記要請行動に関する業務に従事するなど,暫定税率
維持に関する業務を行っていたことが認められる。本件署名活動が暫定税
率,道路特定財源の維持や必要な道路整備の計画的な実施のため,暫定税率
適用期間を延長する法律の制定を求めるものであり,上記法律が制定され
なければ,高速自動車国道の建設推進の妨げとなることが予想されたこと
は前判示のとおりであるから,A課長の本件署名協力に係る行為は,交通
政策課の分掌事務として行ってきた暫定税率維持に関する上記業務に資す
るものであり,同課が住民全体の便益のために行っていた高速自動車国道
の建設促進に関する分掌事務の遂行にも当たるものと認められる。
以上判示の各点を総合考慮すれば,A課長が交通政策課の分掌する本件同
盟会の事務の遂行として行った本件署名協力に係る行為は,住民全体の利
益ではなく協力の相手方である本件団体など一部の者の利益のために行わ
れたものとは認めるに足りず,公共の利益のために行われたものでないと
いうことはできない。したがって,A課長の本件署名協力に係る行為が法
の許容しないものであると認めることはできないというべきである。
(3)被控訴人は,暫定税率期間や道路特定財源の適用については,国民又は
住民全体の利益,すなわち公共の利益が何であるかが争われていたのであ
り,このように公共の利益が何であるかが争われ,国民又は住民の中に有
力な反対意見が存在するにもかかわらず,暫定税率適用期間を延長し,道
路特定財源を維持するという政府・与党の立場を明確に支持している私的
団体の行う署名活動に協力することは,国民又は住民全体の利益,すなわ
ち公共の利益に反すると主張する。
しかし,住民の間に政治的対立のある事項に係る職員の行為の規律につ
いては,全体の奉仕者という立場からの要請に基づく制約を定める地方公
務員法36条が設けられているところ,A課長の本件署名協力に係る行為
が同条に違反するものとは認められないことは,前判示のとおりである。
そして,A課長の本件署名協力に係る行為が協力行為の相手方である本件
団体など一部の者の利益のために行われたとは認めるに足りないことも,
前判示のとおりであり,上記暫定税率適用期間の延長等について,住民の
間に政治的対立があり,それが住民全体の利益である公共の利益に適うも
のではないという有力な反対意見が存在するとしても,それのみによって,
A課長の上記行為が公共の利益のために行われるものでないと認めること
はできない。したがって,本件事実関係の下において,暫定税率適用期間
を延長する法律の制定等について国民又は住民の間に政治的対立が存在し
て賛否が分かれ,本件署名活動に対して有力な反対意見が存在したという
事情は,上記判断を左右するに足りるものではなく,被控訴人の上記主張
は採用することができない。
以上によれば,A課長の本件署名協力に係る行為は,憲法15条2項,
地方公務員法30条に違反するとは認められず,これが,上記の各規定に
違反するものであるから適法な職務行為に当たらないとする被控訴人の主
張は採用することができない。
4本件署名協力が地方公務員法35条に違反するか否か
前記3のとおり,A課長の本件署名協力に係る行為は,本件同盟会の事
務であると同時に交通政策課の分掌する事務の遂行として行われたものであ
り,法の許容するものでないとは認められないのであるから,同法35条に
違反するとは認められず,これが同条に違反するので適法な職務行為に当た
らないとする被控訴人の主張は採用することができない。
5結論
以上によれば,本件署名協力は違憲・違法なものであるとの被控訴人の主
張は認めることができないのであるから,その余の点を判断するまでもなく,
被控訴人の請求は理由がない。
そうすると,原審が認容した被控訴人の請求は,主位的請求,予備的請求
ともいずれも棄却すべきところ,これを認容した原判決は不当であり,本件
控訴は理由があるから,原判決中控訴人敗訴部分を取り消した上,同部分に
つき被控訴人の請求を,上記主位的請求に係る予備的請求も含めて,いずれ
も棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第5民事部
裁判長裁判官大竹たかし
裁判官山﨑まさよ
裁判官栗原壯太
(原判決等の表示)
主文
1被告は,Aに対し,32円及びこれに対する平成20年2月14日から支
払済みまで年5分の割合による金員の賠償の命令をせよ。
2被告は,Aに対し,78円及びこれに対する平成20年2月14日から支
払済みまで年5分の割合による金員を栃木県に支払うよう請求せよ。
3原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は,これを5分し,その3を原告の負担とし,その余は被告の負
担とする。
事実及び理由
第1請求
1(1)主位的請求
被告は,Aに対し,133円及びこれに対する平成20年2月14日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員の賠償の命令をせよ。
(2)予備的請求
被告は,Aに対し,133円及びこれに対する平成20年2月14日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を栃木県に支払うよう請求せよ。
2被告は,Bに対し,133円及びこれに対する平成20年2月14日から
支払済みまで年5分の割合による金員を栃木県に支払うよう請求せよ。
第2事案の概要
本件は,栃木県県土整備部交通政策課(以下,それぞれ単に「県土整備
部」,「交通政策課」という。)の課長であったA(以下「A課長」とい
う。)が,民間団体からの署名協力依頼にこたえ,栃木県内の行政機関に
署名協力を依頼する文書を発し,取りまとめた署名を依頼元である民間団
体に送ったところ,栃木県の住民である原告が,A課長は,上記行為によ
りその使用に係る物品(用紙及び封筒)を亡失又は損傷したものであると
して,被告に対し,主位的に,地方自治法242条の2第1項4号ただし
書に基づき,A課長に用紙及び封筒代相当の損害の賠償の命令をすること
を求め(第1の1(1)),予備的に,同号本文に基づき,A課長に用紙及び
封筒代相当の損害賠償を請求することを求める(第1の1(2)。以下,第1
の1(1)と併せて「請求1」という。)とともに,栃木県知事であるB(以
下,損害賠償請求の相手方としての同人を「B知事」という。)にはA課
長の上記行為に関して指揮監督上の義務違反があるとして,被告に対し,
同号本文に基づき,B知事に用紙及び封筒代相当の損害賠償を請求するこ
とを求めている(第1の2。以下「請求2」という。)事案である。
1前提事実等(争いのない事実,括弧内掲記の証拠により容易に認められる
事実及び法律等の定め)
(1)当事者等
ア原告は,栃木県の住民である。
イ被告は,栃木県知事である。
ウA課長は,平成19年度当時,交通政策課長であった者である。B知
事は,同年度当時,栃木県知事であった者である。
(2)揮発油税法及び地方道路税法(平成21年法律第13号により地方揮
発油税法に名称が変更された。以下「地方道路税法」という。)は,揮
発油(温度15度において0.8017を超えない比重を有する炭化水
素油をいう。揮発油税法2条1項)及び揮発油税法6条により揮発油と
みなされる物に揮発油税及び地方道路税(以下,両者を併せて「ガソリ
ン税」ということがある。)を課している(揮発油税法1条,地方道路
税法1条)。昭和39年法律第32号による改正後の揮発油税法におけ
る揮発油税の税率は,揮発油1キロリットルにつき2万4300円(同
法9条),同改正後の地方道路税法における地方道路税の税率は,揮発
油1キロリットルにつき4400円(同法4条)であった。
昭和49年法律第17号による改正後の租税特別措置法は,昭和49
年4月1日から昭和51年3月31日までの間に揮発油の製造場から移
出され,又は保税地域から引き取られる揮発油に係る揮発油税及び地方
道路税の税額は,揮発油税及び地方道路税の税率に係る上記各規定にか
かわらず,揮発油1キロリットルにつき,揮発油税にあっては2万92
00円の税率により計算した金額とし,地方道路税にあっては5300
円の税率により計算した金額とする旨規定し(同改正後の同法89条1
項。以下,同法に基づく揮発油税及び地方道路税の税率を「暫定税率」
という。),以後,同法は暫定税率適用期間の満了日が迫るたび改正さ
れ,時に課税物件の拡大や税率の引上げ又は引下げを伴いながら,暫定
税率適用期間は延長されてきた。
平成15年法律第8号による改正後の租税特別措置法における暫定税
率適用期間の満了日は平成20年3月31日であり(同改正後の同法8
9条2項),同日が迫っていた同年1月ころには,暫定税率適用期間を
延長する法案が国会において成立するかが国民の大きな関心事になって
いた(公知の事実)。
(3)また,揮発油税等,自動車利用者が自動車に関連して納める税の全部
又は一部は,その使途が道路の整備に関する事業に制限されていたが(平
成15年法律第21号による改正後の道路整備費の財源等の特例に関す
る法律3条等。以下,使途が道路の整備に関する事業に制限された財源
を「道路特定財源」という。),平成20年1月ころには,このような
使途の制限を撤廃すべきか(いわゆる道路特定財源の一般財源化)が暫
定税率適用期間の延長と併せて議論され,国民の大きな関心事になって
いた(公知の事実)。
(4)A課長は,平成20年1月15日までに,「E会」という団体からガ
ソリン税の暫定税率の維持(租税特別措置法を改正して暫定税率適用期
間を延長することを意味する。)を求める署名活動(以下「本件署名活
動」という。)への協力依頼を受け,これに積極的に協力すべきである
と考え,栃木県内の31市町長及び県土整備部内の12課あてにそれぞ
れ本件署名活動への協力依頼を行う旨の決裁をした(乙8)。交通政策
課の職員は,同決裁に基づき,栃木県内の31市町長に対しては平成2
0年1月15日付けで,県土整備部内の12課に対しては同月21日付
けで,それぞれ,電子メールを利用して本件署名活動への協力依頼を行
った(以下「本件署名協力依頼」という。)。
(5)A課長は,「E会」に対し,平成20年2月14日,本件署名協力依
頼の結果集まった署名を送付した。
(6)原告は,栃木県監査委員に対し,平成20年3月31日,本件署名協
力依頼は地方公務員法35条及び36条2項2号に違反しており,B知
事及びA課長はこれによって栃木県が被った損害を賠償する責任がある
として,地方自治法242条1項に基づく住民監査請求を行った。これ
に対し,栃木県監査委員は,同年5月28日付けで,本件署名協力依頼
は地方公務員法35条及び36条2項2号に違反せず,原告の主張は理
由がないと判断した。(甲1)
(7)原告は,平成20年6月9日,本件訴えを提起した(記録上明らかな
事実)。
2争点及びこれに関する当事者の主張
(1)本件署名協力依頼に関連する用紙及び封筒の使用が「物品を使用して
いる職員が故意又は重大な過失により」「その使用に係る物品を亡失し,
又は損傷したとき」(地方自治法243条の2第1項前段)に該当し,
あるいは栃木県に対する不法行為(民法709条)に該当するか(請求
1)。
(原告の主張)
本件署名協力依頼等本件署名活動への協力は,交通政策課とは無関係
の「E会」という民間団体からの署名協力依頼に応じるもので,A課長
の職務とは無関係な行為であり,地方公務員法35条の職務専念義務に
違反する行為である。また,本件署名活動は,当時,政府・与党と野党
との間で政治的対立があった暫定税率適用期間の延長問題について政府
・与党の政策を支持する内容のものであったから,本件署名協力依頼は
同法36条2項2号及び3項の定める政治的行為の制限に違反する。そ
して,A課長は,本件署名協力依頼に関し133円相当の交通政策課に
おいて使用する栃木県所有の用紙及び封筒(交通政策課職員が受信した
電子メール及び添付ファイルの各内容をプリントアウトさせた用紙8枚,
本件署名協力依頼に関する起案・決裁に使用した用紙7枚,本件署名活
動に協力するために県土整備部内の12課で使用された用紙61枚,A
課長が集まった署名を「E会」にあてて送付する際に使用した封筒1枚)
を交通政策課職員に使用させ又は自ら使用し,その使用に係る物品を亡
失又は損傷した。A課長には上記物品の亡失又は損傷について故意があ
るか,少なくともA課長は本件署名協力依頼が地方公務員法35条並び
に36条2項2号及び3項に違反することを容易に認識することができ
たから,重大な過失がある。
仮に本件署名協力依頼に関連して用紙及び封筒を使用したことが故意
又は重大な過失による物品の亡失又は損傷に当たらないとしても,A課
長が本件署名協力依頼に関連して栃木県の所有する用紙及び封筒を交通
政策課職員に使用させ又は自ら使用した行為は,栃木県に対する不法行
為に該当する。
(被告の主張)
交通政策課は,道路整備の総合的な企画,調整及び推進に関すること,
高速自動車国道の建設促進に関することなどの事務を分掌し,これらの
予算を主管する課であり,本件署名協力依頼を行う以前から,栃木県知
事による道路特定財源の堅持に関する要望活動に従事するなど,職務と
して暫定税率適用期間の延長に関する業務を行っていた。交通政策課長
はこのような交通政策課の事務及び予算を総括する立場にあるところ,
A課長は,道路特定財源が栃木県及び県内市町にとって貴重な財源であ
り,暫定税率が平成20年3月31日で廃止されることになれば,平成
20年度予算に大きな歳入欠陥が生じ,県民生活や県政運営に重大な支
障を及ぼすことから,そのような事態を避けるために本件署名協力依頼
を行った。したがって,本件署名協力依頼は,A課長が交通政策課長の
職務として行ったものであり,地方公務員法35条に違反しない。
また,A課長は,暫定税率適用期間の延長という特定の政策を支持す
るため本件署名協力依頼を行ったのであり,同法36条2項にいう「特
定の政党その他の政治団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行
機関を支持し,又はこれに反対する目的」をもって本件署名協力依頼を
行ったのではないし,「公の選挙又は投票において特定の人又は事件を
支持し,又はこれに反対する目的」(同条項)をもって本件署名協力依
頼を行ったのでもない。したがって,本件署名協力依頼は,同条2項2
号及び3項に違反しない。
(2)本件署名協力依頼に関するB知事の不作為が栃木県に対する不法行
為(民法709条)に該当するか(請求2)。
(原告の主張)
B知事は,A課長に対し,地方公務員法等の関係法規の習得に努めさ
せ,本件署名協力依頼が地方公務員法に違反しないかどうかの検討を指
示すべき指揮監督上の義務があったにもかかわらず,これを行わなかっ
た。そのため,栃木県は,本件署名協力依頼の実施により,用紙及び封
筒代相当の損害を被った。B知事の上記不作為は,栃木県に対する不法
行為に該当する。
(被告の主張)
本件署名協力依頼は地方公務員法35条並びに36条2項2号及び3
項に違反せず,B知事に原告が主張するような指揮監督上の義務はない
から,B知事の不作為は栃木県に対する不法行為に該当しない。
第3争点に対する判断
1事実関係
前記前提事実等に証拠(甲1,2,乙1の1ないし3,乙2の2,乙4の
1,2,乙5,7ないし9,証人A)及び弁論の全趣旨により認められる事
実を総合すると,以下の事実が認められる。
(1)暫定税率適用期間の満了日が約半年後に近づいた平成19年10月
ころ以降,各地の地方公共団体は,その歳入源であるガソリン税等道路
特定財源及びその暫定税率の維持を求める立場を明らかにしていた。栃
木県内においても,栃木県市長会が同年10月17日に,栃木県町村会
が同月22日にそれぞれ道路特定財源の維持等を求める緊急決議を行っ
た。B知事も,総理大臣官邸,国土交通省及び財務省に対し,同月31
日付け「道路特定財源の堅持に関する要望書」を提出し,また,他の関
東甲信8都県の知事と連名で,財務大臣に対し,同年12月12日付け
「地方の道路整備と道路特定財源に関する緊急提言」を提出し,同趣旨
の提言等を行うなど,同様の立場に立つことを表明していた(乙1の1
ないし3,乙2の2)。
交通政策課は,道路整備の企画調整に関すること,道路整備事業の総
合調整に関すること,D同盟会(栃木県,茨城県及び群馬県が加盟し,
栃木県知事が会長を務める北関東自動車道の建設促進活動を行う団体で
あり,高速道路ネットワークの早期実現に向けた活動を行うC協議会の
構成団体である。)に関することなどの事務を分掌するとともに,これ
らの事務に関する予算の主管課であった。また,交通政策課長は,交通
政策課の事務及び予算を総括していた。A課長は,本件署名協力依頼以
前から,上記B知事の立場に従い,同知事が道路特定財源の堅持を求め
て行う要望活動を補佐するなどの事務を行っていた。(甲1,乙7,9,
証人A)
(2)「E会」は,「F会」,「G会」及び「Hフォーラム」の3団体が発
起人となって設立された,栃木県とは無関係な私的団体であるが,平成
19年11月9日,東京都千代田区のαにおいて,道路特定財源を一般
財源化することに反対する総決起大会を開催し,大会後,行進及び政府
や各政党への要望活動を行った(乙4の2,乙5)。さらに,「E会」
は,上記総決起大会に参加した関係者及び関係団体などに対し,同年1
2月20日付けで,暫定税率を維持するよう国又は国会議員に求める趣
旨の署名に協力するよう依頼した(乙4の2)。
「E会」から上記署名協力依頼の電子メールを受信したC協議会「I」
編集部職員は,同電子メールを広島県東京事務所職員に転送した。その
後,栃木県東京事務所に転送された同電子メールは,平成20年1月9
日,交通政策課職員に転送された。(乙4の1)
(3)上記(2)の電子メールには,「E会」名義の署名協力依頼文書及び請
願書が添付されていた。このうち,署名協力依頼文書は,「日頃から,
当会の活動に対しご協力頂きましてありがとうございます。(中略)政
府・与党において,私たちが主張してきた,道路特定財源の暫定税率の
延長や必要な道路整備を計画的に実施していくことが合意されています。
しかしながら,未だに,新聞紙上では,道路特定財源の暫定税率の廃止
や一般財源化が大きな問題となっており,中央マスコミにおいては地方
の道路整備はムダだとの報道がされています。政府・与党で合意はされ
たものの,最終的には,今後の国会での議論を経て,法案が成立するま
では,私たちもこれまでの主張や活動を続けて行く必要があります。そ
こで再度,皆さんのご理解ご協力を得ながら署名活動を実施していきた
いと考えました。目標は,1月末までに10万人の署名を集めます。こ
の皆さんのご意志を国や国会議員の方々に届けていきたいと思いますの
でご協力をお願いします。」等と記載されたものであった。また,請願
書は,「今,ガソリンがとっても高騰しています。そんな中,ガソリン
税などの暫定税率(中略)を,維持するべきか,廃止すべきかが大きな
問題になっています。(中略)私たちはガソリンの暫定税率を維持する
ことに我慢します。(中略)その代わり,私たちが待ち望む道路を一日
も早く,計画通りにつくって下さい。(中略)そのことを,ここに賛同
頂いた多くの方々の署名と合わせて,切にお願い申し上げます。」と記
載され,下部に10名分の署名欄が設けられたものであった。(乙4の
1,2)
(4)A課長は,交通政策課職員から前記(2)の電子メールを受信したとの
報告を受け,同電子メールの内容を確認するため,同職員に同電子メー
ル及び添付ファイルの各内容をプリントアウトさせ,その内容を検討し
た結果,依頼にこたえて署名に協力する方向で決裁を取ることとし,同
職員に対し,そのための決裁文書を起案するよう指示した(甲1,2,
証人A)。指示を受けた同職員は,交通政策課長から栃木県の各市町長
に対しての依頼文及びD同盟会事務局長(同事務局長は,交通政策課の
職員が務めていた。)から県土整備部内の12課に対しての依頼文の各
案を起案し,これらそれぞれに前記(3)の「E会」名義の署名協力依頼文
書1枚及び同名義の請願書1枚を添付したものを各協力依頼の案文とし,
さらに,決裁資料として,「E会」が作成した署名協力の手順等を記載
した書面を末尾に添付して,課内の決裁に上げた。(甲1,乙4の2,
乙8)。
交通政策課の職員7名(D同盟会事務局長を務める交通政策課職員を
含む。)及び最終決裁権者のA課長は,同起案の内容をそのまま了承す
る旨決裁した。なお,上記決裁においては,「E会」の具体的な設立経
緯,設立者及び構成員,活動内容その他団体の性質や栃木県との関係等
は何ら明らかにされておらず,A課長も,上記決裁当時,同会が暫定税
率適用期間の延長を求めて活動している女性主体の民間団体であるとい
う以上の認識を有していなかった。また,A課長は,それまで公務とし
て私的団体の署名活動に協力したことはなかった。(甲1,2,乙8,
証人A)
(5)上記(4)の決裁に基づき,交通政策課職員は,栃木県内の31市町長
に対しては,本件署名活動への協力を依頼する交通政策課長名の平成2
0年1月15日付け文書を添付した電子メールを送信し,県土整備部内
の12課に対しては,本件署名活動への協力を依頼するD同盟会事務局
長名の同月21日付け文書を添付した電子メールを送信した(乙8,9,
証人A)。
(6)A課長は,「E会」に対し,平成20年2月14日,本件署名協力依
頼の結果集まった約5000名分の署名を送付し,その際,栃木県所有
に係る封筒1枚を使用した(乙9,証人A)。
(7)前記(4)の電子メール及び添付文書のプリントアウトに8枚の,起案
・決裁文書の作成に7枚の,前記(5)の電子メールを受けた県土整備部内
12課における電子メールのプリントアウト及び署名用紙のコピーに6
1枚の,交通政策課及び県土整備部内で使用されていた栃木県所有のA
4判用紙が使用された。このA4判用紙の購入価格は,1箱(2500
枚入り)で1240円(消費税抜き)であり,用紙1枚当たりの複写サ
ービス費用は0.73円(消費税抜き)である。したがって,用紙1枚
を複写に用いた場合に掛かる費用(消費税込み)は,以下の計算により,
1.2873円((1240円÷2500枚+0.73円)×1.05)
である。(甲1,2,乙8,証人A)
用紙1枚にコンピュータ内のデータをプリントアウトした場合に掛か
る費用(消費税込み)も同額である(甲2,弁論の全趣旨)。
また,A課長が本件署名協力依頼により集まった署名を送る際に使用
した封筒の購入価格は,10枚入りで328円であった(甲1,2)。
2本件署名協力依頼に関連する用紙及び封筒の使用が「物品を使用している
職員が故意又は重大な過失により」「その使用に係る物品を亡失し,又は損
傷したとき」(地方自治法243条の2第1項前段,主位的請求),あるい
は栃木県に対する不法行為(民法709条,予備的請求)に該当するかにつ
いて(請求1)
(1)主位的請求について
ア地方自治法243条の2第1項前段によれば,一般職に属する地方公
務員(以下「職員」という。)は,故意又は重大な過失により,その使
用に係る物品を亡失し,又は損傷したときは,これによって生じた損害
を賠償しなければならない。このうち,職員がその所属する地方公共団
体から支給を受けた用紙や封筒などの事務用品を使用した場合,これら
の物品は職員がその職務を遂行するために支給されるものであるから,
当該職員がその職務と無関係の用途にこれらの物品を使用したときに
は,地方公務員法の定める職務専念義務(地方公務員法35条)や政治
的行為の制限(同法36条2項及び3項)に違反するか否かを検討する
までもなく,「物品を亡失し,又は損傷したとき」に当たると解される
が,当該職員がその職務のためにこれらの物品を使用したときには,特
段の事情のない限り,「物品を亡失し,又は損傷したとき」に当たると
解することはできない。
原告は,本件署名協力依頼に関連する用紙等の使用が地方自治法上の
上記規定に該当する旨主張するので,以下これらの使用ごとに順次検討
する。
イ電子メール及び添付ファイルの各内容のプリントアウトに係る用紙
8枚の使用について
同電子メールは,前記のとおり栃木県東京事務所の職員から交通政策
課職員に送信されたものである。したがって,同電子メールが栃木県の
業務に関係する内容を含む可能性が高かったといえるから,交通政策課
長はその職務としてその内容やそれへの対応を検討する必要があった
と認められる。また,そのためには同電子メール及び添付ファイルの各
内容をプリントアウトさせてそれを閲覧することが便宜であり,前記の
とおりその費用も低額であったから,交通政策課長がこの電子メール及
び添付ファイルの各内容をプリントアウトさせたことが職務の遂行の
方法として不相当であったとはいえない。
以上によれば,A課長が交通政策課職員の報告を受け,同電子メール
の内容を確認するため,同電子メール及び添付ファイルをプリントアウ
トさせた行為は,その職務の範囲内の行為であると認められ,前記特段
の事情も認められない。なお,A課長の同行為が職員としての職務専念
義務や政治的行為の制限に違反するとは認められない。
したがって,上記用紙の使用は,地方自治法243条の2第1項前段
の「物品を亡失し,又は損傷したとき」に当たらないから,A課長は,
同用紙の使用につき,同項前段による損害賠償責任を負わない。
ウ起案・決裁のための用紙7枚の使用について
上記用紙の使用は,前記のとおり栃木県東京事務所の職員が交通政策
課職員に対してした依頼に対する対応を交通政策課内で検討するため
の使用であるから,その職務のための使用であると認められ,前記特段
の事情も認められない。なお,A課長の上記起案の指示や決裁が職員と
しての職務専念義務や政治的行為の制限に違反するとは認められない。
したがって,上記用紙の使用は,地方自治法243条の2第1項前段
の「物品を亡失し,又は損傷したとき」に当たらないから,A課長は,
同用紙の使用につき,同項前段による損害賠償責任を負わない。
エ県土整備部内の12課による用紙61枚の使用について
前記のとおり,A課長らの決裁に基づき,交通政策課職員が県土整備
部内の12課に対し電子メールにより本件署名協力依頼をし,これを受
けた県土整備部内12課がプリントアウト及び署名用紙のコピーに用
紙を使用した。交通政策課以外の課が使用した用紙はA課長の使用に係
る物品とは認められないところ,上記用紙の中にA課長の使用に係る用
紙があるかどうかは,本件全証拠によっても明らかではない。
したがって,上記用紙は,A課長の「使用に係る物品」であるとは認
められないから,A課長は,上記用紙の使用につき,地方自治法243
条の2第1項前段による損害賠償責任を負わない。
オ集まった署名送付の際の封筒1枚の使用について
(ア)すべて公務員は,全体の奉仕者であって,一部の奉仕者であって
はならず(憲法15条2項),職員は,全体の奉仕者として公共の利
益のために勤務し,かつ,職務の遂行に当たっては,全力を挙げてこ
れに専念しなければならないのであるから(地方公務員法30条),
職員が専ら特定の私的団体の活動に協力することは,職員の職務の範
囲を逸脱し,適法な職務行為となるものではなく,そのことは,当該
私的団体の活動目的や活動内容と当該職員の所属する地方公共団体
の利害が結果として一致する場合であっても変わるところがないと
解するのが相当である。
前記認定の事実によれば,本件署名協力依頼は,栃木県や交通政策
課とは無関係な私的団体である「E会」の依頼に基づくものであり,
A課長は,本件署名協力依頼に際し,署名活動の主宰者が「E会」で
あることを明示した依頼文を作成するとともに,同会が作成しその名
称が明記された署名協力依頼文書及び請願書を依頼文に添付し,集ま
った署名を同会に直接送付したのであるから,これらの行為が専ら同
会の署名活動に協力するものであることは明らかである。したがって,
交通政策課が道路整備の企画調整に関する事務を分担し,その事務に
関する予算を主管しており,また,A課長がB知事による道路特定財
源の堅持に関する要望活動を補佐するなどの事務を行っていたとし
ても,本件署名協力依頼が交通政策課長の職務に当たると認めること
はできない。
以上によれば,A課長がした本件署名協力依頼は,その職務の範囲
を逸脱し,適法な職務行為であるとは認められない。また,A課長が
本件署名協力依頼に基づき集まった署名を送付することも,同じく,
その適法な職務行為とは認められない。
前記のとおり,A課長は,上記署名を送付するために,交通整備課
内の封筒1枚を使用したが,これはA課長の職務外の用途に使用した
ものといわざるを得ないから,A課長はその使用に係る上記封筒を
「亡失し,又は損傷した」と認められる。
(イ)そして,本件署名協力依頼は,「E会」という栃木県とは無関係
の団体が行う署名活動に協力するものであることが明らかであるこ
と,A課長はそのことを認識していたこと,A課長は同会の具体的な
設立経緯,設立者,活動内容などを把握していなかったこと,本件署
名活動及び本件署名協力依頼は,行政組織を介し,個人の署名を求め,
それを国(政府)や国会議員に提出するというものであること,A課
長がそれまでにそのような署名活動に協力したことはなく,異例の事
柄であって,そのことはA課長も認識していたと認められることなど
を総合すれば,交通政策課の事務分掌,本件署名活動への協力依頼が
栃木県の他の部署を経由して交通政策課にあったこと,本件署名活動
の目的が栃木県の利益等と一致する内容であったこと等を考慮して
も,A課長は本件署名協力依頼が自己の職務外であることを少なくと
も容易に認識することができたと認めるのが相当である。したがって,
A課長には,本件署名協力依頼により集まった署名を送付するために
栃木県の所有に係る封筒1枚を使用したことについて,少なくとも重
大な過失が認められる。
(ウ)本件で使用された封筒の購入価格は10枚入りで328円であ
ったから(前記1(7)),A課長による封筒1枚の使用により栃木県
が被った損害額は,32円(328円÷10枚,1円未満切捨て)で
あると認められる。
カ以上によれば,A課長は,栃木県に対し,地方自治法243条の2
第1項前段に基づき,32円及びこれに対する封筒1枚を使用した日
(不法行為の日)である平成20年2月14日から支払済みまで民法
所定の年5分の割合による遅延損害金を賠償する義務を負う。
(2)予備的請求について
主位的請求が認められない用紙の使用に係る予備的請求について,判断
する。
ア職員がその所属する地方公共団体から支給を受けた事務用品をその
職務とは無関係の用途に使用することは,当該地方公共団体の財産権を
侵害する行為になるが,その職務上使用したときには,特段の事情のな
い限り,同財産権を侵害するものではないと解される。
イ電子メール及び添付ファイルの各内容のプリントアウトに係る用紙
8枚並びに起案・決裁のための用紙7枚の使用について
前記(1)イ及びウのとおり,上記用紙がA課長の職務外に使用された
とは認められず,前記特段の事情も認められない。なお,A課長の上
記用紙の使用が職務専念義務や政治的行為の制限に違反するとは認め
られない。したがって,上記用紙の使用が栃木県の財産権を侵害する
行為であるとは認められず,A課長に不法行為責任はない。
ウ県土整備部内の12課による用紙61枚の使用について
前記(1)オのとおり,本件署名協力依頼は交通政策課長の職務外の行
為であるところ,上記12課は,本件署名協力依頼の電子メールを受け
てそれをプリントアウトし,署名用紙を複写したのであるから,上記用
紙はA課長による本件署名協力依頼の結果使用されたものであり,本件
署名協力依頼と上記用紙使用との間には相当因果関係が認められる。
そして,本件事実経過に照らせば,A課長には,本件署名協力依頼を
し県土整備部内の12課に上記用紙を使用させたことについて,少なく
とも過失が認められるから,A課長には不法行為責任がある。
本件で使用された用紙を複写又はプリントアウトに用いる場合の費
用は1枚当たり1.2873円であったから(前記1(7)),上記用紙
61枚の使用により栃木県が被った損害額は,78円(1.2873円
×61枚,1円未満切捨て)であると認められる。
エ以上によれば,A課長は,民法709条に基づき,栃木県に対し,7
8円及びこれに対する県土整備部内の12課において用紙61枚が使
用された日(損害発生の日であり,不法行為の日)以降である平成20
年2月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損
害金を賠償する義務を負う。
3本件署名協力依頼に関するB知事の不作為が栃木県に対する不法行為(民
法709条)に該当するかについて(請求2)
本件全証拠によっても,B知事が本件署名協力依頼のことを事前に知っ
ており,あるいは過失により知らなかったとの事実は認められないから,
原告が主張するような指揮監督上の義務違反がB知事にあったとは認めら
れない。
したがって,本件署名協力依頼に関するB知事の不作為が栃木県に対する
不法行為に該当するとは認められず,B知事は栃木県に対して損害賠償義務
を負わない。
第4結論
以上によれば,原告の請求は,請求1の主位的請求のうち,被告に対し,
A課長に32円及びこれに対する不法行為の日である平成20年2月14
日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の賠償の命令をす
ることを求め,請求1の予備的請求のうち,A課長に78円及びこれに対す
る不法行為の日以降である平成20年2月14日から支払済みまで民法所
定の年5分の割合による金員を栃木県に支払うよう請求することを求める
限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求(請求1のうちその余の
主位的請求及びその余の予備的請求並びに請求2)はいずれも理由がないか
らこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
宇都宮地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官竹内民生
裁判官熊代なつみ
裁判官近藤義浩

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