弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人菊地哲春上告趣意第一点及び第三点について。
 所謂賭博常習者とは賭博を反覆累行する習癖あるものをいうのであつて、必ずし
も博徒又は遊人の類のみを指称するものではない。原判決によれば、原審は被告人
が賭博罪で八幡浜区裁判所において昭和一八年四月一六日罰金六〇円に、同年一一
月六日罰金一五〇円に、昭和二一年二月二三日罰金八〇〇円に、各処断せられ更に
昭和二二年八月二七日本件賭博罪を犯したという事跡に鑑み、被告人を賭博常習者
と認定したものである。かように比較的長くない年月の間に繰返し賭博罪で処罰さ
れ、今また本件賭博罪を犯したという事実に基いて、被告人に賭博を反覆累行する
習癖があると推断することは、必ずしも首肯するに難からぬところである。論旨は
「若し賭博前科の度数のみによつて賭博の常習性を認定し得るものとすれば、被告
人に比し前科度数僅に一回しか少くない原審相被告人Aも亦賭博常習者と認定せら
れなければならない筈である。然るに原審は彼を単純賭博罪を以て律し、被告人を
常習賭博を以て問擬したのである。これはその認定の基準が一貫性を欠如するため
であり、結局原審の被告人に対する右認定が実験法則に背反することを反映するも
のである」と主張するのである。(論旨第一点)しかし原審が被告人を賭博常習者
と認定したのは、賭博前科の度数のみに基いたのではなく、前科とその時間的関係
等を斟酌した結果によるものであることは前説示の通りであり、又原審が、相被告
人Aを賭博常習者と認定しなかつたのは、事実審として同人に対する被告事件を審
理しその全貌を通観衡量した結果によるもので、その認定の基礎となつた諸般の事
情は必ずしも被告人のそれと同一であつたとはいゝ得ないのであるから、同人に対
し賭博常習を認めず被告人に対しこれを認めたからといつて、その認定の基準に彼
此一貫性を欠くと速断することはできないのであつて、しかも被告人に対する原審
認定の首肯せられ得べきことは、前説示のとおりであつて、何等実験法則に違反す
るところはない。尤も共同被告人に対する裁判が各被告人相互の関係において、事
実の認定又は量刑上権衡を失し不公平な結果を来たすことは、固より好ましくない
ことではあるが、仮りにさような事があつたとしても、この一事を捉えて直ちにそ
の裁判を憲法第三七条第一項に違反するものである(論旨第三点)とはいゝ得ない。
蓋し同条項に所謂「公平な裁判所の裁判」とは、構成その他において偏頗の倶なき
裁判所の裁判を意味するのであつて(最高裁判所昭和二二年(れ)第一七一号事件
昭和二三年五月五日大法廷判決参照)、憲法は同条項において、所論のように各具
体的事件につき直接裁判の内容そのものゝ公平を保障したものと解すべきではない
からである。論旨はいづれも理由ないものである。
 同上第二点について。
 しかし、刑訴第三六〇条第二項に所謂「法律上犯罪ノ成立ヲ阻却スベキ原由……
タル事実上ノ主張」とは、犯罪構成要件に関しない事実でしかもその存在が法律上
当然に犯罪の成立を阻却すべきものを主張することを意味するのであつて、犯罪構
成要件である事実そのものに関する法律上の見解を陳述することは、これに該当し
ないのである。然るに所論弁護人が原審において為したという主張なるものは、畢
竟常習賭博罪の構成要件それ自体について、独自の見解を披瀝したに過ぎないもの
であるから、原判決が特に右主張に対する判断を明示しなかつたとしても刑訴第三
六〇条第二項に違反するとはいゝ得ないのである。しかも原審は、右弁護人の見解
に賛同せず被告人を賭博常習者と認定したものであることは判文上明らかであつて、
該認定の正当なことは、前論旨につき説明したとおりである。本論旨も亦理由がな
い。
 よつて刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 橋本乾三関与
  昭和二三年七月二九日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    齋   藤   悠   輔

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