弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
     前項の部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人木川統一郎、同川坂二郎、同持田幸作、同平野智嘉義、同横山由紘の
上告理由について
 原審は、(1) 上告人は、催涙剤ブロムアセトンの稀溶液を霧状に噴射させて用
いる護身用具ストロングライフを西ドイツから輸入するにつき、毒物及び劇物取締
法三条二項、四条一項の規定により、昭和四一年六月一一日、厚生大臣に対し輸入
業の登録申請をしたこと、(2) 厚生大臣は、昭和四四年五月七日付をもつて、「
ストロングライフは、劇物であるその内容液を人又は動物の眼に噴射し、その薬理
作用によつて永続的なものではないとしても諸種の機能障害を生じさせ、開眼不能
の状態に至らしめるものであり、かつ、それ以外の用途を有しないものである。」
との理由に基づき、上告人の登録申請を許さない旨の本件拒否処分をしたこと、を
確定したうえ、右拒否処分は違法であると判断し、上告人の本件拒否処分の取消請
求を認容したが、本件損害賠償請求については、上告人の右請求は、本件拒否処分
が判決で取り消されることにより、輸入業の登録が行われた場合と同様当初から適
法にストロングライフを輸入することができる地位を回復しうることを前提として、
適法に輸入することができたはずのストロングライフの販売によつて得べかりし純
利益の喪失を右拒否処分によつて受けた損害として、被上告人に対しその賠償を求
めるものであること記録上疑いを容れないところであるとしたうえ、本件拒否処分
が取り消されても申請にかかる登録が行われたのと同じ効果が生ずるわけではない
から、右損害賠償請求はその前提において失当であつて理由がないと判断し、これ
を棄却した。
 しかしながら、上告人の本件損害賠償請求が本件拒否処分についての右のような
効果の発生を前提として主張されていると認むべき資料は記録上存在しないのみな
らず、仮に上告人がそのような主張をしているとしても、その点が上告人の主張す
る損害賠償請求権の発生について論理上の前提要件をなすものでない限り、それは
ひつきよう無用の主張に帰するものであるから、果して右のような前提要件をなす
ものかどうかを解明することなく、そのいわゆる前提主張が肯認されないことを理
由として直ちに損害賠償の請求を主張自体失当として排斥することは誤りであると
いわなければならない。
 そこで、進んで本件拒否処分の違法と上告人主張の損害賠償請求との関係につい
て考えるのに、およそ本件の登録その他許可免許等(以下「許可等」という。)の
申請に対して違法な拒否処分がされた場合に、たといその拒否処分がその後判決で
取り消されたとしても、これによつて直ちに許可等の処分がされたと同一の効果を
生ずるものでないことは、原判決の説くとおりである。しかしながら、違法な拒否
処分によつて損害を受けたとする者が、右のような効果の発生それ自体を主張し、
これを前提として始めて生ずべき損害の賠償を請求するものではなく、本来申請に
対して許可等の処分がされるべきであつたのに違法にこれがされなかつたものであ
ること、そしてそのために許可等の処分がされるべき時期にそれがされたならば、
その許可等に基づく行為をし、これによつて一定の利益を取得することができる関
係にあつたのにそれができなかつたため、右の利益を取得することができず、これ
によつて損害を受けたことを主張するにすぎないものであるときは、その主張のと
おりの事実に加えて当該処分者の故意、過失が認められる限り、右損害に対する賠
償請求権を肯定することができるのであり、この場合における損害賠償請求権の成
否は、右拒否処分が取り消されるかどうか、その取消によつて許可等の処分がされ
たと同一の効果を生ずるかどうかとは、なんら論理上の関係をもつものではないの
である。本件においても、上告人の損害賠償請求は、本件拒否処分の取消請求と併
合提起されたものとはいえ、その請求自体の内容及び趣旨は、上告人のストロング
ライフ輸入に関する輸入業の登録申請が法律上容認され、登録がされるべきもので
あつたのに、これがされなかつたため、登録がされたら上告人において当然にスト
ロングライフを輸入し、これを販売して得ることができたであろう利益を喪失した
ものであり、右は厚生大臣が故意又は過失に基づき違法に登録をしなかつたことに
よつてこうむつた損害であるとしてその損害の賠償を求めるものであることは、そ
の主張に照らして明らかであり、そうとすれば、上告人の右請求は、なんら本件拒
否処分の取消によつて登録がされたと同様の効果を生ずることをその論理上の前提
とするものではないといわなければならないのである。そうすると、原審は、上告
人の右損害賠償請求の当否を判定するためには、その主張するような事実関係の存
否等について審理、判断をすべきであつたのであり(なお、右損害賠償請求訴訟に
おいて、本来当該申請が容認されるべきものであつたかどうかを裁判所が審理、判
断することは、処分行政庁の判断権を侵すものではなく、当然許されることである。)、
原審が、このような審理判断をすることなく、上記のように、上告人の本件損害賠
償請求は本件拒否処分の取消によつて直ちに本件輸入業の登録がされたと同一の効
果を生ずることを前提とするものであるとの見解の下に、右のような効果の発生は
認められないから上告人の右請求は主張自体理由がないとしてこれを排斥したのは、
法令の解釈を誤り、ひいては審理不尽、理由不備の違法をおかしたものというほか
はない。そして、右違法が判決に影響を及ぼすものであることは明らかであるから、
論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件については、更に審理
を尽くす必要があるから、これを原審に差し戻すこととする。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    本   山       亨
            裁判官    中   村   治   朗
            裁判官    谷   口   正   孝

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