弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     神戸地方裁判所が昭和三九年九月二四日申立人(被告人)に対しなした
勾留期間更新決定はこれを取消す。
         理    由
 本件抗告申立の趣意は、申立人の提出にかかる抗告申立書記載のとおりである。
 よつて案ずるに、申立人は業務上横領の被疑事実につき昭和三一年二月一二日神
戸地方裁判所の裁判官が発した勾留状により神戸拘置所に勾留せられ、業務上横領
等の被告事件により同年二月二五日、三月九日、同月二九日神戸地方裁判所に起訴
され昭和三二年五月一七日付勾留更新決定により勾留が更新せられていたところ同
年五月三一日付保釈許可決定に基づき同年六月一〇日同拘置所より釈放されたが、
昭和三九年五月一二日同裁判所において右被告事件について申立人を懲役四年に処
する旨の判決の宣告があり、前記保釈がその効力を失つたため、同日検察官の指揮
により申立人は前記拘置所に収監されたものであること、申立人は右勾留の不当で
あるとの理由で大阪高等裁判所に対し抗告の申立をなしたところ、同裁判所は昭和
三九年八月一七日抗告を棄却する旨の決定をなし、申立人はこれを不服として更に
最高裁判所に対し特別抗告に及んでいること、申立人はこれとは別に、昭和三九年
八月一九日神戸地方裁判所に対し人身保護法に基づく人身保護の請求をなしたとこ
ろ、同裁判所は昭和三九年九月一一日被拘束者(申立人)を釈放する旨の判決を言
い渡し、その判決はそのまま確定したため、申立人は一旦釈放せられたが、同月一
五日に至り再び前記昭和三二年五月一七日付勾留更新決定に基づく残存期間がなお
一四日あるとの理由で検察官の指揮により収監せられ、申立人指摘のとおり神戸地
方裁判所は昭和三九年九月二四日付をもつて同月二九日から本件勾留期間を更に更
新する旨の決定をなし、申立人はこの決定により引続き前記拘置所に勾留せられて
おること等の諸事実は申立人に対する業務上横領等の被告事件及び人身保護事件の
各記録等に徴し明らかなとおりである。
 而して前記大阪高等裁判所の決定理由と神戸地方裁判所の人身保護事件に対する
判決理由とは互にそごし、その認定にくいちがいが認められるけれども、それはと
も角として、右人身保護の判決は確定したのであるから、人身保護法二四条により
右判決と牴触する範囲において他の法律によつてなされた裁判はその効力を失うも
のというべく、進んで右判決の理由につき検討するに、同判決は理由において勾留
状の謄本を示すことなくなされた被告人(申立人)に対する収監手続は、法令の定
める方式もしくは手続に著しく違反していることが顕著であり、この収監手続が違
法である以上、右手続が適法になされたことを前提に同人に対してなされた各勾留
更新決定はいずれもその効力がなく、同人は昭和三九年五月一二日神戸拘置所に収
監せられて以来不法に拘束せられたものと判示しているのである。右判決の理由中
において、前記昭和三二年五月一七日付勾留更新決定の残存期間についての効力の
有無については明白な判断を示してはいないけれども、右理由中における被告人
(申立人)は昭和三九年五月一二日以来不法に拘束せられているとの判断のなかに
は当然、右勾留更新決定が昭和三九年五月一二日以降同年五月二五日迄の間なお効
力を有することをも否定したものといわなければならない。従つて右判決の既判力
中には当然右の如き判断をも含むものと解せざるを得ないのである。そうだとすれ
ば、右昭和三二年五月一七日付勾留更新決定の効力は昭和三九年五月一二日以降に
は及ばないものであるにも拘らず、検察官の指揮により右更新決定になお残存期間
があるとの理由で申立人(被告人)を収監したのは人身保護法二五条に違反する違
法なものというべく、従つて神戸地方裁判所が同様の見解の下に本件昭和三九年九
月二四日付勾留の更新決定をなしたことも亦違法といわなければならない、又仮り
に、右人身保護事件の判決の既判力は勾留状の謄本を示さないで収監手続をしたこ
とが違法であるとの事実に限るべく、前記各<要旨>勾留更新決定の効力には何等の
影響を及ばさないものと認めるべきであるとしても、右昭和三二年五月一七日 旨>付勾留更新決定は被告人が昭和三九年五月一二日収監せられ爾来引続き勾留せら
れたものであるから昭和三九年五月二五日の経過によりその勾留更新決定の期間は
終了したものと認めるべきである。もとより右収監による勾留は右人身保護事件の
判決において違法な不当拘束と認定せられたけれども、右判決がある迄は申立人
(被告人)に対する収監及び勾留は右勾留状及び右昭和三二年五月一七日付勾留更
新決定に基づく適法な勾留として執行せられたものであり、右勾留更新決定はその
勾留期間の経過により当然失効したものであつて、右失効後に至り、前記判決によ
つて右勾留がたとえ不当拘束と認定せられたとしても、遡つて右収監及び勾留が前
記勾留更新決定の執行とは全く関係のない不当な拘束であつて、右勾留更新決定に
はなお執行しうべき残存期間が依然残つているとの見解は被告人の保護、刑訴法の
解釈上到底是認できないのである。さすれば、これを要するに、本件勾留更新決定
は昭和三九年五月一二日以降は右判決により失効したか又はその勾留期間の経過に
より失効したかと認められる前記昭和三二年五月一七日付勾留更新決定がなお効力
があることを前提としてなされたものであつて、違法不当のものといわなければな
らない。
 原裁判所の本件裁判は到底取消を免れない。
 よつて刑事訴訟法四二六条二項に基づき主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 児島謙二 裁判官 畠山成伸 裁判官 野間礼二)

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