弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告はこれを棄却する
     上告費用は上告人の負擔とする
         理    由
 本件上告理由は上告代理人の提出した末尾添付の上告理由書副本に記載してある
通りであるからこれに對し次の通り判断をする
 上告理由第四點及第五點に對する判断
 <要旨>しかし一筆の土地は、客観的に確定している一定の境界線によつて圍繞せ
られた地域であつて、これに一定の地番号を附してその同一認識標準とし、
これが登記は該地番号を表示してなされるのであるから、登記簿上のある地番の土
地の範圍従つてその境界線は、本来客観的に定まつている筋合である。それゆえ、
ある地番号の一筆の土地の所有權移轉登記の効力の及ぶ範圍もまた右の客観的に定
まつている境界線によつて圍まれた地城の範圍に限られ、たとえ當該地番号の土地
の賣買に當り當事者が任意に右地番号の地域の範圍な越えて他の地番号の土地の一
部を當該地番号の地域の範圍であると指示して賣買しても、當該地番号の所有權移
轉登記の効力はその範圍を越えた地域に及ぶものでないと解するのが相當である。
今本件において見るに、原審もまた右と同一見解の下に上告理由第一点に對する判
断において示した如く、本件常事者が各別に取得した各地番号の土地の本来客観的
に存在している境界線を判示の如く適法に確定し該地番号の土地の所有權移轉登記
の及ぶ範圍は該境界線により自から限定せられ、これを越えた部分に及ばない旨を
説示しさらに進んで係争地域(A峠山道に稽古のBとの中間區域)は本来a番乃至
b番の地番号の土地の部分に属しc番d番の土地の部分に属しないことを適法に確
定し被上告人は係争地域を包合せる土地をa番乃至b番の土地であるとして買受け
その旨の所有權移轉登記を受けたものであるから、たとえ上告人靜子がこの部分を
被上告人より先にc番d番の土地であるとして買受け、その旨の登記を経由して
も、同上告人の所有權取得登記の効力は係争地域に及ばないのに反し、被上告人の
所有權取得の登記の効力は同地域に及ぶからその効力を上告人等に對抗し得る趣旨
の認定したものであることは判文を通讀するにより看取できる。そしてその認定は
前段の設明に依り正當である。所論はこれと反對の見解に立ち原判決を非難するに
歸し採用し難い。
 同第六点に對する判断
 民法第百七十七條の規定は第三者の利益を保護するの趣旨にいでたのであるか
ら、第三者が同條の保護を受けんとするには同條所定の對抗要件の欠缺を主張する
ことを要するは所論の通りであるが、右對抗要件欠缺の主張は必ずしも明示である
必要はない。被上告人において上告人等主張の所有權取得と相容れざる事實である
係争地域は自己が買受け且所有權移轉登記を完了したものであるとの主張したこと
は、原判文上これを看取し得るから、被上告人は右對抗要件の欠缺を暗黙に主張し
ているものと解するのが相當である。論旨は採用できぬ。(その他の判決理由は省
略する。)
 よつて本件上告は理由ないものと認め民事訴訟法第四百一條第九十五條第八十九
條により主文の如く判決する。
 (裁判長判事 小山慶作 判事 横山正忠 判事 和田邦康)

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