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平成11年(ネ)第3751号、平成12年(ネ)第1205号 特許権に基づく差止
請求権不存在確認本訴、特許権侵害行為差止等反訴、損害賠償等請求控訴事件、同
附帯控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成8年(ワ)第13483号(甲事件本
訴)、平成9年(ワ)第1959号(甲事件反訴)、平成9年(ワ)第5847号(乙
事件))
平成12年12月1日口頭弁論終結
判決
控訴人兼附帯被控訴人[甲事件本訴被告・甲事件反訴原告・乙事件
被告(以下「控訴人」という。)]
               株式会社ハマキャスト
       訴訟代理人弁護士       白 波 瀬   文   夫
同              山   上   和   則
補佐人弁理士   池   内   寛   幸
被控訴人兼附帯控訴人[甲事件本訴原告・甲事件反訴被告・乙事件
原告(以下「被控訴人」という。)]
            菊水化学工業株式会社
訴訟代理人弁護士       内   藤   義   三
同              三   木   浩 太 郎
補佐人弁理士   足   立       勉
 主文
1 甲事件反訴請求に関する控訴人の本件控訴及び乙事件のうち損害賠償請求に
関する被控訴人の附帯控訴をいずれも棄却する。
2 控訴人は、被控訴人のチャイナトーン用塗装方法が、特許第2119087
号に係る特許権を侵害する旨を被控訴人の取引先その他の第三者に告知したり、流
布してはならない。
3 被控訴人が当審において変更した差止請求のうち上記第2項を除く部分,及
び予備的に追加した不当利得返還請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、第1、第2審を通じてこれを20分し、その1を被控訴人の負
担とし、その余を控訴人の負担とする。
 事実及び理由
 以下、書証の掲記は「甲1」などと略称し、枝番のすべてを含むときには、枝番
の記載を省略する。
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴の趣旨
(1) 原判決中、控訴人敗訴部分(甲事件反訴請求が棄却された部分)を取り消
す。
(2) 被控訴人は、別紙目録1記載の方法を用いて混合材を塗布し又は第三者を
して塗布させ、原判決添付別紙目録2記載の自然石材調壁面を製造してはならな
い。
(3) 被控訴人は、別紙目録1の2記載の方法を用いて混合材を塗布し、原判決
添付別紙目録2記載の自然石材調シートを製造してはならない。
(4) 被控訴人は、原判決添付別紙目録2記載の自然石材調シートを販売しては
ならない。
(5) 被控訴人は、別紙目録1及び1の2記載の各方法並びに原判決添付別紙目
録2記載の自然石材調壁面及び自然石材調シートを宣伝、広告してはならない。
(6) 被控訴人は、別紙目録1記載の方法を用いて混合材を塗布するために使用
される原判決添付別紙目録3記載の混合材を販売してはならない。
(7) 被控訴人は、その占有に係る原判決添付別紙目録2記載の自然石材調シー
トを廃棄せよ。
(8) 被控訴人は、控訴人に対し、金2億円及びこれに対する平成9年3月7日
(甲事件反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
2 附帯控訴の趣旨(乙事件の差止請求の趣旨が当審で変更された。)
(1) 原判決中、被控訴人敗訴部分(ただし、訴え却下部分を除く。)を取り消
す。
(2) 控訴人は、塗装用骨材を合成樹脂中に混入してなる混合剤を使用して多色
塗りすることが、特許第2119087号に係る特許権を侵害する旨を被控訴人の
取引先その他の第三者に告知したり、流布してはならない。
(3) 控訴人は、被控訴人のチャイナトーン用塗装方法が、特許第211908
7号に係る特許権を侵害する旨を被控訴人の取引先その他の第三者に告知したり、
流布してはならない。
(4) 控訴人は、被控訴人に対し、金200万円及びこれに対する平成9年6月
25日(乙事件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を
支払え。
第2 事案の概要
1 本件各事件における請求の内容
(1) 甲事件本訴
 甲事件本訴は、被控訴人が、控訴人に対し、被控訴人が実施する混合剤の
塗装方法(後記チャイナトーン用塗装方法)は控訴人が特許権を有する発明の技術
的範囲に属しないとして、控訴人が特許権に基づく差止請求権を有しないことの確
認を請求するものである。
(2) 甲事件反訴
 甲事件反訴は、控訴人が、被控訴人に対し、被控訴人が実施する混合剤の
塗装方法(後記チャイナトーン用塗装方法及びモダンアートストーン用塗装方法)
はいずれも控訴人が特許権を有する発明の技術的範囲に属するから、それらの実施
は控訴人の特許権を侵害するとして、① 特許法100条1項に基づき別紙目録1
の塗装方法を使用して原判決添付別紙目録2の自然石材調壁面を製造することの差
止め、② 同項に基づき別紙目録1の2の塗装方法を使用して原判決添付別紙目録
2の自然石材調シートを製造することの差止め、③ 同項に基づき同自然石材調シ
ートを販売することの差止め、④ 同条1項又は2項に基づき別紙目録1及び1の
2の各塗装方法並びにこれらによって製造された原判決添付別紙目録2の自然石材
調壁面及び自然石材調シートの宣伝及び広告の差止め、⑤ 同条2項に基づき別紙
目録1及び1の2の各塗装方法に使用する混合材を販売することの差止め、⑥ 同
条2項に基づき別紙目録1の2の塗装方法によって製造された被控訴人占有に係る
原判決添付別紙目録2の自然石材調シートの廃棄、⑦ 特許権及びその出願公告に
基づく仮保護の権利の侵害に基づく平成5年2月6日から同10年1月6日までの
間の別紙目録1及び1の2の各方法の実施による実施料相当額の支払(不法行為又
は不当利得に基づく)を各請求するものである。
(3) 乙事件
 乙事件は、控訴人による書面の送付が不正競争防止法2条1項13号の営
業誹謗行為に該当するとして、① 同法3条に基づき、多頭式スプレーガンを使用
して多色塗りすること及び原判決添付別紙イ号方法目録記載の塗装方法を実施する
ことが、本件特許権を侵害する旨を第三者に告知等することの差止めを求め、② 
同法4条に基づき、控訴人の同行為によって被控訴人が被った損害の賠償を請求す
るものである。
 原判決は、甲事件本訴請求につき、訴えの利益を欠く不適法なものとして却
下し、甲事件反訴請求及び乙事件の請求について、いずれも棄却した。
 そこで、甲事件反訴原告である控訴人が、甲事件反訴請求棄却部分(ただ
し、実施料支払請求については2億円に限って)を不服として控訴を提起した。そ
の後、被控訴人も乙事件の請求棄却部分を不服として附帯控訴し、差止めを求める
対象である控訴人の行為を前記第1の2(2),(3)のとおり変更し(これに対し、控
訴人は異議なく応訴しているから、原審における差止請求部分については、訴えの
取下げについて暗黙の同意をしたものといえる。)、さらに、損害賠償請求につ
き、控訴人が得た利益の返還請求(民法703条に基づく)を予備的に追加した。
【以下、第2の2及び第3については、原判決の該当部分(原判決別紙「事実及び
理由」第2の1,3,第3の1ないし13)を加削訂正した。ゴシック体太字部分
が当審において追加、訂正した部分であるが、語句の部分的削除については、特に
広範にわたらない限り、指摘していない。】
2 基礎となる事実(いずれも争いがないか弁論の全趣旨により認められる。)
(1) 当事者
 被控訴人及び控訴人は、それぞれ塗装材料の製造及び販売並びに塗装工事
の請負を業とする会社である。
(2) 控訴人の特許権
 控訴人は、次の特許権(以下「本件特許権」という。)を有している。
ア 発明の名称 混合材の塗布方法
イ 出願日   昭和58年5月11日
         (特願昭58ー83098号)
ウ 公告日   平成5年2月5日
         (特公平5ー9587号)
エ 登録日   平成8年12月6日
オ 特許番号  第2119087号
カ 特許請求の範囲
   本件特許権の特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」
という。)の特許請求の範囲の記載は、原判決添付の特許公報の該当欄記載のとお
りである(以下、本件特許権に係る特許発明を「本件発明」という。)。
 なお、控訴人は、平成12年7月14日付で、特許庁に対し、本件発明に
関する、特許請求の範囲の訂正請求を申し立てたが、特許庁は、訂正拒絶理由通知
を兼ねる無効理由通知書(乙59)を同年9月12日に控訴人宛発送した。そのた
め、控訴人は、同年11月17日付で、特許庁に対し、本件発明に関する、特許請
求の範囲の第二次訂正請求を申し立てたが、当審における口頭弁論終結時点では、
これに対する特許庁による許否の判断はされていない。そのため、本件について
は、従前の特許請求の範囲の記載に基づいて、判断することとする。
(3) 本件発明の構成要件の分説
 本件発明の構成要件は、次のとおり分説するのが相当である。なお、本件
特許権の請求項2及び3は、請求項1の実施態様項であるから、後記本件各請求の
当否を判断するに当たっては、請求項1のみを検討すれば足りる。
A 適度に粉砕した自然石を、合成樹脂中に混入してなる混合材の
B 異なる色のもの複数種を1機のスプレーガン内の別個のタンクにそれぞ
れ用意し、
C 該複数種の混合材を複数の吹き付け口を有する多頭式スプレーガンの別
個の吹き付け口から
D 同時に吹き付けることによって、
E 非混合多色状に塗布すること
F を特徴とする混合材の塗布方法。
(4) 被控訴人の行為
 被控訴人は、①異なる色の混合材を多頭式ガンを使用して吹き付ける塗装
工事を行い[その塗装壁面見本が検乙1(商品名チャイナトーン)。以下、チャイ
ナトーン用塗装方法を「イ号方法」という。]、②異なる色の混合材を使用して吹
き付け塗装した自然石材調シートを製造、販売している[その製品見本が検乙2(
商品名モダンアートストーン)。以下、モダンアートストーン用塗装方法を「ロ号
方法」という。)]。
(原判決別紙4頁末行「なお、①の」から5頁10行目「これを争ってい
る。」までを削除する。)
(5) 控訴人による書面の送付
 控訴人は、平成8年12月20日、建築業界関係者に対し、「『特許』の
お知らせとお願いについて」と題する書面(甲20)を送付した。
(6) 被控訴人のイ号方法は、本件発明の構成要件B、C及びFを充足する。
3 争点
(全事件共通)
(1) イ号方法は、本件発明の技術的範囲に属するか。
ア イ号方法の特定
イ イ号方法は、本件発明の構成要件Aの「自然石」の要件を充足する又は
同要件と均等の方法か。
ウ イ号方法は、本件発明の構成要件Dの「同時に吹き付ける」の要件を充
足するか。
エ イ号方法は、本件発明の構成要件Eの「非混合多色状」の要件を充足す
るか。
(2) 本件発明には無効事由があるか。
(甲事件反訴関係)
(3) 被控訴人のロ号方法は、本件発明の技術的範囲に属するか。
ア ロ号方法の特定
イ ロ号方法は、本件発明の構成要件を充足するか。
(4) 被控訴人が製造又は販売する自然石材調壁面及び自然石材調シートの構造
の特定
(5) 控訴人は、特許法100条に基づいて、控訴の趣旨5項及び6項の請求が
できるか。
(6) 控訴人の損害額
(乙事件関係)
(7) 控訴人による書面の送付(前記2(5))が不正競争防止法2条1項13号
の営業誹謗行為に該当するか。
(8) 差止請求の可否
(9) 控訴人の過失の存否
(10) 被控訴人の損害額
(11) 不当利得
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)ア(イ号方法の特定)について
【被控訴人の主張】
 イ号方法は、原判決添付別紙イ号方法目録記載の方法である。
【控訴人の主張】
 イ号方法は、別紙目録1記載の方法である。
2 争点(1)イ(イ号方法の「自然石」の要件の充足・均等)について
【控訴人の主張】(当審において変更された。)
(1) イ号方法は、別紙目録1のとおりであって、その塗材たる混合材の骨材に
は、主として寒水砂が使用され、これに比較的少量の着色珪砂が添加されている。
これらの骨材は、(2)ないし(4)で述べるとおり、「自然石」の要件を満たす。
 また、被控訴人は、原判決添付別紙イ号方法目録において、このほかに黒
色が必要なときは鉱物滓が添加されると主張するが、それによっても鉱物滓は必須
成分ではなく、任意に添加されることがあるにすぎないし、控訴人の行った塗装面
の分析(乙33)では鉱物滓の存在は認められなかったから、鉱物滓が添加されてい
ることからイ号方法が「自然石」の要件を満たさないことにもならない。
(2) 本件発明の特許請求の範囲には、「自然石」と記載されており、その概念
は明確であって、これを特別の限定された意味に解する理由はないところ、イ号方
法では寒水砂と珪砂が骨材として使用されており、これらは自然石であるから、イ
号方法で用いられている骨材は「自然石」である。イ号方法では、これらの自然石
に顔料で着色しているが、顔料で着色してみてもそれらが人造石になるわけではな
く、「自然石」である点に変わりはない。
 被控訴人は、本件明細書中の発明の詳細な説明を指摘して、「自然石」と
は、塗装材料自体に自然石を粉砕したものを用いることと解すべきであると主張す
るが、被控訴人指摘の本件明細書中の記載は本件発明の典型例についての説明にす
ぎず、自然石に加工を加えることを積極的に排除する趣旨ではないから、被控訴人
主張のような限定解釈は不当である。
 また、本件発明の最も重要な効果は、本件発明の塗布方法によれば、吹き
付け単位が別個であるため、混合したものとならず、比較的大きな同一色部分がで
き、自然石とほとんど同様の外観を呈することができるとの点であり、この効果
は、着色された自然石、すなわち「着色骨材」によっても同様に発揮される。
 したがって、本発明は、「着色骨材」を排除していない。
(3)(当審における追加主張)
 仮にイ号方法の着色珪砂が本件発明の「自然石」の要件を満たさないとし
ても、控訴人によるチャイナトーン製品の分析結果によると、同製品の骨材成分
は、寒水砂78%、着色珪砂19%であり、また、別なサンプルによると、寒水砂
87%、着色珪砂13%という結果が出た。このようにチャイナトーンは、文字ど
おりの「自然石」を主成分とし、これに比較的少量の着色骨材を添加したものとい
える。すなわち、イ号方法は、文字どおりの「自然石」を用いて本発明を実施しつ
つ、自然石に着色をなした「着色骨材」を少量添加しているのであり、本件特許発
明の利用にすぎない。
(4) また、仮にイ号方法の着色珪砂が本件発明の「自然石」の要件を満たさな
いとしても、次のとおり、均等の範囲に属する。
 本件発明は、多頭式スプレーガンを用いて、別個の吹き付け口から骨材を
含む塗料(混合材)を同時に吹き付けることにより自然石調の塗装壁面を形成する
ことに特徴があるものである。したがって、自然石骨材に少量の顔料で着色した骨
材を添加しても均等の範囲に属するのは明らかである。
ア 自然石骨材に少量の着色骨材を添加することは、本件発明の本質的部分
ではない。
イ 自然石骨材に少量の着色骨材を添加しても、本件発明の目的たる「自然
石と同様の美観を呈し、安価で簡単に製造できる建築用仕上材」を得ることを達成
でき、同一の作用効果を奏する。現に被控訴人方法による塗装面は、本件発明と同
様の「天然石調」である。
ウ 上記のように置き換えることは、本件明細書に記載されている内容(自
然石からセラミックスへの置き換えを示唆する)、また、別件特許出願(本件発明
と同日出願した、顔料とともに焼成し、且つ適度に粉砕したセラミックスを合成樹
脂中に混入してなる混合剤を、本件同様の方法で吹き付け塗布する方法)に対する
特許庁審判官の拒絶理由通知(乙37)からしても、当業者であれば、イ号方法の開
始時点において容易に想到することができたものである。
エ 多頭式スプレーガンを用いて、別個の吹き付け口から、骨材として自然
石に少量の着色骨材を添加したものを含む混合材を同時に吹き付けることにより、
自然石調の塗装壁面を形成する方法が、本件発明の特許出願時における公知技術と
同一又はこれから容易に推考できたものではなく、本件発明の特許出願の手続にお
いて特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの事情もない。
【被控訴人の主張】
(1) 本件明細書の記載に徴すれば、本件発明は、自然石の板自体を用いるとき
は自然石の外観は得られるが高価であり、他方、従来の仕上材を用いる場合には自
然石の外観を現出することはできないとして、従来の吹き付け法と従来の吹き付け
材料の組合せを否定している。その上に立って、本件発明は、吹き付け法と吹き付
け材料の組合せを工夫することによって、自然石の外観を現出することを可能なよ
うにしたものである。
 このように本件発明は、吹き付け法のみならず吹き付け材料を工夫した点
も重要な要素であり、吹き付け材料として適度に粉砕した自然石を用いることの効
果として、「仕上材の骨材として自然石を粉砕したものを使用しているため、…従
来の自然石と比較しても遜色がない。」、「本発明においては、(外観が)自然石
の色そのままであるため、色合い等は当然自然石と変わらず…」(本件公報7欄5
行目以下)とされている。
 したがって、本件発明において自然石を用いるということの意義は、より
自然石の外観に近づけるために、塗装材料自体に自然石を粉砕したものを用いると
いうことであり、その自然石が自然に有する色合い等をそのまま塗装結果の外観に
利用するという意味であると理解すべきである。
 そして、イ号方法は、別紙イ号方法目録のとおり、塗装材として着色珪
砂、鉱物滓を合成樹脂中に混入したものを用いており、得たい外観は人工物の色合
いによって得ているから、構成要件Aの「自然石」の要件を充足しない。
(2)(当審における追加主張)
 チャイナトーンが「自然石」を主成分とし、これに比較的少量の着色骨材
を添加したものであるとする控訴人の主張は、本件特許発明における「外観」とそ
のための色彩の意義を無視ないし軽視して、専ら割合において着色珪砂の割合が全
体に比して少ないことをいうもので、これらが少量でも発色作用が大きいことを無
視した議論である。すなわち、イ号方法において用いられている自然石たる寒水砂
は、白色ないし無色であるため、仮に合分比13ないし20%であっても、塗装面に現
われる色合い、色彩は着色珪砂そのものの色合い、色彩となるのである。
 また、控訴人は、チャイナトーン製品の成分分析の方法としてポイントカ
ウント法を採っているが、本件においては、塗装面における成分分布は、同じ試験
体であっても場所によって大きく異なるものであり、この方法による場合、分析対
象として任意の部分を選んだとしても、それが全体として同じ合分比となるもので
はない。したがって、イ号方法において用いられる粉砕した自然石と着色珪砂の重
量割合を裏付けるものではない。
(3) 控訴人は、均等の主張をするが、先に述べたような本件発明の内容からす
れば、吹き付け材に「自然石」を用いる点は、本件発明の本質的部分であるから、
均等の要件を欠く。
 また、イ号方法は、公知の塗装材料を、公知の多頭式スプレーガンを用い
て塗装するものにすぎないから、公知技術から容易に推考することができる技術で
ある。したがって、この点でも均等の要件を欠く。
(当審における追加主張)
 控訴人は、本件特許明細書において、別件の出願は人工的に着色を施した
骨材であるため、「その構成部分は、それぞれ単一の色である」が、本件発明は自
然石そのものであるため、「その粒子自体が自然の模様、色の微妙な差を有してお
り」、したがって、人工的に着色したセラミックスを骨材として用いたものと比べ
て、「より自然石に近いもの」であるとの差違を有することを明示している。も
し、控訴人において、別件出願と本件特許発明が実質的に同一であると真実考えて
いたのであれば、別件出願の取下げと同時に、両発明の差異について説明した本件
発明の前記記載部分は、当然に削除補正しなければならないところ、これを維持し
たことは、むしろ控訴人において、別件出願の取下後も、両発明は別個であると考
えていたか、もしくは、少なくとも「顔料とともに焼成し、且つ適度に粉砕したセ
ラミックス」は意識的に除外したものと解すべきである。
3 争点(1)ウ(イ号方法の「同時に吹き付ける」の要件の充足)について
【被控訴人の主張】
 本件明細書(本件公報6欄2~11行目)には、多頭式スプレーガンの各噴
射ノズルの焦点が「ぴったり一点に集中すると、3色の材料が混合、もしくは積層
され一色になるため、効果が薄れる。そこで、それぞれの噴射ノズルの焦点をわず
かにずらして設置されている。」と記載されている。
 また、控訴人は、本件発明の特許出願の拒絶査定に対する不服審判手続にお
ける審判理由補充書(甲2の3)、特許異議申立事件における上申書(甲2の4)
及び無効審判請求事件における答弁書(乙25)において、各噴射ノズルの焦点を一
致させない点に新規性があると主張している。
 したがって、本件発明の構成要件Dの「同時に吹き付ける」とは、各噴射ノ
ズルの焦点がずらされていることを要すると解すべきであり、このように解さない
場合には出願経過における控訴人自身の主張と矛盾する(いわゆる包袋禁反言の原
則)。
 イ号方法は、原判決添付別紙イ号方法目録のとおり、各噴射ノズルの焦点を
一致させているから、本件発明の構成要件Dの「同時に吹き付ける」の要件を充足
しない。
【控訴人の主張】
 被控訴人は、本件発明の構成要件Dの「同時に吹き付ける」とは、噴射ノズ
ルの焦点がずらされていることを要すると主張する。
 しかし、まず、本件発明の特許請求の範囲にはそのように限定する文言はな
い。また、被控訴人が指摘する明細書の記載は、それに引き続いて、「しかし、現
実的には、焦点がぴったり一致していても、人がスプレーガンを手によってスプレ
ーするため、壁等との距離や角度がずれるため、あまり問題にはならない。」(本
件公報6欄7~11行目)と記載されているから、本件明細書の記載も被控訴人の
主張の根拠にならない。
 さらに、被控訴人が主張する審判理由補充書等の記載は、被控訴人が主張す
るような趣旨を記載したものではなく、何ら包袋禁反言の根拠にならない。
4 争点(1)エ(イ号方法の「非混合多色状」の要件の充足)について
【被控訴人の主張】
(1) 本件発明は、特許請求の範囲に定める塗装方法によって、従来の技術では
得られなかった「非混合多色状」の自然石とほとんど同様の外観を有する塗面を得
る点に本質があるから、従来技術によって得られる塗装面は、「非混合多色状」の
要件を満たさないと解すべきである。
(2) 本件発明の特許出願の以前から、スプレーガンとしては、1槽1頭ガン、
3槽1頭ガン、丸型3槽3頭ガンが公知であったが、これらを用いて実際に吹き付
け塗装を行ったところ、いずれも自然石風の塗装面が得られた(甲13ないし15)。
そして、イ号方法を使った塗装面(甲16)は、これらの公知技術による塗装面と有
意的な差異は認められない。また、イ号方法に用いるスプレーガンも、前記の丸型
3槽3頭ガンと有意差はない。
(3) したがって、イ号方法は構成要件Eの「非混合多色状」の要件を充足しな
い。
【控訴人の主張】
(1) 本件明細書では、「非混合多色状とは、それぞれ色の異なった混合材を、
互いに色が混ざらないように、塗布するということである。」(本件公報4欄20
~22行目)、「仕上材の黒色部1a、灰色部1b、白色部1cはそれぞれ黒色微
粒2a、灰色微粒2b、白色微粒2cによって構成されている。しかし、人間の目
には、おのおのの微粒はほとんど意識されず、着色部1a、1b、1cが1体とし
て認識されるため、自然石と同様の外観を呈する。」(本件公報5欄29~35行
目)、「本発明塗布方法によれば、吹き付け単位が別個であるため混合したものと
ならず、比較的大きな同一色部分ができ、自然石とほとんど同様の外観を呈するこ
とができる。」(本件公報6欄19~22行目)との記載を併せ考慮すると、「非
混合」とは、「異なる色の混合材が、スプレーガンの別個の吹き付け口から同時に
飛び出し、同色の複数の骨材同士が集合した状態で、外壁等に貼着すること」を意
味し、「多色状」とは、「複数種の自然石の骨材色そのものがランダムに複数種存
在し、その外観が自然石とほとんど同様な状態であること」と理解できる。
 したがって、「非混合多色状」とは、「異なる色の混合材が、同色の複数
の骨材同士が集合した状態で外壁等に貼着する結果、複数種の自然石の骨材色その
ものの色がランダムに複数種存在し、その外観が自然石の外観と同様な状態」と解
するのが相当である。
 イ号方法によって得られた塗面は、明らかにこのような自然石調であるか
ら、構成要件Eの「非混合多色状」の要件を充足する。
(2) 被控訴人は、公知の塗装方法によってもイ号方法によるのと有意的差異の
ない壁面が得られると主張するが、被控訴人が公知であるとする塗装方法は、現在
の技術に手を加え、工夫したやり方、又は単に試験又は研究のためのやり方であっ
て、従来の実用的なやり方ではない。
 また被控訴人は、イ号方法に使用しているスプレーガンは公知のガンだと
主張するが、被控訴人が使っているガンは、本件明細書中の図面で開示されている
ものと同一のものであり、これは公知ではない。
5 争点(2)(無効事由)について
【被控訴人の主張】
 本件発明には、次の諸点で無効事由がある。したがって、本件発明の権利範
囲については、無効事由を考慮した限定が必要である。
(1) 控訴人は、本件発明の特許出願前の昭和57年9月に河内長野市内の山原
ビルの、同年10月に三木市内の但馬銀行三木支店の、同58年4月に神戸市内の
ハイコート御影の各外壁塗装工事を本件発明の方法によって行った。これら各工事
現場は、吹き付け剤が飛散するのを防止するためにシートで覆われていたが、道路
側は開いており、不特定人において当該塗布方法を知り得る状態にあった。また、
当該工事を行った下請け会社の従業員等についても控訴人のために特に当該塗布方
法を秘密にする義務を定めた合意等は存在しなかった。したがって、本件発明は、
出願前に控訴人自ら公然実施したものである。
(2) 本件発明は、特許出願当時の公知文献(甲2の11ないし52)に記載さ
れている公知技術(双頭式スプレーガンを用いた多彩模様の塗布方法、三頭式スプ
レーガン、双頭式スプレーガン、骨材に天然石等を用いた建築吹き付け材、アクリ
ルエマルションと自然石からなる二色以上の骨材を混合してなる吹き付け材を用い
て天然石模様を表現した装飾仕上方法、二色以上に着色された吹き付け材を予め混
合することなく同時に吹き付ける多色凸面模様の製造法等)を組み合せたものにす
ぎず、新規性がないか、それらから当業者において容易に推考し得たものである。
本件発明の「安価で簡単に自然石と同様の美観を呈する建築仕上材を製造する」と
いう目的も当業者にとって自明のものであり、また、従来技術でも骨材に混入され
た自然石が混じり合うことはなく、当然に「非混合多色状」となるから、従来技術
と比較して本件発明に特有の顕著な作用効果が見られるものではない。
(3) 本件発明は、先願発明(「釉薬調および/またはみかげ調塗装面の形成方
法」特願昭57ー1138)と同一である。
(4) 本件発明の特許請求の範囲には、スプレーガンの各噴射ノズルの焦点をど
の程度ずらすのか、噴射ノズルの口径、圧縮エアーノズルの口径等、「非混合多色
状」の塗装面を得るための構成が明らかにされておらず、記載不備である。
【控訴人の主張】
 本件発明に被控訴人指摘の無効事由はない。
(1) 控訴人が被控訴人指摘の各工事を行った点は認めるが、本件発明を用いて
公然と行ったわけではない。山原ビルの工事を行ったオオナカ産業は控訴人の下請
塗装業者であり、控訴人の指示及び技術指導に従い塗装を行ったのである。このよ
うな場合、社会通念上又は商慣習上、秘密扱いとすることが暗黙のうちに求めら
れ、かつ、これを期待できる関係にあった。
(2) 被控訴人指摘の各種文献において、本件発明の構成が開示されているもの
はないし、それらから推考が容易でもない。被控訴人主張の公知技術を全部組み合
せても、「非混合多色状に塗布することを特徴とする混合剤の塗布方法」は、記載
も示唆もなく、また、本件発明の構成要件の有機的一体結合を想起させるような共
通性は得られない。「非混合多色状に塗布する」が発明の構成要件であることは明
白である。
(3) 被控訴人指摘の先願発明には、本件発明の構成要件A、Eが記載されて
おらず、これを示唆する部分もない。
(4) 被控訴人の主張(4)は、すべて当業者が本件発明を実施する際に適宜設計
的に選択すべき事項にすぎない。本件発明において、「ノズルの角度をわずかにず
らす」ことは、必須の構成要件ではない。
6 争点(3)ア(ロ号方法の特定)について
【控訴人の主張】
 ロ号方法は、別紙目録1の2の方法である。
(1) 被控訴人のモダンアートストーンの塗装面(乙3)は、従来技術による1
槽1頭ガンによる重ね吹き(乙22)や3槽1頭ガンによる吹き付け(乙23)とは異
なり、本件発明による塗装(乙21、検乙8)と同一の「非混合多色状」となってい
る。したがって、ロ号方法は、別紙目録1の2のとおりと推定される。
(2) 本件発明は、物を生産する方法に関する発明であるところ、本件発明の方
法によって得られた非混合多色状の塗装面は、本件発明の特許出願前には日本国内
において存在しなかったものである。そして、ロ号方法によって得られた自然石調
の乾式パネル(モダンアートストーン)は原判決添付別紙目録2のとおりであっ
て、これは本件発明の方法によって得られる塗装面と同一である。
 したがって、モダンアートストーンは、特許法104条により、別紙目録
1の2の方法により生産されたものと推定される。
【被控訴人の主張】
 ロ号方法は、別紙目録1の2記載の方法ではなく、公知の3槽1頭ガンを使
用した方法である(ただし営業秘密が含まれているため、全貌は開示できな
い。)。
(1) 控訴人は、塗装面に関する分析結果からロ号方法が推定されるとするが、
この方法による塗装面は、公知の塗装方法による塗装面と有意な差異がないから、
塗装面から塗装方法を推認することはできない。
(2) 本件発明の方法による非混合多色状の壁面が新規物質であるとの点は争
う。また、特許法104条に基づいて新規物質であることを主張する場合は、その
物質が何かを具体的にその物質の構造で特定すべきである。
7 争点(3)イ(ロ号方法の本件発明の構成要件充足性)
【控訴人の主張】
 ロ号方法は、別紙1の2のとおりであり、それは本件発明の構成要件をすべ
て充足する。その詳細は、争点(1)イないしエに関する控訴人の主張のとおりであ
る。
【被控訴人の主張】
 控訴人の主張は争う。その詳細は、争点(1)イないしエに関する被控訴人の主
張のとおりである。
 なお、ロ号方法は、3槽1頭ガンを使ったものであるから、この点でまず、
本件発明の構成要件を充足しない。
8 争点(4)(被控訴人が製造又は販売する自然石材調壁面及び自然石材調シート
の構造の特定)について
【控訴人の主張】
 イ号方法及びロ号方法によって得られた塗装面は、原判決添付別紙目録2の
とおりである。
【被控訴人の主張】
 控訴人の主張は争う。
 原判決添付別紙目録2は、その構成5及び6において方法の要素を取り込ん
でおり、差止め又は廃棄請求の対象の特定として適切でない。
9 争点(5)(控訴の趣旨5項及び6項の請求の可否)
【控訴人の主張】
(1) 控訴の趣旨5項は、被控訴人の侵害行為の予備行為である宣伝、広告を
禁ずる趣旨であり、特許法100条1項又は2項に基づいて請求することが可能で
ある。
(2) 同6項は、被控訴人がイ号方法を他の塗装業者に行わせる場合の、原判決
添付別紙目録3記載の混合材の販売の停止を求めるものである。すなわち、被控訴
人は、「認証店」等の他の塗装業者がイ号方法で建物壁面に混合剤を塗布し、チャ
イナトーンを壁面に製造することを熟知し、その技術指導をしながら、同用途に使
用するものとして混合剤を販売しているのであり、特許法100条2項に基づいて
請求することが可能である。
【被控訴人の主張】
(1) 控訴の趣旨5項については、特許法上、請求することができない。
(2) 同6項については、原判決添付別紙目録3記載の混合材を何に使用するか
は、販売先の第三者が決定することであり、被控訴人や執行官が判断し得ることで
はないから、執行不能な請求である。
10 争点(6)(甲事件反訴請求の損害額)
【控訴人の主張】
 本件特許権の出願公告がなされた平成5年2月6日から本件反訴提起前の平
成9年2月末日までの間に、被控訴人は、①イ号方法の実施によって少なくとも7
0億円の売上高を得、②ロ号方法の実施によって少なくとも30億円の売上げを得
たところ、本件特許権の実施料率は6%を下らないから、実施料相当損害金の額
は、6億円を下らない。
【被控訴人の主張】
 控訴人の主張は争う。
11 争点(7)(営業誹謗行為の有無)について
【被控訴人の主張】
 控訴人は、平成8年12月頃から、被控訴人の取引先に対し、「『特許』の
お知らせとお願いについて」と題する文書(甲20)を送付した。そこでは、およそ
多頭式スプレーガンを使用する多色塗装が本件特許権を侵害するとの趣旨の記載が
あり、また、イ号方法も本件特許を侵害するという趣旨の記載があるが、これらは
いずれも客観的真実に反し、被控訴人の信用を害する虚偽の事実の記載である。
 したがって、控訴人による前記文書の送付は、不正競争防止法2条1項13
号の不正競争営業誹謗行為に該当する。
【控訴人の主張】
まず、甲20の文書は、特定の事業者を指して特許権侵害と呼んで営業上の信
用に関わる事実を記載しているものではないから、被控訴人の営業上の信用を害す
るものではない。控訴人は、被控訴人が主張するような「塗装用骨材を合成樹脂中
に混入してなる混合剤を使用して多色塗りをすること」や「チャイナトーン用塗装
方法」が、特許権を侵害すると告知、流布した事実はなく、その恐れも存しない。
 また、甲20の文書が被控訴人の営業上の信用を害するものだとしても、争
点(1)に関する控訴人の主張のとおり、イ号方法は本件特許権を文字どおり侵害して
いるか、少なくとも均等の範囲にあるから、その内容は虚偽ではない。
12 争点(9)(控訴人の過失)について(当審における追加主張)
【被控訴人の主張】
 本件被控訴人の実施方法は、本件発明の詳細な説明や実施例とも全く異なる
ことはもちろん、特許請求の範囲の文言に該当することすら否定された事案であ
る。もし、権利者である控訴人において、実施例と共通しているし、請求の範囲の
文言にも該当すると考えていたのであれば、それ自体が過失であることは明らかで
ある。請求の範囲の文言に該当する場合でも、侵害の成否の判断は難しいのに、そ
の文言に該当しない均等の場合において侵害を肯定するには、いっそう難しい問題
があるから、それだけ侵害を主張する側の注意義務の内容も高度になる。
 本件では、控訴人は、特許紛争について極めて弱い立場の取引先に侵害の主
張・宣伝をし、これにより被控訴人は多大の損害を被る一方で、控訴人はそれに対
応する利益を得たこと、主張宣伝内容自体に誇大な表示があること、それに加え、
侵害と信じた理由は本来の文言侵害でなく均等論を理由とするものである上、均等
と信じた根拠もそれほど直接的なものでないことなどの事情を考慮すると、控訴人
には、当然、過失が認められるべきである。
【控訴人の主張】
 特許の技術的専門官庁である特許庁においても、本件発明と別件の顔料と共
に焼成したセラミックスを骨材として用いた発明を均等と判断したのであり、仮に
「着色珪砂」が本件特許発明で言う「自然石」に該当しないとしても、自然石を着
色しただけで、その余の構成については本件発明そのままの方法であるイ号方法が
本件発明の技術的範囲内にあると判断することは、当然の帰結であり、そこに過失
のあろうはずはない。
 なお、本件で均等論が問題となったのは、原審における平成11年2月4日
の第13回口頭弁論で控訴人が均等論を予備的に主張してから以降である。それま
では、控訴人は、被控訴人の行為は文言侵害に該当すると信じていた。これに対
し、本件で被控訴人が問題としている件は、平成10年1月頃というのであるか
ら、均等論が問題となる1年も前のことである。したがって、被控訴人の主張は失
当である。
13 争点(10)(損害額)について
【被控訴人の主張】
 被控訴人は、控訴人による営業誹謗行為のために取引先を失い、また信用を
回復するために広告等の宣伝を行わざるを得なかった。控訴人の前記営業誹謗行為
によって被控訴人が現に失った利益又はこれがなければ得られたであろう利益その
他の損害は、少なく見積もっても200万円を下らない。
【控訴人の主張】
 被控訴人の主張は争う。
14 争点(11)(不当利得)について(当審における追加主張)
【被控訴人の主張】
 控訴人の虚偽事実の主張宣伝行為と、工事受注及びそれによる利益取得とは
相当因果関係があり、被控訴人の受注失敗とそれによる損害も前記控訴人の行為と
相当因果関係がある。控訴人が同工事によっていくらの利益を上げたかは不明であ
るが、乙事件の請求の趣旨の金額(200万円)よりはるかに大であることは明白
だから、被控訴人は予備的に不当利得として民法703条に基づき、請求の趣旨の
金額の限度でその返還を請求する。
【控訴人の主張】
 被控訴人が控訴人の不正な宣伝活動によって工事受注の機会を奪われたとす
る点及び被控訴人が最終結論として当該工事を受注することが決定したとする点
は、いずれも事実に反する。
第4 争点に対する当裁判所の判断
1 争点(1)イ(イ号方法の「自然石」の要件の充足・均等)について
(1) この点に関する認定事実及び「自然石」の意義に関する判断は、次のとお
り付加訂正するほか、原判決別紙「事実及び理由」第4の1(1)ないし(5)(25頁
5行目から37頁20行目まで)のとおりであるから、これを引用する。
ア 26頁16、17行目「本件公報3欄1~31行目」を「本件公報3欄
2~31行目」と改める。
イ 27頁19、20行目「本件公報5欄1~6行目」を「本件公報5欄1
~16行目」と改める。
ウ 31頁13行目「甲2の11,12及び16は」を「甲2の11,12,16及び乙
58は」と改め,32頁1行目「甲2の12は」を「甲2の12及び乙58は」と改める。
【イ号方法の「自然石」の要件該当性についての判断部分は、前同様の方法で
原判決別紙「事実及び理由」第4の1(6)(37頁21行目から41頁6行目まで)
を加削訂正した。】
(2) そこで次に、イ号方法が、構成要件Aの「自然石」の要件を充足するかに
ついて検討する。
 争点(1)アのとおり、イ号方法の構成については、当事者間に争いがある。
しかし、このうち、混合材の骨材の構成については、控訴人の主張では、「粉砕し
た自然石である寒水砂を主成分とし、これに粉砕された市販の着色珪砂を少量添加
したものを骨材として用い」たものとされるのに対し、被控訴人の主張では、「粉
砕した寒水砂と粉砕していない着色珪砂を主成分として用い」、寒水砂は全骨材の
0~100%、着色珪砂は同0~100%の間で配合され、着色珪砂は3色の混合
材のうち1色又は2色では必ず10%以上とし、黒色が必要なときには銅鉱滓(銅
鉱石を高温で溶融し、銅を取り出した後の残滓。8~32%)が添加されるとされ
ており、いずれの主張によっても、骨材として寒水砂以外に着色珪砂が使用されて
いることは一致している。そして、乙32によれば、寒水砂及び珪砂は一般的な意味
での自然石であると認められるから、イ号方法に使用する混合材の骨材には、裸の
自然石(寒水砂)と人工着色した自然石(着色珪砂)が配合されているということ
になる。さらに、被控訴人の主張によれば、場合により銅鉱滓も配合されることに
なる。
 これらのうち、まず、銅鉱滓も骨材として使用されているとの被控訴人の
主張について検討すると、確かに乙33のイ号方法による塗装面の分析結果(試験体
C)では銅鉱滓の含有は認められない。しかし、乙34によれば試験体Cには黒色骨
材が含まれていないから、被控訴人の主張に照らせば、乙33の分析結果中に銅鉱滓
が含有されていないことをもって、およそイ号方法に用いる混合材の骨材に銅鉱滓
が含まれることがないとはいえない。かえって、甲25によると、チャイナトーンの
サンプル(乙34のCT-1)の一部を使用してX線解析を行ったとこ
ろ、Fe、Ca、Siが主成分であるとの結果が出ているところ、銅精錬では鉱石の主成
分が黄銅鉱(CuFeS2)であるため、その鉱滓には酸化鉄(FeO)が多く含まれてい
ることに鑑みると、このチャイナトーンのサンプルには、銅鉱滓が成分として含ま
れているものと推認することができる。そして、銅鉱滓は、生成過程から見ておよ
そ自然石とはいえないから、銅鉱滓が骨材として相当程度含有される場合には、自
然石そのままの色合いによって塗装面の外観が形成されているのと同視することは
できない。したがって、その場合には、イ号方法が本件発明の「自然石」の要件を
充足するとはいえない。
 また、仮に銅鉱滓の骨材への配合を捨象して検討すると、イ号方法による
チャイナトーン製品(CT-23)の分析結果(乙33、34)によれば、含有物質と
しては、方解石が全体の42%であり、石英が全体の10%であったことが認めら
れ、甲4ないし6によれば、方解石は寒水砂の構成成分であり、石英は珪砂の構成
成分であることが認められるから、その他の「岩石岩片と不透明物質」をも骨材に
含めても、骨材全体に占める割合は、寒水砂が77.8%、着色珪砂が18.5%
ということになる。そして、この程度の割合の着色珪砂が骨材に配合されている場
合には、なお塗装面に表れた骨材の色がすべて自然石の色合いそのままである場合
と同視することはできないというべきである。
 したがって、イ号方法は、その構成について両当事者のいずれの主張によ
るにせよ、構成要件Aの「自然石」の要件を充足しない。
(原判決40頁13行目「もっとも」から41頁6行目「とすることもでき
ない。」までを削除する。)
(3)(当審における追加主張に対する判断)
 控訴人は、イ号方法における混合剤の骨材には、主として寒水砂が使用さ
れ、着色珪砂は比較的少量添加されているにすぎないから、イ号方法は、文字どお
りの「自然石」を用いて本発明を実施しつつ、自然石に着色をなした「着色骨材」
を少量添加しているのであり、本件特許発明の利用にすぎない旨主張する。
 なるほど、乙49、50によると、別のチャイナトーン製品(CT-9)を分
析した結果、含有物質は、方解石が全体の46%であり、石英が全体の7パーセン
トであったことが認められ、骨材全体に占める割合に換算すると、寒水砂が87
%、着色珪砂が13%となり、イ号方法における骨材の配合において、着色珪砂の
配合割合が前記(2)のチャイナトーン製品(CT-23)よりも更に下回っている。
しかし、甲21によると、寒水砂の色合いは白色であり、これに有色の着色珪砂を配
合した場合、前記チャイナトーン製品(CT-23)でも着色珪砂単体とほぼ同様
の色合いになっていることが認められ、それよりも着色珪砂の含有率が若干低いチ
ャイナトーン製品(CT-9)においても、着色珪砂の色が塗装面全体の色合いに
相当強く反映しているものと推認される。したがって、着色珪砂を配合することに
より奏せられる作用効果は、本件発明のそれとは異なったものとなるといわざるを
得ないから、イ号方法が本件特許発明の利用にすぎない旨の控訴人の主張は失当で
ある。
(4) 構成要件Aの「自然石」の要件に関する均等の成否についての判断部分
は、次のとおり付加訂正するほかは、原判決別紙「事実及び理由」第4の1(7)(4
1頁7行目から44頁11行目まで)のとおりであるから、これを引用する。
ア 41頁20行目の「タンク」を「ノズル」と訂正する。
イ 42頁末行の「乙36、37」の次に「、47、48」を加える。
2 争点(1)ウ(「同時に吹き付ける」の要件の充足)及びエ(「非混合多色状」
の要件の充足)について
 これについての認定、判断は、次のとおり付加訂正するほか、原判決別紙
「事実及び理由」第4の2(44頁14行目から53頁1行目まで)のとおりであ
るから、これを引用する。
(1) 原判決別紙46頁18行目「一が」を「人が」と改める。
(2) 原判決別紙51頁6行目「から除外する必要はない。」を「と同視すべき
理由はない。」と改め、同17行目「塗装面も」の次に「、最後に吹き付けた塗材
部分が表面上浮き上がった状態になっていることが認められ、」を加える。
(3) 53頁1行目の「構成要件E」を「構成要件D」と改める。
3 争点(3)(ロ号方法が本件発明の技術的範囲に属するか)について
 本争点についての認定、判断は、原判決別紙「事実及び理由」53頁6行目
ないし8行目の『骨材には、「粉砕した自然石である寒水砂と、粉砕された自然石
である市販の着色珪砂を主成分」とする』を,『骨材に、「粉砕した自然石である
寒水砂」と、「粉砕された自然石である市販の着色珪砂」を含有する』と改めるほ
か、同別紙「事実及び理由」第4の3(53頁4行目から54頁8行目まで)のと
おりであるから、これを引用する。
4 以上によれば、イ号方法及びロ号方法は、いずれも本件発明の技術的範囲に
属さないから、その余の争点について判断するまでもなく、控訴人の甲事件反訴請
求は理由がない。
5 争点(7)(営業誹謗行為の成否)について
 本争点についての認定、判断については、次のとおり付加訂正するほか、原
判決別紙「事実及び理由」第4の5(1),(2)(55頁4行目から58頁17行目ま
で)のとおりであるから、これを引用する。
(1) 57頁5行目「標的」を「対象」と改める。
(2) 58頁1行目「(なお、」から同11行目「認められない。」までを削除
し、同16、17行目「不正競争防止法2条1項11号」を「不正競争防止法2条
1項13号」と改める。
6 争点(8)(差止請求の可否)について
 ところで、乙事件における被控訴人の差止請求(附帯控訴の趣旨2項及び3
項)は、①塗装用骨材を合成樹脂中に混合してなる混合剤を使用して多色塗りする
ことが、本件特許権を侵害する旨の第三者への告知等の差止め、②被控訴人のイ号
方法が、本件特許権を侵害する旨の第三者への告知等の差止めであり、侵害予防請
求であるから、控訴人がこれらの内容を第三者に告知等するおそれのあることが請
求原因事実となる。
 まず、①については、その文言上、塗装用骨材が粉砕した自然石のみを成分
としている場合も含むものと解されるが、これを混入した混合剤を多頭式スプレー
ガンを用いて塗布することが本件特許権を侵害することは明らかであるから、かか
る場合の告知をも差止めの対象に含むことは許されず、他に②以外のいかなる内容
の告知等を差止めの対象とするのか、不明確といわざるを得ないから、①の差止請
求を認めることはできない。
 次に、②については、被控訴人の従業員である寺脇和博は、陳述書(甲24)
において、都立工業高等専門学校改築工事に関し、平成10年1月、元請け人の一
つであった安藤建設株式会社に控訴人が内容証明郵便を送ったため、被控訴人が下
請受注を逃し、代わって控訴人が受注した旨供述する。しかしながら、控訴人が安
藤建設に送ったとされる内容証明郵便の記載内容については、伝聞の域を出ず、甚
だ不明確であり、また、甲24によると、いったんは被控訴人に発注することで決定
していたにもかかわらず、控訴人が施工金額を切り下げたことにより、被控訴人が
受注を逸したことが認められ、これによると、安藤建設が被控訴人でなく控訴人に
前記工事を下請発注したことについては、施工金額その他諸々の条件を考慮した結
果ではないかとも考えられるから、前記内容証明郵便との因果関係も明確とはいい
がたい。
 もっとも、前記5で引用した原判決別紙「事実及び理由」第4の5のとお
り、控訴人が甲20の文書を建築業界関係者宛に送付し、イ号方法に関する限り虚偽
事実を告知して被控訴人の信用を毀損していること、そのことが被控訴人において
甲事件本訴を提起するに至った契機となっていると考えられること(甲事件の本訴
提起は甲20の文書が建築業界関係者宛に送付された直後である。)並びに本件訴訟
の経緯及び控訴人の主張内容からすれば、控訴人は、今後も同様の行為を行うおそ
れがあるものといわざるを得ない。
 したがって、イ号方法を実施することが本件特許権を侵害する旨を第三者に
告知することなどの差止めを求める部分については、被控訴人の請求は理由があ
る。
7 争点(8)(控訴人の過失の存否)について
 前記1のとおり、イ号方法は本件発明の技術的範囲に属さず、本件特許権を
侵害するものではないが、その理由は、イ号方法が「着色珪砂」を使用している点
等において、本件発明の構成要件中の「自然石」の要件を充足しないということに
あり、その余のイ号方法の構成は本件発明と異なるところがない。ことに、被控訴
人がイ号方法実施の際使用していることを自認している3頭式スプレーガン(原判
決添付イ号方法目録第4図)の形態は、本件公報で実施例として挙げられているス
プレーガン(第3図)と、同一といってよいほど酷似している。
 さらに、この3頭式スプレーガンの形態は従前の公知技術には存しなかった
こと(甲2の5、11、52等参照)、控訴人の元従業員が平成元年1月から3回にわ
たり、当時特許申請中であったこの3頭式スプレーガンを盗み出したとして警察に
逮捕されていること(乙24)等を考慮すると、被控訴人が上記3頭式スプレーガン
を使用して「非混合多色状」に「天然石調特殊仕上塗」(乙13)を行っていること
を見聞した控訴人において、本件特許権が被控訴人によって侵害されていると思い
込んだとしても無理からぬ事情が存したといわざるを得ない。
 他方、甲20の通知を行った時点で、控訴人がイ号方法において着色珪砂が使
用されていることを認識していたか否かについては、証拠上判然としないが、本件
特許請求における「適度に粉砕した自然石」との記載が自然石に対する人工的な着
色を含む趣旨か否か、その記載自体からは決しかねることは前記1(1)で引用した原
判決別紙「事実及び理由」第4の1(1)のとおりであること、前記1(4)で引用した
同別紙「事実及び理由」第4の1(7)イのとおり、控訴人は、この通知をする半年前
である平成8年6月11日に、「顔料とともに焼成し、且つ適度に粉砕したセラミ
ックス」が「適度に粉砕された自然石」と均等である旨の特許庁の判断を示した拒
絶理由通知を受領し、別件特許出願を取り下げていることなどに照らすと、たと
え、甲20の通知当時着色珪砂使用の事実を把握していたとしても、控訴人におい
て、人工的な着色をした自然石も本件特許請求の「自然石」に含まれると考え、イ
号方法が本件発明の技術的範囲に属すると判断したことも、当業者として無理から
ぬところであったというべきである。
 したがって、甲20の通知を行うにつき控訴人に過失があったとは認めるに足
りず、争点(10)(損害額)について判断するまでもなく、被控訴人の損害賠償請求
は理由がない。
8 争点(11)(不当利得)について
 都立工業高等専門学校改築工事に関し、被控訴人が下請受注できなかったこ
とが控訴人の営業誹謗行為によるものと直ちに認め難いことは、前記6のとおりで
あり、他に控訴人が営業誹謗行為によって利得を得た事実を認めるに足る証拠はな
い。
 したがって、被控訴人の不当利得返還請求も理由がない。
第5 結論
 以上の次第で、控訴人の甲事件反訴請求及び被控訴人の乙事件請求(損害賠
償請求部分)はいずれも理由がないから、これを棄却した原判決は相当であり、こ
れに関する本件控訴及び附帯控訴はいずれも理由がない。
また、被控訴人が当審で変更した差止請求のうち、イ号方法を実施すること
が本件特許権を侵害する旨を第三者に告知することなどの差止めを求める部分は理
由があるのでこれを認容し、その余の差止請求及び予備的に追加された不当利得返
還請求は理由がないので、これを棄却することとする。
 よって、主文のとおり判決する。
    大阪高等裁判所第八民事部
              
          裁判官  若   林       諒
          裁判官 西   井   和   徒
裁判長裁判官鳥越健治は転補につき署名押印することができない。
          裁判官  若   林       諒
別紙目録1
 原判決添付別紙目録1(イ号方法)の本文6行目ないし8行目を,つぎのとおり
訂正したもの
「粉砕した自然石である寒水砂を主成分とし,これに粉砕された自然石である市
販の着色珪砂を少量添加したものを骨材として用い,これらを合成樹脂中に混入し
てなる色違いの混合剤を3種用意する。なお,場合により骨材として少量の銅鉱滓
を添加することがある。」
別紙目録1の2
 原判決添付別紙目録2(ロ号方法)の本文2行目ないし4行目を,つぎのとおり
訂正したもの
「粉砕した自然石である寒水砂を主成分とし,これに粉砕された自然石である市
販の着色珪砂を少量添加したものを骨材として用い,これらを合成樹脂中に混入し
てなる色違いの混合剤を3種用意する。なお,場合により骨材として少量の銅鉱滓
を添加することがある。」

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