弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告が、原告に対し、平成15年2月28日付けをもってした、平成11
年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税の更正処分(以下
「本件更正処分」という)のうち、所得金額6億1124万3707円、納。
付すべき税額△7309万7106円を超える部分及び過少申告加算税の賦
課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という)を取り消す。。
第2事案の概要
、(「」。)本件は被告が原告のシンガポール共和国以下シンガポールという
における子会社であるP1以下P1社というが租税特別措置法以(「」。)、(
下「措置法」という)66条の6第1項所定の特定外国子会社等に該当する。
として、同項に規定する課税対象留保金額に相当する金額を原告の所得の金
額の計算上、益金の額に算入して本件更正処分をしたところ、これを不服と
した原告が、本件更正処分及び本件賦課決定処分(以下「本件各処分」とい
う)の取消しを求めた事案である。。
1関係法令には次のような定めがある。
特定外国子会社等の留保金課税(措置法66条の6)(1)
ア課税対象留保金額の益金算入
ア措置法66条の6第1項は、その有する外国関係会社(外国法人()
であって、居住者及び内国法人によって発行済株式等の50%超を直
接又は間接に保有されているものをいう。以下同じ)の直接及び間接。
保有の株式等(株式及び出資をいう。以下同じ)の当該外国関係会社。
の発行済株式の総数又は出資金額(以下「発行済株式等」という)に。
占める割合が5%以上である内国法人に係る外国関係会社のうち、本
店又は主たる事務所(以下「本店等」という)の所在する国又は地域。
(以下「国等」という)におけるその所得に対して課される税の負担。
が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく
低いものとして政令で定める外国関係会社に該当するもの(以下「特
定外国子会社等」という)が、昭和53年4月1日以後に開始する各。
事業年度において、その未処分所得の金額(措置法66条の6第2項
2号に規定する「未処分所得の金額」をいう。以下同じ)から留保し。
たものとして、政令で定めるところにより、当該未処分所得の金額に
つき当該未処分所得の金額に係る税額及び利益の配当又は剰余金の分
(「」。)配の額に関する調整を加えた金額以下適用対象留保金額という
を有する場合には、その適用対象留保金額のうち、当該内国法人の有
する当該特定外国子会社等の直接及び間接保有の株式等に対応するも
のとして政令で定めるところにより計算した金額(以下「課税対象留
保金額」という)に相当する金額は、当該内国法人の収益の額とみな。
して当該特定外国子会社等の各事業年度の終了の日の翌日から2月を
経過する日を含む当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、
益金の額に算入する旨規定している。
イ租税特別措置法施行令(以下「措置法施行令」という)39条の()。
20第1項は、外国法人が外国関係会社に該当するかどうかの判定に
、、ついては当該外国法人の各事業年度終了の時の現況によるものとし
内国法人が措置法66条の6第1項各号の内国法人に該当するかどう
かの判定については、当該各号に規定する外国関係会社の各事業年度
終了の時の現況によるものとする旨規定している。
イ特定外国子会社等の判定
ア措置法施行令39条の14第1項は、措置法66条の6第1項に()
規定する政令で定める外国関係会社は、法人の所得に対して課される
税が存在しない国等に本店等を有する外国関係会社(同項1号)及び
その各事業年度の所得に対して課される租税の額が当該所得の金額の
100分の25以下である外国関係会社(同項2号)とする旨規定し
ている。
イ措置法施行令39条の14第2項1号は、外国関係会社が同条1()
項2号の外国関係会社に該当するかどうかの判定における「所得の金
額」は、当該外国関係会社の当該各事業年度の決算に基づく所得の金
、(「」。)額につきその本店等の所在する国等以下本店所在地国という
の外国法人税(法人税法69条1項に規定する外国法人税をいう。以
下同じ)に関する法令(以下「本店所在地国の法令」という)の規。。
定により計算した所得の金額に、本店所在地国の法令により外国法人
税の課税標準に含まれないこととされる所得の金額等を加算し、還付
を受ける外国法人税の額で益金の額に算入している金額を控除した残
額とする旨規定している(以下当該一定の調整を加えた金額を「調整
所得金額」という。。)
ウ措置法施行令39条の14第2項2号は、外国関係会社が同条1()
「」項2号の外国関係会社に該当するかどうかの判定における租税の額
は、当該外国関係会社の当該事業年度の決算に基づく所得の金額につ
き、その本店所在地国又は本店所在地国以外の国等において課される
外国法人税の額(同号イ)及び租税条約の規定により納付したものと
()。みなされる外国法人税の額同号ロの合計額とする旨規定している
ウ適用除外規定
ア措置法66条の6第3項は、①特定外国子会社等のうち、株式若()
しくは「債券」の保有、工業所有権等若しくはこれらに準ずるもの若
しくは著作権の提供又は船舶若しくは航空機の貸付けを主たる事業と
するもの以外のものであり(事業基準、②その本店又は主たる事務所)
の所在する国又は地域において、その主たる事業を行うに必要と認め
られる事務所等の固定施設を有すること(実体基準、③その事業の管)
理、支配及び運営を自ら行っているものであること(管理支配基準、)
④主たる事業が、卸売業、銀行業、信託業、証券業、保険業、水運業
又は航空運送業である特定外国子会社等にあっては、その事業を主と
して当該特定外国子会社等に係る関連者以外の者との間で行っている
こと(非関連者基準、⑤主たる事業が④に掲げた事業以外の事業であ)
る特定外国子会社等にあっては、その事業を主として本店又は主たる
()事務所の所在する国又は地域において行っていること所在地国基準
のいずれの要件にも該当する場合には、特定外国子会社等のその該当
する事業年度に係る適用対象留保金額については措置法66条の6第
1項の規定は適用しない旨規定している。
イ措置法基本通達66の6−16(乙16)()
上記管理支配基準について措置法基本通達は次のように規定してい
る。
措置法第66条の6第3項の規定の適用上、内国法人に係る特定外
国子会社等がその本店又は主たる事務所の所在する国又は地域におい
て、事業の管理、支配及び運営を自ら行っているかどうかは、当該特
定外国子会社等の株主総会及び取締役会等の開催、役員としての職務
の執行、会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所並びにその他
の状況を勘案の上判定するものとする。この場合において、例えば当
該特定外国子会社等の株主総会の開催が本店所在地国等以外の場所で
行われていること、当該特定外国子会社等が現地における事業計画の
策定等に当り、当該内国法人と協議し、その意見を求めていること等
の事実があるとしても、そのことだけでは当該特定外国子会社等が事
業の管理、支配及び運営を自ら行っていないことにはならないことに
留意する。
エ課税対象留保金額の計算
ア措置法66条の6第2項2号は「未処分所得の金額」の意義につ()、
いて、特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額につ
き、法人税法及び措置法による各事業年度の所得の金額の計算に準ず
るものとして政令で定める基準により計算した金額を基礎として政令
で定めるところにより当該各事業年度開始の日前5年以内に開始した
各事業年度において生じた欠損の金額に係る調整を加えた金額をいう
旨規定している。
そして、同条項を受けた措置法施行令39条の15第1項(平成1
7年政令103号による改正前のもの)は「未処分所得の金額」は、、
原則として、特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金
額に同項1号に掲げる金額及び同項2号に掲げる金額の合計額から当
該所得の金額に係る同項3号に掲げる金額を控除した残額とする旨規
定している。ただし、同条2項は、内国法人は、同条1項の規定にか
かわらず、特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額
につき、当該特定外国子会社等の本店所在地国の法人所得税に関する
法令の規定により計算した所得の金額に当該所得の金額に係る同項1
号から12号までに掲げる金額の合計額を加算した金額から当該所得
に係る同項13号及び14号に掲げる金額の合計額を控除した残額を
もって未処分所得の金額とすることができる旨規定している。
イ措置法施行令39条の16第1項は、措置法66条の6第1項に()
規定する「適用対象留保金額」とは、特定外国子会社等の各事業年度
の未処分所得の金額から、当該各事業年度において納付することとな
る法人所得税の額及び当該各事業年度に係る利益の配当又は剰余金の
分配の額の合計額を控除した残額をいう旨規定している。
ウ措置法施行令39条の16第2項(平成17年政令103号によ()
る改正前のもの)は、措置法66条の6第1項に規定する「課税対象
留保金額」とは、同項各号に掲げる内国法人に係る特定外国子会社等
の各事業年度の適用対象留保金額に、当該特定外国子会社等の当該各
事業年度終了の時における発行済株式等のうちに当該各事業年度終了
の時における当該内国法人の有する当該特定外国子会社等の直接及び
間接保有の株式等の占める割合を乗じて計算した金額をいう旨規定し
ている。
法人税法(2)
各事業年度の所得金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金
額について法人税法22条3項は次のように規定している。
ア22条3項
内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額
に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とす

1号当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これ
らに準ずる原価の額
2号前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費
その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに
債務の確定しないものを除く)の額。
(後略)
イ法人税基本通達2−2−12(甲39、甲62)
債務の確定の判定基準について法人税基本通達は次のように規定して
いる。
法22条第3項第2号(損金の額に算入される販売費等)の償却費以
、外の費用で当該事業年度の終了の日までに債務が確定しているものとは
、。別に定めるものを除き次に掲げる要件のすべてに該当するものとする
1当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立しているこ
と。
2当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をす
べき原因となる事実が発生していること。
3当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することがで
きるものであること。
所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本(3)
国政府とシンガポール政府との間の協定(以下「日星租税条約」という。
甲72)7条1項
日星租税条約7条1項は次のように規定している。
一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にあ
る恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り、
当該一方の締約国内においてのみ租税を課することができる。一方の締約
国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内
において事業を行う場合には、その企業の利得のうち当該恒久的施設に帰
せられる部分に対してのみ、当該他方の締約国内において租税を課するこ
とができる。
条約法に関するウィーン条約(以下「ウィーン条約」という。乙56)(4)
条約の解釈についてウィーン条約31条及び32条は以下のとおり規定
している。
31条(解釈に関する一般的な規則)
1項条約は、文脈によりかつその趣旨及び目的に照らして与えられる用
語の通常の意味に従い、誠実に解釈するものとする。
、、()2項条約の解釈上文脈というときは条約文前文及び附属書を含む
のほかに、次のものを含める。
a条約の締結に関連してすべての当事国の間でされた条約の関係合意
b条約の締結に関連して当事国の一又は二以上が作成した文書であっ
てこれらの当事国以外の当事国が条約の関係文書として認めたもの
3項文脈とともに、次のものを考慮する。
a条約の解釈又は適用につき当事国の間で後にされた合意
b条約の適用につき後に生じた慣行であって、条約の解釈についての
当事国の合意を確立するもの
c当事国の間の関係において適用される国際法の関連規則
4項用語は、当事国がこれに特別の意味を与えることを意図していたと
認められる場合には、当該特別の意味を有する。
32条(解釈の補足的な手段)
前条の規定により得られた意味を確認するため又は次の場合における意
味を決定するため、解釈の補足的手段、特に条約の準備作業及び条約の締
結の際の事情に依拠することができる。
a前条の規定による解釈によっては意味があいまい又は不明確である
場合
b前条の規定による解釈により明らかに常識に反した又は不合理な結
果がもたらされる場合
2前提事実等(証拠を掲記しない事実は当事者間に争いがない)。
原告及びP1社の設立及びその後の経緯(1)
アP2グループは、英国に拠点を置く製薬メーカーであり、P3(以下
「P3社」という)は、P2グループの本部機能を持つ会社である。な。
、、(「」おP2グループの本部機能を持つ会社は以前はP4以下P4社
という)であったが、1995年にP3社との合併により、P3社とな。
った。
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法66条の6第1項所定の規定とP1社の地位(2)
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■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■当該事業年度の
所得に対する外国法人税の額は、4532万5169.14シンガポー
ルドルであるから(乙11、当該事業年度の所得に対して課される租税)
の額は、当該所得の金額の100分の4.32であって、所得に対して
課される租税の額が当該所得の金額の100分の25以下となる。
ウ以上によれば、P1社が外国関係会社であり、かつ、措置法66条の
6第1項所定の「その所得に対して課される税の負担が本邦における法
人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低い」という要件を
満たすことは明らかである。
1999年(平成11年)2月28日のシンガポールドルの換算相場(3)
措置法66条の6第1項の規定により特定外国子会社等に係る課税対象
留保金額に相当する金額を益金の額に算入する場合における当該課税対象
留保金額の円換算については、措置法基本通達66の6−13(乙21)
及び法人税基本通達13の2−1−2(乙22)において、当該特定外国
子会社等の当該事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日における対
顧客電信売買相場の仲値(同日の当該仲値がないときは、その直前の日の
仲値)によることとし、継続適用を条件に、当該内国法人の同日(前掲の
「2月を経過する日)を含む事業年度終了の日の対顧客電信売買相場の仲」
値によることができることとしている。
P1社の1998年(平成10年)12月期の事業年度終了日の翌日か
ら2月を経過した1999年(平成11年)2月28日は日曜日であり、
市場が休みであるから、円換算に用いるべき為替相場は、同月26日のも
のであり、同日における電信売買相場の仲値は、対シンガポールドルにつ
いては、1シンガポールドル当たり69.36円であり(乙15、対ポン)
ドについては、1ポンド当たり191.58円である(甲37。)
課税処分等の経緯(4)
本件に関する課税処分等の経緯は、別紙1のとおりである。
3税額等に関する当事者の主張
原告の本件各事業年度の税額等に関する当事者の主張は、別紙2及び同3
記載のとおりであり、本件の争点であるP1社が措置法66条の6第1項に
規定する特定外国子会社等に該当するかどうか、仮に該当する場合の原告の
所得の計算上、益金の額に算入される課税対象留保金額の算定方法(P1社
の未処分所得の算定)に関する部分を除き、計算の基礎となる金額及び計算
方法に争いはない。
4争点
争点1(1)
本件事案に措置法66条の6のタックスヘイブン対策税制が適用される
か。具体的には、①本件は、国際的租税回避が行われていない事案である
といえるかどうか、②①が肯定されることを前提に、措置法66条の6の
目的的解釈により、同条は本件事案には適用されないということができる
か、原告が同条の「内国法人」に当たらないということができるか、及び
P1社が同条の「特定外国子会社等」に当たらないということができるか
が争点となっている。
争点2(2)
措置法66条の6のタックスヘイブン対策税制は日星租税条約に違反す
るかどうか。具体的には、措置法66条の6において、日本国がシンガポ
ール法人である特定外国子会社等の課税対象留保金額を親会社である日本
法人の益金の額に算入して課税することが、一方の締約国の企業の利得に
対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて他方の締
約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税
を課することができる旨規定した日星租税条約7条1項に反しないかが争
点となっている。
争点3(3)
P1社が措置法66条の6第3項の適用除外の要件をすべて満たしてい
るかどうか。具体的には、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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■■■■■■、②P1社が実体基準・管理支配基準・所在地基準を満たし)
ているかどうかが争点となっている。
争点4(4)
被告のP1社の未処分所得の算定方法に誤りがあるかどうか。具体的に
は、P1社の未処分所得の算定に当たり、■■■■■■■■■■■■■■
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■■■■■■■■■■■■■が争点となっている。
5争点に係る当事者の主張
争点1について(1)
(原告の主張)
ア本件事案には国際的租税回避は存在しないこと
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■■■■■■■■■■■■■■■さらに、1998年(平成10年)に
おけるシンガポールの法人税率は25%を超えており(乙11、■■)
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イ措置法66条の6に規定されるタックスヘイブン対策税制は、タック
スヘイブンに子会社を設立し、これを利用して税負担の不当な軽減を図
ること(租税回避)を防止するという政策目的の為に導入された制度で
あるところ、一定の政策目的の実現のために設けられた政策税制につい
ては、当該目的から離脱した形で解釈適用することは許されないと解す
べきである(外国税額控除の余裕枠を利用した取引については法人税法
69条の外国税額控除の対象とすることができないとした最高裁平成1
7年12月19日第二小法廷判決参照。本件において国際的租税回避が)
行われた事実はなく、タックスヘイブン対策税制の趣旨、目的に合致し
、。ない事案であるから措置法66条の6を適用することは認められない
ウ内国法人が敢えてタックスヘイブン国に外国子会社等を設立し、その
外国子会社等に内国法人の利益の一部を留保するようなことを行ってお
らず、その内国法人がある会社に完全に支配されているような会社(完
全被支配法人)である場合には、租税回避はあり得ないのであるから、
そのような場合における完全被支配法人である内国法人は、措置法66
条の6の「内国法人」から除外されるものと解すべきである。原告は完
全被支配法人であり、外国子会社等を設立していないのであるから、措
置法66条の6の「内国法人」には当たらないと解すべきであり、本件
について措置法66条の6を適用することは認められない。
エ措置法66条の6第3項は、我が国企業の海外における通常の事業活
動を阻害するような弊害を排除し、我が国における税負担を不当に減少
させるような事例にのみ対処しようとするものであるから、同項括弧書
きの特定外国子会社等とは、我が国における税負担を不当に減少させる
ような事業活動を営む特定外国子会社等のみをいうものと解される。そ
して、P1社は、我が国における税負担を不当に減少させるような事業
活動を営むものではないから、同項括弧書きの特定外国子会社等に当た
らない。
(被告の主張)
原告は、措置法66条の6が税負担の不当な軽減を図る事案以外に適用
されるべきではない旨主張する。しかし、措置法66条の6は、法の適正
な執行を妨げないように、その適用要件上、税負担の不当な軽減を図る目
的そのものを要件としていないのであり、原告の主張は、条文上の根拠も
なく、独自の解釈に基づいて法の適用を制限しようとするもので失当であ
る。
争点2について(2)
(原告の主張)
ア措置法66条の6の課税対象がタックスヘイブン子会社の所得である
こと
ア措置法66条の6は、法人税法11条の実質所得者課税の原則を()
具体化したものとして、タックスヘイブン子会社の留保所得が親会社
に帰属することを定めた制度である。そして、その帰属する所得がど
の所得に分類されるかについては、タックスヘイブン子会社は、その
、所在地国における事業活動から生ずる所得を得ているものであるから
事業所得に該当する。
イ措置法66条の6は「内国法人に係る外国関係会社のうち、税の()、
負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著
しく低いもの(特定外国子会社等)が、その未処分所得の金額から留
保したものとして、適用対象留保金額を有する場合には、その適用対
象留保金額のうちその内国法人の有する株式等に相当する金額は、そ
の内国法人の収益の額とみなしてその内国法人の各事業年度の所得の
金額の計算上、益金の額に算入する(同条1項)として、特定外国。」
子会社等の利得、すなわち「当該子会社等の各事業年度の決算に基づ、
く所得の金額(同法施行令39条の15」を内国法人の益金の額に算)
入する旨を定めている。このように、措置法66条の6第1項及び同
法施行令39条の15は、特定外国子会社等が稼得した利得を内国法
人の益金の額に算入する規定である。
イ日星租税条約7条1項の意義
日星租税条約7条1項は「恒久的施設なければ課税なし」という基本、
原則を明文化したものであり、同条約の一方の締約国であるシンガポー
ル法人が、他方の締約国である日本において恒久的施設を通じて事業活
動を行わない限り、日本において、シンガポール法人の利得に対してい
かなる租税を課することもできないことを意味する。
ウP1社は、日本国内に恒久的施設を有していないから、その所得を措
置法66条の6に基づいて課税対象とすることは、日星租税条約に違反
する。そして、我が国では、憲法98条2項において国際協調主義を定
めており、条約は国内法に優先するから、措置法66条の6の適用は排
除されなければならない。
エ租税条約は、両締約国間において発生した利得についてその課税権の
及ぶ範囲を定め、国内租税法の濫用によって課税権の侵害が行われるこ
とのないように、二国間の合意によってそれぞれの国家の課税権を調整
し、適正な課税を実現することにより、両国間における財・サービス・
資金の流れを円滑化することを目的としており、それにもかかわらず、
租税条約締結国に所在する外国子会社の利得を課税対象とするような課
税規定を認めることは、二国間の財・サービス・資金の流れを円滑化す
るという租税条約の目的に反する。したがって、租税条約の目的からし
ても、日星租税条約の相手国であるシンガポールに所在する子会社の所
得を課税対象とするような課税規定は認められるべきではない。
オフランス国務院判決について
フランス国務院は、2002年(平成14年)6月28日、当該事案
で課税の対象となっているのは、スイスの外国子会社の所得であると明
確に述べ、これを前提にフランスのタックスヘイブン対策税制がフラン
ス・スイス租税条約に反するとの判断を示している。すなわち、同判決
、、はタックスヘイブン法人に対するタックスヘイブン国における課税と
タックスヘイブン対策税制によるフランスにおける課税とでは、納税義
務者が異なるから租税条約は問題にならないという、租税条約の事業所
得条項を企業に着目して解釈する被告の考え方を否定し、利得に着目す
る原告の考え方を採用している。
カ被告の主張に対する反論
ア被告は、措置法66条の6は、我が国の企業に対して課税してい()
るのであるから日星租税条約には違反しないと主張するが、措置法6
6条の6で課税の対象となっているのは、あくまでP1社という海外
企業の利得なのであるから、同一の課税物件(所得又は財産)に対し
二国間の課税が競合しないように定めた(国際的二重課税の回避)日
星租税条約と抵触することは明らかである。
仮に被告の主張するように措置法66条の6が、自国の企業に対し
て課税するものであり、P1社に課税するものではなく日星租税条約
違反の問題は生じないとすると、国内法において納税義務者を変更な
いし複数定めることにより、同一の課税物件に対して幾重にも課税す
ることが可能となり二重課税防止を目的とした租税条約が何らの意味
も有しなくなる。
イ被告は、租税条約は、自国企業に対して適用される国内租税法を()
修正しようとするものではないから、自国企業に対する自国の課税の
在り方については、租税条約の射程外であるとして、措置法66条の
6と日星租税条約の抵触は生じない旨主張する。しかし「租税条約は、
自国企業に対して適用される国内租税法を修正しようとするものでは
ない(自国企業射程外原則論)とするその主張の根拠が不明である。」
なお、被告の自国企業射程外原則論は、P5教授の論文の記述の一部
(甲124の25頁)に依拠するものと思われるが、同記述の主たる
意味は「租税条約は、自国の居住者や自国の法人に適用される国内租、
、。」税法を修正し特定の減免税の特典を付与しようとするものではない
という点にあり、締約国間に租税条約が存在することを奇貨として、
国内租税法が予定しない特定の租税の減免といった特典を与えるよう
な事態は、租税条約上、原則的に発生しないことが前提となっている
ことを説明しようとしたものであり、被告主張の根拠となるものでは
ない。
ウ被告は、日星租税条約の解釈に当たっては、タックスヘイブン対()
策税制はOECDモデル租税条約に反しないとしているOECDモデ
。、ル租税条約コメンタリーに十分配慮すべきである旨主張するしかし
OECDモデル租税条約コメンタリーは、OECD加盟国ではないシ
ンガポールとの間の条約には適用されないのであるから、これに依拠
するのは誤りである。そもそもOECDモデル租税条約コメンタリー
は、精々条約解釈の補足的な手段(すなわち、ウィーン条約31条に
よる条約解釈の主要な手段によっては意味があいまい又は不明確であ
る場合、あるいは明らかに常識に反した不合理な結果がもたらされる
場合に依拠することが許される場合があるにとどまる)としての意味。
しか持たないし、日星租税条約の締結は1994年であるのに対し、
OECDモデル租税条約コメンタリーは2003年のものなのである
から、これが遡って日星租税条約の解釈に影響を及ぼすことはない。
、、、、また被告は国際法上シンガポールと日本国との間においては
タックスヘイブン対策税制について黙示の合意(ウィーン条約31条
3項a、b)があったなどとも主張するが、同条項a及びbは、日星
租税条約の解釈又は適用に関する合意(a、あるいは、日星租税条約)
の適用についての慣行であり、日星租税条約の解釈について、他方当
事国との合意が達成された状態(b)をいうものであり、日星租税条
約という特定の条約についての具体的な当時国間の合意が必要である
ところ、被告の主張する事情ではいずれにも該当しないことは明らか
である。
エ被告は、国際法上、我が国のタックスヘイブン対策税制は、日星()
租税条約の解釈について同条約に抵触しないことについてシンガポー
ル政府に対抗力を有しているから、同条約に違反しない旨主張する。
しかし、国際法上「対抗力」が意味を持ちうるのは、措置法66条の
6に基づき課せられる法人税が租税条約と関係せず、国際慣習法上も
当該課税措置の是非を判断する基準を提供していない場合であるが、
本件では、日星租税条約2条において、法人税について同条約が適用
されることは明らかであり、対抗力論は意味を持ち得ないことは明ら
かであるから、被告の主張は失当である。
(被告の主張)
ア措置法66条の6が日星租税条約7条1項に抵触する余地がないこと
租税条約は、自国企業に対する相手国の課税を減免させること、自国企
業あるいは自国企業の相手国にある子会社を相手国における差別的あるい
は不当な課税から保護することを基本とするものであり、自国企業に対し
て適用される国内租税法を修正しようとするものではないから、自国企業
に対する自国の課税の在り方については、租税条約の射程外である。
日星租税条約7条1項は、一方の締約国の企業に対して相手方締約国が
租税を課す場合の規定であり、課税の対象者は他国企業(子会社)である
のに対し、措置法66条の6は、課税の対象者(納税義務者)はあくまで
も自国企業(親会社)であるから、日星租税条約7条1項に抵触する余地
はない。
イ国際法の観点からも措置法66条の6が日星租税条約に違反しないこと
シンガポールの財務大臣の発言(乙48)内容からしても、シンガポー
ル政府は、我が国を含めた大部分のタックスヘイブン対策税制が課税対象
としているのが、原則的にシンガポールの課税の対象外であるという法制
度として認識していたものと認められ、しかも、タックスヘイブン対策税
制が日星租税条約に違反したものであるとの抗議をしなかったことからす
ると、国際法上、シンガポールと日本国との間においては、タックスヘイ
ブン対策税制について黙示の合意(ウィーン条約31条3項a、b)があ
ったと解することできる。したがって、国際法上、我が国のタックスヘイ
ブン対策税制である措置法66条の6は、日星租税条約の解釈について同
条約に抵触しないことについてシンガポール政府に対抗力を有しているか
ら、同条約に違反しない。
ウ日星租税条約の解釈に当たってはOECDモデル租税条約コメンタリー
に十分配慮すべきであること
アOECDモデル租税条約は、法的拘束力こそ有しないが、租税条約()
の立案及び解釈の実質的な標準の性質を有する「一般的に認められた指
針」として存在し、OECD加盟国はもちろん、非加盟国においても広
く活用されている。そして、日星租税条約は、OECDモデル租税条約
と規定内容が類似しており、特に本件で問題となっている日星租税条約
7条1項はOECDモデル租税条約7条1項と規定内容が同じである。
したがって、日星租税条約の解釈に当たってはOECDモデル租税条
約及び同コメンタリーに十分配慮すべきであるところ、OECDモデル
租税条約7条1項に関するコメンタリーでは、タックスヘイブン対策税
制はOECDモデル租税条約に反しないとしている。
イ原告は、シンガポールがOECD非加盟国である限り、OECDモ()
デル租税条約コメンタリーが日星租税条約の公定解釈にならないし、日
本とシンガポールとの間でOECDモデル租税条約コメンタリーの解釈
について合意したと解釈できるような証拠はない旨主張する。しかし、
日星租税条約がOECDモデル租税条約を基本として締結されたもので
あることは、その規定振りからも明らかであり、原告の主張は失当であ
る。
また、原告は、OECDモデル租税条約コメンタリーは2003年1
月に発表されたものであり、1994年に締結された日星租税条約とは
何らの関係もない旨主張するが、OECDモデル租税条約は、その序文
によれば、現行版(2003年1月改訂)のコメンタリー採用前に発効
していたか採用後に発効していたかにかかわらず、すべての租税条約の
解釈には現行版のコメンタリーを利用すべきであるから、時期の前後を
根拠として日星租税条約と2003年版の同コメンタリーとは無関係で
ある旨の原告の主張は失当である。
エ原告の主張に対する反論
ア措置法66条の6第1項に関する原告主張について()
原告は、我が国のタックスヘイブン対策税制(措置法66条の6)の
、性質を法人税法11条の実質所得者課税の原則を具体化したものとして
タックスヘイブン子会社の留保所得が親会社に帰属することを定めた制
度であるとした上で、日本に恒久的施設を有しないシンガポール法人が
得る事業所得については、日本では課税できないとする日星租税条約7
条1項と抵触する旨主張する。
しかし、措置法66条の6は、我が国の企業に対し、タックスヘイブ
ンを利用して設立された海外子会社の利益を、我が国の企業の利益とみ
なして課税している制度であって、原告の主張はタックスヘイブン対策
税制の性質についての理解を誤るものであり失当である。また、法人税
法11条の規定する実質帰属者課税の原則とは、名義と実体、形式と実
質が異なる場合の所得の帰属についての原則であり、同条の適用に当た
っては、資本関係に限定されず、いわゆる仮装行為に対処する制度であ
るのに対し、タックスヘイブン対策税制は、軽課税国に設立された外国
法人の留保所得を、我が国の株主との資本関係を通じて、その持分に応
じて内国法人の収益の額とみなして課税する制度であり、租税回避の否
認規定であって、両規定は、その趣旨、目的、適用範囲を異にしている
のであるから、タックスヘイブン対策税制が法人税法11条の実質所得
者課税の原則を具体化した制度であることを前提とする原告の主張は失
当である。
イフランス国務院判決に関する原告主張について()
原告は、フランス国務院判決は、租税条約の事業所得条項を企業に着
目して解釈する考え方を否定し、利得に着目する考え方を採用している
として、本件における被告の主張は、同判決により否定されている旨主
張する。
、、、しかしフランスのタックスヘイブン課税規定は我が国とは異なり
タックスヘイブン子会社の利益が親会社の利益として課税されることを
認めている特殊な構造を有するものであり、フランス国務院判決を直ち
に我が国の国内法及び日星租税条約に適用することが相当でないことは
明らかである。なお、フィンランドのタックスヘイブン対策税制がフィ
ンランドとベルギー間の租税条約に反するかという点についてのフィン
ランド行政最高裁判所判決においては、フランス国務院判決とは反対の
判示がなされている(乙47。)
争点3(3)
アP1社の主たる事業が「債券」の「保有」に当たるか
(被告の主張)
ア措置法66条の6第3項の立法趣旨は、特定外国子会社等の主た()
る事業が「株式(出資を含む)若しくは債券の保有」等である場合に。
は、これらの事業が、その性格からして我が国においても十分に行い
得るものであり、特定外国子会社等がその地に存在することについて
積極的な経済合理性を見い出すことが困難であることから、当該特定
外国子会社等は、最初から適用除外の対象とはならないとしたもので
ある。言い換えると、株式若しくは「債券」の保有等から生じる所得
は、いずれも「投資所得」に分類されるところ、これらの所得の取得
を主たる事業とする業種については、日本においても十分経営が可能
であり、その地に存在することについて経済的合理性に乏しく、適用
除外の対象とはならないとしたものである。
イ措置法66条の6第3項所定の「債券」については、措置法上、()
定義規定が設けられておらず、解釈に委ねられているが、一般に「債
券」とは、国又は地方公共団体、事業会社などが資金借入れの見返り
に発行する有価証券の一般的呼称であり、法的には一種の債務証書で
あるが、単なる借用書とは異なり、転売可能な証券の形態をとってい
るものをいうと解され(乙17「債務証書」とは、融資を受けて一)、
、定の期日に債権者に返済することを義務付けられている証券を意味し
狭義には、社債、CP、CD、BAなどの債券や手形を意味するとさ
れている(乙18。上記のような意味における「債券」を保有する事)
、、業はその性格からして我が国においても十分に行い得るものであり
特定外国子会社等がその地に所在することについて積極的な合理性を
見い出すことは困難であるから、同条項の「債券」とは上記のような
意味に理解すべきである。
ウCPは、発行の便宜上、約束手形という法形式が採用されている()
が、証券取引法上の有価証券とされ(証券取引法2条1項8号、短期)
資金の調達手段であって、投資対象たる証券としての経済的実質を有
しており、CPの保有から生じる利子所得は投資所得に該当するとこ
ろ、前記「債券」の定義及び措置法66条の6第3項の立法趣旨に照
らしても、同条項の「債券」に■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■同項の適用除外の対象とはなら
ない。
エ原告の主張に対する反論()
a原告は、措置法66条の6第3項所定の「債券」とは、国内及び
外国の国債地方債特殊法人債社債を意味し同条項所定の保、、、、「
有」とは長期継続的な保有に限られる旨主張するが、同条項の立法
趣旨からすれば、同項の「債券」をそのように限定的に解すべき理
由はなく、また、株式若しくは「債券」を長期間保有する事業であ
れ、短期間保有する事業であれ、いずれにしても、このような事業
はその性格からして我が国においても十分に行い得るものであり、
特定外国子会社等がその地に所在することについて積極的な経済合
理性を見い出すことは困難であることに変わりはないから原告の上
記主張は失当である。
b原告は、CPは、商業ファイナンスの手段としての経済的機能を
、「」、有するとともに銀行預金の代替的機能を有するのに対し債券は
投資ファイナンスの手段としての経済的機能を有するから、両者は
異質の金融商品であり、その経済的機能を異にする旨主張するが、
原告の主張する企業の資金の流れを「投資ファイナンス」と「商業
ファイナンス」に区分する考え方は、金融学会、ファイナンス学会
等で共有された概念ではなく、決済性(あるいは流動性)と収益性
を排他的な同次元の特性として位置付けて企業の発行する債務等を
区分することは不適切であり、これらの特性は並立する独立な次元
として理解すべきである。
、「」c原告は平成10年当時の旧措置法91条の2を引用して債券
の解釈を行っているが、措置法は所得税法をはじめとする多数の税
法を内容とするものであるから、前提とする各税法によって用語の
定義が異なっているのに、これを看過したまま、印紙税法の区分か
ら「債券」の解釈を導いている点で失当である。なお原告の主張に
よっても印紙税法別表第1は「約束手形又は為替手形」と「株券、
出資証券若しくは社債券」との税率の違いを定めているものにすぎ
ず「債券」の内容の裏付けになるようなものではない。
d原告は、証券を①商品証券②貨幣証券③資本証券という3つの区
分に分類し、措置法66条の6第3項の「債券」は「代替性のある、
資本証券のうち利子付金銭債権を表示するもの」であるが、CPは
約束手形であり貨幣証券であるから「債券」には当たらない旨主張
するが「債券」という用語は、有価証券をその表象する権利内容、、
すなわち経済的実質の側面から定義付けられたものと解すべきであ
るにもかかわらず、上記主張は、証券を法技術的概念のみから分類
したものであり、かつCPが発行の便宜上約束手形という法形式を
とっていることのみをとらえて主張するもので誤りである。
e原告は、①法人税法施行令177条1項及び②日米租税条約にお
ける文言をとらえてCPは「債券」には当たらない旨主張するが、
①はむしろ「債券」と約束手形について同じ取扱いをする旨定めて
おり、両者の経済的同一性に着目した規定とみるべきであり、②は
日米租税条約に関する交換公文にすぎず、租税法の解釈の参考とな
るものではない。
(原告の主張)
ア租税法の規定の意味内容は、文理解釈により明らかにするのが原()
則であり、文理解釈により規定の意味内容を明らかにすることが困難
な場合にはじめて、規定の趣旨目的に照らしその意味内容を明らかに
する論理解釈(趣旨解釈、目的的解釈)が行われるべきところ、平成
10年当時の旧措置法91条の2において「債券」と「約束手形」が
異なる概念であることは明確に規定されているから約束手形であるC
Pは「債券」に当たると解することはできない(なお、■■■■■■
■■■■が私法上約束手形とされていることについては当事者間に争
いがない。また、法人税法(施行令177条1項1号)及び200。)
3年(平成15年)11月6日に締結された日米租税条約においても
「」「」(、)。債券と約束手形であるCPを区別している甲48甲49
被告は、原告が旧措置法91条の2を引用して「債券」の解釈を行
、、、っている点について措置法は多数の税法を内容とするものであり
前提とする各税法によって用語の意義が異なってくるから目的を異に
する印紙税法の規定から「債券」の解釈を導くことはできない旨主張
する。しかし、被告の主張によれば、措置法の中で用いられている用
語であっても、その前提となる税法が異なるのであれば同義に解する
ことができなくなってしまうが、立法技術の観点からすれば、措置法
の規定の中で用いられている用語は、特別に各章ごとの固有の定義規
定が設けられている場合以外は、同じ意味を与えられていると解する
のが正当である。
被告は、原告の主張によっても旧措置法91条の2を受けた印紙税
法別表第1は「約束手形又は為替手形」と「株券、出資証券若しくは
社債券」との税率の違いを定めているのであって「債券」の内容の裏
付けになるようなものではない旨主張する。しかし、印紙税法別表第
1は、約束手形と「債券」との税率の違いを定めるのみではなく、そ
の前提として、約束手形と「債券」とが区別されることを定めている
ことは明らかである。
イ経済実質上の観点からみてもCPと「債券」とは明らかに区別さ()
れる。約束手形であるCPは、商業ファイナンス(営業活動に伴う一
時的な不足資金を調達する)の手段としての経済的機能とともに、資
金調達を行う企業からみれば短期の銀行借入れの代替的機能を有し、
投資家からみれば金利変動リスク及び信用リスクの少ない短期の余剰
。、資産の運用の手段として銀行預金の代替的機能を有するこれに対し
「債券」は、投資ファイナンス(長期の設備資金等を調達する)とし
ての経済的機能を有し、資金調達を行う企業からみれば長期の銀行借
入と並ぶ長期資金の調達手段であり、投資家からみれば金利変動リス
ク及び信用リスクを伴う積極的な投資運用の手段としての機能を有す
るという違いがある。また、日本の金融市場において、CP市場は短
期金融市場に分類され(甲29、一方債券市場は長期金融市場に分類)
されている(甲28。したがって、CPと「債券」は資金調達を行う)
企業及び投資家のいずれの視点からみても、さらに取り引きされる市
場という点からみても異質の金融商品であり経済的機能を異にする。
ウ有価証券は、その化体する権利の内容に応じて①商品証券②貨幣()
証券③資本証券に分けられる(甲45の1)ところ「債券」とCPは、
この観点からも区別されるすなわち措置法66条の6第3項の債。、「
券」とは代替性のある資本証券(資本を提供した者の権利で収益請求
権を含むものを化体する有価証券の総称)のうち、利子付金銭債権を
表示するものをいい、具体的には公社債をいう。■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■いわゆる
貨幣証券(一定期限又は随時に一定額の貨幣を請求する権利を化体し
た有価証券の総称)たる約束手形に当たるから措置法66条の6第3
項の「債券」には当たらない。
エ「債券」の保有にいう「保有」とは、長期継続的に変化のない状()
態を指す用語である。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■
オ被告の主張に対する反論()
被告は、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■その性格からし
て我が国内においても十分行い得るものであり、その地に所在するこ
とについて積極的な経済合理性を見い出すことは困難であるから、措
置法66条の6第3項所定の「債券」の保有という事業に当たる旨主
張する。しかし、措置法66条の6第3項括弧書きは、我が国でも十
分行いうる事業のすべてを最初から適用除外の対象から除く趣旨では
なく、タックスヘイブン国に所在することについて税負担軽減以外の
積極的な経済合理性を見い出すことが困難であるものを除外する趣旨
である。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■シンガポールにおける税率は26%であり(乙11、我が国の)
タックスヘイブン対策税制で予定する軽課税(25%以下)に該当す
るものではないから税負担の軽減という目的はあり得ないし、■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■引き続きその地で事業活動を行うことは合理的である
から被告の主張は失当である。
イP1社が適用除外要件(実体基準・管理支配基準・所在地基準)を満
たすかどうか
(被告の主張)
ア実体基準とは、特定外国子会社等が、その主たる事業を行うに必()
要と認められる事務所等の固定施設を、その本店又は主たる事務所の
所在する国又は地域において有することを要件とするものである。そ
して、ここにいう「主たる事業を行うに必要と認められる事務所等の
固定施設」については、特定外国子会社等が独立企業としての実体を
備えているというに相応しいものでなければならない。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
イ管理支配基準とは、特定外国子会社等が、その本店所在地国にお()
いて、その事業の管理、支配及び運営を自ら行っているものであるこ
とを要件とするものであるが、これが認められる前提として、その事
業に必要と認められる常勤役員及び従業員が本店所在地国に存在する
ことが必要不可欠である。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
したがって、P1社が管理支配基準を満たしているとはいえない。
ウ所在地国基準とは、特定外国子会社等が、その事業を主としてそ()
の本店所在地国において行っていることを要件とするところ、■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■は
既に主張したところから明らかである。
エ原告の主張に対する反論()
原告は、上記3基準の判断において、会計上の費用計上の有無は直
接関係がない旨主張する。しかし、独立企業としての実体を備えてい
る会社であれば、通常、その企業活動に必要な費用が生じ、これを所
得金額の計算上、費用として計上するものであるから、上記各基準の
充足の有無の検討に当たっては、当該特定外国子会社等が、当該事業
年度の所得金額の計算上、独立企業として活動するに相応しい費用が
計上されているか否かは重要な指標となることは明らかである。
(原告の主張)
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ウ管理支配基準を満たしているか否かは、①当該子会社等の重要な()
、、意思決定機関である株主総会及び取締役会の開催状況②役員の構成
職務執行状況、③会計帳簿の作成及び保管状況、④その他業務遂行上
の重要事項を当該子会社等が自らの意思で決定しているか否かなどの
諸事情を総合的に考慮し、当該子会社等がその本店所在国内において
親会社から独立した企業としての実体を備えて活動しているか否かに
よって判断すべきである。
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オ被告の主張に対する反論()
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■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■実体基準で
要求される実質的な固定施設の有無の判断と、会計上の費用計上の有
無とは直接の関係はないから、被告の主張は失当である。
争点4(4)
アP1社の未処分所得の金額は、■■■■■■■■■■■■■■■■■
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(被告の主張)
アシンガポール会社法201条1項は、会社の取締役は、会社の損()
益の状況を適正に示す決算報告書を作成しなければならないとし、同
条14項は、会社の決算報告書は、同法第9附則の要件を満たすもの
でなければならないとしている(乙25。そして、決算報告書の金額)
表示については、同法第9附則9項が、すべてシンガポール貨幣単位
(シンガポールドル)でなければならないとし、例外的にregis
trarofcompaniesandbusinesse
s(シンガポール会社法202条1項にいう登記官。以下「RCB」
という)の承認を得れば、シンガポールドル以外の通貨による表示も。
可能とされている(同法202条、乙26。)
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(原告の主張)
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イ被告の主張に対する反論()
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、、■■■が法人税の課税所得は課税上適正な所得である必要があり
被告が更正処分を行うに当たっては確定した決算に拘束されないの
であるから、被告の挙げる上記理由は根拠にならない。また、年次
報告書に損益計算書及び貸借対照表等の計算書類を添付しRCBに
提出し承認を受けることによって生じる効力は、単に公開情報とな
り、誰でも所定の費用を払うことで会社の謄本が取れるというもの
にすぎず、決算にかかる計算書類の効力には何ら影響しないという
べきであるし、シンガポール会社法は、会社の設立や運営等に関す
る枠組みを定めたり、会社とその株主や債権者の関係等を調整する
ことを目的とする法律であって、適正な課税所得を計算するために
制定されたものではないことからすれば、RCBの承認を得ていな
いことは、法人税法上の所得を計算する上で妨げとはならないもの
というべきである。
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(被告の主張)
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イ原告の主張に対する反論()
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(原告の主張)
ア特定外国子会社等の未処分所得の金額の計算上、損金の額に算入()
される費用の額は、法人税法22条により、当該子会社が準拠してい
る公正妥当な会計処理基準にしたがって計算され、かつ、当該費用に
係る債務が法人税法上確定した債務として評価されるものである。そ
して、確定した債務とは、当該事業年度の終了の日までに、①当該費
用に係る債務が成立していること(債務の成立、②当該債務に基づい)
て具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること(給付原
因たる事実の発生、③その金額を合理的に算定することができるもの)
であること(金額の明確性)の要件を満たすものとされている(法人
税基本通達2ー2ー12、甲39、甲62。)
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オ被告の主張に対する反論()
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第3当裁判所の判断
本件の争点は、既に指摘したとおりであるが、以下においては、説示の便
宜上まず措置法66条の6の規定が日星租税条約に違反するかどうか争、、(
点2)について判断し、その結果を踏まえて、措置法66条の6の規定が適
用されるのは原告のいうような租税回避の事例に限定されるのかどうか争、(
点1)を検討し、その後争点3、4を順次検討することとする。
1争点2について
措置法66条の6と日星租税条約との関係について(1)
ア原告は、措置法66条の6の規定は、我が国に恒久的事務所を有しな
いシンガポールの海外子会社の収入に対して課税をすることを許容する
規定であって日星租税条約に違反すると主張するのに対し、被告は、同
条の規定は、あくまでも我が国の親会社の収入を認定し、これに対して
課税をするものであって、海外子会社の収入に対して課税をするもので
はないから、同条約に違反することはないと主張するので、まずこの点
について判断する。
前示のとおり、措置法66条の6の規定は、一定の条件を満たした海
外子会社の所得の一部を、その親会社である「内国法人の収益の額とみ
なして」課税をするというものであり、形式的にみれば、内国法人の所
得に対して課税をするという建前を採っているので、この形式論に基づ
く限り、被告の主張も成り立たないものではない。
しかしながら、このような形式論理を徹底させると、我が国の租税法
規において、親会社である内国法人と、シンガポールの海外子会社との
、、「、関係やそれぞれの活動内容の実体等にかかわりなく内国法人に対し
シンガポールの海外子会社の所得額に相当する収益があったものとみな
して課税をする」という趣旨の規定を設けたとしても、それが内国法人
の所得に対する課税という建前を採っている以上、少なくとも日星租税
条約に違反することはないということになるが(そのような課税がそも
そも許されるのかどうかという点はここでは措き、専ら租税条約との関
係を検討している、このような結論は、日星租税条約7条1項の規定。)
を実質的に無視するのに等しいものであるといわざるを得ない。要する
に、上記のような誰に対して課税をするのかという観点を形式的に適用
する論理は、日星租税条約の潜脱を容易に許してしまうおそれがあるも
(、のであって措置法66条の6が日星租税条約に違反することを否定し
その意味において被告の主張に沿う意見を展開しているP6助教授も、
その意見書(乙55)において、条約潜脱のおそれがあり得ることを認
めているところである、そのまま採用することは困難である。。)
他方、シンガポールの海外子会社が、親会社である内国法人に対し、
配当その他の方法によって任意に利益移転を行った場合、内国法人に移
転された利益に対しては、我が国において課税がされることになるが、
これが日星租税条約に違反するものではないことは明らかである。そう
だとすると、親会社である内国法人とシンガポールの海外子会社との関
係、シンガポールにおいて海外子会社が置かれた地位や実際の活動状況
その他の事情に照らし、海外子会社から内国法人に対して利益移転が行
われるのが当然であるにもかかわらず、そのような利益移転が行われて
いないとみられる場合に、内国法人に対し、本来あるべき利益移転が実
際にあったものとみなし、その移転利益相当額に対して課税をすること
は、経済的合理性のない不自然な状態を、本来あるべき自然な状態に戻
し、あるべき状態に基づく課税をしているのにとどまるのであるから、
、。このような事態は日星租税条約に違反することはないものと解される
そして、上記のような場合とは、要するに租税回避行為が行われた場合
ということにほかならないのであるから、租税回避行為に対応するため
のタックスヘイブン税制として、海外子会社の所得の一部又は全部を内
国法人の利益とみなして課税をすることは、その内容が合理的なもので
ある限り、日星租税条約に違反するものではないというべきである。
イそこで、措置法66条の6の規定を検討してみると、同条の規定は、
内国法人の子会社が、税率の低い国に置かれた場合であって、しかも、
当該国において事業を行うことに経済的合理性が認められないような場
合や、事業そのものは、一般的にいえば当該国において行うことに合理
性が認められるものの、肝心の海外子会社が、独立企業としての実体を
備えていないような場合に、タックスヘイブン税制を適用し、内国法人
に課税をしようというものであって、このような場合は、一般的には租
税回避行為が行われたと評価できるような場合であるということができ
るから、同条の規定が、日星租税条約7条1項に違反すると断定するこ
とは困難であるというべきである。
もっとも、既に指摘した点に照らしてみれば、形式的には同条の要件
に当てはまる場合であっても、海外において子会社が独立した活動を行
うことに合理性が認められ、租税回避行為とは評価し難いような事情が
存する場合にまでタックスヘイブン税制を適用することは許されないも
のというべきである。そして、その根拠を、日星租税条約の違反に求め
るのか、同条約に照らし、措置法66条の6そのものが、そのような場
合における課税を予定しているとは解することができないという点に求
めるかは説明の違いにすぎないものと考えられる。
当事者双方の主張について(2)
以上に対し、原告は、措置法66条の6は、およそ日星租税条約に違反
、するからその効力を全く有しないという趣旨に受け取れる主張をする反面
被告は、措置法66条の6と日星租税条約とが抵触することはおよそあり
得ないという趣旨に受け取れる主張をしているので、これらの主張の当否
について検討しておく。
ア措置法66条の6の制度趣旨に基づく当事者双方の主張について
原告は、措置法66条の6は、法人税法11条の実質所得者課税の原
則を具体化したものとして、タックスヘイブン子会社の留保所得が親会
社に帰属することを定めた制度である(以下「実質的帰属説」という)。
から、シンガポール法人であるP1社の事業所得に対して課税するもの
であり「恒久的施設なければ課税なし」という基本原則を明文化した日、
星租税条約7条1項(以下「事業所得条項」ともいう)と抵触する旨主。
張し、これに対し、被告は、措置法66条の6は、タックスヘイブン子
会社の課税対象留保金額に相当する金額を我が国の親会社の収益とみな
して課税する制度(以下「擬制所得加算説」という)であり、タックス。
ヘイブン子会社の所得に対する課税ではないから、日星租税条約7条1
項との抵触は生じない旨主張し、措置法66条の6の制度趣旨に関して
見解が対立している。
後述するとおり、この見解の対立が争点2の結論に直ちに結びつくも
のであるかについては疑問を差し挟まざるを得ないが、少なくとも、措
置法66条の6を原告の主張する実質的帰属説の立場にたって理解する
ことは困難であるといわざるを得ない。
すなわち、措置法66条の6第3項本文かっこ書きによれば、タック
スヘイブン子会社が実体を有している場合であっても、株式の保有、工
業所有権・著作権等の提供、航空機・船舶の貸付等を主たる事業として
いる場合には、同条が定めるタックスヘイブン対策税制が適用されるこ
とからも明らかなように、同条が租税回避の否認規定であるのに対し、
法人税法11条は、所得の帰属者について、名義人と収益を享受する者
が一致しない場合に、課税上その所得は後者に帰属することを明らかに
、、したものであっていわゆる仮装行為に対処するための規定であること
また、措置法66条の6は、内国法人等が50%超の持分を有する外国
法人を対象とし、かつ、当該外国法人の留保所得を内国法人との資本関
係を通じて、その持分に応じて内国法人の収益の額とみなして課税する
制度であるのに対し、法人税法11条は、同条の適用に当たりそのよう
な資本関係に限定されないのであり、そもそもその趣旨及び適用範囲を
異にしていることからすれば、措置法66条の6の制度趣旨を実質的帰
属説の立場で説明することには疑問を差し挟まざるを得ない。
他方、被告の主張する擬制所得加算説は、前示のようなタックスヘイ
ブン税制の趣旨に沿うものともいえる上、措置法66条の6第1項本文
の「前略『課税対象留保金額』に相当する金額は、その内国法人の収()
益の額とみなして(中略)その内国法人の各事業年度の所得の金額の計
算上益金の額に算入する」という規定と適合することに加え、外国税額
控除に相当する二重課税の排除措置が定められていること(措置法66
条の7、後の年度に子会社から配当がなされた場合には前の擬制所得と)
して課税対象とされた金額(課税済留保金額)の範囲内でそれを損金に
算入して課税の対象から除外することとしていること(措置法66条の
8)等の調整措置は、一見、実質的帰属説になじみやすいように見える
ものの、タックスヘイブン対策税制が上記のように我が国の親会社がタ
ックスヘイブン子会社を通さないで直接国際取引をした場合とほぼ等し
い税負担を課すことによって租税回避を防止する(つまり税制の中立性
を維持する)ことを目的としているにとどまり、それを越えて重い税負
担を親会社または個人株主に課すことを目的とするものではないことか
ら当然のことであり、これらの調整措置は擬制所得加算説と抵触しない
と説明することが可能であることからすると相応の合理性を有している
(もっとも、措置法66条の6の制度趣旨を擬制所得加算説の立場で説
明するとしても、日星租税条約との抵触はおよそ生じないと断定するこ
ともできず、原告の主張するように、租税条約の事業所得条項を潜脱す
る形で適用されることは許されず、この点の検討が必要であることは前
示のとおりである。。)
なお、措置法66条の6について実質的帰属説と理解することができ
れば、シンガポール法人の事業所得に対して課税するものであるから、
、租税条約と抵触するという議論が果たして正当かについては疑問があり
仮に措置法66条の6が実質所得課税の原則の具体化規定であるとして
も、子会社の所得を親会社に帰属させて課税すると理解することは論理
必然ではなく、本来親会社である日本法人の所得とみるべき所得に対し
て課税しているものにすぎず、特定外国子会社等の所得に課税するので
はないという説明も可能であり、そうであれば、そもそも租税条約7条
との抵触は生じないと思われる。この点からも措置法の制度趣旨から争
点2の結論を直接導くことには疑問があるといわざるを得ない。
以上によれば、措置法66条の6の制度趣旨に関する当事者双方の主
張は、前示結論を左右するものではないというべきである。
イ原告のその余の主張の検討
ア原告は、①措置法66条の6は、その条文の文言からも、特定外()
国子会社等の利得に対して直接課税する制度であり、日星租税条約7
条1項に反する、②措置法66条の6は、タックスヘイブン子会社の
所得を課税対象とする制度であり、国内租税法の濫用によって課税権
の侵害が行われることのないように、二国間の合意により課税権を調
整し、両国間の財・サービス・資金の流れを円滑化することを目的と
した租税条約の目的に反する旨主張する。しかし、①については、む
しろ、措置法66条の6第1項本文の「前略『課税対象留保金額』()
に相当する金額は、その内国法人の収益の額とみなして(中略)その
内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入する」の
「その内国法人の収益の額とみなして「算入する」という点に着目す」
れば、被告の主張する擬制所得加算説の根拠となりうるものであるこ
とは既に説示したところであり、条文の文言から直ちに原告主張を根
拠づけることは困難である。また、②についても、措置法66条の6
がタックスヘイブン子会社の所得を課税対象としているとの原告主張
を前提とするものであり、その前提に疑問があることは既に説示した
ところであるが、その点は措くとしても、において当裁判所が示し(1)
、。、た解釈は原告が指摘する諸点と抵触するものではないしたがって
原告の上記主張は、上記の解釈を左右するものではない。
イなお、原告は、フランスの国務院が、フランスのタックスヘイブ()
ン課税規定がフランスとスイスの租税条約の事業所得条項に反すると
した判決を引用して主張しているが、他方において、フィンランド行
政最高裁判所は、フィンランドのタックスヘイブン対策税制がフィン
ランドとベルギー間の租税条約に反するかが問題となった事案でフラ
ンス国務院とは反対の判決をしており(乙47、フランス国務院の見)
解が国際租税における主流であるとまでは認め難いことに加え、P7
()、、教授の意見書乙44によるとフランスにおいては日本と異なり
法人税について国外所得非課税主義(国外所得免税法)を採用する反
面、外国会社からの配当を含め受取配当の95%を益金不参入として
いることから、タックスヘイブン子会社の留保所得に対して法人税の
一部としてではなく、分離して直接に課税する(すなわち、親会社が
子会社の適用対象所得について納税義務を負う)という立法を採用し
ていることが認められること(確かにフランスの上記タックスヘイブ
ン制度の構造は、外国法人である子会社の所得に対して親会社に直接
課税するという内容であり、租税条約の事業所得条項に違反するとの
結論を導きやすいということはできる)からすれば、我が国の措置法。
66条の6と日星租税条約との関係を検討する上ではその前提を異に
しているものであると評価せざるを得ない。
ウOECDモデル租税条約コメンタリーに基づく被告の主張について
被告は、同コメンタリーの例えば第7条(事業所得に対する課税)に
関するコメンタリーの第10.1パラグラフにおいて「本項は、一方の、
締約国の、自国の国内法令の従属外国法人規定に基づく自国の居住者に
対する課税権を、これらの居住者に対して課せられる当該租税が、他方
の締約国に居住している企業の利得で、これらの居住者の当該企業への
持分に着せられる部分に基づき算定されるのにもかかわらず、制限して
いない。一方の国によって自国の居住者に対してこのように課される租
税は、他方の締約国の企業の利得を減少させず、それ故、当該利得に対
して課せられたとはいい得ない」と記載されていること(乙41の10。
3頁)からしても、タックスヘイブン税制規定である措置法66条の6
が日星租税条約に違反するものではないことは明らかであるという趣旨
の主張をする。
同コメンタリーの位置づけについては、当事者双方で争いがあるが、
被告も、これに法的拘束力があると主張しているわけではなく「十分配、
慮すべきである」と主張するのにとどまるのであるから、これが当裁判。
所の判断にどの程度影響を与えるものであるのかについては疑問がない
ではないが、上記コメンタリーの趣旨が、合理的な内容の従属外国法人
規定に基づく自国法人に対する課税は租税条約に違反するものではない
というところにあるとすれば、当裁判所の前記の判断と抵触するもので
はないことは明らかである。被告は、同コメンタリーが「一方の国によ、
って自国の居住者に対してこのように課される租税は、他方の締約国の
企業の利得を減少させず、それ故、当該利得に対して課せられたとはい
。」、、い得ないとしているところから自国の企業に利得があるものとして
自国の企業に課税をすることは、およそ租税条約に抵触することはない
とするのが同コメンタリーの趣旨であると主張するのかもしれないが、
そのような理解が正当なのかどうかは、それ自体が議論の対象となり得
るものであって(このように課される租税」とは、合理的な内容のタッ「
クスヘイブン税制によって課される租税の趣旨であると理解することも
可能であるし、不合理な内容のタックスヘイブン税制によって租税が課
された場合には「他方の締約国の企業の利得を減少させず」とはいえな、
いという批判も可能であろう、結局、同コメンタリーの記述を考慮し。)
たとしても、前示の解釈を変更する必要は認められないものというべき
である。
そうすると、ウィーン条約の解釈に関する当事者双方の主張について
判断するまでもなく、この点に関する被告の主張は、前示の解釈を左右
するものではないというべきである。
なお、被告は、シンガポール政府が、我が国が措置法66条の6を制
定したことについて異議を述べなかったから、同条の有効性を完全に承
認する黙示の合意が成立したという趣旨の主張もしているが、黙示の合
意の成立を認めるに足りるほどの事実関係が存在すると認めるに足りる
証拠はなく、この主張を採用することもできない。
エ小括
以上の次第で、当事者双方の主張は、いずれも、で示した解釈を左(1)
右するに足りるものではないというべきである。
2争点1について
原告は、本件は、税負担の軽減を目的とした国際的租税回避が行われて(1)
いない事案であるから、①措置法66条の6の目的的解釈により、同条は
適用されない、②原告は措置法66条の6の「内国法人」に当たらない、
③P1社は措置法66条の6の「特定外国子会社等」に当たらない旨主張
しているところ、その主張中には、P1社は、もともとラニチジンの製造
等を行うために設立された、まさに実体をもった会社であるし、原告の子
会社として設立されたものでもないとする部分があり、この主張は、措置
法66条の6の規定が適用されるのは、内国法人が、当初から租税回避目
的をもって海外子会社を設立した場合に限られるという趣旨の主張である
とも解される。
しかし、措置法66条の6の規定そのものには、このような限定がされ
ていないことはその文言上明らかであるし、当初は租税回避の目的がなく
設立された海外子会社が、その後の事情の変化により租税回避の目的で利
用されるようになった場合と、当初から租税回避の目的で海外子会社が設
、立された場合とを区別する合理的な理由はないものというべきであるから
仮に原告が上記のような主張をするものであるとすれば、その主張は失当
であるといわざるを得ない。そして、措置法66条の6が定める要件は、
一般的には租税回避目的の存在を疑わせるに足りる要件であるということ
ができることも前示のとおりであるところ、このことも、海外子会社が当
初から租税回避目的で設立された場合であるかどうかによって左右される
ものではないというべきである。
もっとも、原告の主張を全体として見ると、■■■■■■■■■■■■
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■■■■■■■■■そこには租税回避目的を何ら見いだ
すことはできないし、そのような活動によって生じた利得を原告に帰属さ
せるべき理由も認められない」という趣旨のものであると理解することが
。、、可能であるそしてこのような主張がそのとおり認められるのであれば
1、において説示した点に照らし、P1社の所得を原告の収益と見なし(1)
て課税することまで措置法66条の6が予定しているものではないか、あ
るいは、そのような課税は日星租税条約に違反すると解する余地があるも
のと考えられるので、以下、この点について判断する。
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なお、原告は、シンガポールの法人税率は25%を超えており、■■
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■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■旨
、()、主張するがP1社の1999年度賦課決定通知書乙11によれば
P1社は10%のtaxrebate(戻し減税)を受けており、実
質的な税率は23.4%であることに加え、株式等の有価証券の譲渡益
が非課税とされていることがうかがえることからすると、我が国の法人
税率(法人税法66条1項で34.5%)や課税所得の範囲との比較で
いえば税負担軽減の効果があることは否定し難いのであるから、およそ
税負担軽減の目的がなかった旨の原告の主張は採用できない。
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■■
小括(4)
P1社の活動目的や内容に関する原告の主張をそのまま採用することは
できず、したがって、その主張を前提として、本件が国際的租税回避が行
われていない事案であるから措置法66条の6が適用されない旨の原告の
主張は、その前提を欠くものであり、採用することができない。
そして、P1社が外国関係会社であり、かつ、措置法66条の6第1項
所定の「その所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に
対して課される税の負担に比して著しく低い」という要件を満たすもので
あることは先に判示したとおりであり、また、同社が同条3項所定の適用
除外要件を満たすものでないことは後記3で検討するとおりであるから、
本件事案に同条のタックスヘイブン対策税制が適用されないとすることは
できない。
3争点3について
措置法66条の6第3項は特定外国子会社等のうち株式若しくは債(1)、、「
券」の保有、工業所有権若しくは著作権の提供又は船舶若しくは航空機の
貸付けを主たる事業とするもの以外のものであり(事業基準、①その本店)
又は主たる事務所の所在する国又は地域において、その主たる事業を行う
に必要と認められる事務所等の固定施設を有すること(実体基準、②その)
事業の管理、支配及び運営を自ら行っているものであること(管理支配基
準、③主たる事業が、卸売業、銀行業、信託業、証券業、保険業、水運業)
又は航空運送業である特定外国子会社等にあっては、その事業を主として
当該特定外子会社等に係る関連者以外の者との間で行っていること(非関
連者基準、④主たる事業が③に掲げた事業以外の事業である特定外国子会)
社等にあっては、その事業を主として本店又は主たる事務所の所在する国
又は地域において行っていること(所在地国基準)のいずれの要件にも該
当する場合には、当該特定外子会社等のその該当する事業年度に係る適用
対象留保金額については、措置法66条の6第1項の規定は適用しない旨
規定している。これは、特定外国子会社等に該当する場合であっても、そ
れが独立企業としての実体を備え、かつ、その所在地国で事業活動を行う
につき十分な経済的合理性があるという場合にまでタックスヘイブン課税
を行うことは、我が国の企業の正常な海外投資活動を阻害する結果を招く
ことになることから、そのような事態を避けるため、上記要件のすべてを
充足している場合には、タックスヘイブン課税は行われないこととしたも
のである。
P1社は事業基準を満たすかどうか(2)
ア租税法の解釈原理
租税法は、侵害規範であり、法的安定性の要請が強く働くから、その
解釈は原則として文理解釈によるべきであり、みだりに拡張解釈や類推
解釈をすることは許されないが、文理解釈によって規定の意味内容を明
らかにすることが困難な場合に規定の趣旨目的に照らしてその意味内容
を明らかにしなければならない。そして、文理解釈をする上で、税法中
に当該用語が定義されている場合には、それによるべきであるが、税法
中に用いられた用語が法文上明確に定義されておらず、他の特定の法律
からの借用概念であるともいえない場合は、その用語は、言葉の通常の
用法に従って解釈されることになり、その際に当該規定の趣旨目的に照
らしてその意味内容を明らかにしなければならないことはいうまでもな
い。
以上の解釈原理にしたがい、措置法66条の6第3項の「債券」にC
Pが含まれるのかについて検討を加える。
イCPとは
CPは、一般に機関投資家などから無担保で短期資金を調達するため
に、事業法人が発行する約束手形をいい、商取引の裏付けを持たずに発
行することが可能な点で一般の商業手形と異なっている(甲26、甲2
7、乙19。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■)
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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ウ措置法66条の6第3項の「債券」とは
まず「債券」の意義を文理解釈により検討すると、措置法及び他の税、
「」。、、法において債券についての定義規定は見当たらないなお原告は
「債券」の概念に関連する租税法上の規定として旧措置法91条の2並
びに印紙税法別表第1の3号及び4号があり、旧措置法91条の2第1
項が「印紙税法別表第1第3号に掲げる約束手形」と規定し、これを受
けた同別表3号において「約束手形又は為替手形」と規定する一方で、
同別表4号において「株券、出資証券若しくは社債券又は証券投資信託
若しくは貸付信託の受益証券」と規定しており、約束手形と社債券等を
区別しているのであるから、約束手形であるCPは「債券」に当たらな
い旨主張している。しかし、措置法は、所得税法、法人税法、相続税法
等の特例を定めるものであり(措置法1条、同じ措置法の中でも、それ)
ぞれ特例のもととなる個別税法が異なると、用語の意味内容が異なるこ
とがありうるところ、措置法66条の6は法人税法の特例を定めている
のに対し、原告の指摘する旧措置法91条の2等は、約束手形の印紙税
の税率の特例を定めているものであり、特例のもととなる個別税法が異
なることに加え、原告の指摘する印紙税法別表第1は「約束手形又は為
替手形」と「株券、出資証券若しくは社債券(後略」との税率の違いを)
定めているものにすぎず「債券」に約束手形が含まれないことを直接定、
めているわけではないから、このことをもって措置法66条の6第3項
に定める「債券」に約束手形であるCPが含まれないとするのは困難で
あるといわざるを得ない。
また、私法等の他の法分野においても「債券」について直接定義規定
を設けているわけではない
次に「債券」の一般的な定義について検討すると、原告は国民法律百、
科大事典(甲21、新法律学事典(甲22)等を引用して「債券」は)、
一般的に国内及び外国の国債、地方債、特殊法人債、社債を指すものと
解されており、約束手形であるCPは含まれないと主張する。他方、被
告がその主張の根拠とする金融実務大辞典(乙17)には「国・地方公
共団体、事業会社などが資金借入の見返りに発行する有価証券の一般的
呼称、一種の債務証書だが、単なる借用書とは異なり、転売可能な証券
の形態をとっている(乙17)との記載もあり、これによれば有価証券」
の一種である(証券取引法2条1項8号)CPが「債券」に含まれる余
地もあり得るところであり、このことは「債券」という用語には一般的、
な意義が定まっているわけではなく、したがって、具体的な文脈を無視
して「債券」の意義を抽象的に論ずることに意味はないことを示すもの
というべきである。
そこで、前記の解釈原理からすると、規定の趣旨目的に照らしてその
意味内容を検討する必要がある。
エ措置法66条の6第3項で事業基準を設けた趣旨
措置法66条の6第3項は、主たる事業が「株式(出資を含む)若、。
しくは債券の保有「工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技」、
術による生産方法若しくはこれらに準ずるもの(これらの権利に関する
使用権を含む)若しくは著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準。
ずるものを含む)の提供」及び「船舶若しくは航空機の貸付け」に該当。
するものをタックスヘイブン対策税制の適用除外の例外としている。こ
のような事業について適用除外を認めないこととしている趣旨は、これ
らの事業は、その事業の性格からして我が国においても十分行い得るも
のであって、その地に所在することについて積極的な経済的合理性を見
出すことが困難であると考えられるからであるとされている。
このような措置法66条の6第3項の立法趣旨に照らし、同条に明文
で規定されている株式や、債券に含まれることにつき争いのない国債を
はじめとする公債、社債等の保有が我が国において十分行える事業であ
るとされた理由を考えてみると、これらはいずれも投資対象たる証券と
しての経済的意義を有しており、その取引のための市場も成立している
ため、例えば、特定の事業を行うための貸付け等とは異なり、個別的な
事業の内容や採算性等を検討する必要はなく、市場に出回っている各種
情報に基づいて投資判断を行うことができることから、あえて海外子会
社を設立しなくとも、我が国において十分に事業を行うことが可能であ
ると考えられたことがその理由であると考えられる。この観点からする
と、CPも投資対象たる証券としての経済的意義を有していることでは
上記の株式等と同様である上、その取引のための市場も成立しているの
であるから(乙32、乙33、その保有が我が国において十分行える事)
業であるかどうかという観点から考える限り、これを上記の株式等と区
別する理由はないものというべきである。
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オ本件への当てはめ
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カ原告の主張についての検討
ア措置法66条の6第3項の「債券」に関するその余の主張()
原告は、①CPは商業ファイナンスの手段としての機能を有するの
に対し「債券」は投資ファイナンスとしての機能を有する、②CP市、
、、場は短期金融市場に分類され債券市場は長期金融市場に分類される
③CPは貨幣証券であるのに対し「債券」は資本証券であり、両者は、
区別されるべきである旨の主張をするが、①ないし③は、両者の相違
点を説明する点で意味があるとしても、前記の措置法66条の6第3
項の立法趣旨から「債券」概念を解釈する上ではその結論を左右する
ような相違点ではないといわざるを得ないから、原告の主張は採用す
ることはできない。
また、原告は、ア法人税法施行令177条1項は「所得税法第2()、
条第1項第9号(定義)に規定する公社債(中略)のうち(中略)内
国法人の発行する債券」又は「証券取引法第2条第1項第8号に掲げ
る約束手形」と規定していること(甲48、イ2003年(平成1)()
5年)11月6日締結の日米租税条約に関する交換公文における文言
(甲49)をとらえて「債券」とCPは区別される旨主張するが、文
()脈を無視した解釈には疑問があることは前示のとおりである上にア、
は、同条項が法人税法138条1号を受けて、外国法人の国内源泉所
得に当たるものを規定したものであり「債券」の保有により生じる所、
得と、CPの保有により生じる所得を並列的に規定していることから
すると、両者を同じ類型の所得とみなしていると解することも可能で
あること、イは、二国間の国際約束の締結の形式の1つである交換()
公文の規定の内容を措置法の条文解釈に関連づけることはできず、い
ずれにしても上記認定を左右するようなものではない。
イ「保有」について()
原告は、仮にCPが措置法66条の6第3項にいう「債券」に当た
るとしても「保有」とは長期継続的に変化のない状態をいい、本件C、
Pのような短期間で運用資産の変動を繰り返していた場合は「保有」
には当たらない旨の主張をするが「保有」という概念を原告が主張す、
るように限定して解釈する根拠はないことは、前記の同項の立法趣旨
に照らし明らかである。
P1社は実体基準及び管理支配基準を満たすかどうか(3)
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4争点4について
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アシンガポール会社法には以下のような定めがある(乙25。)
201条
、、、1項すべての会社の取締役は会社設立後18か月以内にまた
、、その後は15か月を越えない間隔で少なくとも各暦年に1回
前回の計算書から(第1回計算書の場合は会社の設立から)総
会開催日以前6か月を超えない日までの期間の、その会社の会
計及び他の記録の中で示された会計期間の損益の正当な見解を
与える損益計算書を会社の年次株主総会に提示しなければなら
ない。その損益計算書は、会計及びその他の会社の記録に示さ
れる同会社の会計期間の真正かつ公正な損益計算の実態を表す
ものでなければならない。
14項本条のこれまでの規定の一般性を損なうことなく、会社の決
算報告書(もし連結財務諸表が必要な持株会社であればその連
)、。()結財務諸表は附則9の該当要件を満たす必要がある後略
附則9
9項決算書又は連結財務諸表に示される全ての金額は、シンガポ
ール通貨で表記する(後略)。
202条
1項会社の取締役会は、会計勘定又は連結財務諸表の形式、内容
及び201条項及び(6A)項に定める報告書の形式及び内(6)
容に関する本法の諸要件から免除を求める命令を文書により登
記官(RCB)に請求することができる(後略)。
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■しかし、措置法66条の6第2項2号所定の未処分所得の金額と
は、特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額を基礎と
して算出されるものであるが、特定外国子会社等が、その所在地国の会
社法等の規制を受ける場合には、上記決算が、特定外国子会社等の所在
地国の会社法等に基づくものを意味することは明らかである。また、シ
ンガポール会社法201条14項、附則9の9項の定めによれば、シン
ガポール法人は決算書について原則としてシンガポールドル建てで表示
することを義務付けられているものであり、同法202条1項のRCB
の承認を得た場合にシンガポールドル以外の通貨により表示することが
認められるものであるから、RCBの承認が決算にかかる計算書類の効
力に影響することは明らかである。
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■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■,原告の主張は採
用することはできない。
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,課税の公平という観点からは、客観的に覚知しうる事実に基づ
いて課税をし、企業の恣意の入りやすい費用の見越し計上を防止する必
要があり、このため、法人税基本通達2−2−12(甲39、甲62)
、、、は債務が確定したといえるためには①当該費用に係る債務が成立し
②その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生し、
③その金額を合理的に算定し得るものであることが必要であるとしてい
る。同通達は、上記の趣旨に照らし、合理的な基準であると認められる
から、以上の判断枠組みにしたがって、■■■■■■■■■■■■■■
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5小括
すると、本件において、原告に対し、措置法66条の6が適用されること
になり、原告に係る措置法66条の6第1項に規定する特定外国子会社等で
あるP1社の1998年(平成10年)12月期における課税対象留保金額
を原告の平成11年12月期の所得の計算上、益金の額に算入して算出した
課税所得金額及び納付すべき税額は、別紙2被告の主張する課税所得金額及
び納付すべき税額記載と同額であり(なお、本件争点に関する部分を除き、
計算の基礎となる金額及び計算方法に争いがない、本件更正処分における。)
原告の平成11年12月期の法人税に係る課税所得金額及び納付すべき税額
を上回るから、本件更正処分は適法である。
また、上記のとおり本件更正処分は適法であるところ、本件賦課決定処分
において過少申告加算税の対象とした税額の計算の基礎となった事実が本件
更正処分前における税額の計算の基礎とされなかったことについて国税通則
法65条4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、国税通則
法65条1項及び2項に規定する割合を乗じて行った本件賦課決定処分も適
法である。
第4結論
以上によれば、本件各処分は適法であり、原告の請求はいずれも理由がな
いから棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法7条、
民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官鶴岡稔彦
裁判官古田孝夫
裁判官潮海二郎
別紙1本件処分の経緯
(単位円)
年月日所得金額差引所得に対する過少申告加算税
法人税額
12・3・316億1124万37077309万7106確定申告△
15・2・28660億9337万7501225億1816万770033億7814万5000更正・決定
15・4・256億1124万37077309万7106異議申立△
同上決定棄却棄却15・12・22
16・1・226億1124万37077309万7106審査請求△
(注「差引所得に対する法人税額」欄の△は、還付される額を表す。)
別紙2被告の主張する課税所得金額及び納付すべき税額
1被告が主張する原告の平成11年12月期(平成11年1月1日から同年1
2月31日までの事業年度)の法人税に係る課税所得金額及び納付すべき税額
は、以下のとおりである。
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上記金額は、原告に係る措置法66条の6第1項に規定する特定外国子
会社等であるP1社の1998年(平成10年)12月期(同年1月1日
から同年12月31日までの事業年度)における課税対象留保金額で、同
項の規定により、原告の平成11年12月期の所得の計算上、益金の額に
算入した金額である。
金額
■■■■①決算書における当期利益
■■■②当期中に納付することとなる法人所
得税額
■■■■③適用対象留保金額(①−②)
■■■■■■■■■■④株式保有割合
■■■⑤課税対象留保金額(③×④)
■■■⑥⑤の円換算額
(注)措置法66条の6第1項の規定により特定外国子会社等に係る課税対象留
保金額に相当する金額を益金の額に算入する場合における当該課税対象留保
金額の円換算については、措置法基本通達66の6−13(乙21)及び法
人税基本通達13の2−1−2(乙22)において、当該特定外国子会社等
の当該事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日における対顧客電信売
買相場の仲値(同日の当該仲値がないときは、その直前の日の仲値)による
こととし、継続適用を条件に、当該内国法人の同日(前掲の「2月を経過す
る日)を含む事業年度終了の日の対顧客電信売買相場の仲値によることがで」
きることとしている。そして、1998年(平成10年)12月期の事業年
度終了日の翌日から2月を経過した平成11年2月28日は日曜日であり、
市場が休みであるから、円換算に用いるべき為替相場は平成11年2月26
日のものであり、同日における対シンガポールドル電信売買相場の仲値は、
1シンガポールドル当たり69.36円である(乙15。)
課税所得金額に対する法人税額228億221万5065円(2)
上記金額は、前記の課税所得金額(ただし、国税通則法118条1項の(1)
規定により千円未満の端数を切り捨てた後のもの)に法人税法66条1項に
規定する税率を乗じて計算した金額である。
法人税額から控除される所得税額等2億8404万7351円(3)
上記金額は、法人税法68条に規定する法人税額から控除される所得税額
等の金額であり、次のアないしウの金額の合計額である。
ア原告の当初申告に係る所得税の控除額2億1087万8835円
イ原告の当初申告に係る所得税の還付額7309万7106円
ウ法人税額から控除する所得税額の増加額7万1410円
上記金額は、本件更正処分により旧措置法68条の2第1項に規定する
3年以内の繰越所得税額控除限度額超過額の控除限度額が増加したことに
伴い新たに法人税額から控除することとなる所得税の額である。
納付すべき税額225億9126万4800円(4)
上記金額は、前記の金額から前記の金額を差し引き、前記イの還付(2)(3)(3)
済みの金額を加算した金額である(ただし、国税通則法119条1項の規定
により百円未満の端数を切り捨てた後のもの。)
2本件更正処分の適法性
被告が本訴において主張する平成11年12月期の法人税に係る課税所得金
額及び納付すべき税額は、本件更正処分における平成11年12月期の法人税
に係る課税所得金額及び納付すべき税額を上回るから、本件更正処分は適法で
ある。
3本件賦課決定処分の適法性
前記2のとおり本件更正処分は適法であるところ、本件賦課決定処分におい
て過少申告加算税の対象とした税額の計算の基礎となった事実が本件更正処分
前における税額の計算の基礎とされなかったことについて国税通則法65条4
項に規定する正当な理由があるとは認められない。
したがって、平成11年12月期の法人税に係る過少申告加算税の額は、前
記1の納付すべき税額225億9126万円(国税通則法118条3項の規(4)
定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ)に100分の1。
0の割合(国税通則法65条1項に規定する割合)を乗じて算出した金額22
億5912万6000円に、国税通則法65条2項の規定により、累積増差税
額225億9126万4800円のうち期限内納付税額2億1087万883
5円と50万円のいずれか多い金額を超える部分の税額223億8038万円
に100分の5の割合を乗じて算出した金額11億1901万9000円を加
算した33億7814万5000円である。
被告が本訴において主張する平成11年12月期の法人税に係る過少申告加
算税の額は、上記で述べたとおり、33億7814万5000円であり、この
金額は、本件賦課決定処分における平成11年12月期の法人税に係る過少申
告加算税の額と同額であるから、本件賦課決定処分は適法である。
別紙3原告の主張する課税所得金額及び納付すべき税額
1本件更正処分は、原告には措置法66条の6のタックスヘイブン対策税制は
適用されないのにもかかわらずこれを適用して、P1社の1998年(平成1
0年)12月期における課税対象留保金額を原告の平成11年12月期の所得
の計算上、益金の額に算入したもので違法であり、本件更正処分のうち、所得
金額6億1124万3707円、納付すべき税額△7309万7106円を超
える部分は取り消されるべきである。
課税所得金額6億1124万3707円(1)
上記金額は、原告の平成11年12月期の法人税の確定申告書(乙1)に
記載された金額と同額である。
課税所得金額に対する法人税額2億1087万8835円(2)
前記について、国税通則法118条1項により千円未満を切り捨てた後(1)
の6億1124万3000円に法人税法66条1項の税率(34.5%)を
乗じて算出したもの
法人税額から控除される所得税額2億8397万5941円(3)
上記金額は、原告の平成11年12月期の法人税確定申告書(乙1)に記
載された金額と同額である。
納付すべき税額△7309万7106円(4)
2P1社の課税対象留保金額についての主張
仮にP1社が措置法66条の6にいう特定外国子会社等に当たるとしても、
P1社の課税対象留保金額を適法に算定すると、原告の益金の額に算入すべき
金額は存在しないので、本件更正処分は違法である。■■■■■■■■■■■
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弁護士 求人 採用
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