弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
一 本件訴えをいずれも却下する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
○ 事実及び理由
一 原告らの請求
1 主位的請求
被告が昭和四八年一二月二七日付でした市道(住吉区第二七四三号線)の供用開始
処分は無効であることを確認する。
2 予備的請求
被告が市道(住吉区第二七四三号線)の路線廃止処分を怠ることは違法であること
を確認する。
二 原告らの主張
1 別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)は、昭和四八年一二月
当時、A所有の土地であったが、被告は、何らの権限を取得しないまま、本件土地
の一部を道路敷として(以下、本件土地の一部である右道路敷部分を「本件道路
敷」という。)、昭和四八年一二月二七日付で市道住吉区第二七四三号線(以下
「本件市道」という。)の供用開始処分(以下、「本件供用開始処分」という。)
をした。したがって、本件供用開始処分には、重大かつ明白な瑕疵がある。
2 原告らは、昭和五二年一二月九日及び昭和五三年一月二五日に、Aから、それ
ぞれ本件土地の持分四分の一の贈与を受けた。
3 本件市道の道路敷は、本件道路敷のみであるところ、平成二年九月までに、本
件市道に面して玄関を有する家屋の居住者が全て退去したことにより、本件市道
は、その位置・形状からして、市道として維持する理由がなくなった。
4 よって、原告らは、主位的に本件供用開始処分が無効であることの確認を求
め、予備的に被告が本件市道の路線廃止処分を怠ることが違法であることの確認を
求める。
三 判断
1 主位的請求について
行政処分の無効確認の訴えは、処分をした行政庁を被告として提起しなければなら
ないところ(行訴法三八条、一一条)、本件市道の供用開始処分をした行政庁は、
道路法一八条二項、一六条により、道路管理者である大阪市と解されるから、大阪
市長を被告とする、本件供用開始処分無効確認の訴えは、不適法である。
原告らは、道路法九七条が、供用開始処分等一定の道路管理者の権限は、道路管理
者である地方公共団体の長が行う旨規定していることを根拠に、本件供用開始処分
をした行政庁は、大阪市ではなく大阪市長であると主張する。
しかし、道路法九七条が「道路管理者の権限行使」の見出しの下に、同条所定の権
限は、供用開始処分を含め、「道路管理者である地方公共団体の長が行う。」と規
定しているのに対し、同法九七条の二が「権限の委任」の見出しの下に「建設大臣
の権限は、・・・地方建設局長又は北海道開発局長に委任することができる。」と
規定していることとを対照すると、同法九七条をもって権限の委任を定めたものと
解することには道路法の文言解釈上無理があるうえ、仮にこれを権限の委任を定め
たものとすると、道路管理者たる地方公共団体の行う処分の大半を占める同条所定
の処分については、同法九六条二項が適用されないことになると考えられるが、そ
れでは行政不服審査法の特則として道路法九六条二項を置いた意味の大半が失われ
る結果となることなどに鑑みると、同法九七条を権限の委任を定めたものと解する
のは相当でないというべきである。したがって、同条の解釈としては、同条は、道
路法所定の地方公共団体の有する権限のうち、長が専行すべき事項を制限列挙した
ものであり、道路管理者である地方公共団体が供用開始の決定等を行う場合につい
て、自らの意思決定に関する内部的な権限分掌を主として議会との関係で定めたも
のと解すべきである。そうすると、同条は、供用開始の決定等の行為主体を変動さ
せるものではないから、同条を根拠に本件供用開始処分をした行政庁を大阪市長と
みることはできない。よって、原告らの右主張は採用しない。
2 予備的請求について
予備的請求は、大阪市長である被告が、本件市道の路線廃止処分を怠ることが違法
であることの確認を求めるというものであって、これが行訴法三条五項の「不作為
の違法確認の訴え」の訴訟類型にあたることは明らかであり(原告らは、予備的請
求は、いわゆる無名抗告訴訟であると主張するが、法定抗告訴訟にあたる以上、こ
れが無名抗告訴訟でないことはいうまでもない。)、この訴えを提起できるのは、
法令上の申請権を有する者に限られると解されるところ、市道の路線廃止処分につ
いては、道路法その他の法令上、私人に申請権が認められていないから、原告らに
は、予備的請求にかかる訴えについての原告適格がなく、右訴えは不適法である。
3 結論
以上によれば、原告らの本訴請求は、いずれも不適法であるから、これを却下し、
訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条、九三条を適用して主文のとおり
判決する。
(裁判官 松尾政行 庄司芳男 森  炎)
物件目録(省略)

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