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平成17年6月17日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成16年(ワ)第4339号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成17年3月22日
判    決
原       告     甲
同訴訟代理人弁護士     戸田 泉
被       告     伊藤超短波株式会社
同訴訟代理人弁護士     原口 健
同             久保田 理 子
同             丹 羽 厚太郎
同             坂元正嗣
同             古金千明
同訴訟代理人弁理士     牛久健司
同補佐人弁理士  井上 正
同             高城貞晶
主    文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は,別紙物件目録記載の製品を製造し,販売し,賃貸し,使用し,又は
販売の申出をしてはならない。
2 被告は,前項記載の製品を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,金2億1000万円及びこれに対する平成15年12
月23日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
第2 事案の概要
1 争いのない事実等
(1) 当事者
ア 原告は,平成8年4月25日から平成13年9月20日までの間,電子
機器の製造の受託等を目的とするニッセイ電子工業株式会社(以下「ニッセイ電
子」という。)に勤務していた(弁論の全趣旨)。
イ 被告は,電気治療器,医療用具等の製造販売等を目的とする株式会社で
ある(弁論の全趣旨)。
(2) 原告の特許権
原告は,次の特許権の特許権者である(以下「本件特許権」という。特許
請求の範囲請求項1に係る特許発明を「本件発明1」,同請求項2に係る特許発明
を「本件発明2」といい,本件発明1と本件発明2を併せて「本件発明」という。
また,本件発明の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
特許番号  特許第3446095号
出願年月日  平成10年1月14日
公開年月日  平成11年7月27日
登録年月日  平成15年7月4日
発明の名称  低周波治療器
特許請求の範囲
(請求項1)「プログラム制御のためのMPUと,パルストラン
スから刺激パルスを発生する手段,および前記刺激パルスの様態を表示する手段を
備えた低周波治療器において,前記刺激パルスは前記パルストランスのセンタータ
ップに所定の設定電圧を印加した上で,一次巻線の両端を交互に駆動することによ
る二次側の誘起電圧によって発生し,前記刺激パルスの出力電流値を数値表示する
ためのLCDと,前記出力電流値を手入力するためのプッシュボタンと,を備え,
また前記MPUが前記パルストランスの駆動電圧を数値で設定するためのD/A変
換器および前記MPUが前記パルストランスの駆動電流を数値で読み込むためのA
/D変換器を有し,また前記パルストランス一次側回路に電流検出抵抗を設置し,
前記抵抗の両端電圧を増幅器を介して前記A/D変換器の入力信号とすることで,
前記パルストランスの一次電流値を得る,また設定電流は前記プッシュボタンによ
って増加又は減少して設定され,前記D/A変換器から前記パルストランスに前記
設定電圧(V)として出力する,一方,前記MPUの記憶装置には,前記駆動電圧の
数値と前記一次電流値(I1)および既に記憶されている前記パルストランスの特性
値テーブルが有り,前記特性値テーブルには前記設定電圧(V)毎の数値を有し,当
該数値には,下記式(1)を使用する場合は無負荷励磁電流(I0)と短絡電流(1
次電流I1S,2次電流I2S)を含み,また下記式(2)を使用する場合は定数
(α)と無負荷励磁電流(I0)を含み,MPUのプログラムは前記設定電圧(V)
を設定する毎に,駆動電圧と一次電流から前記特性値テーブルを参照して,前記低
周波治療器の出力電流となる前記パルストランスの二次電流の波高値(I2)を下記
式(1)または式(2)を用いて計算し,その数値を前記LCDに表示すること
で,前記刺激パルスの出力電流値を正確に把握することを特徴とする低周波治療
器。
式(1) I2=I2S/(I1S-I0)×(I1-I
0)
式(2) I2=α(I1-I0), ただし α=定
数」
(請求項2)「前記パルストランスの二次回路に,整流・平滑回
路および出力制御回路を設け,前記整流・平滑回路には整流用ダイオードと正負の
電圧を貯えるための平滑コンデンサを有し,また前記出力制御回路には前記MPU
からの出力信号で駆動されるリレーとホトカプラを有し,前記MPUは,前記リレ
ーによって出力モードを切り替え,また前記平滑回路の出力を前記ホトカプラで制
御して,プラス波形およびマイナス波形からなる出力波形を人体に供給すること
で,前記刺激パルスの出力を一次側とは絶縁された状態で制御することを特徴とす
る請求項1に記載の低周波治療器。」
(3) 本件発明の構成要件
本件発明の構成要件は,次のとおり分説される(以下,記号に従って「構
成要件1A」などといい,構成要件1Jの式(1)を「本件式①」,式(2)を
「本件式②」という。)。
ア 本件発明1の構成要件
1Aプログラム制御のためのMPUと,パルストランスから刺激パ
ルスを発生する手段,および前記刺激パルスの様態を表示する手段を備えた低周波
治療器であること。
1B前記刺激パルスは前記パルストランスのセンタータップに所定
の設定電圧を印加した上で,一次巻線の両端を交互に駆動することによる二次側の
誘起電圧によって発生すること。
1C前記刺激パルスの出力電流値を数値表示するためのLCDと,
前記出力電流値を手入力するためのプッシュボタンと,を備えていること。
1D前記MPUが前記パルストランスの駆動電圧を数値で設定する
ためのD/A変換器および前記MPUが前記パルストランスの駆動電流を数値で読
み込むためのA/D変換器を有すること。
1E前記パルストランス一次側回路に電流検出抵抗を設置し,前記
抵抗の両端電圧を増幅器を介して前記A/D変換器の入力信号とすることで,前記
パルストランスの一次電流値を得ること。
1F(人体への刺激パルスの)設定電流は前記プッシュボタンによ
って増加又は減少して設定され,前記D/A変換器から前記パルストランスに前記
設定電圧(V)として出力すること。
1G前記MPUの記憶装置には,前記駆動電圧の数値と前記一次電
流値(I1)および既に記憶されている前記パルストランスの特性値テーブルが有
ること。
1H前記特性値テーブルには前記設定電圧(V)毎の数値を有する
こと。
1I当該数値には,下記式(1)を使用する場合は無負荷励磁電流
(I0)と短絡電流(一次電流I1S,二次電流I2S)を含んでいること。
あるいは,(その数値には,)下記式(2)を使用する場合は定数
(α)と無負荷励磁電流(I0)を含んでいること。
1JMPUのプログラムは前記設定電圧(V)を設定する毎に,駆
動電圧と一次電流から前記特性値テーブルを参照して,前記低周波治療器の出力電
流となる前記パルストランスの二次電流の波高値(I2)を下記式(1)または式
(2)を用いて計算すること
式(1) I2=I2S/(I1S-I0)×(I1-I0)
式(2) I2=α(I1-I0), ただし α=定数
1K(その計算した)数値を前記LCDに表示することで,前記刺
激パルスの出力電流値を正確に把握することを特徴とする低周波治療器であるこ
と。
イ 本件発明2の構成要件
2A前記パルストランスの二次回路に,整流・平滑回路および出力
制御回路を設けること。
2B前記整流・平滑回路には整流用ダイオードと正負の電圧を貯え
るための平滑コンデンサを有すること。
2C前記出力制御回路には前記MPUからの出力信号で駆動される
リレーとホトカプラを有すること。
2D前記MPUは,前記リレーによって出力モードを切り替えるこ
と。
2E前記平滑回路の出力を前記ホトカプラで制御して,プラス波形
およびマイナス波形からなる出力波形を人体に供給すること。
2F前記刺激パルスの出力を一次側とは絶縁された状態で制御する
こと
2G上記構成要件1Aないし1Kをすべて充足する低周波治療器で
あること。
(4) 被告の行為
被告は,遅くとも平成9年12月20日ころから別紙物件目録記載1の低
周波治療器(商品名Trio300。以下「被告製品1」という。)を,遅くとも
平成11年10月ころから同目録記載2の低周波治療器(商品名Trio310。
以下「被告製品2」という。)及び同目録記載3の低周波治療器(商品名Trio
350。以下「被告製品3」という。)を,遅くとも平成12年ころから同目録記
載4の低周波治療器(商品名ツインビートEMS。以下「被告製品4」という。)
を,遅くとも平成13年ころから同目録記載5の低周波治療器(商品名ツインビー
ト2。以下「被告製品5」という。)を製造,販売している(以下,被告製品1な
いし5を併せて「被告製品」という。)。
被告製品の構成は,別紙被告製品説明書記載のとおりである(ただし,別
紙第1図等にある「フォトカプラ」は上記構成要件にいう「ホトカプラ」と,「C
PU」は上記構成要件にいう「MPU」とそれぞれ同義である。以下同じ。)。
なお,被告とニッセイ電子は,平成8年,被告製品1の共同開発を開始
し,平成9年11月ころ,この共同開発は終了した。原告は,この共同開発にニッ
セイ電子の従業員として関与した。被告は,この共同開発終了後平成10年秋ころ
までの間は,ニッセイ電子に被告製品1の回路基板実装及び組立てを委託し,製品
の納入を受けていた。
(5) 被告製品の構成要件充足性
被告製品は,次のとおり本件発明の構成要件の全部又は一部を充足する。
ア 被告製品1  構成要件1Aないし1K及び2Aないし2Gの全部
イ 被告製品2  構成要件1Aないし1K
ウ 被告製品3  構成要件1Aないし1K及び2Aないし2Gの全部
エ 被告製品4  構成要件1Aないし1K
オ 被告製品5  構成要件1A,1B,1Dないし1J及び2Aないし2

 (6) 原告は,被告に対し,平成12年6月28日付の「低周波治療器の製造お
よび販売に関する特許警告について」と題する書面で,原告が被告製品1に関する
技術について特許出願中である旨の警告をした(甲4)。
2 事案の概要
本件は,本件特許権を有する原告が,被告製品の製造販売が同特許権を侵害
すると主張して,特許法100条に基づき,被告製品の製造等の差止め及び廃棄を
求めるとともに,民法709条に基づく損害賠償及び特許法65条に基づく補償金
の支払を請求する事案である。
3 本件の争点
(1) 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否か
ア 被告製品2が本件発明2の技術的範囲に属するか否か
イ 被告製品4が本件発明2の技術的範囲に属するか否か
ウ 被告製品5が本件発明1及び2の技術的範囲に属するか否か
エ 被告製品5の構成が本件発明1及び2と均等か否か
(2) 本件特許に無効理由が存在することが明らかか否か
ア 本件発明がその特許出願前に日本国内又は外国において公然知ら
れていたか否か,また,それに基づいて容易に発明をすることができたか否か
イ 本件発明がその特許出願前に日本国内又は外国において公然実施
されていたか否か,また,それに基づいて容易に発明をすることができたか否か
ウ 冒認又は共同出願違反
(3) 先使用の成否
(4) 損害等の有無及び額
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)ア(被告製品2の構成要件充足性)について
〔原告の主張〕
被告製品2は構成要件2Aないし2Gを充足し,本件発明2の技術的範囲に
属する。
〔被告の主張〕
被告製品2はマイクロカレントモードのための整流平滑回路,ホトカ
プラ,リレーを有しておらず,構成要件2Aないし2Gを充足しない。
 2 争点(1)イ(被告製品4の構成要件充足性)について
〔原告の主張〕
被告製品4は構成要件2Aないし2Gを充足し,本件発明2の技術的範囲に
属する。
〔被告の主張〕
被告製品4はマイクロカレントモードのための整流平滑回路,ホトカ
プラ,リレーを有しておらず,構成要件2Aないし2Gを充足しない。
3 争点(1)ウ(被告製品5の構成要件充足性)について
〔原告の主張〕
被告製品5は構成要件1C,1K,2Gをいずれも充足し,本件発明1及び
2の技術的範囲に属する。
〔被告の主張〕
被告製品5は,構成要件1Jの数式(本件式①及び②)で計算された
刺激パルスの出力電流値自体を数値表示するためのLCDを有しておらず,構成要
件1C,1K,2Gをいずれも充足しない。
被告製品5のLCDが表示するのは,ユーザーがキーボードで入力した電流
の出力設定値である。
4 争点(1)エ(均等論による被告製品5の特許権侵害の成否)について
〔原告の主張〕
被告製品5が構成要件1C及び1Kを充足しないとしても,以下のとおり,
その構成は本件発明1及び2の構成要件と均等なものとして,本件発明1及び2の
技術的範囲に属する。
(1) 発明の本質的部分ではないこと
出力電流値自体をLCD(液晶表示装置)に表示することは,本件発明の
本質的部分ではない。
すなわち,本件発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的部分は,パル
ストランスの絶縁性能を損なわず,刺激パルスの電流値を正確に把握することを可
能にする点にある。しかるに,本件発明において,パルストランスの絶縁性能を損
なわずに,刺激パルスの電流値を正確に把握することを可能にしているのは,パル
ストランスの駆動回路に設置された電流検出回路及び数値計算を行うMPUのプロ
グラムであり,ユーザーは,かかる電流値を構成要件1C,1Kによって,二次的
に把握するにとどまるものである。
MPUがLCDに,出力電流の計算値を表示するのか,あるいは設定電流
値をそのまま表示するのかのいずれを選択するかは,単なる設計変更に関する事項
にすぎない。
発明の目的,効果が特許請求の範囲の請求項中に記載されている必要はな
い。請求項1に出力電流値の表示のみが規定され,定電流制御,実効値計算,異常
監視などが規定されていなかったとしても,正確な電流値表示が本件発明の本質的
部分であるとはいえない。
出力電流値の表示と設定電流値の表示とでユーザーがLCDから受ける印
象の違いは,むしろ表示桁数の違いによるものであって,両者の表示を同一の2桁
表示で行えば,ユーザーの印象は同じになり,本件発明の作用効果とは無関係であ
るといい得る。
そうすると,被告製品5が構成要件1C及び1Kを充足しなかったとして
も,その余の構成要件を充足し,かつMPUのプログラムが二次電流の値を計算す
ることができるのであれば,その課題解決手段は本件発明における課題解決手段の
原理と実質的に同一の原理に属するものであり,構成要件1C,1Kは本件発明の
本質部分ではない。
(2) 置換えによっても発明の目的を達し,同一の作用効果を奏すること
出力電流値自体をLCDに表示することに代え
て,ユーザーが入力した電流の出力設定値をLCDに表示することにしても,本件
発明の目的を達し,同一の作用効果を奏することができる。
すなわち,出力電流の数値表示で設定電流値を表示することとしても,定
電流制御,実効値計算,上下限管理(エラー表示)等の製品機能に支障が生じるわ
けではない。また,刺激パルスの出力電流値を3桁の数値で表示することとユーザ
ーの設定電流値を2桁の数値で表示すること(被告製品5の構成)との間の外見上
の差異は僅かなものである。さらに,刺激パルスの出力電流値は時間経過に従って
設定電流値に限りなく近づくから,ユーザーは設定電流値の数値表示を通じて出力
電流値を正確に把握することができるのであって,本件発明の効果を奏し得る。
パルストランスの絶縁性能を損なわず,刺激パルスの電流値を正確に把握
することは,電流検出回路及びMPUのプログラムによって可能である。また,パ
ルストランス駆動回路に電流検出回路があり,数値計算を行うMPUのプログラム
があれば,二次側に絶縁のための複雑な電流検出回路は不必要である。トランス絶
縁された状態で,二次電流の大きさを測定でき,二次側に出力パルス幅を長くする
ための平滑回路を設置する場合でも,一次側の検出抵抗で同様に出力電流値を測定
できるのであって,また常に出力状態を監視し,有益な情報処理機能を備えた,安
全性の高い低周波治療器を提供することが可能になる。
そうすると,構成要件1C及び1Kは,これらの効果を生じさせるのに必
要であるとはいえず,これを置き換えると同一の作用効果を奏しなくなるというこ
とはできない。
(3) 置換えが容易であったこと
かかる置換えは,当業者(当該発明の属する技術分野における通常の知
識,経験を有する者をいう。以下同じ。)が被告製品5の製造等が行われた当時の
時点において,容易に想到することができたものである。
(4) 公知技術から当業者が容易に推考できたものでもないこと
被告製品5は,本件発明の特許出願時における公知技術と同一のもので
も,同時点においてかかる公知技術から当業者が容易に推考できたものでもない。
(5) 意識的に除外されていなかったこと
被告製品5が本件発明の特許出願時において意識的に除外されたものに該
当するなどの特段の事情は存しない。
原告は,本件発明の全審査,審判過程において,MPUで計算した二次電
流値を表示することに代えて,設定電流値を表示することを,特許請求の範囲から
意識的に除外していない。すなわち,かかる計算結果をLCDに表示することと,
設定電流値をLCDに表示することとは独立の事象であって,前者を補正で加えた
からといって後者を除外することにはならない。
また,かかる設定電流値の表示を特許請求の範囲から除外しなければ,本
件発明が特許されなかったという事情もない。
〔被告の主張〕
(1) 構成要件1C及び1Kが発明の本質的部分であること
そもそも,発明の本質的部分の把握は,まず,特許明細書における従来技
術の問題点,技術的課題(発明の目的),構成,作用効果の記載に基づいて行われ
るべきである。
しかるに,本件明細書中には,従来の技術として,出力電流の大きさを概
略的に表示していた旨が記載があり,また,本件発明が解決しようとする課題とし
て,出力電流の大きさを概略的に表示するだけでは,他人や過去の治療記録との比
較,照合ができないので,刺激パルスの大きさを正確に把握したいという問題があ
るところ,本件発明はパルストランスの絶縁性能を損なわずに刺激パルスの電流値
を正確に把握することで治療効果の高い低周波治療器を提供することを目的とする
旨の記載がある。
そうすると,構成要件1Jの数式で計算された,刺激パルスの出力電流値
自体をLCDに表示すること(構成要件1C及び1K)は,本件発明の本質的部分
にほかならない。
なお,電流値を正確に把握するのはユーザーであって,MPUのプログラ
ムではない。また,MPUのプログラムが算出した数値をLCDに表示すること
で,初めて,刺激パルスの出力電流値をユーザーが正確に把握するという,本件発
明の目的を達成し得る。
また,定電流制御,実効値計算,異常監視などは,特許請求の範囲請求項
1中には記載されておらず,ここで規定されているのは正確な出力電流値の表示の
みである。したがって,定電流制御等は本件発明の本質的部分ではなく,正確な出
力電流値の表示が本質的部分である。
(2) 置換えによって発明の目的を達することができず,同一の作用効果を奏す
ることができないこと
刺激パルスの出力電流値自体をLCDに表示することに代えて,ユーザー
がキーボードによって入力した出力電流の設定値をLCDに表示するのみでは,刺
激パルスの大きさを正確に把握することはできず,本件発明の目的を達成すること
はできない。また,後者によって生じる作用,効果は前者によって生じる作用,効
果と全く異質なものであって,本件発明の作用,効果と同一の作用,効果を奏する
ことはできない。
なお,定電流制御やエラー処理などは本件発明とは無関係であるから,出
力電流値に代えて設定電流値を表示することが定電流制御などに影響を与えないと
しても,そのことには意味はない。
また,一次電流値の測定に基づく計算によって得られる刺激パルスの二次
出力電流値は,ユーザーの使用状態や使用部位によって微妙に変化する一方,設定
電流値は全く変化しないから,両者をそれぞれ表示することによる効果は大きく異
なる。
(3) 意識的除外があったこと
原告は,出願当初の特許請求の範囲には構成要件1C及び1Kに当たる構
成要件を記載していなかったのに,審判手続において,特許庁に対し,平成14年
10月1日付手続補正書で,請求項1につき,「前記刺激パルスの出力電流値を数
値表示するためのLCD」(構成要件1C)及び「その数値を前記LCDに表示す
ることで,前記刺激パルスの出力電流値を正確に把握」(構成要件1K)を追加し
た。
かかる補正により,ユーザーがキーボードを用いて設定した設定
電力値をLCDに表示する構成は,仮にそれが前記補正前の特許請求の範囲請求項
1に含まれていたとしても,意識的に除外されたことは明らかである。
5 争点(2)ア(公知による新規性・進歩性の有無)について
〔被告の主張〕
(1) 被告は,被告製品1の製造を開始するにあたり,平成9年8月28日に,
厚生大臣に対して同製品について医療用具の製造承認を申請した。
この承認申請においては,機器の名称,形状等を申請書に記載するが,被
告は,被告製品1の作動原理に関して,次のアないしオの事項を列挙し,本件発明
の主要な要素を開示した。また,被告は,この承認申請において,ブロック図で構
造を示したほか,性能,使用目的,効能及び効果に関しては出力波形図を,操作方
法又は使用方法に関してはUPキー及びDOWNキーによる電流値等の設定の方法
をそれぞれ示して,本件発明の内容を開示した。
この申請手続を通じて本件発明の内容は日本国内において少なく
とも公然知られ得る状態に置かれたものであるが,閲覧可能なものはすべて公知と
して扱うのが特許庁の実務運用であり,また調査嘱託,文書送付嘱託を行えば,こ
れを通じて開示された内容が裁判公開の原則により,誰でもアクセス可能となるも
のであるから,本件発明の内容はこの申請手続により公然知られたものというべき
である。
ア 機器各部の概要
内部電源又は外部電源,発振部,CPU,EEPROM,LCD表示,
キー入力操作部,増幅部及び出力制御部から成り,装着部を経てパルスを出力し治
療を行う。
イ モード切替
出力するパルス波形は6種類を選択できる。
ウ 出力波形の形成の方法
出力波形は,設定した出力電流値に対応したD/A値をトランスの中央
端子に印加し,一次側の両端子を一定間隔で駆動することによって形成される。こ
れは本件発明1の構成要件1Bに該当するとともに,構成要件1Fにいう「前記D
/A変換器から前記パルストランスに前記設定電圧(V)として出力すること」に
該当する。
エ 出力電流値の導出
トランス一次電流値として,検出抵抗の両端電圧がアンプ入力回路から
A/D変換器を経てCPUに入力され,二次電流値はD/A値(電圧)における駆
動電流値を基に予め記憶したトランス特性値のテーブルを参照することで求めら
れ,CPUは計算から常に出力電流値を知ることができる。これは本件発明1の構
成要件1E,1G及び1Jに該当するとともに,構成要件1Kにいう「刺激パルス
の出力電流値を正確に把握すること」ことに該当する。
オ LCD表示
パルス波形のピーク電流値を表示するが,これは本件発明1の構成要件
1Kにいう「数値をLCDに表示すること」に該当する。
(2) 原告の主張に対する反論
ア 薬事法14条1項に基づく厚生労働大臣による医療用具の製造承認制度
は,当該用具の構造,品質,性能,規格等がその安全性及び有効性の観点から支障
がないか否かにつき審査を行い,その製造を厚生労働大臣の承認にかからしめるこ
とによって,危険又は不適当な医療用具等の出現の防止を図り,もって国民の生
命,身体,財産等の安全を保護するためのものである。
とすれば,国民の生命,身体,財産等の安全の保護に資する情報開示を
当然に予定しているものである。
現に,厚生労働省大臣官房総務課情報公開文書室は,行政機関の保有す
る情報の公開に関する法律の施行(平成13年)前であっても,医療用具の製造承
認申請等について,裁判所から調査嘱託等がされた場合や公的機関から照会があっ
た場合には,これを公開する取扱いをしていたとしている。
したがって,製造承認申請につき当該国家公務員が個人として守秘義務
を負担しているか否かにかかわらず,申請によって開示された情報が,第三者に公
然知られ得る状態に置かれていたことは明らかである。
イ 本件の医療用具製造承認書には,「トランス1次電流値として,検出抵
抗の両端電圧がアンプ入力回路からA/D変換器を経てCPUに入力され,2次電
流値はDA値(電圧)に於ける駆動電流を基に予め記憶したトランス特性値のテー
ブルを参照することで求められCPUは計算から常に出力電流を知ることが出来
る」との記載があるが,これは,本件発明の基本的発想及び課題解決手段である,
「パルストランスの駆動回路に電流検出回路を設置することで,トランス本来の絶
縁性能を損なうことなく,出力電流であるトランスの二次電流が正確に求められ
る」ことの要約として必要十分な内容を含むものである。
トランスの一次電流値を二次電流値に換算することはトランスの初歩的
知識から導出できる事項であり,無負荷励磁電流I0が一次電圧(設定電圧)に応
じて変化することは周知の事実である。また,ソフトウェアによる計算処理におい
てテーブル(表)の利用はプログラミングの初歩的手法である。一次電圧ごとに定
数αと無負荷励磁電流I0の値を含む特性値テーブルを設け,本件式②による演算
を行って二次電流値を得ることは本件医療用具承認書で引用されている記載部分に
内包されるものであって,当業者においてかかる記載から特性値テーブルの具体的
構成や計算方法を導出することは極めて自然で何らの困難もない。
したがって,本件発明の下位概念が開示されていないということはでき
ない。
  (3) 進歩性の欠如
    前記(1)において開示された内容から本件発明を想到することは当業者にお
いて容易であり,本件発明は進歩性を欠くから,本件特許は明らかに無効である。
    なお,トランスの一次電流値を二次電流値に換算することはトランスの初
歩的知識から導出できる事項であり,無負荷励磁電流I0が一次電圧(設定電圧)
に応じて変化することは周知の事実である。また,ソフトウェアによる計算処理に
おいてテーブルの利用はプログラミングの初歩的手法である。一次電圧ごとに定数
αと無負荷励磁電流I0の値を含む特性値テーブルを設け,本件式②による演算を
行って二次電流値を得ることは本件医療用具承認書で引用されている記載部分に内
包されるものであって,当業者においてかかる記載から特性値テーブルの具体的構
成や計算方法を導出することは極めて自然で何らの困難もない。
    したがって,本件医療用具製造承認申請書中の記載内容から本件発明を想
到することは,当業者において容易であるから,本件発明は進歩性を欠く。
〔原告の主張〕
(1) 新規性の有無について
   ア 公然と知られ得る状態になったとしても新規性が失われないこと
新規性を喪失するためには,秘密保持義務を負わない者がその内容を知
ることができる状態に置かれるだけでは足りず,現実にかかる者が知ることを要す
る。
そうすると,情報公開により秘密保持義務を負わない者が医療用具承認
書から本件発明の内容を知り得る状態になったとしても,「公然知られた」とはい
えず,本件発明の新規性は失われない。
イ 開示を受けた公務員には守秘義務があること
国家公務員である旧厚生省の職員は国家公務員法100条に基づき,職
務遂行にあたって得た知識について守秘義務を負っており,旧厚生省の職員に対し
て情報を開示したのみでは,本件発明がその出願前に公然知られていたということ
はできない。
また,他の公共機関等が例外的に情報を知ったとしても,守秘義務が適
用され,不特定多数の第三者に知られ得る状態になったとはいえない。
ウ 情報公開では開示されないこと
厚生労働省情報公開室,同省医薬食品局審査管理課では,申請書の添付
書類の詳細の開示は,公的機関の調査嘱託等を受けてもよほどの場合でない限りさ
れず,一般私人の場合には情報公開制度を利用しても原則としてなされない。
また,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条では,当該情報
を開示することにより,当該法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益を害す
るおそれがあるものは不開示とする旨が規定されている。また,厚生労働省が保有
する行政文書の開示請求に対する開示決定等に係る審査基準4項でも,前記のよう
な不開示情報が含まれている場合には,当該文書の全部を開示しない旨が規定され
ている。
特許権等の情報が含まれている本件の医療用具製造承認申請書は,開示
により権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある文書に当たるか
ら,情報開示は当然には予定されていない。
エ 本件の医療用具製造承認申請書で開示された技術が本件発明の技術内容
と同一でないこと
本件の医療用具製造承認申請書では,具体的なトランス特性値テーブル
の内容,トランス特性値テーブルを用いた計算方法がいずれも開示されておらず,
本件発明の構成要素である下位概念が開示されていない。
(2) 進歩性の欠如について
本件発明は,これを構成する各技術的手段の連携作用,組合せに特色があ
り,かつかかる連携作用,組合せは当業者といえども容易に想到できるものではな
いから,本件発明の進歩性は否定されない。
6 争点(2)イ(公然実施による新規性・進歩性の有無)について
〔被告の主張〕
(1) 公然実施
被告は,平成9年11月ころ,被告製品1を1000台製造し,遅くとも
同年12月に,イタリア,イスラエル等の世界各国に輸出した。
被告は,製造した被告製品1のうち,2台を被告の従業員に販売し,また
遅くとも平成9年12月20日までに4台を,東京都文京区の医療用具等販売会社
であるタクト医療株式会社(以下「タクト医療」という。)に販売し,引き渡し
た。
我が国の購入者は,被告との間で何ら秘密保持義務を負担しておらず,購
入した製品を分解し,分析することにより,本件発明を技術的に理解し得る状態に
あった。よって,本件発明はその出願前に既に我が国において公然実施され
ていたものである。
(2) 原告の主張(黙示の守秘義務等)について
ア タクト医療が商品流通のための企業であるという抽象的な理由から暗黙
の守秘義務が発生するということはない。仮にタクト医療がかかる守秘義務を負担
するときは,最終需要者に対して同様の守秘義務を課さない限り転売が制限される
結果となるところ,通常の場合最終需要者に守秘義務が課されることはないから,
タクト医療は最終需要者に転売ができないことになって不当な結果となる。
イ 本件発明1の特許請求の範囲中には,定数αの計算方法,無負荷励磁電
流I0の測定方法,特性値テーブルの作成方法はいずれも何ら規定されていない。
解析報告書(乙54)に「無負荷励磁電流」という技術用語が用いられ
ていないのは,被告が出力電流測定に関する物理的意義について解析を依頼しなか
ったからにすぎない。無負荷励磁電流I0に直接対応するパラメーターを係数テー
ブルに格納せずに,これに相当する値をα(P1)で除した数値に相当する変数P
2を係数テーブルに格納したのは,αI0に対応する数値を算出する際の乗算を省
略し,実出力電流値Apの算出を簡素化するためにすぎない。
(3) 意に反する公然実施について
原告には,特許出願前に被告の行為を差し止める権利はない。
また,被告は被告製品1につき新規仕様による新製品の製造販売に関する
企画立案を行って,ニッセイ電子との間で共同開発の合意をして開発を進め,原告
はニッセイ電子の従業員として職務上その開発に携わった。この開発完了後に得ら
れた成果を利用して被告が新製品の製造販売を行うことは,誰も異議を差し挟む余
地のない明白なことであった。被告の平成9年11月以降の製造,同年12月以降
の販売は,被告の所期の予定に従ったもので,原告においても当然に知悉していた
事柄である。
(4) 進歩性の欠如について
本件発明は,その出願前に日本国内又は外国において公然知られていた上
記開示内容から想到することは当業者において容易であり,本件発明は進歩性を欠
くから,本件特許は明らかに無効である。
〔原告の主張〕
(1) 公然実施に当たらないこと
ア 本件発明の出願当時,特許法29条1項1号,2号では,外国で公知公
用となったときについて規定しておらず,外国で出願前に公然実施されたとして
も,新規性は失われない。
イ 被告の従業員は被告に対して黙示の守秘義務を負っているから,被告が
社内の個人に対して被告製品1を譲渡したとしても,公然実施には当たらない。
ウ タクト医療は被告と商取引のある企業であって,商談等に関して格別秘
密保持契約等を締結しなくても,第三者に対して被告の新製品や新技術を開示しな
いことが暗黙のうちに求められており,他面,被告としても,相手方がかように開
示しないことを信頼して,新製品や新技術を開示することは十分あり得る。
そうすると,タクト医療が新製品の取扱いに関し,社会通念上又は商慣習上,黙示
の守秘義務を負っているというべきである。
したがって,被告がタクト医療に被告製品1を譲渡したとしても,公然
実施には当たらない。
(2) 公然実施に関する被告の主張について
ア 本件発明は装置の内部構造に関するものであるところ,被告製品1の使
用によってもその内部構造を知ることはできないから,これが販売されたとしても
公然と実施されたということはできない。
イ 次のとおり,被告製品1を分解,解析しても,その内部構造を知ること
ができない。
(ア) 被告が被告製品1のソフトウェアの解析結果から導出した計算式を
簡略化すると,「Y=AX-B」と示すことができるが,他方,本件式②は「Y=
α(X-I0)」で示される。
被告は,無負荷励磁電流I0を2つの係数A,Bの独立のテーブルか
ら割算処理で導いており,無負荷励磁電流I0を1つのテーブルとして発見するこ
とができなかった。
(イ) 周知技術からは,前記(ア)の係数Aはトランスの巻線比であると見
られるところ,巻線比は駆動電圧に対して固定された数値であるのに対し,かかる
係数Aは,mAモード(TENSモード)においても,μAモード(マイクロカレ
ントモード)においても,駆動電圧に対して固定された数値ではないから,係数A
を巻線比であると断定できない。
本件発明においては,始めにパルストランスの無負荷励磁電流I0を
測定した上で,模擬実験で実際に一次電流値I1と二次電流値I2を測定し,前記
(ア)の定数αのテーブルを作成しているが,かような無負荷励磁電流I0の事前測
定や係数αの導出は,被告製品1を分解,解析しても判明しない。
係数Aのデータからは,係数Aを抽出した過程が開示されず,これが
どのような意義を有するのか判明しないのであって,解析結果から係数Aの意義を
理由付けることはできない。
(3) 原告の意に反する公然実施
被告の輸出,販売等の処分行為は原告の知らない間にされたもの
で,原告はこれらを知っていれば差止請求をする意思を有していたから,原告の意
に反する公然実施に当たる。
被告製品1に関するニッセイ電子の業務は,開発の完了,量産試
作の開始の時点で,原告が当時所属していた設計部の手を離れ,製造部(生産管理
課)に移管された。製造部は設計部のある松本工場とは別の市の新伊那工場にある
ため,原告が被告製品1の生産に関する情報を入手することは困難になり,また,
初回量産分は新伊那工場から出荷された。そのため,原告は上記出荷の正確な日を
知らなかった。
さらに,原告は,実際の出願日である平成10年1月14日の約7か月前
から特許出願の準備を進めていたが,上司の妨害で出願が遅れた。
このとおり,被告製品1の出荷は原告の意に反してされたものであった。
(4) 進歩性がないことについては
争う。
7 争点(2)ウ(冒認又は共同出願違反)について
〔被告の主張〕
(1) 本件発明全体について
ア 原告は,平成8年4月25日にニッセイ電子に入社する以前は,低周波
治療器の設計,製造に関する知識,経験,ノウハウは皆無であった。
被告の総合技術研究所所長乙(以下「乙」という。)は,原告に対し,
低周波治療器に関するすべての技術を教示し,原告を指導して,被告製品1の開
発,設計を行わせた。
原告が行ったのは,かかる指示の下で具体的な電気回路の組み立てなど
をしたことであり,原告が本件発明の真の発明者であるとはいえない。
イ 本件においては,原告は本件発明の真の発明者でなかったにもかかわら
ず,自らを発明者として出願しており,冒認出願である。本件特許は,真の発明者
でない者であって,本件発明につき特許を受ける権利を承継しない者に対してされ
たものであるから,特許法123条1項6号に該当し明らかに無効である。
ウ あるいは,少なくとも,本件発明は原告と乙が共同でしたものであっ
て,原告のほかに乙も発明者に加えて出願すべきものであったところ,原告は自ら
のみを発明者として出願しており,共同出願違反の出願である(特許法123条1
項2号)。
本件特許は,真の発明者でない者であって,本件発明につき特許を受け
る権利を承継しない者に対してされたものであるから,特許法123条1項6号に
該当し,また共同出願違反の出願に対してされたものであるから同項2号に該当
し,明らかに無効である。
なお,原告は,平成9年7月28日,被告がニッセイ電子との間で本件
発明に関する特許を受ける権利を共有とすることを合意した際,この合意につき承
認していたものであり,仮に原告が本件発明の発明者であったとしても特許を受け
る権利自体を譲渡したか,又は喪失したものである。
(2) 本件発明1について
ア 乙は,次期TENS機種の被告製品1において実現すべき具体的技術的
課題である,正確な出力電流値測定に基づく定電流制御及びLCD表示を発案する
とともに,かかる技術的課題を解決する手段である,パルストランスの一次電流値
を検出し,これを二次電流値に換算すること,電流検出抵抗の両端電圧をサンプル
ホールドし,A/D変換器でディジタル・データに変換してMPUに取り込むこと
を発案し,これらを原告に指示した。原告が行ったのは,かかる指示の下での具体
的な電気回路の組み立て,データ計測であり,創作的活動とは評価できないことで
あった。
なお,仮に電流値の換算等を原告が発案したものであったとしても,一
次電流値を二次電流値に換算することは周知技術にすぎず,本件式はいずれもトラ
ンスの特性の初歩的知識を有する者であれば容易に導出することができるものであ
る上,励磁電流が一次電圧に応じて直線的に変化しないことも周知又は公知であ
り,設定電圧毎の数値を有する特性値テーブルを用いて前記換算を行うことも当業
者において容易に考えつく程度のものにすぎないから,これらを本件発明への寄与
と見ることはできず,結局本件発明について原告の寄与は存しない。
イ 原告の主張について
(ア) パルストランスの一次,二次間の絶縁は,低周波治療器特有の課題
であり,電子回路一般の問題ではないところ,乙はかかる技術的課題を原告に教示
したものであり,原告が当初から身に付けていた知識ではなかった。
(イ) MPUのプログラムで制御される電子装置において,入力のサンプ
リング,A/D変換,リアルタイム処理を行うことは,本件発明の出願当時に既に
周知の技術であり,低周波治療器の分野においても既に応用されていた技術であっ
たにすぎない。パルストランスの一次電流値を二次電流値にテーブルを用いて換算
処理することは,技術的秘策などと評価できるものではない。
(ウ) 設計書,仕様書では,「正確な」という不明瞭な表記をすることは
なく,「1mAで設定,表示する」などの明瞭な表記をするのが通常であって,仕
様書等に「正確な」という表記がなくても,乙が原告に対し,正確な出力電流の設
定,表示を指示していなかったということにはならない。
むしろ,乙は,原告に対し,出力電流の設定,表示に関して,TEN
Sモードでは1mAを単位として100段階,マイクロカレントモードでは10μ
A(乙14では1μA)を単位として75段階の精度を仕様書中で指示しており,
他方,原告は被告に対して,試作品ができた段階で,表示精度について報告してい
るから,十分に正確な電流値測定が予定されており,乙が表示精度について指示し
ていたといい得るものである。
(エ) 乙17においてMPUで簡易計算すると誤差が大きくなるとされて
いるのは,一次電流の実効値であってピーク値(波高値)ではないところ,トラン
スの一次側で検出するのはピーク値である。
(3) 本件発明2について
ア 本件発明2はマイクロカレントモードに関するものであるが,これに関
して乙は,原告に対し,マイクロカレントモードの概念を教示し,またマイクロカ
レントモードをTENSモードと切り替え可能にするという技術的課題を設定し
た。また,乙は,両モードでは出力電流値が大幅に異なるため電流検出抵抗の切り
替えをすることや,パルス幅の広いマイクロカレントモードの電流が直流に近くパ
ルストランスを通りにくいことに対する対策を発案し,これらを原告に対して教示
したものであり,原告はかかる教示などの下で電気回路を組み立てたにすぎず,単
なる補助者にすぎない。
イ 原告の主張について
乙14中には,その2頁において,モードスイッチによってモード切替ができる旨
が記載されている。なお,マイクロカレントモードに係る回路図は周知の技術にす
ぎない。
〔原告の主張〕
原告は本件発明の真の発明者である。
(1) 本件発明1について
ア 原告は,低周波治療器の設計,製造に関する知識,経験,ノウハウを全
く有していなかったわけではない。本件発明に係る低周波治療器(被告製品1)
は,一般の電子機器と同様にハードウェア及びソフトウェアで動作する電子機器に
すぎず,その動作原理は所詮電気回路にすぎないところ,原告は電気回路について
の知識等を有していたものである。
イ 原告は,乙などから,被告製品1の技術的課題が正確な出力電流値測定
に基づく定電流制御などであると指示を受けたことはない。
被告製品1の要求仕様を記載した次期TENS仕様,次期TENS仕様
案,概略仕様のいずれにも,正確な出力電流値測定とは記載されていない。また,
正確な測定,表示というためにはその精度が問題となるところ,これらの仕様書に
は精度に関する記載はない。
原告は,乙から,出力電流値の数値表示を依頼されたが,正確な測定ま
で依頼されたことはなく,原告は当時,測定精度は不問か又は許容できる程度でよ
いと考えていた。
ウ 乙は,一次電流値を測定し,これを二次電流値に換算することなどを原
告に指示しなかった。原告は当初,直接二次電流値を測定する方法を考えていた
が,アイデアに行き詰まり,苦肉の策として一次電流値を測定する方法に変更した
のであった。
また,一次電流値から二次電流値を換算する方法も,本件発明のように
一次電圧を固定する方法以外の方法も存在するところ,パルストランスの一次電流
値を検出し,二次電流値を換算するというだけでは解決手段としての技術的具体性
に欠けており,乙がかかる換算を指示したとしても,技術的課題を提供したに止ま
る。
エ 乙は,原告に対して二次電流値の換算のための特性値テーブルや電流値
換算方法の計算式について教示していない。また,本件発明の課題を解決するた
め,本件発明を構成する技術的手段をどのように連携させるかを教示したわけでは
ない。
また,乙は,一次電流値の検出には誤差が大きく,製品の開発としては
問題があることを認識できたはずであるから,原告に対して一次電流値の測定を指
示したはずはなく,次期商品の技術的課題を原告に対して提示したにとどまるもの
である。報告書(乙18)中の記載でも,電流検出抵抗は二次側に設置されてお
り,二次電流値を測定するものである。さらに,乙は,原告に対し,コンピュータ
技術を応用して本件発明の課題を解決することを教示しなかった。
本件発明を構成する技術はいずれも既知の技術であるが,組合せ方法に
創作性があるのであって,この組合せを考案したのは原告である。
なお,低周波治療器において,パルストランスの一次電流値を二次電流
値に換算することは周知の技術ではないし,一次側の電流測定回路,励磁電流の特
性利用,特性値テーブル,計算式などの本件発明の特徴をなす技術的構成は周知の
技術ではない。
(2) 本件発明2について
原告は,乙から,本件発明2に関し,回路図の提示又は示唆を受けなかっ
た。乙作成に係る概略仕様(乙14)中にも,リレーを用いたmAモード(TEN
Sモード)からμAモード(マイクロカレントモード)へのモード切り替えを見出
すことはできないし,報告書(乙18,19)の回路ではトランスの二次側に電流
検出抵抗が設けられており,本件発明とは回路構成が異なる。被告の資料(乙2
5)もマイクロカレントモードの出力パルスの波形に関する資料にすぎず,回路図
面が含まれていない。
また,原告は,乙から,整流・平滑回路の仕様や,パルストランスの絶縁
性の確保,ホトカプラの仕様につき,教示を受けたことはない。
(3) 被告の主張について
ア 本件発明では,ピーク値を対象にしていたことは明らかであり,ピーク
値から実効値を計算する式も明細書中に示されている。
イ 本件発明は,パルストランスの一次・二次間の電流値の換算方法に特徴
があるのであって,かかる換算方法を考案すれば,一次電流値の測定回路等はこれ
に従って当然に考案しうるものである。乙が一次電流値の検出を指示したとして
も,これのみで本件発明における解決手段を提示したとは評価できないが,乙は原
告に対し,一次電流値の測定回路を始めとする本件発明における電気回路について
も,換算のためのソフトウェアについても教示していない。
8 争点(3)(先使用の成否)について
〔被告の主張〕
(1) 原告は,もともと特許出願に係る発明(本件発明)の内容を知らないで本
件発明をした者であるところ,被告はかかる原告から同内容を知得し,本件発明の
特許出願の際,現に本件発明の実施である事業をしていた。
なお,ニッセイ電子による被告製品1の製造は,被告がニッセイ電子に委
託して被告の製造事業として行っていたものであるが,被告が下請け企業を用い
て,その製造事業の実施をしていたと評価できるものである。
とすれば,被告は,本件特許権につき,特許法79条に基づき,先使用に
よる通常実施権を有する。
(2) 先使用権は,特許出願の際既に実施し又は実施の準備をしていた善意の事
業者が,その後に出願された特許権のために当該実施の継続ができなくなると,出
願前に既に発明を占有していたことが明らかな善意の先使用者を犠牲にして特許権
者を過剰に保護することになり,公平の観念に反するとともに国民経済上,産業政
策上好ましくないとして,認められているものである。
そうすると,発明のルートが発明者と異ならなかったとしても,特許出願
に係る発明のルートが違法で,他方先使用に係る発明のルートが正当である場合に
は,前記公平の観念等の根拠がそのまま妥当し,先使用権を認めるべきであるとい
うことができる。
しかるに,本件では,本件発明に係る原告の特許出願には冒認出願又は共
同出願違反の違法があり,先使用に係る発明のルートが正当であるから,被告に本
件発明についての先使用権を認めるべきである。
〔原告の主張〕
そもそも,先使用権においては,発明の知不知より,その知得の経路
が問題であり,特許法79条にいう「その発明をした者」は,原告とは全然別個の
系統で本件発明と同一の発明をした者をいうと解すべきである。しかるに,本件に
おいては,原告と独立に,別系統で本件発明と同一の発明をした者はおらず,同条
にいう「その発明をした者」は存在しないから,被告は本件特許権について先使用
権を有しない。
また,仮に被告がかかる先使用権を有するとしても,その範囲は出願当時の
発明及び事業の目的の範囲内に限定されるところ,被告は出願当時に被告製品1の
販売事業の準備をしていたにすぎず,製造事業の準備をしていなかったのであっ
て,製造委託先のニッセイ電子がこの製造事業の準備をしていた。そうすると,被
告は製造事業に関する先使用権を有しない。
9 争点(4)(損害等の有無及び額)について
〔原告の主張〕
(1) 被告は,本件特許に係る出願公開がされた当時,本件発明が特許出願
に係る発明であることを知りながら,業としてこれを実施していた。よって
,原告は,被告に対し,本件特許の出願公開の日(平成11年7月27日)から設
定登録の日(平成15年7月3日)の前日までの間については,補償金の支払請求
権を有し,設定登録の日以降については,不法行為に基づく損害賠償請求権を有す
る。
(2) 被告製品の平均販売価格は3万円を下らず,被告が平成11年7月27日
以降に製造,販売した被告製品の台数は累計7万台を下らず,また本件発明の実施
に対して原告が受けるべき実施料率は10パーセントを下らないから,原告が被告
の前記(1)の侵害によって受けた損害及び補償金の合計額は,2億1000万円を下
らないと推定すべきである。
〔被告の主張〕
被告が原告の特許出願に係る発明であることを知って,特許権設定登録前に
業としてこれを実施していた事実は否認する。その余は争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点(2)イ(公然実施)について
事案にかんがみ,まず争点(2)イについて判断する。
(1) 被告製品1と本件発明との関係
ア まず,被告製品1と本件発明との関係に関して,証拠によれば,次の事
実が認められる。
(ア) 被告とニッセイ電子は,被告製品1の共同開発を行っていたとこ
ろ,乙らとニッセイ電子の丙が平成9年6月10日に被告製品1の製造について打
合せをした際,被告製品1に関する特許を被告とニッセイ電子が共同で出願する
か,被告が単独で出願するかが問題となり,後日ニッセイ電子側から回答すること
とされた(乙50)。
(イ) 乙らと丙及び原告が同年7月28日,前記(ア)と同様に,被告製品
1の製造について打合せをした際にも,被告製品1に関する特許取得をどうするか
が問題となり,後日別途協議して詳細を詰めることとされた(乙51)。
(ウ) 他方,原告は,同年6月6日,当時ニッセイ電子における上司であ
った丁技術部長(以下「丁」という。)に本件発明に基づく特許出願のための書類
を提出したが,丁は,特許出願のための手続を進めなかったので,原告は同年10
月14日,再度特許出願書類を作成し直して丁に提出した。
ところが,丁は,同年11月20日,原告に対し,ニッセイ電子とし
ては本件発明に基づく特許出願をするつもりはない旨を告げ,今後特許出願をしな
いよう原告を叱責した。
しかし,原告は,特許出願をしないと本件発明に基づくニッセイ電子
及び被告の製品,すなわち被告製品1は第三者から保護されないと考えて,平成1
0年1月14日,自らを出願人として本件発明に基づく特許出願を行った(甲1
3)。
イ 前記ア認定の事実によれば,ニッセイ電子は,被告との間で被告製品1
に関して特許出願の件につきいったんは協議をすることになったものの,その後ニ
ッセイ電子側では特許出願を行わないことになり,原告個人が被告製品1に係る利
益の確保を意図して自らを出願人として特許出願を行ったものであったということ
ができる。
そうすると,本件特許出願に当たり,本件発明に係る特許請求の範囲
は,少なくとも被告製品1の構成をカバーすることを意図して記載されていたもの
ということができる(現に,被告製品1は本件発明の技術的範囲に属する。)。そ
して,本件特許権は,被告製品1が一般に販売された後に出願されたものである。
(2) 次いで,本件発明の新規性及び進歩性につき,証拠によれば,次の事
実が認められる。
ア タクト医療への出荷
被告は,平成9年12月20日,東京都文京区の医療用具等販売会社で
あるタクト医療に対し,4台の被告製品1を販売し,このころ引き渡した(乙8の
1及び2,52)。
イ 被告による解析の対象となった被告製品1は前記アの販売の前である遅
くとも平成9年12月1日までに製造されたものであるが,その解析結果は,以下
のとおりである(乙5の2,乙9の1ないし8,乙10,54,55)。
(ア) 外観等からの解析
低周波治療器である被告製品1の外観,取扱説明書から,またこれを
使用することにより,主として次のとおりの特徴を備えていることが分かる。
a 出力モードとして,TENS CONSTANTモード(以下「T
ENSモード」という。)とMICRO CURRENTモード(以下「マイクロ
カレントモード」という。)を備えている。
b 前記aの各モードにおける出力波形図,設定出力電流値,実際の出
力電流値等のパラメータを数値表示するLCDを備えている。
c 出力電流値を設定するためのUPキー,DOWNキーを備えてい
る。
(イ) 電気回路
被告製品1を分解してその電気回路を解析すると,別紙Trio30
0回路図のとおりの電気回路を有していることが分かるが,この図中の各構成部品
の呼称と被告製品1の回路図中の各構成部品の呼称の対応は,別紙呼称対応一覧表
のとおりとなる。
(ウ) TENSモード
さらに,TENSモードに関して被告製品1の動作を解析すると,次
の事項が分かる。
a 被告製品1のMPUから出力されるパルストランス駆動用のパルス
信号,被告製品1の出力波形は,本件明細書図3のプラス波形駆動信号7,マイナ
ス波形駆動信号8,基本パルス波形51と同じである。
b UPキー,DOWNキーでユーザーが所望の出力電流値を設定する
と,MPUのD/A変換器出力端子からこの設定電流値に対応する直流電圧が出力
され,この直流電圧が電圧増幅回路,直流電圧制御回路を経て,出力トランス(パ
ルストランス)の一次側センタータップに供給される。
c MPUから+パルス信号と-パルス信号がトランス駆動回路に対し
て交互に出力され,これらのパルス信号により出力トランスの一次側が交互に駆動
される。
d 出力トランス駆動回路に接続された電流検出抵抗(電流検出回路)
の電圧降下値を電圧増幅回路(電圧増幅回路A)で増幅し,これをA/D変換器入
力端子に入力し,MPUでA/D変換を行い,出力トランスの一次電流値(A/D
変換値Ai)を得ている。
e MPUは,ROMとRAMとを備えているが,前者にはプログラ
ム,メッセージ,係数テーブルなどが記録されており,後者には,設定電流値を含
む設定パラメータや制御に必要な出力タイミング,A/D変換値,実出力電流値,
D/A出力設定値などが記憶されている。この係数テーブルは256段階のD/A
出力設定値に対応する2つのパラメータP1,P2を有する。
f MPUはトランス駆動用のパルスを出力するたびに(設定周波数の
周期で処理を行う。),電流の計測処理を実行する。すなわち,前記eの係数テー
ブルから出力設定値に対応するパラメータP1,P2を取得し,これらのパラメー
タと,検出された一次電流値Aiとから,次の式(以下「本件式③」という。)に
従って実出力電流値Apを算出する。
Ap=(P1/1000)×Ai-(P2/10)
本件式③中のAp,Ai,P1/1000,P2/10はそれぞれ
本件式②「I2=α(I1-I0)」中のI2,I1,α,αI0に対応する。
ここで,本件式③は実出力電流値Apと検出された一次電流値Ai
とが比例関係(直線関係)にあることを示し,パラメータP2/10はAp算出の
ためのオフセット値(補正値)である。
g 前記fによって算出された実出力電流値ApはLCD(LCD1)
に表示され,これによってユーザーは出力電流値を正確に把握することができる。
(エ) マイクロカレントモード
マイクロカレントモードに関して被告製品1の動作を解析すると,次
の事項が分かる。
a 被告製品1のプラス,マイナスパルス信号波形,出力波形は,本件
明細書図4中のプラス波形駆動信号7,マイナス波形駆動信号8,人体への出力波
形56と同一である。
b マイクロカレントモードのためのサブ基板(副基板)があり,プラ
ス側,マイナス側それぞれについて,整流回路(整流用ダイオードを含む。),平
滑回路(平滑コンデンサを含む。),ホトカプラ,逆流阻止用ダイオードが設けら
れており,これらの回路は出力トランスの出力側とリレー接点によって切り替え可
能に接続されている。
c TENSモードからマイクロカレントモードに切り替えると,MP
Uから出力されるリレー制御信号によってリレー接点の切り替えがされ,出力トラ
ンスの出力側が前記bのサブ基板上の回路に接続される。
このとき,2KHzバースト波が出力トランスからリレーを経て整
流回路,平滑回路に流れるとともに,ホトカプラがMPUから出力されるホトカプ
ラ駆動信号によって制御され,最終的にプラス波形及びマイナス波形からなるMC
R出力波形(マイクロカレントモード出力波形)が得られる。
d なお,そもそも被告製品1の出力トランスの役割の1つは,本体回
路と人体との間のアイソレーション(絶縁)であるが(乙54の12頁),マイク
ロカレントモードでは,絶縁された出力トランス二次側を制御するために,ホトカ
プラを使用して人体との絶縁がとられている(18頁)。
ウ 本件明細書の発明の詳細な説明には,本件式①及び②の導出に関し,パ
ルストランスの一次電流値と二次電流値の関係につき,両者が直線関係(比例関
係)にあると見なせるので,三角形の相似条件から導出した旨の記載がある(5欄
43行ないし6欄1行,甲2)。
(3) 本件発明と被告製品1の解析結果との対比
ア 本件発明1について
(ア) 前記(2)イによれば,被告製品1の解析結果中に,以下のとおり構成
要件1Aないし1F及び1Kが開示されているということができる。
a 前記(2)イ(イ)の電気回路中の「U1」は構成要件1Aにいう「プロ
グラム制御のためのMPU」に,同電気回路中のトランス駆動回路等は「パルスト
ランスから刺激パルスを発生する手段」にそれぞれ当たり,かつ前記(2)イ(ウ)のa
ないしcはTENSモードにおける刺激パルス出力の手順及び態様を示すものであ
る。
そして,TENSモード及びマイクロカレントモードにおける出力
波形図等を表示するLCD(前記(2)イ(ア)b,同電気回路中のLCD1)は,同構
成要件にいう「刺激パルスの様態を表示する手段」に当たる。
そうすると,前記(2)イ(ア)b,(イ),(ウ)のaないしcにより,構
成要件1Aが開示されているということができる。
b 前記(2)イ(ウ)bは,設定電流値に対応する直流電圧を電圧増幅回路
等を経て出力トランスの一次側センタータップに供給するものであって,構成要件
1Bにいう「前記パルストランスのセンタータップに所定の設定電圧を印加し」に
当たる。
また,同cは,MPUから+パルス信号と-パルス信号がトランス
駆動回路に交互に出力され,出力トランスの一次側を交互に駆動するものである
が,これは同構成要件にいう「一次巻線の両端を交互に駆動する」に当たる。
さらに,同aは,被告製品1におけるパルス信号及び刺激パルス出
力波形の態様を示すものである。
そして,前記(2)イ(イ)の電気回路の構造から,被告製品1の刺激パ
ルスがパルストランスの二次側の誘起電圧によって発生することは明らかである。
そうすると,前記(2)イ(イ),(ウ)のaないしcにより,構成要件1
Bが開示されているということができる。
c 前記(2)イ(ア)bのLCDは,刺激パルスの出力電流値等を数値表示
するものであるから,構成要件1Cにいう「前記刺激パルスの出力電流値を数値表
示するためのLCD」に当たる。
また,同c及び(ウ)bのUPキー,DOWNキーは,いずれもユー
ザーが出力電流値を設定するためのものであって,同構成要件にいう「前記出力電
流値を手入力するためのプッシュボタン」に当たる。
そうすると,前記(2)イ(ア)b,c,(ウ)bにより,構成要件1Cが
開示されているということができる。
d 前記(2)イ(ウ)bのとおり,被告製品1のMPUは,ユーザーが設定
した出力電流値に対応した直流電圧を出力するためのD/A変換器を有している
が,これは構成要件1Dにいう「前記パルストランスの駆動電圧を数値で設定する
ためのD/A変換器」に当たる。
また,同dのとおり,被告製品1では,出力トランス駆動回路に電
流検出抵抗が接続されているが,かかる接続態様は構成要件1Eにいう「前記パル
ストランス一次側回路に電流検出抵抗を設置し」に当たる。
そして,この電流検出抵抗の電圧降下値を電圧増幅回路で増幅し,
MPUのA/D変換器入力端子に入力しているが,かかる入力は構成要件1Eにい
う「前記抵抗の両端電圧を増幅器を介して前記A/D変換器の入力信号とするこ
と」に当たる。
さらに,かようにMPUに入力された後に,MPUでA/D変換が
行われ,出力トランスの一次電流値(A/D変換値Ai)が得られているが,これ
が構成要件1Eにいう「前記パルストランスの一次電流値を得ること」に当たり,
かつこのようにしてパルストランスの一次電流値が得られていることから,被告製
品1では構成要件1Dにいう「前記MPUが前記パルストランスの駆動電流を数値
で読み込むためのA/D変換器を有すること」という構成を備えているといい得
る。
以上のとおり,前記(2)イ(ウ)b,dにより,構成要件1D及び1E
が開示されているということができる。
e 前記(2)イ(ア)c及び(ウ)bのとおり,被告製品1は出力電流値を設
定するためのUPキー及びDOWNキーを備えており,ユーザーはこれらを用いて
刺激パルスの出力電流値を増減することができるが(前記c),これは構成要件1
Fにいう「設定電流は前記プッシュボタンによって増加又は減少して設定され」に
当たる。
また,前記(2)イ(ウ)bのとおり,被告製品1のMPUは,そのD/
A変換器で,ユーザーが設定した出力電流値に対応した直流電圧を出力するが(前
記d),これは同構成要件にいう「前記D/A変換器から前記パルストランスに前
記設定電圧(V)として出力すること」に当たる。
そうすると,前記(2)イ(ア)c及び(ウ)bにより,構成要件1Fが開
示されているということができる。
f 前記(2)イ(ウ)eないしgのとおり,被告製品1では,トランス駆動
用のパルスをMPUが出力するたびに,一次電流値の計測処理を実行し,換算式を
用いて実出力電流値を算出し,算出された数値をLCDに表示するが,これは構成
要件1Kにいう「数値を前記LCDに表示すること」に当たり,またかような実出
力電流値の表示によってユーザーが出力電流値を正確に把握することができるよう
になることは明らかである。
そうすると,前記(2)イ(ウ)eないしgにより,構成要件1Kが開示
されているということができる。
(イ) 前記(2)イ(ウ)eによれば,MPUのRAMには設定電流値等の設定
パラメータなどが記憶され,ROMには256段階のD/A出力設定値に対応する
パラメータを有する係数テーブルが記録されているが,この係数テーブルは同fに
よれば一次電流値から二次電流値を換算するのに用いられるものであるから,構成
要件1Gにいう特性値テーブルに相当し,したがって,被告製品1の解析により構
成要件1G及び1Hの内容を知ることができる。
イ 本件発明2について
(ア)a 前記(2)イ(イ)の電気回路図の構造及び同(エ)bでは「これらの回
路は出力トランスの出力側とリレー接点によって切り替え可能に接続されてい
る。」とあるから,被告製品1では,パルストランスの二次側にサブ基板が設けら
れ,サブ基板上には整流回路,平滑回路があるほか,リレー及びホトカプラなどか
ら構成される回路があるということができる。そして,同(エ)cのとおり,このサ
ブ基板上のリレーはMPUから出力されるリレー制御信号によって出力モードを切
り替え,またホトカプラはMPUから出力されるホトカプラ駆動信号によってパル
ス出力を制御するものである。
よって,これらの構成は構成要件2Aにいう「前記パルストランス
の二次回路に,整流・平滑回路および出力制御回路を設けること」,構成要件2C
にいう「前記出力制御回路には前記MPUからの出力信号で駆動されるリレーとホ
トカプラを有すること」,構成要件2Dにいう「前記MPUは,前記リレーによっ
て出力モードを切り替えること」にそれぞれ当たるものといい得る。
そうすると,前記(2)イ(イ)及び(エ)b,cにより,構成要件2A,
2C,2Dがそれぞれ開示されているということができる。
b 前記電気回路図及び前記(2)イ(エ)bによれば,サブ基板上の整流回
路及び平滑回路は整流用ダイオード及び平滑コンデンサを備えているが,この構成
は構成要件2Bにいう「前記整流・平滑回路には整流用ダイオードと正負の電圧を
貯えるための平滑コンデンサを有すること」に当たる。
そうすると,前記(2)イ(イ)及び(エ)bにより,構成要件2Bが開示
されているということができる。
c 前記(2)イ(エ)cのとおり,平滑回路を経た電流が,MPUのホトカ
プラ駆動信号で制御されるホトカプラによって制御され,最終的にプラス波形及び
マイナス波形からなる出力波形を作り出すのであるが,これは構成要件2Eにいう
「前記平滑回路の出力を前記ホトカプラで制御して,プラス波形およびマイナス波
形からなる出力波形を人体に供給すること」に当たる。
そうすると,前記(2)イ(エ)cにより,構成要件2Eが開示されてい
るということができる。
d 前記(2)イ(エ)dのとおり,出力トランスの一次側と二次側は絶縁さ
れ,一次側と絶縁された状態で刺激パルスの出力を制御することができるから,構
成要件2Fにいう「前記刺激パルスの出力を一次側とは絶縁された状態で制御する
こと」に当たる。
そうすると,前記(2)イ(エ)dにより,構成要件2Fが開示されてい
るということができる。
(イ) 以上のとおり,当業者において,解析の対象となった被告製品1を
その外観,取扱説明書から解析すること,これを使用すること,さらには分解して
解析することにより,構成要件2Aないし2Fが開示される。
(4) 新規性の有無
前記(2)アのとおり,被告は本件特許出願前である平成9年12月20日に
タクト医療に対して被告製品1を販売したものであるが,他方,後記(6)のとおり,
タクト医療が被告に対し守秘義務を負担したなどの事実を認めるに足りる証拠はな
い。
そして,前記第2の1(5)のとおり,被告製品1は本件発明の技術的範囲に
属するものであるが,本件発明は,被告製品1を分解して解析しても,それだけで
は発明の内容の全部を知ることができないものである。
すなわち,前記(3)のとおり,被告製品1の解析結果は,本件発明1と構成
要件1Aないし1H及び1Kにおいて一致し,同1I及び1Jにおいて相違する。
したがって,被告製品1を分解して解析しても,本件発明1の構成を知ることはで
きない。
また,被告製品1の解析結果は,本件発明と構成要件2Aないし2Fにお
いて一致し,同2Gにおいて相違する。構成要件2Gも構成要件1I及び1Jを前
提とするから,被告製品1の解析結果には開示されない。
以上のとおり,本件発明は出願前に公然実施されていたとはいえず,新規
性を欠くとはいえない。
(5) 進歩性の有無
ア 本件発明1について
(ア) 前記(2)イ(ウ)fによれば,解析の対象となった被告製品1は本件式
③「Ap=(P1/1000)×Ai-(P2/10)」を用いてパルストランス
の一次電流測定値から二次電流値を換算する構成を有するものであり,本件式②
「I2=α(I1-I0)」と同様に,一次電流値と二次電流値とが比例する関係
にあるが,オフセット値による補正が必要であるというトランスの特性を利用した
ものということができる。
そして,本件式②においては,いったん一次電流測定値I1から無負
荷励磁電流I0を減じてから定数αを乗じる形式になっているが,この無負荷励磁
電流I0及び定数αはMPUの特性値テーブルからパルストランスの設定電圧に応
じて取り出されるものである。他方,本件式③においては,いったん特性値テーブ
ルに相当する係数テーブルからパルストランスの設定電圧に応じて取り出した定数
P1を1000で除した後に一次電流測定値Aiを乗じ,さらに同様に係数テーブ
ルから取り出した定数P2を10で除した数値を減ずるという形式になっている
(もっとも,実際の動作としては,定数P1に一次電流測定値Aiを乗じた後に1
00で除した数値Y1をまず計算し,Y1から定数P2を減じた数値を10で除す
るという処理を行う。)。
(イ) 本件式②及び③は,その体裁において相違するように見えるが,両
者は,いずれもパルストランスの設定電圧に応じて作成した2つの定数からなる表
(テーブル)を利用することで,パルストランスの一次測定電流値から二次電流値
を換算するための数式である点には何ら変わりがない。
また,両者はいずれも,その等式の右辺において,2つの定数と1つ
の変数を有する一次関数の式である点が共通する。すなわち,本件式②の右辺には
2つの定数α,I0と1つの変数I1があり,本件式③の右辺には2つの定数P
1,P2と1つの変数Aiがあり,定数及び変数の個数の点において同一である。
また,本件式③のP1/1000は本件式②の定数αとその果たす役
割において何ら異ならないし,P2/10をP1/1000で除すことにより,本
件式②の無負荷励磁電流I0に相当する数値を容易に導き出すことができる(な
お,逆に,本件式②の無負荷電流I0から,本件式③のP2/10を導き出すこと
も同様に容易である。)。
(ウ) 結局,本件式②と本件式③との違いは,ごく僅かな計算手順の違い
にすぎず,その実体はほとんど異ならず,当業者において後者から前者を導出する
ことは極めて容易である。
そうすると,解析の対象となった被告製品1を解析することによって
開示された発明の構成から,無負荷励磁電流I0を定数とする特性値テーブルを備
えた発明の構成を導くことは極めて容易であって,当業者において,前記(2)イ(ウ)
e及びfから,構成要件1Iと構成要件1Jの内容(本件式②を用いる構成)を想
到することは極めて容易である。
(エ) 以上のとおり,解析の対象となった被告製品1をその外観,取扱説
明書から解析すること,これを使用すること,さらには分解して解析することによ
り,構成要件1Aないし1H及び1Kが開示され,その余の構成要件1I及びIJ
についても,かかる解析から開示される発明の構成に基づいて当業者が想到するこ
とは極めて容易である。
イ 本件発明2について
本件発明2についても,前記アと同様であり,かかる解析等によって,
構成要件2Aないし2Fが開示され,その余の構成要件2Gもかかる解析から開示
される発明の構成に基づいて当業者がこれを容易に想到することができる。
ウ 小括
解析の対象となった被告製品1と同様,タクト医療に販売された被告製
品1を,当業者がその外観,取扱説明書から解析すること,これを使用すること,
さらには分解して解析することによっても,本件発明1のうち構成要件1I及び1
Jを除く構成,本件発明2のうち構成要件2Gを除く構成を知ることができ,その
余の構成要件1I,1J及び2Gについてはこれらを容易に想到することができた
と推認することができる。
そうすると,本件発明のうち,本件式②を用いる構成については,その
出願前にタクト医療へ販売された被告製品1を販売することによって公然実施され
た発明から,当業者において容易に想到できたものである。
(6) 原告の主張(黙示の守秘義務)について
原告は,タクト医療は被告と商取引のある企業であって,被告に対し,社
会通念上又は商慣習上第三者に対して被告の新製品や新技術を開示しない旨の黙示
の守秘義務を負っている旨を主張する。
しかし,被告が明示的に守秘義務を負担させることなく,従業員などの内
部者以外の者に商品を販売することは,社会一般の取引通念に照らせば,当該商品
の存在や構成に関する情報をもはや秘密にする必要はないと考えていたことを前提
とするものというべきである。
また,タクト医療がかかる守秘義務を肯定するほど被告と商取引上密接な
特別な関係にあると認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告の上記主張は理由がないといわざるを得ない。
(7) 原告の意に反する公然実施について
ア 本件発明のうち,本件式②を用いる構成が,その出願前に公然実
施された発明から,当業者において容易に想到できるものであるとしても,原告は
そもそもかかる公然実施が自らの意に反してされたものであると主張する。
証拠によれば,次の事実が認められる。
(ア) 被告は,平成8年7月ころ,ニッセイ電子に対し,当時の従来機種
であったTENS240Zの後継機種に当たる低周波治療器の開発を依頼した(乙
1,2,11(1ないし4頁))。
(イ) 被告の総合技術研究所の所長であった乙は,同年7月30日ころ以
降,たびたび,当時ニッセイ電子の開発担当者であった原告と製品仕様などについ
て打合せや連絡を行ったり,原告に開発に関する指示をしたり,関係する資料を送
付したり,試作品の不具合を指摘して対応を促したりした(乙14,15,23な
いし27,30ないし36)。
(ウ) 原告は,平成9年10月1日,乙に対し,「製品発注ご承認ご依頼
の件」と題する文書を送付して,被告において被告製品1用の制御ソフトウェアの
改訂版の発注を承認してくれるよう促したが,同文書中には,「量産日程の都合
上,速やかにご連絡下さいますようにお願い申し上げます。」との記載がある(乙
45)。
(エ) 原告は,同年11月10日,乙に対し,「Trio300マスクR
OM発注ご承認ご依頼の件」と題する文書を送付して,平成10年1月に予定され
ている被告製品1の第2回量産分については,コスト低減のためにマスクROMに
切り替えた方が得策であり,マスクROMの発注について速やかに承認するよう促
したが,同文書中には平成9年11月7日付で被告製品1の第1回量産分をニッセ
イ電子から被告に送付した旨の記載がある(乙46)。
イ 前記ア(ア),(イ)の各事実によれば,被告が平成8年7月ころ
に,開発終了後には販売する予定で低周波治療器の新機種の開発をニッセイ電子に
依頼したところ,当時ニッセイ電子の従業員であった原告が開発担当者となり,そ
の後も開発のための打合せ等を行っていたということができる。そうすると,原告
においては,上記開発は新機種の販売のためであり,開発終了後に被告が被告製品
1を市場において販売することを当然に知っていたものというべきである。
そして,前記ア(ウ),(エ)の各事実によれば,原告は平成9年10月1
日の時点で被告製品1の第1回の量産が迫っていることを知っており,同年11月
10日の時点でも,原告は既に同月に第1回の量産が済み,平成10年1月に第2
回の量産が予定されていることを知っていたということができる。
そうすると,原告は,平成9年12月20日当時,被告が被告製品1の
販売をすることを予期していたということができ,他方,被告の同日の販売行為が
被告の予想を超えたものであったということはできない。
ウ この点,原告は,被告製品1の正確な出荷日を知らなかったなどとの理
由から,被告の販売当時,この販売は原告の意に反するものであった旨を主張す
る。
しかし,公然実施の対象となる販売行為が発明者の意に反しなければ,
出荷の正確な日付を知らなかったとしても特許法30条2項所定の例外事由には当
たらないところ,前記アのとおり,被告の販売行為は原告の予想の範囲内にあった
から,仮に原告が正確な出荷日を知らなかったとしても,この一事をもってタクト
医療に対する販売が原告の意に反していたものであったということはできない。
また,原告は,特許権の設定登録までは,本件特許権に基づく実施行為
の差止めを請求することができないから,原告が前記(2)アの被告のタクト医療に対
する販売行為を差し止める根拠がないことは明らかであり,かつ被告が原告の特許
権取得のために販売を延期する等の便宜を図る蓋然性があると認めるに足りる証拠
もない。そうすると,被告の出荷日を知っていればこれを差し止めたはずであると
の原告の主張には理由がないことは明らかである。
エ 小括
したがって,前記(2)アの被告の販売行為が原告の意に反するものであっ
たということはできず,特許法30条2項所定の例外事由はないから,その余の点
について判断するまでもなく,本件発明は出願当時既に公然実施されていた発明か
ら当業者において容易に発明をすることができたもので,進歩性を欠くものである
ことが明らかである。
(8) 以上によれば,本件特許には無効理由が存在することが明らかである。
 2 なお,前記1(7)アで認定した事実によれば,本件発明は,ニッセイ電子の職
務に関して原告がした発明であるということができ,ニッセイ電子は本件発明の通
常実施権を有する(特許法35条)。そうすると,被告製品1のうちニッセイ電子
が製造して被告に販売した分については,原告の特許権の効力が及ばないと解すべ
きである。
よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の本訴請求は,い
ずれにせよ理由がない。
3 結論
以上の次第で,原告の本件請求には理由がないから棄却することとして,主
文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官    髙 部 眞規子
 
 裁判官    東海林   保
裁判官    田 邉   実
(別紙)
物件目録
次のとおりの商品名の低周波治療器
1 商品名 Trio300
2 商品名 Trio310
3 商品名 Trio350
4 商品名 ツインビートEMS
5 商品名 ツインビート2
(別紙)
被告製品説明書
1 図面の簡単な説明
第1図 被告製品1(Trio300)の電気回路構成
第2図 被告製品2(Trio310)の電気回路構成
第3図 被告製品3(Trio350)の電気回路構成
第4図 被告製品4(ツインビートEMS)の電気回路構成
第5図 被告製品5(ツインビート2)の電気回路構成
2 被告製品1の説明
被告製品1(Trio300)の電気回路構成は第1図に示すとおりである。
CPUは次の式に従って出力電流値I2に比例する値i2を計算する。
i2=(i1×a)÷100-b
ここでi1は検出した一次電流値I1に比例する値(A/D変換値),a,b
は特性値テーブルに記述された定数である。
3 被告製品2の説明
被告製品2(Trio310)の電気回路構成は第2図に示すとおりである。
サブボード上には,マイクロカレントモードのための電気回路,すなわち整流
平滑回路,ホトカプラ及びリレーは存在しない。
CPUは次の式に従って出力電流値I2に比例する値i2を計算する。
i2=(i1×a)÷100-b
ここでi1は検出した一次電流値I1に比例する値(A/D変換値),a,b
は特性値テーブルに記述された定数である。
4 被告製品3の説明
被告製品3(Trio350)の電気回路構成は第3図に示すとおりである。
CPUは次の式に従って出力電流値I2に比例する値i2を計算する。
i2=(i1×a)÷100-b
ここでi1は検出した一次電流値I1に比例する値(A/D変換値),a,b
は特性値テーブルに記述された定数である。
5 被告製品4の説明
被告製品4(ツインビートEMS)の電気回路構成は第4図に示すとおりであ
る。
サブボード上には,マイクロカレントモードのための電気回路,すなわち整流
平滑回路,ホトカプラ及びリレーは存在しない。
CPUは次の式に従って出力電流値I2に比例する値i2を計算する。
i2=(i1×a)÷100-b
ここでi1は検出した一次電流値I1に比例する値(A/D変換値),a,b
は特性値テーブルに記述された定数である。
6 被告製品5の説明
被告製品5(ツインビート2)の電気回路構成は第5図に示すとおりである。
CPUは次の式に従って出力電流値I2に比例する値i2を計算する。
i2=(i1×a)÷100-b
ここでi1は検出した一次電流値I1に比例する値(A/D変換値),a,b
は特性値テーブルに記述された定数である。
計算により得られた出力電流値I2に比例する値i2は定電流制御に使用され
るが,値i2に基づいて出力電流値I2がLCDに表示されることはない。
LCDに表示されるのは出力設定値(ユーザがキーボードを用いて設定した
値)である。
第1図(被告製品1:Trio300)第2図(被告製品2:Trio310)第
3図(被告製品3:Trio350)第4図(被告製品4:ツインビートEMS)
第5図(被告製品5:ツインビート2)Trio300回路図呼称対応一覧表

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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