弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人大橋誠一の上告趣意について。
 しかし新刑訴における控訴審は旧刑訴におけるそれが第一審手続の覆審であつた
のとは異なり、第一審判決における一定の事実点並びに法律点に対する事後審査の
手続である。されば新刑訴の規定においても控訴審の公判期日には被告人は必しも
出頭することを要しないのであり(刑訴三九〇条)、被告人のためにする弁論は弁
護人でなければこれをすることができず(同三八八条)、しかも検察官及び弁護人
は控訴趣意書に基いて弁論をしなければならない(同三八九条)等と定められてい
るのである。従つて被告人に対し被告事件について陳述する機会を与うべきことを
定めた刑訴二九一条二項のごとき第一審公判に関する規定はその性質上、控訴の審
判について準用せられないことは明白というべく、被告人はその希望によりまた刑
訴三九〇条但書による裁判所の命令によつて公判期日に出頭した場合、裁判所が必
要と認めてなす質問に対し任意に供述することができるものたるに過ぎない。
 要するに所論は単なる訴訟法違反の問題としても理由なきのみならず、刑訴四〇
五条所定の上告適法の理由でなく、また本件につき同四一一条を適用すべき場合と
も認められない。論旨は理由がない。
 よつて刑訴四一四条、三八六条一項三号、一八一条により主文のとおり決定する。
 この決定は裁判官全員一致の意見である。
  昭和二六年三月三〇日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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