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平成14年(ワ)第5274号 損害賠償請求事件
判     決
主     文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,原告に対し,220万円及びこれに対する平成14年12月21日(本訴状送達の
日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1本件は,原告が,被告の経営する店舗で買物をした際,店内に設置されていたビデオカ
メラによって容ぼう,姿態を撮影され,それを録画したビデオテープを補助参加人である愛
知県の警察官に提出されたことにより,違法に肖像権,プライバシー権を侵害されたと主張
して,被告に対し,これによって被った損害賠償として精神的苦痛に対する慰謝料200万
円及び弁護士費用20万円,合計220万円並びにこれに対する遅延損害金の支払を求め
た事案である。
2前提となる事実
当事者間に争いのない事実,甲1,7,11号証,乙1,2,5ないし7号証,12,15号証,丙
4,5,10号証,証人Aの証言,被告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によると,次の事
実が認められる。
(1)被告は,平成12年10月18日,株式会社B(以下「B」という。)との間でフランチャイズ
チェーン加盟店契約を締結し,そのころから,その加盟店として,「Ba店」(以下「本件コンビ
ニ」という。)を経営していた。
(2)被告は,B本部と上記加盟店契約を締結した際,B本部から,犯罪や事故に対処するた
めの防犯システム態勢を整備することを勧められたことから,カラーカメラ4台,ダミーカメラ
(外形上カメラの形状をしているが,カメラとしての機能を持たないもの)2台,ビデオ装置,
カラーモニター等の機器を設置するとともに,店内の非常用ボタンを押すと警備会社へ通
報され,非常通報を受けるとガードセンターが状況を把握するというシステムを導入した。
被告は,このシステムを導入したことから,本件コンビニの2か所ある入り口の1か所付近
に,「特別警戒中 ビデオ画像電送システム稼働中」との掲示をした。
被告は,本件コンビニの店内で万引きが発生したことから,これに対処するために更にカメ
ラを2台増設した(以下,本件コンビニに設置されたカメラを「防犯ビデオカメラ」という。)。
本件コンビニにおいて作動している6台の防犯ビデオカメラのうち,3台はレジスター周辺
を,2台は入り口を,1台は倉庫の入り口辺りを,それぞれ撮影している。
上記の防犯システムの装置は,防犯ビデオカメラはデジタル方式のものであるが,録画に
使用しているのは通常のVHSビデオテープであり,録画方式はタイムラプス録画(画像を
静止画で保存していくことにより,長時間の映像を録画する方式)によっている。
被告は,録画したビデオテープを自ら深夜12時ころ交換しており,1日分を1本,被告が休
むときは2日分を1本に録画し,録画したビデオテープは1週間保存し,順番に上書きして
利用している。
(3)平成13年8月18日,原告は,本件コンビニにおいて,FAX用の用紙及び菓子パンを購
入した。その際,買物をしている原告の姿が防犯ビデオカメラによって撮影され,ビデオテ
ープに録画された(以下,原告の姿が録画されたビデオテープを「本件ビデオテープ」とい
う。)。
(4)愛知県警察本部公安三課(以下,単に「公安三課」という。)は,原告には,平成13年8
月18日ころ,愛知県一宮市bc丁目d番e号所在のCホテル(以下「本件ホテル」という。)に
宿泊した際,宿泊申込カードの,(a)ご芳名欄に「D」,(b)ご住所欄に「名古屋市f区gh丁目g
荘」などと記載して同カードを偽造し,本件ホテルのフロント係に対して同カードを提出した
との有印私文書偽造・同行使,旅館業法違反の容疑があるとして,その捜査を開始した。
同月20日,公安三課は,本件ホテルから最も近くに位置するコンビニエンスストアである
本件コンビニにおいて捜査することとし,公安三課司法警察員警部補A(以下,「A警部補」
という。)が,電話で被告に対し,事件捜査のために本件コンビニに赴く旨を伝えた。
本件コンビニを訪れたA警部補ら警察官は,被告に対し,「犯人と思われる者が立ち寄った
可能性があるので捜査に協力してほしい。」旨告げたところ,被告はこれに協力する旨述
べた。
A警部補らは,原告が本件コンビニに来店した時間を確認するため,被告から本件コンビ
ニの事務室にあった売上げデータを管理しているパソコンの操作方法を教えてもらい,そ
の操作により原告の来店したと考えられる時間帯のデータ部分を確認した。そこで,同警
部補は,被告に対し,上記データ部分をプリントアウトして提出するよう依頼するとともに,
更にその時間帯の映像が録画されている本件ビデオテープを提出するよう依頼した。
被告は,これに応じて,A警部補に対し本件ビデオテープを任意に提出した。そこで,A警
部補は,被告に対し,被疑者不詳に対する私印偽造被疑事件につき,①ビデオテープ1本
(黒色VHS),②紙1枚(204486,a店等と記入のあるもの)を押収した旨記載した押収品
目録交付書(乙5号証)を被告に交付した。
(5)公安三課司法警察員は,平成13年11月8日ころ,名古屋簡易裁判所に対し,原告が
同年8月18日,CホテルにD名義で宿泊し,宿泊申込カードに架空人名義を記載して偽造
したとの有印私文書偽造・同行使,旅館業法違反による逮捕状を請求した。名古屋簡易裁
判所が上記請求に基づいて発布した逮捕状により,原告は,同年11月12日,逮捕され
た。その後,原告は,同月14日,勾留された。原告を被疑者として名古屋地方裁判所裁判
官によって発せられた勾留状には,本件ビデオテープから印画された原告の写真が添付さ
れていた。
原告は,同月22日,処分保留で釈放され,その後,不起訴処分とされた。
(6)被告は,平成13年12月4日,公安三課巡査部長E(以下「E巡査部長」という。)から本
件ビデオテープの還付を受けた。しかし,被告は,既に新しいビデオテープを補充してお
り,その返還を受ける必要がなかったので,E巡査部長に対しその処分を依頼した。
E巡査部長は,捜査指揮官の指示に基づき,本件ビデオテープ内の記録をビデオイレイサ
ーで消去し,ビデオデッキを使用して記録が消去されていることを確認した後,本件ビデオ
テープを分解して,磁気テープ部分を取り出してテープ部分を裁断機で裁断して廃棄処分
した。
3争点及びこれに対する当事者の主張
本件における争点は,①被告が原告を防犯ビデオカメラによって撮影し,これを本件ビデオ
テープに録画したこと及び②被告が本件ビデオテープを警察官に提出したことが違法であ
るかどうか,である。
(1)被告が原告を防犯ビデオカメラによって撮影し,これを本件ビデオテープに録画したこと
の違法性の存否
(原告)
ア個人は,みだりに容ぼう,姿態を撮影されない自由を有する。また,どのような商品に関
心を持ち,どのような商品を購入するかということは,個人のプライバシーに関することであ
る。こうした肖像権,プライバシー権は,憲法13条によって保障されているものである。そこ
で,現行犯性ないし犯罪発生の相当高度の蓋然性が全くない状況において来店した客を
無差別に撮影し,これを録画するのは,違法というべきである。
イ本件コンビニの防犯ビデオカメラは,24時間,常時稼働しているものであるが,このこと
は公示されていない。この点において違法であることが明らかである。
そして,本件コンビニを訪れる客が,自己の容ぼう等が撮影され,録画されていることを承
諾ないし黙示に承諾しているとはいえないし,それを甘受しているとみるべき事情も存しな
い。
ウ仮に防犯ビデオカメラによって撮影することが許容されるとしても,それをビデオテープに
録画することは許されない。すなわち,本件コンビニにおいて,防犯ビデオカメラを設置する
目的は,日常的に発生する万引きによる被害の防止等にあると考えられる。この目的のた
めには,店員の目の届かないところを防犯ビデオカメラによってカバーし,それをモニター
によって監視するという方法を採るべきである。ビデオテープに録画することは,その目的
を達成するための手段として必要性が認められない。また,本件コンビニにおいては,録画
したビデオテープの保管管理について,保管責任者,保管場所及び保管基準などが定め
られておらず,管理がずさんであることを示している。
(被告)
ア原告の主張するプライバシーがどのような意味であるのか明らかではない。また,本件コ
ンビニに設置された防犯ビデオカメラでは,来店した客がどのような商品を手にし,どんな
商品を購入したのかまでは明らかにならない。
イ被告は,本来,本件コンビニ内の事柄については広範な決定権限を有している。したが
って,防犯ビデオカメラを設置して撮影し,これを録画するか否かについて原則として自ら
決定することができるものである。
被告は,本件コンビニを開店する際,B本部から推奨されたこともあって,防犯ビデオカメラ
を設置した。現在,コンビニエンスストアにおける強盗などの凶悪犯罪が急増しており,そ
の対策として挙げられるのは防犯カメラであり,コンビニエンスストアの店内で防犯カメラが
作動していることは,利用者の知っていることである。
本件コンビニの入り口において,店内に防犯カメラを設置し,撮影していることを告知してい
る。そして,店内を見渡せば,防犯ビデオカメラが設置されていることは明らかである。した
がって,本件コンビニを訪れる客は,防犯ビデオカメラによって撮影され,録画されることを
あらかじめ承諾して来店しているものということができる。
ウ本件コンビニにおける防犯ビデオカメラの設置目的は,万引き防止に限られない。現在,
コンビニエンスストアにおいて,強盗や酔客及び暴走族のけんか等の犯罪が多発してい
る。このような犯罪の防止,来客及び従業員の安全確保のため,撮影した映像をビデオテ
ープに録画することは不可欠である。すなわち,録画し店内の犯罪行為が証拠として残る
ということが犯罪の抑止力となる。犯罪は,いつ発生するか予測することはできない。そこ
で常時,撮影,録画することが必要となるのである。本件コンビニにおいては,レジスター
付近を撮影し,録画することに主眼を置いており,撮影,録画の対象としている場所も相当
である。
(補助参加人)
ア憲法13条は,私人相互の関係には直接適用されないから,同条が直接適用されること
を前提とした原告の主張は失当である。
イ憲法29条は,私人にその財産権を保障しているところ,被告も自らの店舗内の商品の
所有権を何人によっても侵害されないとの権利を有している。
犯罪の発生を防止し,来店客及び従業員らの安全を確保する目的のもとで,被告主張のと
おりの態様で防犯ビデオカメラを設置し,撮影,録画することは,社会的に許容された正当
行為ということができる。
ウ現在,コンビニエンスストアの来店客は,店内に防犯ビデオが設置され,これによって撮
影されていることを熟知している。
また,本件コンビニの入り口の掲示により,客は,本件店内を防犯ビデオカメラによって撮
影されていることを知り得る。仮にこれを見落とす人がいるとしても防犯ビデオカメラは公然
と設置されているものである。来店客は,防犯ビデオで撮影されることを十分に予知ないし
承知した上で入店しているといい得る。
エ犯罪があったことは後になって判明するのが一般的であり,録画したビデオテープを一
定期間保管することには必要性及び合理性が存する。
(2)被告が本件ビデオテープを警察官に提出したことの違法性の存否
(原告)
ア被告が本件コンビニおいて,店内を撮影しそれを録画する必要があるとしても,来店した
客の動向をすべて撮影,記録することによるプライバシー侵害の程度が著しいことによれ
ば,録画したビデオテープの保管期間は最小限にとどめられるべきであり,録画したビデオ
テープを店内の防犯目的以外の目的で使用することは許されない。
イ被告は,本件コンビニに係る情報管理者として,収集取得した記録映像をその目的の範
囲内でのみ保有,利用する義務を負う。ところが,被告は,警察官から,有印私文書偽造・
同行使,旅館業法違反被疑事件の捜査のために本件ビデオテープの任意提出を求められ
たところ,これに安易に応じて本件ビデオテープを提出した。同被疑事件は,本件コンビニ
において発生した事件ではないから,同被疑事件の捜査のために提供することは明らかに
撮影,録画の目的を逸脱するものであって違法である。
被告が,本件ビデオテープにつき,本件コンビニ内の防犯目的との関連を確かめることな
く,警察官に対して,本件ビデオテープを見せたり,任意提出することは,目的外の利用で
あって違法というべきであり,少なくとも重大な過失がある。
原告の容ぼう,姿態のみならず,原告がどのような商品を購入し,何を探していたかという
プライバシーに関わる情報がその承諾無く警察に提供されたことは,原告のプライバシー
権に対する重大な侵害である。
(被告)
ア市民が犯罪の捜査に協力することは当然のことであって,何ら責められるべきことではな
い。また,犯罪の検挙,犯人の逮捕という公益目的のためには犯罪者の権利が制限される
のであり,犯罪行為の録画されているビデオテープを警察に提出することは,犯罪者の権
利を害するものではない。
被告は,暴走族がたむろしたり,酔客が店員にからんできたときには,早めに警察に通報
するなど,防犯に関して警察と協力体制を築いてきていた。本件における警察官からの協
力依頼についても,防犯協力体制の一環として捜査に協力すべきであるとして提出依頼に
応じたのである。
イ被告は,警察官から,本件ビデオテープに関し,誰を被疑者とするどのような犯罪の捜査
のために必要であるか等の説明を受けておらず,ただ犯罪捜査のために必要であるから
提出するよう要請された。そして,被告は,本件ビデオテープの内容を確認することなく,本
件コンビニに関連する犯罪と考えて提出に応じたのである。すなわち,本件コンビニの防犯
と無関係の目的で使用されることを前提として警察官に提出したのではない。
ウ本件コンビニは,不特定多数人が出入りする店舗であり,公共性を有する場所といい得
るのであり,また,本件コンビニに出入りすることが原告の思想信条等を把握するというも
のでもない。そうすると,原告のプライバシー権はそもそも縮小されたものということができ
る。そして,本件ビデオテープの任意提出は,犯罪捜査への協力という公益上の目的を有
し,その提出,領置は,刑事訴訟法の手続に従って適法にされている。こうしたことによる
と,仮に,本件ビデオテープの警察官への提供が目的外の使用であり,原告のプライバシ
ー権を制約するものであったとしても,正当なものであったということができる。
エ被告は,確実に本件ビデオテープの内容を消去し,抹消することができる方法があると
教えられたことから警察官に処分をゆだねたのであり,実際にも確実に処分されていること
によれば,被告の本件ビデオテープの処分方法にも問題はない。
(補助参加人)
ア原告のプライバシー権も公共の福祉のために必要のある場合,相当の制限を受ける。
国民は,犯罪の防止,捜査に可能な限り協力すべき義務を負っており,国民による犯罪捜
査への協力は,公益上の必要性に出たものであって,仮にそれによって私人の私生活上
の事由に何らかの制約が加わることがあったとしてもそれは一種の公共の福祉による制約
と解すべきである。
イ本件において,公安三課の警察官は,原告が本件ホテル近くの本件コンビニを利用して
いるとの事実から,原告が本件ホテルに宿泊した事実を立証すべく本件ビデオテープの提
出を求めたのであって,本件ビデオテープは被疑者のアリバイ否定のために必要なもので
あったのである。もっとも,上記警察官は,被告に対し,被疑事件の具体的内容は告げず,
犯罪捜査中であることを告げ,協力を依頼し,本件ビデオテープの任意提出を受けたので
ある。
(3)原告の損害
(原告)
ア(慰謝料)原告は,容ぼう,姿態及び本件コンビニ内における行動が撮影され,それを録
画した本件ビデオテープが本件コンビニとは関係のない事件捜査のために警察に提供さ
れたことにより,肖像権及びプライバシー権を侵害され,苦痛を被った。原告の被った精神
的苦痛を慰謝するに足りる金額は200万円を下らない。
イ(弁護士費用)原告は,本訴を提起するに当たり,原告訴訟代理人弁護士らに対し,着手
金及び報酬金として20万円を支払う旨約した。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(被告が原告を防犯ビデオカメラによって撮影し,これを本件ビデオテープに録画
したことの違法性の存否)について
(1)個人は,その承諾なしに,みだりにその容ぼう,姿態を撮影されない自由を有する。私人
相互の関係については憲法13条が直接適用されるものではないが,個人の有する肖像
権は,私人相互の間においても,同条に基礎を求めることのできる重要な権利として尊重
されなければならない。
また,商店において買物をする個人が,商品の選択,店内における行動態様等について,
他人に知られるのを欲しないことも認められるべきであり,商店内においてその承諾なしに
撮影されることは,肖像権の侵害にとどまらず,個人の上記利益も侵害するものとして許さ
れない。
しかし,上記の個人の有する肖像権等も一定の場合に制限されることを否定できない。買
物のために商店を訪れた客の場合について検討すると,客は,上記の肖像権等を有する
ものであるが,一方,商店の経営者は,来店した客及び従業員等の生命,身体の安全を確
保し,また,その財産を守るため,店内において一定の措置を採ることが許される。そして,
通常,客にとって,どの商店を利用するかについて大幅な選択の余地があることに照らす
と,商店の経営者は,当該商店の置かれた諸事情を勘案した上でどのような措置を採るか
につき広範な裁量権を有するものと認められる。そこで,ある商店が,上記の措置として,
防犯カメラによって店内を撮影し,その映像をビデオテープに録画して一定期間保管するこ
ととした場合,それが許されるかどうかは,その目的の相当性,必要性,方法の相当性等
を考慮した上で,客の有する権利を侵害する違法なものであるかどうかを検討する必要が
あると考えられる。
(2)ところで,我が国におけるコンビニエンスストアが,利用客の便宜を図るため,24時間営
業し,多種類の商品を取り扱うだけでなく,ATMを設置して金融機関の業務の一部を行う
ようになってきていることは公知の事実である。このような営業時間,営業形態を採ってい
るコンビニエンスストアの防犯カメラの設置状況等をみると,次のとおりである。
ア乙3,9ないし11号証によると,次の事実が認められる。
(ア)コンビニエンスストアにおける犯罪は,全国的に増加しており,平成13年の強盗事件
の発生件数は527件であって,同12年より133件増加した。ところが,平成13年の検挙
数163件は,同12年より25件減少している。
(イ)警察庁は,増加する強盗事件に対し,コンビニエンスストア側の防犯意識の低さや防犯
体制の甘さを指摘しており,平成14年1月23日付けで日本フランチャイズチェーン協会等
に対し,レジスター内の現金管理及び防犯カメラの正常な稼働の2つに力点を置いた要請
をした。防犯カメラに関しては,レジスター前の人物を撮影できる位置に機器を設置するこ
と及び常時,稼働・録画することを要望するなど,効果的な撮影,録画装置を導入するよう
求めている。
イ丙8,9号証によると,次の事実が認められる。
(ア)平成15年12月末現在の愛知県下における愛知県コンビニエンスストア防犯対策協議
会会員会社傘下の2537店舗のうち,2446店舗が防犯カメラを設置しており,その設置
率は96.4%である。平成13年当時においても,2348店舗のうち,2188店舗において防
犯カメラを設置しており,設置率は93.2%であった。
(イ)同協議会は,愛知県下においてもコンビニエンスストアを対象とした強盗事件等の重要
事件が防犯カメラを手掛かりに検挙された事例も多く,防犯対策として防犯カメラの設置は
必要不可欠であると認識しており,同協議会会員会社には各店への防犯カメラ設置を推奨
している。
(3)被告が本件コンビニに防犯ビデオカメラを設置した経緯は,前記前提となる事実,乙15
号証及び被告本人尋問の結果によると,次のとおりであることが認められる。
ア被告は,B本部との間で加盟店契約を締結した際,B本部から,犯罪や事故に対処する
ための防犯システムの体制を整備することを勧められ,カラーカメラ4台,ビデオ装置等の
機器を設置した。そして,本件コンビニの2か所ある入り口の1か所付近に,「特別警戒中 
ビデオ画像電送システム稼働中」との掲示をした。
イその後,被告は,本件コンビニにおいて万引きの被害が発生したことから,これに対処す
るため更にカメラを2台増設した。
(4)乙15号証及び被告本人尋問の結果によると,被告は,本件コンビニにおいて万引きの
被害にあったほか,酔客から殴られた経験を有していることが認められる。
(5)上記認定の事実によると,被告が防犯ビデオカメラを設置し,その映像を録画している
目的は,本件コンビニ内で発生する可能性のある万引き及び強盗等の犯罪並びに事故に
対処することにあると認められる。そして,犯罪の中でも万引きについては,犯行後に判明
することが少なくないことによれば,ビデオテープに録画し,これを一定期間保管しておくこ
との必要性のあることを否定することはできない。
前記のコンビニエンスストアの置かれている状況を直視し,被告が経験している本件コンビ
ニの実情を考慮すると,被告が本件コンビニに防犯ビデオカメラを設置して店内を撮影し,
ビデオテープに録画していることは,目的において相当であり,必要性を有するものである
と認めることができる。
(6)次に,本件コンビニの防犯ビデオカメラの撮影方法の相当性を検討するに,前記前提と
なる事実,乙2,12,15号証及び弁論の全趣旨によると,(a)平成13年8月当時,本件コ
ンビニにおいて稼働していた防犯ビデオカメラは6台であり,そのうち,3台はレジスター周
辺を,2台は入り口を,1台は倉庫の入り口辺りを,それぞれ撮影しており,いずれも客の
目に触れ得る状況に置かれていること,(b)防犯ビデオカメラは,店内の上部に固定され,
それぞれの撮影可能区域に入った客を撮影するものとなっており,特定の客を追跡して撮
影するようなものではないこと,(c)本件コンビニの2か所ある入り口の1か所付近に,「特
別警戒中 ビデオ画像電送システム稼働中」との掲示がされていること,(d)録画したビデ
オテープは,被告によって1週間後に上書き録画され,定期的に消去されていること,との
事実が認められる。
上記認定の事実によると,本件コンビニの防犯ビデオカメラの撮影方法及び録画したビデ
オテープの管理は,相当なものであると認められる。
(7)以上に認定した事実を考え併せると,被告が本件コンビニに防犯ビデオカメラを設置し
て,撮影し,その映像をビデオテープに録画していることを違法と評することはできない。
2争点(2)(被告が本件ビデオテープを警察に提出したことの違法性の存否)について
(1)国民が警察から犯罪の捜査について協力を求められた場合にこれに応じることは,国
民として当然の義務であり,公益に資する行為ということができる。ただし,無断で個人を
撮影した写真やビデオテープを警察に提供することについては,上記の個人の有する権利
の重要性にかんがみると,違法の評価を受けることがあり得るというべきである。
被告は,上記のとおり,本件コンビニにおいて発生する可能性のある犯罪及び事故に対処
する目的をもって,防犯ビデオカメラを設置し,その映像をビデオテープに録画するシステ
ムを採用したものであり,その目的は相当なものである。しかし,このビデオテープには本
件コンビニの来店客が順次撮影されていることによると,被告が上記目的を逸脱して利用
することは許されないものと解される。そして,警察から協力を求められた場合であっても,
上記の目的を著しく逸脱するものであるときには違法と評価されることがあると解すべきで
ある。
(2)本件について検討するに,前記前提となる事実のとおり,被告は,本件コンビニを訪れ
たA警部補ら警察官から,「犯人と思われる者が立ち寄った可能性があるので捜査に協力
してほしい。」旨告げられ,売上げデーターのチェックに加え,本件ビデオテープの提出に
応じたことが認められる。そして,乙15号証及び被告本人尋問の結果によると,(a)被告
は,A警部補らから,上記以上に,具体的な説明を受けることはなかったこと,(b)被告は,
本件コンビニに関係のある犯罪の捜査をしているのであろうと考えて警察官に協力したこ
と,との事実が認められる。そして,上記認定の諸事情に照らすと,被告が警察官に対して
被疑事件の内容について質問した上で本件コンビニに関係のあるものかどうかについて確
認しなければならなかったとまでいうことはできない。
前記認定のとおり,被告に交付された押収品目録交付書(乙5号証)には,被疑者不詳に
対する私印偽造被疑事件と記載されている。この点について,原告は,私印偽造という被
疑事件名によれば,本件コンビニとの関係は考えられないことである旨主張するが,法律
家でない一般の市民である被告に対して,原告主張のような認識をもつことを要求すること
はいささか酷であるといわざるを得ず,上記被疑事件の記載から直ちに被告が本件コンビ
ニと関係のない犯罪に関する捜査であると理解していたものと認定することはできない。な
お,被告の述べるところ(乙15号証及び被告供述)には,上記押収品目録交付書に私印
偽造と記載されていることを知った時点などにつき変遷のみられるところであるが,このこ
とから前記認定を左右するに足りない。
また,原告訴訟代理人林千春弁護士は,平成14年9月25日午後10時すぎに,電話で被
告と話した際,被告は,警察が本件ビデオテープを持って行くに当たり,私文書偽造どうの
こうのという説明をしていたと思う旨を述べたという(甲4号証)。しかし,上記林弁護士のい
うとおりの事実があったとしても,このことから直ちに被告が警察の説明によりその捜査に
係る犯罪が本件コンビニと関係のないものであることを認識していたと認めることはできな
い。
(3)上記認定事実によると,被告が警察官からの依頼に応じて本件ビデオテープを提出した
ことが,その本来の目的を逸脱した違法なものであるということはできない。
3以上のとおりであって,原告の被告に対する本件請求は理由がないから棄却することと
し,訴訟費用について民事訴訟法61条を適用して主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第4部
裁判官   佐 久 間  邦  夫

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