弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文     一、 本件控訴を棄却する。
     二、 附帯控訴にもとづき
     原判決主文第一項にかぎり被控訴人(附帯控訴人)が金三〇万円の担保
を供して仮に執行することができる。
     三、 控訴費用と附帯控訴費用は控訴人(附帯被控訴人)の負担とす
る。
         事    実
 第一、 当事者双方の申立て。
 一、 本件控訴について。
 控訴人(附帯被控訴人以下単に控訴会社という)代理人らは、「原判決を取り消
す。被控訴人(附帯控訴人以下単に被控訴会社という)の請求を棄却する。訴訟費
用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。との判決を求め、被控訴会社代理人ら
は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求め
た。
 二、 附帯控訴について。
 被控訴会社代理人らは、「原判決主文第一項に仮執行の宣言を求める。」との裁
判を求め、控訴会社代理人らは、「附帯控訴を棄却する」との裁判を求めた。
 第二、 当事者双方の事実上の陳述。
 一、 当事者双方の事実上の陳述は、次に記載するほかは、原判決の事実摘示と
同一であるから、こに引用する。
 二、 控訴会社代理人らの主張。
 (一) 訴外Aは、昭和二五年八月一五日訴外Bから、本件建物(別紙第一目録
記載の建物以下同じ)を買い受け、昭和二六年七月一六日その旨の所有権移転登記
手続を経たが、右買受けの際、本件土地(同第二目録記載の土地以下同じ)の賃借
権も譲り受けた。本件土地の当時の所有権者であつた訴外Cは右譲渡の承諾をし
た。このようにして、Aは、適法な賃借権を取得し、登記のある本件建物を所有の
うえ本件土地を占有していた。したがつて、昭和二九年二月二三日本件土地の所有
権を取得した(同年三月一五日所有権移転登記)被控訴会社に対しても、右賃借権
を対抗することができ本件土地を占有する権原があるわけである。
 (二) Aは、本件建物を買い受けると、こゝで、家業である金属製品材料の販
売業を「D商店」という家号で営んだその頃から右営業は、経済界の不況の余波を
受けて債務超過となり、とりわけ、主要仕入先である訴外理研コラスダム株式会社
(以下理研コラスダムという)に対する買掛債務が金二〇〇万円以上にも達し、そ
の返済計画及び営業整備の理由から、Aは、株式会社組織で営業することにし、昭
和三〇年一〇月二九日各種機械、工器具、研磨製品などの販売を目的とした資本金
一〇〇万円の控訴会社を設立し、その営業一切を控訴会社で行なうこととし、か
つ、自ら代表取締役として業務全般を主宰することとした。
 とはいうものの、控訴会社の設立手続の態様は、世上個人営業の中小企業者が、
その営業を会社組織に変更する場合に採用する方法と同様で、Aが、その関係者の
名をかりてこれらの者を名義上発起人及び株式引受人とし、いわゆる見せ金で株金
の払込みをし、その払込金で会社設立後直ちに本件建物を含めたA所有の営業財産
を買い入れるという方法をとつたもので、真実株金払込みは行なわれず、控訴会社
の発行済株式は実質上全部Aに帰属する一人会社が成立し、そのような控訴会社に
対し、株式払込金の対価として、本件建物の所有権と本件土地の賃借権が譲渡され
た。そして、Aは、控訴会社の代表取締役に就任して業務全般を主宰することにな
つた。このようにして、控訴会社は、昭和三一年一月一〇日本件建物の所有権の譲
渡を受け、昭和三二年三月三〇日、その旨の所有権移転登記手続をすませたが、右
所有権の譲受けに伴い、本件土地の賃借権もAから譲り受けたもので、そのときの
賃借権は、賃料月金六五〇円を、毎月末日支払うという内容である。
 (三) 控訴会社は、Aの営業を、既存の物的人的構成をなんら変更しないで継
続しているのであるから、右賃借権の譲渡を目して、無断譲渡というより、むし
ろ、依然としてAが占有使用しているものというべきであり、したがつて、右譲渡
は、無断賃借権譲渡には該らない。
 (四) 仮に無断賃借権譲渡になるとしても、このような事情のもとでは、賃貸
人である被控訴会社の承諾を得る必要のない場合といわなければならない。
 (五) 仮に右が理由ないとしても、被控訴会社の本件請求は本件土地所有権の
濫用である。すなわち、被控訴会社は、本件土地を買い受けるについて、Aが適法
な賃借権を有し、本件土地上に右賃借権にもとづいて登記のある本件建物を所有し
ていることを知悉していたのであるから、賃貸人の地位を承継した被控訴会社は、
賃料収入をうるだけで満足しなければならないのに、Aに対し、賃貸人の地位承継
の事実の通知及び賃料の取立て、催告などをせず、時機を窺い、たまたま、Aがそ
の営業を会社組織に変更し、本件建物の所有権を控訴会社に譲渡するに及んで、こ
れを好機として本件請求をしたものである。しかし、控訴会社が本件建物の所有権
を取得するに至つた経緯などさきに述べた事情にかんがみるとき、被控訴会社の本
件請求は、本件土地所有権の濫用であるといわなければならない。
 (六) 控訴会社は、借地法四条による本件建物の買取請求を被控訴会社に対し
てしない。
 (七) 被控訴会社の主張どおり、地番変更があつたことは認める。したがつ
て、物件目録の更正に異議がない。
 三、 被控訴会社代理人らの主張。
 (一) 控訴会社代理人ら主張の(一)の事実中、被控訴会社が、昭和二九年二
月二三日本件土地の所有権を取得し、同年三月一五日その旨の所有権移転登記手続
を経たことは認めるが、Aが、Bから本件建物を取得するについて、当時の本件土
地の所有権者であつたCが賃貸人として賃借権譲渡の承諾を与えたことは争う。
 かりに、Cが、そのような承諾をしたことにより、Aが本件土地の賃借権を有し
ていたとしても、Aは、昭和三一年一月一〇日本件建物を控訴会社に所有権移転し
たことに伴い、本件土地の賃借権を控訴会社に譲渡するについて、当時の本件土地
の所有権者である被控訴会社に対し、右譲渡の承諾をえなかつたことは、控訴会社
の自認するところである。したがつて、控訴会社は、右賃借権の譲受けをもつて被
控訴会社に対抗できないことは自明である。
 (二) 同(二)の事実に対し、本件の場合は、世上しばしば見られるような、
個人企業が形式的に法人組織となつたものと同断ではなく、Aと控訴公社とは、法
律的にも経済的にも全く別人格である。Aの営業上の行きづまりから、理研コラス
ダムの出資により控訴会社が設立され、Aは形式的には代表取締役の一員となつて
いるが、実権はすべて理研コラスダムが掌握するところとなつたものである。
 (三) 同(三)(四)の主張は争う。
 (四) 同(五)の主張に対し、
 登記のある建物があるだけでは、賃借権があるかどうか分明でないし、もし、正
当な賃借権を有するなら、Aの方で、進んで被控訴会社に対し、Cから賃借してい
たから、引き続いて賃借したい旨申し入れるべきであるのに、なんらなすととろな
く、被控訴会社から調停の申立てを受けて、あわてて控訴会社は、昭和三四年八月
二九日地代を供託したもので、昭和二九年三月から昭和三四年八月まで被控訴会社
に対して地代支払いを放置していた。そのうえ、Aに賃借権があるのなら、控訴会
社には、建物買取請求権があるのであるから、同請求権を行使しないでおいて、被
控訴会社の正当な権利行使を権利の濫用であると主張するのは、的外れである。
 (五) 大阪市の都市計画にもとづく土地区画整理法の規定により、被控訴会社
は、換地処分を受け、地番変更があつたから、原判決の物件目録の表示を、別紙第
一、二目録記載のとおり更正する。 第三、 証拠関係。
 一、 控訴会社代理人ら。
 乙第一、二号証、同第三号証の一ないし五、同第四ないし第六号証、同第七号証
の一、二、同第八号証の一ないし七、同第九号証の一ないし一八、同第一〇号証の
一ないし三、同第一一号証の一ないし四及び同第一二号証の一ないし三を夫々提
出、当審での証人E、同F、同G、同Hの各証言を夫々援用、甲号各証の成立を認
める。
 二、 被控訴会社代理人ら。
 甲第一、二号証を提出、乙第二号証、同第三号証の一ないし五、同第四、五号証
及び同第一二号証の一ないし三の各成立を認め、そのほかの同号各証の成立は不
知。
         理    由
 一、 控訴会社が、昭和三一年一月一〇日本件建物をAから譲り受け、昭和三二
年三月三〇日その旨の所有権移転登記手続をすませたこと、被控訴会社が、昭和二
九年二月二三日Cから本件土地を買い受け、同年三月一五日その旨の所有権移転登
記手続を経たこと、および、本件土地について、都市計画にもとづく土地区画整理
法の換地処分のため別紙第二目録記載どおり地番変更があつたことは当事者間に争
いがない。
 二、 控訴会社は、Aは、Cから建物所有の目的で本件土地を賃借していたと主
張するのに対し、被控訴会社は同事実を争うので判断する。
 弁論の全趣旨によつて真正に成立したものと認められる乙第一号証や、当審証人
E、同Hの証言及び弁論の全趣旨を総合すると、Aは、昭和二六年六月頃本件建物
を買い受け、これを店舗として使用したが、その頃から、本件建物の敷地である本
件土地の所有権者Cに対し、賃料を支払つた。その額は、昭和二八年四月頃以来一
月金六五〇円で、Aは、本件建物の近隣に居住していたCの親権者母Iに右賃料を
昭和二九年三月分まで持参して支払つた。以上のことが認められ、右認定に反する
証拠はない。
 右認定事実からすると、Aは本件土地の適法な賃借人であるから、被控訴会社
は、本件土地の所有権を取得した昭和二九年二月二三日から本件土地の賃貸人とし
ての地位を承継したとしなければならない。
 三、 控訴会社は、昭和三一年一月一〇日Aがら本件建物の所有権を取得した
か、本件土地の占有は実質上は依然としてAにあるから、本件土地賃借権の譲渡に
ならないし、仮に賃借権譲渡に該るとしても、被控訴会社の承諾を必要としない、
と主張しているのに対し、被控訴会社は、Aと控訴会社は別人格であるから賃借権
の譲渡になり、しかも右譲渡について、控訴会社は被控訴会社の承諾をえなかつた
ことを自認しているから、控訴会社の本件土地の占有は、権原にもとづくものでは
ないと争うので判断する。
 (一) 成立に争いがない乙第四、五号証、当審証人Fの証言によつて成立が認
められる同第六号証、当審証人Gの証言によつて成立が認められる同第八号証の一
ないし七、同第九号証の一ないし一八、同第一〇号証の一ないし三及び同第一一号
証の一ないし四や右各証言、当審証人Hの証言並びに弁論の全趣旨を総合すると次
のことが認められる。
 (1) Aは、昭和二六年六月頃本件建物を買いうけると、こゝを店舗に、家業
である金属製品材料商を「D商店」の家号で経営した。その主な取引先は、父Dの
代からの取引先である理研コラスダムで、Aは、理研コラスダムの代理店となつ
た。しかし、Aは、昭和二七、二八年の業界の不況の余波や、その他の事情で、そ
の経営に行きづまり、昭和三〇年には、理研コラスダムに対し金二〇〇万円以上も
の負債が生じた。これまでも、再度にわたつて、D商店の負債を棚上げしたことの
ある理研コラスダムとしては、このまま又負債棚上げに終るより、Aの営業を株式
会社組織にさせ、そのことを通じてAの放漫な経営を引き締めることができると判
断し、Aに対しそのことを命じた。そこで、Aは、同年一〇月頃老舗であるD商店
の元店員であつた訴外J、同K、同L、同Fに発起人になることを依頼してその承
諾をえ理研コラスダムからその係長級の訴外M、同課長級の訴外Nを発起人に加
え、自らも発起人の一人になつて控訴会社の定款を作成し、公証人の認証をえた。
しかし、Aをのぞく発起人は、単に名前を貸しただけて、引き受けた株式の払込み
をしたわけではなく、控訴会社設立に何らの関与もしなかつた。理研コラスダムか
らの右M及びNとて同断であつた。 Aは、これまでの個人経営時代の債権、債務
は勿論のこと、本件建物の所有権、電話加入権、什器、在庫品、運搬具などをすべ
て控訴会社に現物で出資した。もつとも定款には、Aが現物出資するいわゆる変態
設立に関する規定はなかつたが、Aは、右のほか出資すべき何らの資産もなかつ
た。
 このようにして、控訴会社は、昭和三〇年一〇月二九日設立され、取締役にA、
N、Jが代表取締役に、A、Nが監査役にF、Mが夫々就任した。
 (2) Nは、控訴会社の代表取締役になつたが、これは理研コラスダムからの
いわゆる出向社員にすぎず、控訴会社から給料として、一月金一五、〇〇〇円の支
払いを受けていたが、賞与の支給はなかつた。
 そして、主として、同人は、営業部門を担当していたのに対し、Aは、これまで
どおり、経営全般を担当して、控訴会社の実権を握つていた。その物的設備人的構
成は、Nが営業部門に加わつたことと、名義が、D商店から控訴会社に変わつたこ
とのほか、Aの個人営業時代と、控訴会社の営業とでは、格別の差も見られなかつ
た。本件建物の利用状況にしたがつて、本件土地の占有状態もこの例外ではない。
 (3) ところが、昭和三五年二月二六日Aが事故死してからは一変した。すな
わち、控訴会社は、昭和三五年一一月二七日取締役にN、O、Pを、監査役にM
を、代表取締役にNを選任した結果、これまでのD商店の関係者が一人もおらなく
なり、すべてが理研コラスダム側の者で占められ、その時から、理研コラスダム側
の者が控訴会社を運営するようになつた。
 わずかに、控訴会社は、Aの妻Hを控訴会社の顧問とし、一月金三〇、〇〇〇円
を支給しているが、顧問とは名義上にすぎず、その実質は、Aの遺族に対する扶養
料を恩恵的に支払つているものである。
 理研コラスダムが、そのまま控訴会社の名前を改称しないのは、老舗であるDの
名前を利用した方が、得意先との関係で有利であると考えてのことである。
 右認定に反する証拠はない。
 <要旨>(二)「元来民法六一二条は、賃貸借が当事者の個人的信頼を基礎とする
継続的法律関係であることにかんがみ、賃借人は賃貸人の承諾がなければ第
三者に賃借権を譲渡し、又は転貸することを得ないものとすると同時に、賃借人が
もし賃貸人の承諾なくして第三者をして賃借物の使用収益をなさしめたときは、賃
貸借関係を継続するに堪えない背信的所為があつたものとして、賃貸人において一
方的に賃貸借関係を終止せしめ得ることを規定したものと解すべきである。したが
つて、賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用収益をなさしめた場合
においても、賃借人の当該行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足らない特
段の事情がある場合においては、同条の解除権は発生しないものと解するを相当と
する」(最判昭和二八年九月二五日民集七巻九七九頁)。したがつて、土地の賃借
人が、従来の個人経営を会社組織に改め、賃借物上の建物を、その賃借権とともに
会社に現物出資したような場合、その経営の実態が、個人と会社とでは格別異なる
ところなく土地の使用状況にさしたる変化を来さないため、右賃借権の譲渡又は賃
借物の転貸が、賃貸人に対する関係で背信行為ではないと評価され、賃貸人が賃貸
借契約を民法六一二条で解除できないときは、賃借人は、賃借権の譲渡又は賃借物
の転貸にもかかわらず、依然、賃借権を有する。そして、賃借人との関係で賃借権
の譲渡又は賃借物の転貸を受けた転借人である会社は、賃貸人が右譲渡又は転貸を
承諾しない以上、賃貸人との関係において、賃借物を転借し、又は賃借物の転借権
を有するとはいえないまでも、賃借人の賃借権を正当に援用できる地位にあり、賃
貸人は、これを受忍すべき法律関係にあると解するのが相当である。それゆえ、そ
の限りにおいて、転借人の賃借物の占有は、正権原にもとづくといわなければなら
ない。しかし、それは賃借権の譲渡又は賃借物の転貸を受けた会社の経営か、個人
のそれと異なることなく、土地の使用状況に変化を来さない状態が存する場合にだ
け妥当する。
 もし、会社の実態が、たとえば、組織がえなどのため、賃借人である個人が会社
から排除され全く別異になつたときは、かりに当初からそうであつたとすれば、賃
貸人は賃貸借を解除しえたものとしなければならず、又その会社は、賃貸人の所有
権に対抗する正権原を有しないものといわなければならないから、それとの対比の
上において、賃借権の譲渡又は賃借物の転貸を受けた会社は、もはや、賃借人の賃
借権を正当に援用できない関係に立ち至り、そのとき以後賃借物の不法占拠者であ
ると解するのが相当である。
 (三) 今この視点から本件を観察すると、右認定のとおり、控訴会社設立当初
のその営業は、実質において、Aの個人営業と異ならず、本件建物の所有権は、名
義上控訴会社のものとなつたが、本件建物したがつて、本件土地の利用状況は、前
後を通じて変らなかつたから、その当時の控訴会社は、Aの本件土地の賃借権を援
用して、それをもつて、本件土地の占有権原とすることができ、そのことはとりも
なおさず賃貸人である被控訴会社との関係において、民法六一二条にいわゆる賃借
権の譲渡又は転貸がまだなかつたといえる。しかしながら、A死亡後の昭和三五年
一一月二七日からは、林家の色を払拭し、控訴会社は、Aないしその相続人を離れ
て独歩し、もつぱら理研コラスダムの勢力下において経営されるところとなつたわ
けで、したがつて、このときから、控訴会社とAとは、形式的にも、実質的にも無
関係になり、別個のものになつたとしなければならないから、前述の理に照らし、
控訴会社は、Aの相続人の賃借権を援用して本件土地の正権原とすることができな
くなつたとするほかない。
 したがつて、控訴会社は、右のほか、本件土地占有について、何らの権原も主張
立証しないから、昭和三五年一一月二七日から本件土地の不法占拠者であると断ず
るのほかない。
 四、 控訴会社主張の権利濫用の抗弁について、
 本件記録に顕われた全証拠を検討しても、被控訴会社の控訴会社に対する本件請
求が、権利の濫用であることを肯認することができる資料はない。かえつて、さき
に認定した事実や弁論の全趣旨によると、被控訴会社の本件請求は正当な所有権の
行使であると認めるのが相当である。
 五、 以上の次第で、被控訴会社が、控訴会社に対し本件建物を収去して本件土
地を明け渡すことを求める本件請求は正当であり、これを認容した原判決は相当で
ある。したがつて、本件控訴は失当として棄却するほかない。
 六、 附帯控訴について。
 原判決は、被控訴会社の仮執行宣言の申立てを、相当でないものとして、その申
立てを、判決理由で却下している。しかしながら、本件は、仮執行の宣言を附すの
が相当であるので、右却下の裁判は不相当として取り消し、主文第二項のとおり仮
執行の宣言を附することとする。したがつて、被控訴会社の附帯控訴は理由があ
る。
 七、 そこで、民訴三八四条、三七四条、八九条、九五条、一九六条を適用して
主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 平峯隆 裁判官 日高敏夫 裁判官 古嵜慶長)

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