弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1被告人を懲役3年に処する。
2未決勾留日数中50日をその刑に算入する。
3この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。
4被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。
5押収してあるカード入会申込書2通,同カード入会申込書兼契約書1通,カー
ド入会契約書1通,カード会員申込書1通,カードローン契約書1通の各偽造部
分をいずれも没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1氏名不詳者と共謀の上,偽造に係るA名義の北海道公安委員会作成名義の自
動車運転免許証を行使するなどして,消費者金融会社従業員らを欺き,キャッ
シングカードを交付させた上,同カードを使用して現金自動入出金機から現金
を窃取しようと企て,
1平成17年12月27日午後零時43分ころから同日午後1時43分ころま
での間,旭川市a丁目b番地c所在のⅠ株式会社Ⅱ支店自動契約機コーナーに
おいて,前記Aになりすまし,前記偽造に係る自動車運転免許証等を真正に成
,立したもののように装って同コーナーに設置された自動契約機に読み取らせ
同自動契約機を通じて東京都多摩市d丁目e番f号所在のⅠ株式会社Ⅲセンタ
ー従業員Bに閲覧させて行使し,そのころ,前記自動契約機コーナーにおいて,
行使の目的をもって,ほしいままに,黒色ボールペンを使用して,同店備え付
けのカード入会申込書兼契約書の署名欄に「A,勤務先・自営商号・屋号」
(漢字)欄に「甲(株)乙営業所」などと各冒書し,もって,A作成名義のカ
ード入会申込書兼契約書1通を偽造し,そのころ,前記自動契約機コーナーに
おいて,前記Bに対し,前記偽造に係るカード入会申込書兼契約書を真正に成
立したもののように装って閲覧させて行使してキャッシングカードであるⅠカ
ードの発行方を申し込み,同人をして,A本人による申込みであると誤信させ,
よって,そのころ,前記自動契約機コーナーにおいて,前記Bから前記自動契
約機を介してⅠカード1枚の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させ

2同日午後1時43分ころ,前記Ⅱ支店キャッシングコーナーにおいて,同コ
ーナーに設置された現金自動入出金機に,前記詐取に係るⅠカードを挿入して
同機を作動させ,同機から同支店支店長兼エリアマネージャーC管理に係る現
金50万円を窃取した
3同月28日午後2時40分ころから同日午後2時42分ころまでの間,3回
にわたり,札幌市g区h条i丁目j番地k所在の○○ビルⅠ株式会社Ⅳ店キャ
ッシングコーナーにおいて,同コーナーに設置された現金自動入出金機に,前
記詐取に係るⅠカードを挿入して同機を作動させ,同機から同社Ⅴ支店支店長
兼エリアマネージャーD管理に係る現金合計150万円を窃取した
第2氏名不詳者と共謀の上,偽造に係るE名義の北海道公安員会作成名義の自動
車運転免許証を行使するなどして,消費者金融会社従業員らを欺き,キャッシ
ングカードを交付させた上,同カードを使用して現金自動預入払機から現金を
窃取しようと企て,
1平成17年12月30日午後3時20分ころから同日午後3時55分ころま
での間,札幌市l区m条n丁目o番地所在の●●ビル株式会社ⅥのⅦ店自動契
約機コーナーにおいて,前記Eになりすまし,前記偽造に係る自動車運転免許
証を真正に成立したもののように装って同コーナーに設置された自動契約機に
読み取らせ,同コーナーに設置された自動契約機を通じて横浜市p区q丁目r
番s号所在の株式会社ⅥのⅧセンターオペレーターFに閲覧させて行使し,そ
のころ,前記自動契約機コーナーにおいて,行使の目的をもって,ほしいまま
に,黒色ボールペンを使用して,同店備付けのⅥカード入会申込書のお名前欄
に「E,ご住所欄に「○○○○○○○札幌市a’区b’条○-○-○,」」
電話欄の自宅に「××××××××××,携帯電話に「090△△△」
△△△△△,お勤め(自営)先の名称欄に「丙(株,電話欄に「011」)」
◇◇◇◇◇◇◇,所在地欄に「○○○○○○○札幌市a’区c’条」
○-○-○」などと各冒書し,Ⅵカード入会契約書の氏名欄に「E,住所欄」
に「○○○○○○○札幌市a’区d’条○-○-○」と各冒書し,もって,
E名義のⅥカード入会申込書及びⅥカード入会契約書各1通を偽造し,そのこ
ろ,前記自動契約機コーナーにおいて,前記Fに対し,前記偽造に係るⅥカー
ド入会申込書及びⅥカード入会契約書を真正に成立したもののように装って順
次閲覧させて行使してキャッシングカードであるⅥカードの発行方を申し込み,
同人らをして,E本人による申込みであると誤信させ,よって,そのころ,前
記自動契約機コーナーにおいて,前記Fから前記自動契約機を介してⅥカード
1枚の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた
2同日午後4時ころ,前記ビル6階の同店ATMコーナーにおいて,同所に設
置された現金自動預入払機に,前記詐取に係るⅥカードを挿入して同機を作動
させ,同機から同店店長G管理に係る現金50万円を窃取した
第3氏名不詳者と共謀の上,偽造に係るH名義の青森県公安委員会作成名義の自
動車運転免許証を行使するなどして,消費者金融会社従業員らを欺き,キャッ
シングカードを交付させた上,同カードを使用して現金自動預払機から現金を
窃取しようと企て
1平成18年2月7日午後零時35分ころから同日午後1時1分ころまでの間,
青森市t丁目u番v号所在の▲▲ビルⅨ株式会社Ⅹ支店において,前記Hにな
りすまし,前記偽造に係る自動車運転免許証を真正に成立したもののように装
って,同支店従業員Iに提示して行使し,そのころ,同所において,行使の目
的をもって,ほしいままに,黒色ボールペンを使用して,同店備え付けのカー
ド会員申込書のお名前欄に「H,ご住所欄に「○○○○○○○青森青」
森市d’○-○-○,電話番号欄の自宅電話番号に「017×××××」
××,携帯電話番号に「090□□□□□□□□,会社名欄に「株)」」(
丁,電話番号欄に「017△△△△△△△,ご住所欄に「○○○○○」」
○○青森青森市e’○-○-○」などと各冒書し,カードローン契約書の
お名前欄に「H」と冒書し,もって,H作成名義のカード会員申込書及びカー
ドローン契約書各1通を偽造し,そのころ,同所において,前記Iに対し,前
記偽造に係るカード会員申込書及びカードローン契約書を真正に成立したもの
のように装って順次提出行使してキャッシングカードであるLカードの発行方
を申し込み,同人らをして,H本人による申し込みであると誤信させ,よって,
そのころ,同所において,前記IからLカード1枚の交付を受け,もって,人
を欺いて財物を交付させた
2同日午後1時3分ころ,前記ビルの前記Ⅹ支店カードコーナーにおいて,同
所に設置された現金自動預払機に,前記詐取に係るLカードを挿入して同機を
作動させ,同機から同支店支店長J管理に係る現金40万円を窃取した
第4氏名不詳者と共謀の上,偽造に係るK名義の青森県公安委員会作成名義の自
動車運転免許証を行使するなどして,消費者金融会社従業員らを欺き,キャッ
シングカードを交付させた上,同カードを使用して現金自動預払機から現金を
窃取しようと企て,
1平成18年2月9日午後2時53分ころから同日午後3時9分ころまでの間,
青森市w丁目x番y号所在の◎◎ビル株式会社ⅰのⅱ店において,前記Kにな
りすまし,前記偽造に係る自動車運転免許証を真正に成立したもののように装
って同店従業員Lに提示して行使し,そのころ,同所において,行使の目的を
もって,ほしいままに,黒色ボールペンを使用して,同店備え付けのⅥカード
入会申込書の自署欄に「K,ご住所欄に「○○○○○○○青森県青森市」
f’○-○-○,お勤め先欄の名称欄に「戊(株,電話欄に「017×」)」
××××××,所在地欄に「○○○○○○○青森市g’○-○-○」」
などと各冒書し,もって,K作成名義のⅥカード入会申込書1通を偽造し,そ
のころ,同所において,前記Lに対し,前記偽造に係るⅥカード入会申込書を
真正に成立したもののように装って提出行使してキャッシングカードであるⅥ
カードの発行方を申し込み,同人をして,K本人による申込みであると誤信さ
せ,よって,そのころ,同所において,前記LからⅥカード1枚の交付を受け,
もって,人を欺いて財物を交付させた
2同日午後3時09分ころ,前記ビル2階の前記ⅱ店ATMコーナーにおいて,
同所に設置された現金自動預入払機に,前記詐取に係るⅥカードを挿入して同
機を作動させ,同機から同店店長M管理に係る現金50万円を窃取した
ものである。
(証拠の標目)省略
(法令の適用)省略
(量刑の理由)
,被告人は,インターネットで中古自動車の個人売買の仲介業を始めるにあたり
加盟金を手に入れるため手っ取り早く現金を得ようとして,インターネットで裏の
アルバイトを探していたところ,本件犯行グループの存在を知り,自ら応募して犯
行グループに安易に加担しており,利欲本意の自己中心的な動機に酌量の余地はな
い。本件各犯行は,犯行を指示する連絡役,偽造運転免許証等他人になりすますた
めに必要な書類等を渡したり,消費者金融会社の近くまで同行し,盗んだ現金を受
け取る同行人又は付添人,実際に消費者金融会社においてカードを騙し取り,その
カードを使用して現金を窃取する,金融役者と称する実行役と細かく役割分担をし
た上,事前に偽造運転免許証等を準備し,なりすます他人の個人情報を入手し,消
費者金融会社に赴く際には,勤務先への問い合わせがあることに備え,当該他人が
勤務先にいない時間を見計らうなどしており,組織的かつ計画的で巧妙な犯行であ
る。被告人は,このような犯行に実行役として加担し,1か月余りの短期間に連続
的に犯行を行っており,本件各犯行の遂行に必要不可欠な役割を果たしたものであ
る。また,被告人は,北海道における犯行の報酬として,旅費を含め合計約20万
円を受け取っており,所期の目的を達成している。本件各犯行により窃取された被
害金額は合計340万円と高額である。以上からすれば,被告人の刑事責任は重く,
その行為は厳しく非難されなければならない。
他方で,被告人は,犯行グループの上位者からの指示に従って本件各犯行を機械
的に実行したもので,犯行グループにおける被告人自身の地位は高くなく,末端の
従属的な立場で本件犯行に関与したにとどまること,本件犯行について,事実関係
を素直に認め,反省の情を示していること,本件犯行の旅費を除く報酬分として取
得した15万円を被害者らに弁償していること,今後仕事に就いて生活を立て直し,
被害弁償に努める旨当公判廷において誓っていること,判示第4の犯行の被害金5
0万円については,被害者に還付されていること,被告人にはこれまで前科前歴が
ないこと,被告人の母親が被告人を案じ,今後の監督を上申していることなど,被
告人に有利な事情も認められる。
そこで,これらの諸事情を総合考慮した上で,主文掲記のとおりの刑を科し,今
回に限り,被告人の社会内における更生に期待してその刑の執行を猶予することと
するが,なお,被告人のこれまでの生活状況,更生環境の不十分さ等に鑑み,保護
観察に付するのが相当であると判断した。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑懲役3年,各偽造部分の没収)
平成18年7月4日宣告
青森地方裁判所刑事部
裁判長裁判官渡邉英敬
裁判官室橋雅仁
裁判官香川礼子

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