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平成12年(行ケ)第445号特許取消決定取消請求事件
平成13年4月12日口頭弁論終結
判決
  原      告沖電気工業株式会社
訴訟代理人弁理士清水守
同川合誠
同青木俊明
  被      告特許庁長官 及 川 耕 造
指定代理人青山待子
同小林信雄
同大橋良三
主文
 特許庁が異議2000-71615号事件について平成12年10月3
日にした決定を取り消す。
 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
1 原告の請求
 特許庁が異議2000-71615号事件について平成12年10月3日にし
た決定を取り消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
2 原告の主張
(1) 特許庁における手続の経緯
 原告は、発明の名称を「アモルファスシリコン薄膜トランジスタアレイ」と
する特許第2966142号の発明(平成3年6月12日出願、平成11年8月1
3日設定登録。以下「本件特許」といい、その発明を「本件発明」という。)の特
許権者である。
 本件特許につき、平成12年4月17日、特許異議の申立てがなされ、特許
庁は、これを異議2000-71615号事件として審理した結果、平成12年1
0月3日、「特許第2966142号の請求項1に係る特許を取り消す。」との決
定をし、同月24日にその謄本を原告に送達した。
(2) 本件決定の理由
 審決の理由は、要するに、本件発明は特許法29条1項3号に該当するの
で、特許を受けることができない、とするものである。
(3) 原告は、本訴が係属中の平成12年12月21日、本件特許の出願の願書に
添付された明細書の訂正をすることについて審判を請求し、特許庁は、これを訂正
2000-39160号事件として審理した結果、平成13年2月20日に上記訂
正をすることを認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし、これが確
定した。
(4) 本件訂正審決による訂正の内容
(イ) 本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲は、次のとおりである。
「基板上に形成されたアモルファスシリコン薄膜トランジスタにおいて、画
面用アモルファスシリコン薄膜トランジスタアレイの外周部に、ダミーのアモルフ
ァスシリコン薄膜トランジスタアレイを形成したことを特徴とするアモルファスシ
リコン薄膜トランジスタアレイ。」
(ロ) 本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲は、次のとおりである(下
線部が訂正された箇所である。)。
「【請求項1】基板上に形成されたアモルファスシリコン薄膜トランジスタアレイ
において、複数のアモルファスシリコン薄膜トランジスタが列および行方向にマト
リクス状に配置された画面用アモルファスシリコン薄膜トランジスタアレイの外周
部に、ダミーのアモルファスシリコン薄膜トランジスタアレイを形成するととも
に、前記ダミーのアモルファスシリコン薄膜トランジスタアレイは、複数のダミー
のアモルファスシリコン薄膜トランジスタで構成され、前記複数のダミーのアモル
ファスシリコン薄膜トランジスタは、前記列及び行方向にマトリクス状に配置した
ことを特徴とするアモルファスシリコン薄膜トランジスタアレイ。」
(5) 上記のとおり、本件特許については、特許法29条の規定に違反してなされ
た特許であることを理由に特許を取り消した決定の取消しを求める訴訟の係属中
に、その目的に当該特許に係る特許請求の範囲の減縮を含む訂正の審決が確定した
ので、本件決定は、結果として、判断の対象となるべき発明の要旨の認定を誤った
ものとなり、この誤りが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。した
がって、本件決定は、取消しを免れない。
(6) 訴訟費用の負担についての被告の主張については、争わない。
3 原告の主張に対する被告の認否
(1) (1)ないし(4)は認める。
(2) 訴訟費用の負担について
 原告は、従前、本件決定がその認定判断を誤っており違法であることを理由
に本件決定の取消しを求めていた。ところが、その目的に特許請求の範囲の減縮を
含む訂正の審判を請求し、この審決が確定したことを受けて、従前の取消事由を撤
回して、訂正審決が確定したことに基づく取消事由を新たに主張するに至った。こ
のことは、取りも直さず、本件決定時の特許請求の範囲のままで訴訟を進行すれ
ば、原告敗訴となることを原告自身が認めざるを得なかったことを自白するもので
あり、本件決定に誤りがないことを認め、ひいては、原告が、特許庁における異議
の審理の手続において、原告の権利の伸張もしくは防御のための適切な対応をしな
かったことを認めたことにほかならない。原告が、特許庁における異議の審理にお
いて、今般の訂正審判請求のような適切な訂正請求を行っていたならば、本訴が提
起されることもなかったのであるから、本訴は、原告の権利の伸張若しくは防御に
必要でない行為によって生じたことが明らかである。
 したがって、訴訟費用は、民事訴訟法62条の規定を適用し、原告の負担とすべ
きである。
4 理由
 原告の主張(1)ないし(4)は当事者間に争いがなく、同争いのない事実によれ
ば、本訴請求は理由がある。そこで、これを認容し、訴訟費用の負担については、
原告に負担させるのを相当と認め、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法62条を適用
して、主文のとおり判決する。
   東京高等裁判所第6民事部
  裁判長裁判官山  下  和  明
     裁判官宍  戸     充
     裁判官阿  部  正  幸

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