弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
1上告代理人熊野勝之ほかの上告理由のうち建物の区分所有等に関する法律
(以下「区分所有法」という。)70条が憲法29条に違反する旨をいう部分につ
いて
(1)区分所有法70条1項は,1つの団地内に存する数棟の建物の全部(以下
「団地内全建物」という。)が,いずれも専有部分を有する建物であり,団地内全
建物の敷地が,団地内の各建物の区分所有者(以下「団地内区分所有者」とい
う。)の共有に属する場合において,当該団地内建物について所要の規約が定めら
れているときは,団地内の各建物ごとに,区分所有者及び議決権の各3分の2以上
の賛成があれば,団地内区分所有者で構成される団地内の土地,建物等の管理を行
う団体又は団地管理組合法人の集会において,団地内区分所有者及び議決権の各5
分の4以上の多数で団地内全建物の一括建替え(以下「団地内全建物一括建替え」
という。)をする旨の建替え決議をすることができる旨定めている。この定めは,
同法62条1項が,1棟の建物の建替え(以下「1棟建替え」という。)において
は,当該建物の区分所有者の集会において,区分所有者及び議決権の各5分の4以
上の多数で建替え決議をすることができると定めているのに比べて,建替えの対象
となる当該建物の区分所有者及び議決権の数がより少数であっても建替え決議が可
能となるものとなっている。そして,団地内全建物一括建替えの決議がされた場合
は,1棟建替えの決議がされた場合と同様,建替えに参加しない区分所有者は,時
価による売渡請求権の行使を受けて,その区分所有権及び敷地利用権を失うことと
なる(同法70条4項,63条4項)。
上告人らは,区分所有法70条によれば,団地内全建物一括建替えにおいては,
各建物について,当該建物の区分所有者ではない他の建物の区分所有者の意思が反
映されて当該建物の建替え決議がされることになり,建替えに参加しない少数者の
権利が侵害され,更にその保護のための措置も採られていないなどとして,同条が
憲法29条に違反することを主張するものである。
(2)区分所有権は,1棟の建物の中の構造上区分された各専有部分を目的とす
る所有権であり(区分所有法1条,2条1項,3項),廊下や階段など,専有部分
の使用に不可欠な専有部分以外の建物部分である共用部分は,各専有部分の所有者
(区分所有者)が専有部分の床面積の割合に応じた持分を有する共有に属し,その
持分は専有部分の処分に従うものとされている(同法2条2項,4項,4条,11
条,14条,15条)。また,専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利
である敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には,区分所有者
の集会の決議によって定められた規約に別段の定めのある場合を除き,区分所有者
は敷地利用権を専有部分と分離して処分することはできないものとされている(同
法2条6項,22条)。このように,区分所有権は,1棟の建物の1部分を構成す
る専有部分を目的とする所有権であり,共用部分についての共有持分や敷地利用権
を伴うものでもある。したがって,区分所有権の行使(区分所有権の行使に伴う共
有持分や敷地利用権の行使を含む。以下同じ。)は,必然的に他の区分所有者の区
分所有権の行使に影響を与えるものであるから,区分所有権の行使については,他
の区分所有権の行使との調整が不可欠であり,区分所有者の集会の決議等による他
の区分所有者の意思を反映した行使の制限は,区分所有権自体に内在するものであ
って,これらは,区分所有権の性質というべきものである。
区分所有建物について,老朽化等によって建替えの必要が生じたような場合に,
大多数の区分所有者が建替えの意思を有していても一部の区分所有者が反対すれば
建替えができないということになると,良好かつ安全な住環境の確保や敷地の有効
活用の支障となるばかりか,一部の区分所有者の区分所有権の行使によって,大多
数の区分所有者の区分所有権の合理的な行使が妨げられることになるから,1棟建
替えの場合に区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で建替え決議ができる
旨定めた区分所有法62条1項は,区分所有権の上記性質にかんがみて,十分な合
理性を有するものというべきである。そして,同法70条1項は,団地内の各建物
の区分所有者及び議決権の各3分の2以上の賛成があれば,団地内区分所有者及び
議決権の各5分の4以上の多数の賛成で団地内全建物一括建替えの決議ができるも
のとしているが,団地内全建物一括建替えは,団地全体として計画的に良好かつ安
全な住環境を確保し,その敷地全体の効率的かつ一体的な利用を図ろうとするもの
であるところ,区分所有権の上記性質にかんがみると,団地全体では同法62条1
項の議決要件と同一の議決要件を定め,各建物単位では区分所有者の数及び議決権
数の過半数を相当超える議決要件を定めているのであり,同法70条1項の定め
は,なお合理性を失うものではないというべきである。また,団地内全建物一括建
替えの場合,1棟建替えの場合と同じく,上記のとおり,建替えに参加しない区分
所有者は,売渡請求権の行使を受けることにより,区分所有権及び敷地利用権を時
価で売り渡すこととされているのであり(同法70条4項,63条4項),その経
済的損失については相応の手当がされているというべきである。
(3)そうすると,規制の目的,必要性,内容,その規制によって制限される財
産権の種類,性質及び制限の程度等を比較考量して判断すれば,区分所有法70条
は,憲法29条に違反するものではない。このことは,最高裁平成12年(オ)第
1965号,同年(受)第1703号同14年2月13日大法廷判決・民集56巻
2号331頁の趣旨に徴して明らかである。論旨は採用することができない。
2その余の上告理由について
論旨は,違憲及び理由の不備をいうが,その実質は単なる法令違反をいうもの又
はその前提を欠くものであって,民訴法312条1項及び2項に規定する事由のい
ずれにも該当しない。
3よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官甲斐中辰夫裁判官涌井紀夫裁判官宮川光治裁判官
櫻井龍子裁判官金築誠志)

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