弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
     右部分につき、本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人端元博保、同伊藤公郎の上告理由について
一 原審の確定した本件の事実関係の概要は、次のとおりである。
 1 上告人と被上告人は、いずれも建築工事の請負等を目的とする株式会社であ
り、昭和六元年六月三〇日、郡上広域行政事務組合の発注するD病院増改築工事の
請負を目的として、E建設工事共同企業体(以下「本件共同企業体」という。)を
結成し、上告人を代表者とし、損益分配の割合を各二分の一とし、本件共同企業体
の施工する工事に要する費用は右割合に応じて各自が負担する旨を合意した。
 2 本件共同企業体は、昭和六一年八月七日、前記事務組合との間で、D病院増
改築工事の一部(以下「本件工事」という。)を代金三億六四〇〇万円で請け負う
旨の契約を締結した。
 3 被上告人は、昭和六二年二月二七日、本件共同企業体から脱退した。上告人
と被上告人は、右脱退前の同月二〇日過ぎころ、施工中であった本件工事の請負代
金の清算につき、同月二八日時点の出来高に相当する請負代金を上告人が前記事務
組合から受領したときにその二分の一を被上告人に支払う旨合意した。
 4 被上告人は、昭和六二年二月二八日、岐阜地方裁判所に対し和議開始の申立
てをした。上告人は、右事実をその直後に知った。
 5 昭和六二年二月二八日時点の本件工事の出来高は六二・七二パーセントであ
り、上告人は、前記事務組合から同年四月二八日までに右出来高に相当する請負代
金一億〇七六二万七五二〇円の支払を受けた。
 6 本件共同企業体は、昭和六二年二月二八日時点の本件工事の出来高部分に対
応する費用として、原判決別紙代払表の「支払先名」欄記載の下請業者等に対して
同表「622/28出来高対応発生額」欄記載のとおり合計二〇四三万九九八三円
の債務を負っていた。上告人は、右債務のうち自己の負担部分(二分の一)に相当
する額を弁済したほか、同表「支払月日」「代払金額」欄記載のとおり、昭和六一
年一二月一日から同六三年三月一五日までの間に九二四万八七四一円を弁済した。
 7 岐阜地方裁判所は、昭和六二年七月一四日、被上告人につき和議開始決定を
した。
二 被上告人の本件請求は、前記一3の合意に基づき、上告人に対して昭和六二年
二月二八日時点の本件工事の出来高に相当する請負代金の二分の一(五三八一万三
七六〇円)のうち未払分三四二六万三七六〇円及びこれに対する昭和六二年四月二
九日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める
ものである。
 上告人は、抗弁として、(1)昭和六二年二月二〇日貸付けに係る貸金債権三〇
〇〇万円、(2)前記一6の弁済による求償権九二四万八七四一円を自働債権とす
る相殺を主張した。
 原審は、上告人の相殺の抗弁のうち(1)については全部を認めたが、(2)に
ついては次のとおり判断してその一部のみを認め、被上告人の請求を四二〇万〇四
六〇円及びこれに対する昭和六二年四月二九日から支払済みまで年六分の割合によ
る遅延損害金の支払を求める限度で認容した。
 1 本件共同企業体は、商行為を目的とする民法上の組合であり、本件共同企業
体が本件工事につき下請業者等に対して負担した債務は、各構成員の連帯債務とな
る。したがって、上告人は、前記一6の弁済により、被上告人に対して弁済額の二
分の一の求償権を取得したと認められる。
 2 しかし、右求償権のうち上告人が被上告人の和議開始の申立てを知った後に
弁済したことにより取得した分については、和議開始の申立てを知ったときより前
の原因に基づくものとはいえず、和議法五条により準用される破産法一〇四条四号
本文により相殺は許されない。したがって、求償権を自働債権とする上告人の相殺
の抗弁は、和議開始の申立てを知る前の弁済(前記代払表の番号32、33、35、
36、38∼42)による求償権六万三三〇〇円の限度で理由がある。
 三 しかし、求償権による相殺の抗弁に関する原審の右判断のうち、1は是認す
ることができるが、2は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 1 共同企業体は、基本的には民法上の組合の性質を有するものであり、共同企
業体の債務については、共同企業体の財産がその引き当てになるとともに、各構成
員がその固有の財産をもって弁済すべき債務を負うと解されるところ、共同企業体
の構成員が会社である場合には、会社が共同企業体を結成してその構成員として共
同企業体の事業を行う行為は、会社の営業のためにする行為(附属的商行為)にほ
かならず、共同企業体がその事業のために第三者に対して負担した債務につき構成
員が負う債務は、構成員である会社にとって自らの商行為により負担した債務とい
うべきものである。したがって、右の場合には、共同企業体の各構成員は、共同企
業体がその事業のために第三者に対して負担した債務につき、商法五一一条一項に
より連帯債務を負うと解するのが相当である。
 これを本件についてみると、前記事実関係によれば、本件共同企業体の構成員で
ある上告人と被上告人は、建築工事の請負等を目的とする会社であるから、昭和六
二年二月二八日時点での本件工事の出来高に対応する費用として本件共同企業体が
下請業者等に対して負担した債務につき連帯債務を負うと解されるのであり、その
負担割合は各二分の一であるから、上告人は、前記一6の弁済により、被上告人に
対して弁済額の二分の一の求償権を取得したと認められる。
 2 和議債務者に対して債務を負う者が和議開始の申立てを知った後に和議債務
者に対する債権を取得した場合は、右債権を自働債権として相殺をすることは原則
として許されないが、右債権の取得が和議開始の申立てを知る前の原因に基づくも
のであるときは、右債権を自働債権として相殺することができるところ(和議法五
条、破産法一〇四条四号)、連帯債務関係が発生した後に連帯債務者の一人が和議
開始の申立てをした場合において、他の連帯債務者が和議開始の申立てを知った後
に債権者に債務を弁済したときは、右弁済による求償権の取得は、右にいう「和議
開始の申立てを知る前の原因に基づく」ものと解するのが相当である。けだし、右
の場合には、和議開始の申立ての前に求償権の発生の基礎となる連帯債務関係が既
に発生しており、右のような求償権による相殺を認めても、和議債権者間の公平を
害することはなく、和議開始の申立てを知った後に取得した債権による相殺を禁止
する和議法五条、破産法一〇四条四号本文の趣旨に反しないからである。
 本件においては、上告人の前記一6の弁済に係る債務は、被上告人が和議開始の
申立てをした昭和六二年二月二八日の時点において本件共同企業体が負担していた
債務であり、上告人及び被上告人が右債務につき連帯債務を負っていたのであるか
ら、上告人が前記一6の弁済により取得した求償権のうち、和議開始の申立てを知
った後の弁済により取得したものは、右にいう「和議開始の申立てを知る前の原因
に基づく」ものとして、相殺の自働債権とすることができると解される。右と異な
る原審の前記二2の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は原判
決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点をいう論旨は理由があり、原
判決中上告人敗訴部分は、破棄を免れない。
 3 記録によれば、昭和六二年一〇月一九日、被上告人について、和議債権の一
部免除等を和議条件とする和議認可決定がされ、右決定が確定したことがうかがわ
れる。ところで、連帯保証人の一人について和議認可決定が確定した場合において、
和議開始決定後の弁済により右連帯保証人に対して求償権を取得した他の連帯保証
人は、債権者が全額の弁済を受けたときに限り、右弁済によって取得する債権者の
和議債権(和議条件により変更されたもの)の限度で右求償権を行使することがで
きると解されるところ(最高裁平成三年(オ)第四九一号同七年一月二〇日第二小
法廷判決・民集四九巻一号一頁)、右の理は、連帯債務者間の求償関係についても
変わるところはないから、連帯債務者の一人について和議認可決定が確定した場合
において、和議開始決定後の弁済により右連帯債務者に対して求償権を取得した他
の連帯債務者は、債権者が全額の弁済を受けたときに限り、右弁済によって取得す
る債務者の和議債権(和議条件により変更されたもの)の限度で右求償権を行使す
ることができると解される。そして、右にいう求償権の行使には、和議債務者に対
する履行の請求のみならず、求償権を自働債権として和議債務者の債権と相殺する
ことも含まれるというべきであり、右の限度で相殺を認めることは、和議開始決定
後に取得した和議債権による相殺を禁じた和議法五条、破産法一〇四条三号の規定
に反するものではない。本件において、上告人の求償権のうち和議開始決定後の弁
済により取得したものについては、右に従い相殺の自働債権として行使し得る範囲
を確定する必要があり、右の点を含め更に審理を尽くさせるため、上告人敗訴部分
につき本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、裁判官全員一致の意見により、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    金   谷   利   廣
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    千   種   秀   夫
            裁判官    尾   崎   行   信
            裁判官    元   原   利   文

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