弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人佐々木清綱上告趣意第一点について。
 原判決の認定した事実は、「強盗しようという気になり、いきなり両手で同女の
口と胸とを抑え、後押しにして裏口の土間から表四畳半の間に連れて行き、同女を
其処に押倒し所携の赤布(証第一号)でその両手を縛り、尚横に在つた紐でその脚
を縛ろうとしたとき同女の陰部が見えたので劣情を起し、同女を押えつけて無理に
姦淫し」たというのである。従つて、反抗を抑圧すべき程度の暴行を加えて姦淫し
た事実は、極めて明白であつて、強姦罪の構成要件の判示として毛頭欠くるところ
はない。ところで、原判決は前記認定事実についで、「更に同女の両脚を縛り、斯
くしてその反抗を抑圧し、」現金、衣類、靴その他を強奪した旨を判示している。
ここに「その反抗を抑圧し」というのは、財物強取の強盗罪の構成要件の判示とし
て掲げられたものであるが、本件においてはこれはむしろ蛇足であつて言わずもの
がなのことを附け加えたに過ぎない。すなわち、両足を縛つたときに初めて反抗を
抑圧したのではなく、既に両手を縛つたときに反抗は抑圧せられているが、更に両
足を縛つて一層完全に反抗を抑圧したというに過ぎないのである。されば、論旨は
理由がない。
 同第二点について。
 原判決は、所論のように単に第一、第二の強盗の事実を認めたのではなく、第一
においては、強盗強姦の事実を、第二においては強盗致死の事実を認定し、それぞ
れ刑法第二四一条、第二四〇条を適用しているのは正当である。従つて、単純な強
盗に関する刑法第二三六条の適用を欠いたのは違法であるという論旨は、採ること
ができない。
 同第三点について。
 本件は、単純な強姦罪ではなく、強盗強姦罪という結合罪として処罰されたもの
である。従つて、強姦被害者の告訴の提起は、本件の場合に訴追の必要条件となる
ものではないから、告訴なくしてなされた本件の処罰は適法である。論旨は、それ
故に理由なきものである。
 弁護人大山菊治上告趣意について。
 刑の量定は、事実審裁判所が、犯罪の動機、態様、その他諸般の事情を斟酌考慮
して、良心に従い判断すべきものである。かかる裁量は、専ら原審の職務と職権に
委ねられたところであるから、刑の量定を非難することは、上告適法の理由となら
ぬのは勿論である。本件において、弁護人は、原審の刑の量定をもつて科刑上の実
験則に違背した違法があると主張するのであるが、全記録を調査しても、未だ原審
の量刑を実験則に反する程度のものと認めることは到底できないのである。
 それゆえ、論旨は採用するを得ない。
 よつて刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 茂見義勝関与
  昭和二三年一二月一六日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    真   野       毅
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    齋   藤   悠   輔

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