弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中控訴人に対する部分を次のとおり変更する。
     控訴人はAと連帯して被控訴人に対し、金参拾参万円とこれに対する昭
和参拾壱年七月壱日以降右完済に至るまでの間の年壱割八分の割合による金員を支
払え。
     被控訴人のその余の請求を棄却する。
     本件当事者間の訴訟費用を第一、二審を通じて四分し、その壱を被控訴
人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴人は原判決中控訴人に対する部分を取消す、控訴人に対する被控訴人の請求
を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とするとの判決を求めた。
被控訴人は(訴の一部取下の方法で後に記すとおり請求を減縮した上残部の請求に
つき)控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張は、被控訴人において、本件消費貸借は被控訴人がA
に現実に金三十三万円を交付してしたものではない。これよりさき昭和三十年八月
四日に同人が訴外Bから金三十万円を弁済期日同年十月三十日、利息一ケ月につき
五分の割合の約束で借りうけ、被控訴人と訴外Cが右Aの委託をうけてその連帯保
証をしていたが、主債務者である同人が債権者に対し、昭和三十一年三月分までの
前記割合による利息並びに損害金を支払つただけであとの支払をしなかつたため、
被控訴人が債権者から支払の請求をうけ、主債務者からも支払の委託をうけたの
で、やむをえずに債権者に対し、昭和三十一年五月二十四日、前記元本金三十万円
と約定利率による同年四、五月分の損害金三万円合計金三十三万円を支払つた。こ
れによつて被控訴人が主債務者Aに対し有するにいたつた求償債権を本件消費貸借
の目的としたのである。また、控訴人は本件消費貸借の連帯保証人となつたもので
あるが、このことは被控訴人が前記の支払をするための絶対的な条件としていたこ
とで、控訴人自身事前にこれを承諾していたし、後に被控訴人の使者DやCが度々
控訴人に面会した際もこれを承諾していた。なお、被控訴人は原審において、本件
貸金の利息として、貸付日である昭和三十一年五月三十日以降弁済期日である同年
七月三十一日までのものを請求していたが、被控訴人は右支払期日前に債務者Aか
らその最初の部分につき一ケ月五分の割合による弁済として金一万五千円の支払を
うけていたのを同年五月分の利息の内入と錯誤していたから、これを正し且つ計算
の煩雑を避けるために、昭和三十一年七月一日から同年七月三十一日までのものに
請求を減縮する旨述べ、控訴人において、被控訴人が主張する消費貸借の経緯につ
いては一切知らない、控訴人か連帯保証をすることを承諾した事実はないと述べた
ほかは、原判決事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。
 証拠として被控訴人は甲第一号証の一、二、第二号証、第三号証ないし第五号証
の各一、二を提出し、原審証人C、Dの証言を援用し、乙第一号証中郵便官署作成
部分及び乙第二号証の成立を認め、その余は不知、甲第一号証の一の認否の訂正に
は異議があると答えた。控訴人は乙第一、二号証を提出し、当審証人A、Cの各尋
問を求め、甲第一号証の一は控訴人名下の印影が控訴人の印鑑と同一であることの
み認め、成立は否認する。この点に関する原審の口頭弁論調書の記載は誤つてい
る。甲第一号証の二と第三号証の一以下の郵便官署作成部分とはいずれも成立を認
め、その余は不知と答えた。当事者双方は更に、被控訴人において当審証人Aの証
言につき、控訴人において原審証人D、原審並びに当審証人Cの各証言につき、そ
れぞれ互いにこれらの証言が事実に反する旨を述べた。
         理    由
 一、 まず、本件の主債務である貸金の成否につき考察する。
 成立につき争がない乙第二号証、原審並びに当審証人Cの証言によつて真正なも
のと認めうる甲第一号証の一(但し控訴人名義の部分については後述する)、甲第
二号証の各記載と右証言並びに原審証人Dの証言を綜合すると、Aは昭和三十年中
訴外Cの協力をえて高知県中村市において、後記控訴人の所有名義とされたアパー
トを建築していたが、その資金に不足をきたしたので、Cに資金調達の斡旋を依頼
し、同人はこれを被控訴人に、被控訴人は更に訴外Bにそれぞれ依頼した結果、こ
れらの者の間に昭和三十年八月四日Bを債権者、Aを債務者、被控訴人及びCを連
帯保証人とする被控訴人主張の如き消費貸借が成立したこと、しかし、Aは被控訴
人主張の如き弁済をしたのにとどまり、その余の弁済をなしえなかつたので、被控
訴人は昭和三十一年五月中Bから連帯保証人として元本並びに昭和三十一年四、五
月分の損害金として金三万円合計金三十三万円の支払をするよう求められ、やむを
えず、当時、C及び同人を通じてAに対し、この保証人としての弁済をするについ
て同人らが後記のような条件を充たすことを要求し、同人等の同意をえた上で、昭
和三十一年五月二十四日Bに対し前記金額の支払をしたこと、そして、Aは被控訴
人の右金額の弁済を承認し、被控訴人が自己に対し金三十三万円の求償債権を有す
ることを認めて、同年同月三十日被控訴人との間に、これを消費貸借の目的とする
こと、弁済期日を同年七月三十一日とし利息を一ケ月につき五分の割合とすること
などを約束したこと、以上の事実をそれぞれ認めることができる。この認定を左右
するに足る証拠はない。なお、被控訴人は前記の如く当審において、本件消費貸借
の利息につき右約定の利率による一ケ月未満分の支払として金一万五千円の弁済が
あつたこと、それが当初の分に充当されたことを自認し、これによつて利息の請求
を減縮したが、本件貸金に関して右以外に弁済があつたことを認むべき証左は何も
なく、他方また本件貸借について当事者が債務不履行の場合の損害賠償の額を予定
したと認めるに足る証拠がない。(本件貸借のもととなつた前記のBとAとの間の
消費貸借において、その当事者が乙第二号証の契約書に損害金の条項がないまま
で、実際には約定した利息と同額の損害金を授受してきたことから推せば、本件の
関係者らも利息と遅延損害金とを区別せず利息という語のうちにこの両者を含めて
考えていたと一応はいえそうであるが、これだけでは証拠としてなお十分ではな
い。)
 右の前提にたつて考えると、被控訴人のBに対する支払は、Aの承認並びに委託
にもとずきなされたものということができるから、被控訴人はその全額につきAに
対し求債権を取得したというべきである。なお、右の支払にあたつて、Aがそれま
でにした月五分の割合による利息、損害金の支払をそれぞれの当時任意充当された
とおりの弁済としてのみ考慮し元本及び他の期間の利息、損害金に対する弁済とは
みなかつたこと<要旨>の当否につき一言すると、このように一旦任意に支払われた
ものについては、利息制限法第一条第二項、第四条第二項がいずれもその返
還を請求することができないと定めていること及び同法が消費貸借の要物性を充足
させることを主な目的として第二条所定の場合にだけ当事者の合意と異る充当を擬
制したことの法意からみて、支払後はその充当が不当なこと、同法の制限超過部分
が元本の支払に充当されたということなどを主張することができないと解すへきで
あるから、前記の取扱はもとより当然であつたといわなければならないのである。
このようなわけで、被控訴人からAに対する右求債権を消費貸借の目的とすること
を約した右両名間の契約は、これと同額の、弁済期日を昭和三十一年七月三十一日
とする消費貸借として成立したといわなけれならない。ただ、この契約についても
利息制限法が適用されるから、利息については、その法律上有効な限度は年一割八
分の割合によつて計算した金額にとどめられ、損害金についても、前記のとおり賠
償額の予定がされていないのであるから、利息制限法第一条第一項、民法第四百十
九条第一項但書によつて、本件での法律上有効な約定利率である年一割八分の割合
によつて計算した金額と解すべきである。
 二、 よつて、以下、本件の連帯保証契約の成否につき考察する。
 原審並びに当審証人Cの証言によると、被控訴人はもともとAを知らず、ただ知
人のCに依頼された関係で前記のようにAのために連帯保証人となつたもので、同
人が債務を履行しないために自分が債権者から追及され、代払をしなければならな
くなつたのについては、その後の自己のAに対する求債権が確実に担保されること
を強く望み、当時C及びCを通じてAに対し、自己が同人に対して取得することと
なる求債権について、同人がその所有不動産に抵当権を設定すること及びCとAの
妻である控訴人の両名が連帯保証をすることを要求し、CとAの承諾をえて前記の
とおり出捐をしたのであること、そしてその結果として右両名は本件の消費貸借に
ついて右趣旨にそう借用証書(甲第一号証の一)を作成し、同書面中連帯保証人と
しての控訴人の住所、氏名、捺印部分はAがこれを記載、押捺し、このようにして
両名が被控訴人方に持参し交付したことが認められる。ところで、右証言及び当審
証人Aの証言によると、Aと控訴人とは元来同居の夫婦であり、しかも本件貸借が
生ずるようになつた原因であるアパートは昭和三十一年に完成した当初から控訴人
の所有名義となつているものでしたがつてこの貸金は控訴人にとつて無縁のもので
はない上、右甲第一号証の一の控訴人の名下に押捺された印影は控訴人の印鑑であ
り、その印顆はAが当時自己の印顆と共に常時所持していたことがそれぞれ明かで
ある。また、右Cの証言と原審証人Dの証言を併せると、この借用証書が差入れら
れた際に、Cと控訴人との各印鑑証明書が添付されていなかつたので、被控訴人か
ら添付の要求があり、その直後からCは被控訴人の使いとして度々控訴人宅を訪ね
て控訴人に対しその事情を話して同人の印鑑の証明書を早く被控訴人にとどけるよ
う催促し、被控訴人の子Dも昭和三十一年六月頃以降、同様被控訴人の使者とし
て、度々同様の催促をしたが、控訴人は、この間、自己が連帯保証人であることを
争つたことはなく、印鑑証明書は夫であるAにいつてあとでとどけるという返事を
繰返していたことをそれぞれ認めることができる。当審証人Aの証言中以上の認定
に反する部分は信をおきがたく、また他にこの認定を左右するに足る証拠はない。
 右の諸事実によると、Aが本件借用証書に控訴人の記名捺印をした当時におい
て、既に、控訴人がこれを許容していたものと推定すべき相当の根拠があるだけで
なく、すくなくとも、同人が被控訴人の使者であるC、Dの前記催促をうけた当時
において、本件連帯保証を承諾したということができるのは明瞭である。
 三、 以上の次第で、控訴人に対する被控訴人の本訴請求中、連帯保証債務の履
行として、本件貸金元本金三十三万円及びこれに対する昭和三十一年七月一日以降
同年同月末日までの間の年一割八分の割合による利息、同年八月一日以降右完済に
至るまでの間の同じ割合による損害金の各支払を求める部分は理由があるからこれ
を認容すべきであるが、この限度を超える損害金の支払を求める部分は理由がない
から棄却すべきである。
 よつて、右の限度で原判決を変更し、(原判決中変更をうけない部分に対する仮
執行宣言は効力を失わない。)訴訟費用の負担について民事訴訟法第九十六条、第
九十二条本文に則り、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 谷弓雄 裁判官 橘盛行 裁判官 山下顕次)

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