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主文
原判決のうち上告人ら敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
理由
上告代理人井上元,上告復代理人中井洋恵の上告受理申立て理由について
1本件は,宇治市の住民である上告人らが,地方自治法(平成14年法律第4
号による改正前のもの。以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき被
上告人に代位して提起した住民訴訟(以下「別件訴訟」という。)において一部勝
訴したことから,同条7項に基づき,被上告人に対し,別件訴訟において訴訟委任
をした弁護士に支払うべき報酬額の範囲内で相当と認められる額として1500万
円の支払を請求する事案である。
2原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1)上告人らは,大阪弁護士会所属の弁護士3名(以下「別件受任弁護士ら」
という。)に訴訟委任をして平成13年5月23日京都地方裁判所に別件訴訟を提
起した。被告とされた者は,被上告人が土木工事等184件に関する契約を締結す
るに当たり行った入札に参加した業者63名であり,上告人らは,各入札に際して
これらの業者により談合が行われたため被上告人は損害を被ったと主張して,被上
告人に代位してその損害の賠償を求めた。
京都地方裁判所は別件訴訟における上告人らの請求を一部認容する判決を言い渡
し,業者らのうち10名は控訴しなかったが,残りの53名は大阪高等裁判所に控
訴した。上告人らは,別件受任弁護士らのうちの1名に控訴審においても訴訟委任
をした。大阪高等裁判所は平成18年1月31日控訴を棄却する判決を言い渡し,
業者63名すべてについて京都地方裁判所の判決が確定した。
別件訴訟の請求額は総額4億0934万4469円及びこれに対する遅延損害金
であり,判決認容額は総額1億3358万8991円及びこれに対する遅延損害金
である。口頭弁論等の期日の回数は,第1審が19回,控訴審が14回であった。
提出された書証の数は,第1審,控訴審を合わせて,上告人ら提出のもの(甲号
証)が51点,業者ら提出のもの(乙号証)が64点であり,別件受任弁護士ら
は,談合に関する11分冊に及ぶ刑事事件記録を分析し,入札において談合が行わ
れたことを裏付ける作業をした上で主張立証活動を行った。
別件訴訟の判決の結果,被上告人は,本件第1審口頭弁論終結前の時点で,業者
らから9436万6347円を既に回収しており,更に12万円を回収する予定で
あった。
(2)上告人らは,別件受任弁護士らとの間で,別件訴訟に勝訴したときは,上
告人らが法242条の2第7項に基づき被上告人から支払を受けることができた額
を報酬として支払うことを合意していた。
(3)大阪弁護士会は,弁護士法(平成15年法律第128号による改正前のも
の)33条2項8号に規定する「弁護士の報酬に関する標準を示す規定」として
「大阪弁護士会報酬規程」(以下「本件報酬規程」という。)を定めていたが,上
記の弁護士法の改正に伴い平成16年3月31日をもって廃止した。
本件報酬規程によれば,民事訴訟事件の報酬は,着手金と報酬金から成り,着手
金は事件の対象の経済的利益の額を,報酬金は委任事務処理により確保した経済的
利益の額をそれぞれ基準として算定した額(以下「基準報酬額」という。)とする
が,事件の内容によりそこから30%の範囲内で増減額することができるとされて
いた。また,経済的利益の額を算定することができないときはその額を800万円
とし,事件の難易,軽重,手数の繁簡及び依頼者の受ける利益等を考慮して適正妥
当な範囲内で増減額することができるとされていた。
3原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,上告人らの被上
告人に対する請求を,不可分債権として上告人ら各自が300万円及びこれに対す
る遅延損害金の支払を求める限度で認容すべきものとした。
(1)法242条の2第1項4号の規定による住民訴訟(以下「旧4号住民訴
訟」という。)である別件訴訟において勝訴した上告人らが同条7項の規定に基づ
き被上告人に対して支払を請求することができる「相当と認められる額」は,本件
報酬規程を参考にして算定するのが相当である。
(2)旧4号住民訴訟の目的は,住民全体の利益のために普通地方公共団体の財
務会計上の行為を正すことにあって,訴えを提起した者又は普通地方公共団体の個
人的な権利利益の保護救済を図るためにあるのではないことにかんがみると,本件
報酬規程を参考にして基準報酬額を算定する場合,判決の認容額や回収額などをも
って経済的利益とすべきではなく,経済的利益は算定不能とすべきである。本件報
酬規程は経済的利益が算定不能の場合にはその額を800万円とみなすこととして
いるから,旧4号住民訴訟の勝訴の結果得られた経済的利益は800万円である。
次に,基準報酬額の増減額をするか否かの判断に当たっても,住民訴訟の特殊な
目的,性格を踏まえると,主として重視すべきは事件の難易,軽重,手数の繁簡で
あって,判決の認容額,回収額ではないというべきであるから,判決の認容額,回
収額は従たる要素として上記各要素に加味する程度にとどめるのが相当であり,こ
れらの額が多額であるからといって,この点を重視して,「相当と認められる額」
をこれに比例して高額に算定するのは相当でない。
(3)別件訴訟の経済的利益である800万円を基に基準報酬額を算定すると,
着手金は,第1審,控訴審それぞれにつき49万円,報酬金は98万円となり,そ
の合計は196万円である。
別件訴訟の審理の経過に照らすと,別件受任弁護士らは訴訟の追行に当たり相当
の労力を要したことが推認され,また,被上告人は既に9436万6347円を回
収済みである。これらの事実を考慮すると,別件訴訟に関する「相当と認められる
額」は,通常の事案に比較して相当程度の増額がされたものとすべきであり,上記
基準報酬額を約50%の割合で増額した300万円と認めるのが相当である。
4しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
法242条の2の定める住民訴訟は,住民が,自己の個人的な権利利益の保護救
済を求めて提起するものではなく,地方財務行政の適正な運営を確保することを目
的として,自己を含む住民全体の利益のために,いわば公益の代表者として提起す
るものであり,これに勝訴すると,結果として普通地方公共団体の財務会計上の違
法な行為又は怠る事実が防止され又は是正されることになる。特に,旧4号住民訴
訟は,住民が普通地方公共団体に代わって提起するものであり,この訴訟において
住民が勝訴したときは,そこで求められた是正等の措置が本来普通地方公共団体の
自ら行うべき事務であったことが明らかとなり,かつ,これにより普通地方公共団
体が現実に経済的利益を受けることになるのであるから,住民がそのために費やし
た費用をすべて負担しなければならないとすることは,衡平の理念に照らし適当と
はいい難い。そこで,同条7項は,旧4号住民訴訟を提起した住民が勝訴(一部勝
訴を含む。)した場合に,その訴訟を委任した弁護士に支払うべき報酬額の範囲内
で相当と認められる額の支払を普通地方公共団体に対して請求することができるこ
ととしたのである。
法242条の2第7項の以上のような立法趣旨に照らすと,同項にいう「相当と
認められる額」とは,旧4号住民訴訟において住民から訴訟委任を受けた弁護士が
当該訴訟のために行った活動の対価として必要かつ十分な程度として社会通念上適
正妥当と認められる額をいい,その具体的な額は,当該訴訟における事案の難易,
弁護士が要した労力の程度及び時間,認容された額,判決の結果普通地方公共団体
が回収した額,住民訴訟の性格その他諸般の事情を総合的に勘案して定められるべ
きものと解するのが相当である。
前記事実関係によれば,別件訴訟の判決認容額は1億3000万円を超え,判決
の結果被上告人は約9500万円を既に回収しているというのであるから,被上告
人は現実にこれだけの経済的利益を受けているのであり,別件訴訟に関する「相当
と認められる額」を定めるに当たっては,これら認容額及び回収額は重要な考慮要
素となる。住民訴訟の目的,性質を考慮したとしても,上記の考慮要素をもって,
原審のように,一般的に,従たる要素として他の要素に加味する程度にとどめるの
が相当であるということはできない。一方,原審は,別件訴訟の事案が特に易しい
ものであったとか,別件受任弁護士らが訴訟追行に当たり要した労力の程度及び時
間がかなり小さなものであったなど,「相当と認められる額」を大きく減ずべき事
情については何ら認定説示しておらず,むしろ,別件受任弁護士らは訴訟追行に当
たり相当の労力を要したことが推認されるなどと説示しているのである。そうする
と,原審は,一つの重要な考慮要素と認められる前記認容額及び回収額についてほ
とんど考慮することなく別件訴訟に関する「相当と認められる額」を認定したもの
であり,他に原審の認定した額を「相当と認められる額」とすべき合理的根拠を示
していないから,その判断は,法242条の2第7項の解釈適用を誤ったものとい
わざるを得ない。
5上記と異なる見解の下に,別件訴訟に関する「相当と認められる額」を30
0万円と認定した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反
がある。論旨は理由があり,原判決のうち上告人ら敗訴部分は破棄を免れない。
そして,第1審判決は,前記事実関係とおおむね同一の事実関係を踏まえて,上
記のような観点から検討し,別件訴訟に関する「相当と認められる額」を900万
円と認定しているところ,この判断は是認することができるというべきであるか
ら,上記部分につき被上告人の控訴を棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官宮川光
治の補足意見,裁判官涌井紀夫の意見がある。
裁判官宮川光治の補足意見は,次のとおりである。
1住民訴訟において勝訴した住民が当該普通地方公共団体に対して請求する弁
護士報酬額の算定が争われた訴訟について,弁護士報酬額の基準となる経済的利益
の価額は算定不能であるとする判決が少なくない。それらの判決は,本件報酬規程
を始め,平成16年3月31日をもって廃止された各弁護士会における弁護士の報
酬に関する規程の算定不能の場合における経済的利益の価額(本件当時は800万
円)を基準として報酬額を算定し,その結果,多くの場合,弁護士報酬額は低く抑
えられる結果となっている。いわゆる算定不能説に立って判断した判決は,住民訴
訟の目的について,普通地方公共団体の財務会計上の行為の違法を正すことにより
住民全体の利益を図ることにあるのであり,訴えを提起した者の個人的利益や普通
地方公共団体の経済的利益の救済を図ることにはないという理解を示し,いずれも
その論拠として,最高裁昭和51年(行ツ)第120号同53年3月30日第一小
法廷判決・民集32巻2号485頁を引用している。原判決もそうである。上記最
高裁判決は,複数の住民が8億円余の損害賠償を求めて提起した旧4号住民訴訟に
おいて訴え提起の手数料が争われた事案に関し,「訴を以て主張する利益」は「地
方公共団体の損害が回復されることによってその訴の原告を含む住民全体の受ける
べき利益」であるとし,このような利益は,その性質上地方公共団体が受ける利益
と同一ではあり得ず,その価額を算定する客観的,合理的基準を見いだすことも極
めて困難であるから,民事訴訟費用等に関する法律4条2項に準じ,その価額は3
5万円とすることが相当であるなどとした。この判決は,住民訴訟を提起する際の
手数料算定に関する事案において,「地方自治の本旨に基づく住民参政の一環とし
て」の住民訴訟の提起を容易にし,「もって地方財務行政の適正な運営を確保す
る」という視点から解釈を示したのであると理解すべきである。したがって,この
判断の射程は,住民訴訟に関し勝訴した住民が当該普通地方公共団体に請求し得る
弁護士報酬額をどのように算定するかについては,及ばないと考えるべきである。
2法242条の2第7項の立法理由は衡平の理念にある。住民が勝訴したとき
は,当該普通地方公共団体が現実に経済的利益を受けることとなるので,相当と認
められる弁護士報酬額を住民に支払うものとすることが衡平であるとしたのであ
る。住民は,監査請求を行ったにもかかわらず当該普通地方公共団体が対応しない
ためやむなく訴訟提起を行うのであり,多くの場合,住民が依頼した弁護士は,当
該普通地方公共団体の協力を期待できず,当該普通地方公共団体から依頼を受けた
弁護士が裁判を追行する場合に比し,格段に困難,かつ事務量も多い状態に置かれ
る。敗訴した場合は,訴訟追行費用は住民と弁護士の負担となる。こうした尽力に
よって当該普通地方公共団体の財務会計行為の違法を正してその経済的損失を回復
し,それによって当該普通地方公共団体に経済的利益を得せしめたのであるから,
住民が支払う弁護士報酬は,その額が適正妥当である限り,当該普通地方公共団体
が負担することが衡平である。同項が,「その報酬額の範囲内で相当と認められる
額」としているのは,住民と弁護士間において高額の報酬契約を締結していても,
それにはよらないという意味であり,「相当と認められる額」とは弁護士活動の
「対価として必要かつ十分な程度として社会通念上適正妥当と認められる額」であ
ると理解すべきである。
住民訴訟を住民自らが本人訴訟として追行することは困難であり,それを適切に
追行するためには,専門家である弁護士に委任することが必要である。普通地方公
共団体が適正妥当な額の弁護士報酬を負担することは,住民訴訟における弁護士へ
のアクセスを前進させ,法の実現を促進するものというべきである。
裁判官涌井紀夫の意見は,次のとおりである。
私は,原判決のうち上告人ら敗訴部分を破棄して被上告人の控訴を棄却すべきも
のとする多数意見の結論には同調するが,法242条の2第7項にいう相当と認め
られる弁護士報酬額の算定の方法等については,多数意見とは考え方を異にすると
ころがあるので,この点について意見を述べておくこととする。
1法242条の2第7項は,住民訴訟を提起した原告たる住民が勝訴して弁護
士に報酬を支払うべきときに,普通地方公共団体に対しその報酬額の範囲内で相当
と認められる額の支払を請求することができるものとしている。住民訴訟の勝訴に
よって普通地方公共団体が現実に経済的利益を受ける結果となるから,訴訟の追行
等に要した弁護士費用の全部を常に原告たる住民に負担させるのは適当でなく,普
通地方公共団体の側でも,相当と認められる額の弁護士報酬を負担して,これを原
告に支払うものとすることが衡平の理念に合致するものと考えられる。この規定の
趣旨が,この点にあることは,多数意見のいうとおりである。
しかし,この規定は,普通地方公共団体自身が直接弁護士に同一の請求を内容と
する訴訟の追行等を依頼して勝訴した場合の報酬額として相当と考えられる金額と
いうものを前提として,原告たる住民がそれと同額の弁護士報酬額の支払を普通地
方公共団体に請求できるとまでしたものではない。この規定が,飽くまで,原告た
る住民自身がその住民訴訟の追行等を弁護士に依頼した場合の報酬額として相当と
考えられる金額を前提として,その支払を普通地方公共団体に請求できるとするに
とどまるものであることは,明らかなものというべきである。
2一般に訴訟に勝訴した場合に相当とされる弁護士報酬額については,事件の
難易,訴額,労力の程度その他諸般の状況を勘案し,当事者の意思を推定してこれ
を算定すべきものと考えられる(最高裁昭和36年(オ)第5号同37年2月1日
第一小法廷判決・民集16巻2号157頁)。この場合,依頼者の側では,当該訴
訟に勝訴することによって依頼者自身にもたらされる利益の内容,金額等を前提と
して,いわばその利益の中から,その内容,程度や金額に応じた弁護士報酬を拠出
するものと考えているのが通常であろう。訴訟の形態等によっては,当該訴訟に勝
訴することが依頼者以外の者に直接経済的な利益をもたらすこととなり,しかも,
この他者にもたらされる経済的な利益の額が多額なものとなる場合があり得る(本
件のような住民訴訟は,正にそのような場合である。)が,このような場合に,依
頼者本人が受ける利益ではなく,この他者が受けることとなる多額の経済的利益の
額等を直接の基準として,依頼者本人が支払うべき弁護士報酬の額が決定されると
いうことは,通常は依頼者の意思には合致しないものと考えられよう。
本件のような住民訴訟についていえば,原告は,自己の個人的利益のためや普通
地方公共団体そのものの利益のためではなく,専ら原告を含む住民全体の利益のた
めに,いわば公益の代表者として訴訟を提起するのである。したがって,この訴訟
に勝訴することによって原告にもたらされる利益も,このような公益目的が達せら
れることによるいわば非経済的な利益にとどまるのであり,その利益の程度や額
は,原告が勝訴したことによって普通地方公共団体が直接受ける経済的な利益の額
と同一ではあり得ないものというべきであろう(最高裁昭和51年(行ツ)第12
0号同53年3月30日第一小法廷判決・民集32巻2号485頁)。そうする
と,この場合に相当とされる弁護士報酬の額も,原告にもたらされるこのような性
質の非経済的な利益の内容や程度に対応するものとして算定すべきものと考えられ
る。
もっとも,本件のような訴訟に勝訴したことによって公益目的が達せられること
となった場合に,相当とされる弁護士報酬の額を算定するについて,一定の基準や
相場といったものが存在しているわけではない。したがって,このような事案で相
当とされる報酬額がいくらであるかを裁判所が判断するに当たっても,前記のよう
な種々の要素を総合的に勘案し,当事者の合理的な意思を推定することにより,裁
量によってこれを決する以外にないものと考えられる。この場合,勝訴判決におけ
る請求の認容額や普通地方公共団体への現実の入金額といったものも,重要な判断
要素となるものといえよう。また,法の規定によって,原告たる住民が弁護士に支
払うべき報酬のうちの相当額の支払を普通地方公共団体に請求できるとされてお
り,これによって原告たる住民自身の弁護士費用の負担が軽減されることとなるこ
とも,判断要素の一つとして考慮されてしかるべきものといえよう。しかしなが
ら,前記のとおり,原告である住民は本件のような住民訴訟をいわば公益の代表者
として提起するものであり,普通地方公共団体が支払うこととなる弁護士費用も,
公費による負担すなわち住民全体の負担において支払われることとなるのである。
そうすると,この場合に相当とされる弁護士報酬の算定の基準等として,例えば営
利を目的とする商取引等に関する訴訟の場合に広く用いられている基準(判決の請
求認容額等が高額になるのに対応して,報酬額も特に上限なしに逓増していくよう
な基準)等をそのまま採用することは,一般に原告たる住民の意思にはそわないも
のであり,その依頼を受けた弁護士の側でも,このことを当然に承知しているもの
と考えられるところである。
3原審は,本件における相当な弁護士報酬額を算定するに当たって,本件報酬
規程中の「委任事務処理により確保した経済的利益の額を算定することができない
場合」の定め(この場合の経済的利益の額を800万円と擬制するもの)を参考に
して,報酬基準の目安額を196万円と算定し,これに本件における請求の認容額
や普通地方公共団体への入金額,現実の訴訟活動の状況等を勘案して約50%の増
額を行い,結局300万円をもって相当額と認めるべきものとしている。相当とさ
れる弁護士報酬額を算定するに当たってのその方法自体は,上記のような考え方に
即したところがあるものと考えられるところではある。
しかしながら,本件において普通地方公共団体に現実に入金された額は,約95
00万円にも及んでいる。前記のとおり,この額自体が直接原告自身にもたらされ
る非経済的な利益の額とされるわけではないにしても,この金額は,別件訴訟に勝
訴したことによって実現される公益目的の性質や規模を測る目安となり,また,そ
の多寡が弁護士の訴訟活動の難易や労力にも影響してくるものというべきであろ
う。そうすると,本件で相当と認められる弁護士報酬額の算定のいわば出発点とな
る原告にもたらされる利益の額を800万円と擬制してしまうことは,この金額と
の対比からして,均衡を失しているものといわざるを得ず,このことが,本件にお
いて相当と考えられる報酬額を過小なものとする結果を導いているものといわざる
を得ない。このような場合に,本件報酬規程の上記のような定めをそのまま機械的
に適用することは相当ではなく,個別の事案に応じた合理的な裁量判断を行うこと
により,より柔軟な算定方法を採用することが求められるものというべきであろ
う。
したがって,相当とされる報酬額の算定に当たっては事実審裁判所の裁量が認め
られるべきことを前提としても,なお,本件における原審の判断には,この点でそ
の裁量を逸脱した違法があるものとせざるを得ないものと考える。
(裁判長裁判官金築誠志裁判官甲斐中辰夫裁判官涌井紀夫裁判官
宮川光治裁判官櫻井龍子)

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