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平成14年(行ケ)第226号 特許取消決定取消請求事件(平成15年12月2
4日口頭弁論終結)
          判    決
       原   告      アサステック・コンピューター・インコー
ポレイテッド
       訴訟代理人弁理士   八 田 幹 雄
       同          野 上   敦
       同          奈 良 泰 男
       同          齋 藤 悦 子
       同          宇 谷 勝 幸
       被   告      特許庁長官  今井康夫
       指定代理人      高 橋 泰 史
       同          片 岡 栄 一
       同          伊 藤 三 男
          主    文
      特許庁が異議2000-71157号事件について平成13年12月
5日にした決定を取り消す。
      訴訟費用は被告の負担とする。
          事実及び理由
第1 請求
   主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
原告は,名称を「ディスクプレーヤのための振動吸収システム」とする特許
第2951943号発明(平成10年5月28日特許出願,平成11年7月9日設
定登録。以下「本件発明」といい,その特許を「本件特許」という。)の特許権者
である。
 本件特許につき特許異議の申立てがされ,異議2000-71157号事件
として特許庁に係属したところ,原告は,平成13年3月14日付け訂正請求書に
より,願書に添付した明細書の特許請求の範囲等の訂正(以下「本件訂正」とい
い,本件訂正に係る明細書を「本件明細書」という。)を請求した。
 特許庁は,上記特許異議の申立てについて審理した上,平成13年12月5
日,「訂正を認める。特許第2951943号の請求項1に係る特許を取り消
す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし,その謄本は,平成14年1月
5日,原告に送達された。
 2 本件明細書の特許請求の範囲の記載
【請求項1】トレイを支持し,かつ指令に応じてディスクトレイの挿入ある
いは排出動作を実行するトレイモーション制御モジュールと,
 ディスクプレーヤの動作中に振動を発生する回転源を備え,かつ,振動を
発生する系内にその振動を維持すべく,バネ定数K値の小さなアイソレータを介し
て該トレーモーション制御モジュール上で接続されたトラバースモジュールと,
 前記系で発生した振動を減衰し,かつその振動をその系の外方に伝達すべ
くバネ定数K値の大きなダンパを介して,該トラバースモジュール上で接続され
た,前記回転源からの振動エネルギーを吸収するための振動吸収装置とを備えたデ
ィスクプレーヤ。
 3 本件決定の理由
   本件決定は,別添決定謄本写し記載のとおり,本件発明は,特開平10-2
1680号公報(甲4,以下「刊行物1」という。),実願平1-128935号
(実開平3-69336号)のマイクロフィルム(甲5,以下「刊行物2」とい
う。)及び特開平2-260191号公報(甲6,以下「刊行物3」という。)記
載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本
件特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,同法113条2
号に該当し,取り消されるべきものであるとした。
第3 原告主張の本件決定取消事由
 本件決定は,本件発明と刊行物1記載の発明(以下「刊行物1発明」とい
う。)との一致点の認定を誤り(取消事由1),本件発明と刊行物1発明との相違
点(ⅰ),(ⅱ)についての判断を誤り(取消事由2,3),本件発明の顕著な作用効
果を看過した(取消事由4)ものであるから,違法として取り消されるべきであ
る。
1 取消事由1(本件発明と刊行物1発明との一致点の認定の誤り)
(1)刊行物1発明の認定の誤り
 ア 本件決定は,刊行物1発明を,「ディスクトレイ(4)及びベース(4
3)を支持し,かつ制御手段(CPU)からの指令に応じて前記ディスクトレイの
挿入あるいは排出動作,及び前記ベースの上昇降下動作を実行する変位機構(5
0)を搭載したシャーシ(40)と,ディスク装置(1A)の動作中に振動を発生
する回転源であるスピンドルモータ(45)を備え,弾性材料からなるインシュレ
ータ(441)を介して前記シャーシ(40)に支持されたベース(43)上で接
続された金属板(44)とを備えたディスク装置」(決定謄本6頁第6段落)と認
定したが,誤りである。
 イ 上記認定によれば,刊行物1発明のディスク装置において,シャーシ4
0とベース43を振動吸収システム上一体物(以下,振動吸収システム上の一体物
を,単に「モジュール」ともいう。)とみなして,刊行物1発明を,ディスクトレ
イ4及びベース43を含むシャーシ40と振動発生源を含む金属板44や二つのモ
ジュールが,ベース43と金属板44の間で,振動絶縁体であるインシュレータ4
41を介して,下からこの順番で垂直方向に接続されて成るディスク装置と認定し
ていることとなる。しかし,刊行物1発明のディスクプレーヤは,「ベース43の
後方(装置本体2の奥部)側の両側部には,それぞれ,機構ユニット42のシャー
シ40に対する回動支持部として,軸431,432が突出形成されている。これ
らの軸431,432は,それぞれ,シャーシ40側に形成された軸孔433,4
34に挿入されている。これにより,機構ユニット42は,その後方部分がシャー
シ40に対し回動可能に軸支されている」(刊行物1〔甲4〕の段落【005
0】)という構造を有しており,さらに,「軸431,432のうちの一方の軸4
31には,振動を吸収するためのリング状の緩衝部材(ゴムワッシャー)5が装着
されている。この緩衝部材5の厚さは,軸431,432付近における間隙411
の幅と同等かまたはそれより若干大きい値に設定され,これにより緩衝部材5は,
ベース43の側面と,シャーシ40の空間41に臨む内面との間に挟持された状
態,すなわち,ベース43の側面とシャーシ40の内面のそれぞれに密着した状態
となる」(同段落【0051】)。そして,刊行物1発明のディスクプレーヤは,
「以上のような緩衝部材5を設置することにより,例えば光ディスク3の偏心回転
により機構ユニット42が振動したとしても,その振動が緩衝部材5により吸収
(緩和)され,シャーシ40への伝搬が阻止または抑制される。従って,シャーシ
40に対する機構ユニット42のガタツキ,特に,機構ユニット42の後方部分の
ガタツキが防止され,ディスク装置1A全体の振動および騒音の発生を抑制する効
果(制振効果)が得られる」(同段落【0056】),「ベース43の前方部分
(装置本体2の手前側)であって,軸431側(緩衝部材5が装着されているのと
同じ側)の側部には,板バネよりなる付勢部材(バネ部材)6が当接し,機構ユニ
ット42の前方部分を軸432側の側方(図2中左方向)へ付勢している。この付
勢部材6は,ビス6aによりシャーシ40に固定されている。このような付勢部材
6により機構ユニット42の前方側部を横方向(1方向)に付勢することによっ
て,機構ユニット42の前方部分のガタツキを防止することができる。特に,前記
緩衝部材5とこの付勢部材6の双方を設置したことにより,機構ユニット42の後
方部分と前方部分のそれぞれのガタツキを有効に防止することができる」(同段落
【0057】~【0058】)という効果を奏するものである。したがって,刊行
物1記載のディスク装置は,振動吸収システムとして見た場合,シャーシ40とベ
ース43とは別個の独立したモジュールなのであり,しかも,このような構成によ
り,本件発明が振動発生源の振動を垂直方向に吸収しようとするのに対し,刊行物
1発明では水平方向に吸収するようになっており,両者の振動吸収機構及びその奏
する効果は,全く相違する。
(2)一致点の認定の誤り
 ア 本件決定は,本件発明と刊行物1発明は,「トレイを支持し,かつ指令
に応じてディスクトレイの挿入あるいは排出動作を実行するトレイモーション制御
モジュールと,ディスクプレーヤの動作中に振動を発生する回転源を備え,振動絶
縁体を介して該トレーモーション制御モジュール上で接続されたトラバースモジュ
ールとを備えたディスクプレーヤ」(決定謄本9頁下から第2段落)である点にお
いて一致すると認定したが,誤りである。
 イ 本件発明のディスクプレーヤは,トレイモーション制御モジュール55
とトラバースモジュール53とダイナミックアブソーバ(振動吸収装置)51とい
う三つのモジュールが,振動絶縁体であるアイソレータ54又はダンパ52を介し
て下からこの順番で垂直方向に接続されて成るものである(本件明細書〔甲2添
付〕特許請求の範囲【請求項1】及び願書に添付した図面〔甲1の4頁~5頁〕,
以下,本件明細書及び願書に添付した図面を併せて「本件明細書等」といい,明細
書は甲2添付のもの,図面は甲1の4頁~5頁のものにより引用することとし,各
書証番号の引用は省略する。)。本件発明において,トレイモーション制御モジュ
ールとは,トレイを支持し,かつ,指令に応じてディスクトレイの挿入あるいは排
出動作を実行するモジュールをいい(本件明細書の特許請求の範囲【請求項
1】),トラバースモジュールとは,ディスクプレーヤの動作中に振動を発生する
回転源を備えたモジュールをいい(同),ダイナミックアブソーバ(振動吸収装
置)とは,接続された構成要素に対して広範囲に移動でき,ディスクプレーヤの動
作中振動エネルギー,又は衝撃エネルギーのほとんどを吸収することができる振動
吸収装置,あるいは衝撃吸収装置をいう(同段落【0010】)。
   ところで,本件発明のディスクプレーヤにおいて,ディスクトレイを含
むトレイモーション制御モジュール55は,ディスクプレーヤのケーシングに固定
されており,さらに,当該ケーシングは,例えば当該ディスクプレーヤを含むコン
ピュータのケーシングに固定され,振動発生源を含むトラバースモジュール53
は,アイソレータ54を介してトレイモーション制御モジュール55上に接続さ
れ,さらに,ダイナミックアブソーバ51がダンパ52を介してトラバースモジュ
ール53上に接続されている。他方,刊行物1発明のディスク装置の構成は,上
記(1)イのとおりであり,本件発明と刊行物1発明とを対比すると,本件発明の「ト
レイまたはディスクトレイ」,「ディスクプレーヤ」及び「トラバースモジュー
ル」は,それぞれ刊行物1発明の「ディスクトレイ」,「ディスク装置」及び「金
属板」に相当するが,本件発明の「トレイモーション制御モジュール」は,刊行物
1発明の「シャーシ」には相当するが,「ベース」を含むものでないから,本件発
明の「トレイモーション制御モジュール」は,刊行物1発明の「ディスクトレイ及
びベースを支持するシャーシ」に相当しないことは明らかである。そうすると,両
者は,「トレイを支持し,かつ指令に応じてディスクトレイの挿入あるいは排出動
作を実行するトレイモーション制御モジュールと,ディスクプレーヤの動作中に振
動を発生する回転源を備え,振動絶縁体を介して接続されたトラバースモジュール
とを備えたディスクプレーヤ」である点において一致するが,相違点(ⅰ),(ⅱ)に
加えて,①本件発明は,トレイモーション制御モジュール,トラバースモジュール
及び振動吸収装置の三つのモジュールからなるディスクプレーヤであるのに対し
て,刊行物1発明は,トレイモーション制御モジュール(シャーシ),トラバース
モジュール(金属板)及び第3のモジュール(ベース)から成るディスク装置であ
る点,②本件発明では,トレイモーション制御モジュール,トラバースモジュール
及び振動吸収装置が,振動絶縁体を介して下からこの順番で垂直方向に接続されて
いるのに対して,刊行物1発明では,トレイモーション制御モジュール,第3のモ
ジュール及びトラバースモジュールが,振動絶縁体を介して下からこの順番で接続
されている点,③本件発明では,トレイモーション制御モジュールとトラバースモ
ジュールとは振動絶縁体を介して垂直方向に接続されているのに対し,刊行物1発
明では,シャーシとベースとは,ベースの両側部に設けられた軸とシャーシの側壁
に設けられた軸孔とで緩衝部材を介して回動可能に軸支され,トレイモーション制
御モジュールと第3のモジュールとは振動絶縁体を介して水平方向に接続されてい
る点においても異なっている。したがって,本件発明と刊行物1発明とは,その振
動吸収システムの構成において大きく相違するものである。
2 取消事由2(本件発明と刊行物1発明との相違点(ⅰ)についての判断の誤
り)
(1)本件決定は,本件発明と刊行物1発明との相違点(ⅰ)として認定した,
「振動絶縁体が,本件発明においては,振動を発生する系内にその振動を維持すべ
く,バネ定数K値の小さなアイソレータであるのに対して,刊行物1の発明(注,
刊行物1発明)では弾性材料からなるインシュレータである点」(決定謄本9頁~
10頁[相違点](ⅰ))について,「本件発明における『アイソレータ』と刊行
物1の発明における『インシュレータ』は,いずれも振動の伝達を抑制する振動絶
縁体である点で共通するものである。そして,刊行物1の発明は,この刊行物1の
記載からみて,光ディスク(3)の偏心回転等から生じる振動が機構ユニット(4
2)からシャーシ(40)へ,さらにはシャーシ(40)からケーシング(10)
へ伝達されることにより,発生する振動や騒音を抑制することをその技術課題とす
るものであるから,この刊行物1の発明における『インシュレータ(441)』
は,刊行物1の発明において,金属板(44)(トラバースモジュール)上に取り
付けられている回転源からの振動を外方へ,即ち,ベース(43)を支持するシャ
ーシ(40)(トレイモーション制御モジュール)側へ,伝えない働きを有してい
るものと認められる。してみれば,このインシュレータのバネ定数K値は,当然小
さいものが用いられていることになり,上記相違点(ⅰ)は格別のものとは認められ
ない」(同10頁ア相違点(ⅰ)について)と判断したが,誤りである。
(2)本件決定によれば,刊行物1発明のディスク装置は,上記のとおり,トレ
イモーション制御モジュールとトラバースモジュールとが振動絶縁体を介して下か
らこの順番で垂直方向に接続されて成るディスク装置ということになるから,本件
明細書等に従来技術として記載した図1又は図2のディスクプレーヤに相当するも
のである。本件明細書等に記載のとおり,図1のディスクプレーヤのようにトラバ
ースモジュールとトレイモーション制御モジュールとの間にダンパを設けたもの
は,発生源であるトラバースモジュール自体の振動を低減させるもののディスクプ
レーヤのケーシングに大きな振動を引き起こすという特徴があり,ディスクの読み
取り安定性は高いもののケーシングの振動による重大なノイズを発生させ(段落
【0003】),また,図2のディスクプレーヤのようにトラバースモジュールと
トレイモーション制御モジュールとの間にアイソレータを設けたものは,ケーシン
グの振動を抑えるがトラバースモジュール自体の振動を抑えることができないとい
う特徴があり,上記ノイズを発生させないがディスクの読み取り安定が悪いという
欠点がある(段落【0004】)。ここで,ダンパ及びアイソレータは,いずれも
トラバースモジュールとトレイモーション制御モジュールとを接合する振動絶縁体
であって,それぞれの構成部材のバネ定数Kの値によって区別されるものである。
すなわち,ダンパは,バネ定数K値の大きな部材を用いることにより振動を発生系
の外方に伝達させるようにしたものであり,一方,アイソレータは,バネ定数K値
の小さな部材を用いることにより振動を発生系内に維持するようにしたものである
(同)。したがって,トラバースモジュール及びトレイモーション制御モジュール
を備えたディスクプレーヤにおいて,両者を接合する振動絶縁体をダンパとするか
アイソレータとするかは,いかなる設計思想に基づいてどのようなバネ定数K値を
持つ部材を使用するかによって異なってくるものである。刊行物1には,「ベー
ス」及び「金属板」を接合する振動絶縁体の「インシュレータ」について,単に
「弾性素材よりなる」という記載があるのみで,その設計思想も弾性素材のバネ定
数K値も一切開示されていないにもかかわらず,本件決定は,振動を抑制すること
をその技術課題とするものであるから,インシュレータのバネ定数K値は当然小さ
いものが用いられていると認定しているのであって,誤りである。
3 取消事由3(本件発明と刊行物1発明との相違点(ⅱ)についての判断の誤
り)
(1)刊行物2に記載された技術的事項の認定の誤り
ア 本件決定は,刊行物2(甲5)には,「ハウジング(12)内に比較的
高い周波数域の振動が伝播し難い(減衰し易い)特性を有する結合手段(14)を
介してシャーシ(16)が取り付けられ,前記シャーシ(16)上には磁気ヘッド
(18)を備えるキャリッジ(20)とスピンドルモータ(22)が結合手段(2
4)により取り付けられている磁気ディスクドライブ装置において,前記シャーシ
(16)に対して,比較的広い周波数域の振動の伝播が良好となるような特性を持
つ弾性固定手段(30)を介して振動板(28)を固定することにより,回転源で
あるスピンドルモータ(22)から生じた振動を振動板(28)で吸収して減衰
し,安定な信号の記録再生を可能にすること」(決定謄本8頁第3段落)が記載さ
れ,「本件発明と同じ技術分野に属する磁気ディスクドライブ装置において,回転
源であるスピンドルモータからの振動エネルギーを吸収してシャーシ(16)(ト
ラバースモジュール)の振動を減少させるために,該シャーシ(トラバースモジュ
ール)上に比較的広い周波数域の振動の伝播が良好となるような特性を持つ弾性固
定手段(30)を介して振動板(28)(振動吸収装置)を設けることは,上記刊
行物2に記載されているとおり公知の事項である」(同10頁下から第3段落)と
認定したが,誤りである。
イ 刊行物2(甲5)には,結合手段14が防振ゴムとネジとの組合せ等か
ら成ることが記載されており(9頁),結合手段14は比較的高い周波数域の振動
が伝播し難い(減衰し易い)特性を有するのであるから,結合手段14が振動絶縁
体に該当することは明らかである。また,刊行物2の第1図及び全体の記載から明
らかなとおり,シャーシ16は,その両側部で結合手段14を介してハウジング1
2の側壁に水平方向に接続されており,さらに,振動板28はシャーシ16の下部
に弾性固定手段30を介して接続されているものである。したがって,刊行物2に
記載された磁気ディスクドライブ装置は,シャーシ16,ハウジング12及び振動
板28の三つのモジュールが振動絶縁体を介して特定の位置関係により接続された
振動吸収システムとなっているものであり,シヤーシ16上の回転源の振動は,振
動絶縁体を介して接続した振動板28だけではなく,振動絶縁体を介して接続した
ハウジング12を含めた振動吸収システム全体で吸収されるものであることは明白
である。すなわち,刊行物2には,「ハウジング(12)と,回転源を有し両側部
が振動絶縁体を介してハウジング(12)の側壁に接続されたシャーシ(16)
と,シャーシ(16)の下部に振動絶縁体を介して接続された振動板(28)とを
有する磁気ディスクドライブ装置」が記載されているのであって,「シャーシ(1
6)上の回転源から生じた振動を,振動絶縁体を介して側部に接続されたハウジン
グ(12)と振動絶縁体を介して下部に接続された振動板(28)とからなる振動
吸収システムの全体で吸収して減衰し,安定な信号の記録再生を可能にすること」
が記載されているものである。したがって,本件決定における刊行物2の技術的事
項についての上記認定は,シャーシ16,ハウジング12及び振動板28の三つの
モジュールの接続の配列又は位置関係並びにそれに基づく振動吸収システムの構成
及び効果を無視したものである。
(2)刊行物3に記載された技術的事項の認定の誤り
 本件決定は,刊行物3(甲6)には,「フレーム(1,11)に対して,
光学ヘッド,アクセス機構,スピンドルモータ,回路基板等を備えるドライブ本体
(3,13)が,防振ゴムからなる制振体A(2,12)を介して取り付けられた
光磁気ディスクドライブにおいて,前記フレーム(1,11)上に,防振ゴムから
なる制振体A(2,12)を介して前記ドライブ本体(3,13)が取り付けら
れ,前記ドライブ本体上に,適度なバネ定数と粘性減衰係数を持つ防振ゴムからな
る制振体B(4,14)を介して所要の質量を有するカバー(5,15)が取り付
けられることにより,外部からドライブ本体に伝わる振動に制振体Bとカバーから
なる副振動系を共振させて,前記ドライブ本体の振動振幅を大幅に減少させるこ
と」(決定謄本9頁第4段落),「光磁気ディスクドライブにおいて,制振体A
(2,12)を介してフレーム(1,11)(トレイモーション制御モジュールに
対応)上でドライブ本体(3,13)(トラバースモジュール)を接続すると共
に,制振体B(4,14)を介して前記ドライブ本体上でカバー(5,15)(振
動吸収装置)を接続すること」(同10頁最終段落~11頁第1段落)が記載され
ていると認定した。
 しかし,刊行物3に記載の光磁気ディスクドライブにおいて,ドライブ本
体3,13は,光学ヘッド,アクセス機構,スピンドルモータ,回路基盤等が含ま
れるドライブ本体であり,フレーム1,11は,当該ドライブをコンピュータの補
助記憶装置として当該コンピュータの内部等に取り付ける際に用いるための単なる
フレームにすぎず(甲6の2頁右上欄第2段落),ドライブ本体3,13は,本件
発明のトラバースモジュール及びトレイモーション制御モジュールの両方を含むも
のであることは明白である。したがって,フレーム1,11がトレイモーション制
御モジュールに相当し,ドライブ本体3,13がトラバースモジュールに相当する
とする本件決定の認定は誤りである。
(3)相違点(ⅱ)についての判断の誤り
 本件決定は,本件発明と刊行物1発明の相違点(ⅱ)として認定した,「本件
発明は,振動を発生する系で発生した振動を減衰し,かつその振動をその系の外方
に伝達すべくバネ定数K値の大きなダンパを介して,トラバースモジュール上で接
続された,回転源からの振動エネルギーを吸収するための振動吸収装置を備えてい
るのに対して,刊行物1の発明(注,刊行物1発明)ではこのような振動吸収装置
を備えていない点」(決定謄本10頁[相違点](ⅱ))について,「刊行物1の発
明において,そのトラバースモジュール(金属板44)上に振動吸収装置(振動板
28)を接続することは,刊行物2(注,甲5)に記載された公知の事項を適用し
て当業者が容易に想到できたことである。また,この容易性については,刊行物3
(注,甲6)において,制振体Aを介してフレーム上でドライブ本体を接続し,さ
らに制振体Bを介してドライブ本体上でカバー接続している構成をみれば,一層明
らかなことである。そして,刊行物1の発明に対して刊行物2に記載された公知の
事項を適用するに当たり,上記刊行物3に記載された周知の慣用技術を考慮して,
上記弾性固定手段に替えてバネ定数K値の大きなダンパを介在させるようにするこ
とは,当業者であれば容易に想到できた」(同11頁第2段落~第3段落)と判断
した。
 しかし,本件発明は,トレイモーション制御モジュールとトラバースモジ
ュールと振動吸収装置という三つのモジュールが振動絶縁体を介して下からこの順
番で垂直方向に接続されてなるディスクプレーヤである。これに対し,刊行物2に
記載された磁気ディスクドライブ装置では,振動板28はシャーシ16の下方に設
けられ,振動吸収装置がトラバースモジュールの下部中空にぶら下げられた構造と
なっており,しかも,シャーシ16は両側部が振動絶縁体を介してハウジング12
の側壁に水平方向に接続されているのであって,本件発明とは振動吸収機構が全く
異なり,振動発生源に及ぼす制振作用も全く相違するものである。したがって,当
業者が,刊行物2に記載された磁気ディスクドライブ装置の振動吸収システムの構
成から,刊行物1発明のトラバースモジュール(金属板44)上に振動吸収装置
(振動板28)を接続するという構成を導くことは困難である。また,刊行物3に
記載された光磁気ディスクドライブは,ドライブ本体3,13上に制振体4,14
(制振体B)を介して振動吸収装置としてのカバー5,15が設けられているもの
である。しかし,上記のとおり,ドライブ本体3,13は,本件発明のトラバース
モジュール及びトレイモーション制御モジュールの両方を含むものであると認めら
れるが,トラバースモジュールとトレイモーション制御モジュールとの間が,どの
ような制振設計をもって接続されているかについては,刊行物3には全く記載され
ておらず,振動吸収装置であるカバー5,15がドライブ本体3,13内部のトラ
バースモジュールに対し振動吸収システムとしてどのように作用するかも全く不明
である。したがって,刊行物3に記載された光磁気ディスクドライブの振動吸収シ
ステムの構成からも,上記構成を導くことは困難である。さらに,刊行物3には,
制振体Bが適当なバネ定数と粘性減衰係数を持つゴムである旨の記載があるだけ
で,制振体Aと比して具体的にどのようなバネ定数K値を持つ部材を使用するかに
ついての記載はないから,当業者が,刊行物1発明と刊行物2の記載から上記構成
を導くに当たり,刊行物3の記載をもって,弾性固定手段に替えてバネ定数K値の
大きなダンパを介在させるようにすることも,容易に想到し得るものではない。
4 取消事由4(本件発明の顕著な作用効果の看過)
 本件決定は,「本件発明を全体的にみても,上記刊行物1~3に記載された
発明及び周知の慣用技術から当業者が当然予測できる範囲を超える格別の作用・効
果を見出すことができない」(決定謄本11頁第4段落)と判断したが,本件発明
の有する後記顕著な作用効果を看過するもので,誤りである。
 本件明細書等に従来技術として記載した図1の振動吸収システムは,トレイ
モーション制御モジュール上にダンパを介してトラバースモジュールを接続したも
のであるが,動作周波数付近では,トラバースモジュールの振動曲線は逓減する
が,トレイモーション制御モジュールの振動曲線は逓増し,このような振動吸収シ
ステムの構成ではトレイモーション制御モジュールの振動を抑えることができず,
その結果として,ディスクプレーヤのケーシングに大きな振動を引き起こしてしま
うものである(本件明細書等の段落【0003】)。また,本件明細書等に従来技
術として記載した図2の振動吸収システムはトレイモーション制御モジュール上に
アイソレータを介してトラバースモジュールを接続したものであるが,動作周波数
付近では,トレイモーション制御モジュールの振動曲線は低レベルに抑えられる
が,トラバースモジュールの振動曲線は高レベルのまま減少せず,このような振動
吸収システムの構成ではトラバースモジュールの振動を抑えることができない(同
段落【0004】)。これに対し,本件明細書等の図8は,本件発明のディスクプ
レーヤにかかる振動吸収システムの周波数特性を示したものであり,動作周波数付
近では,当該トレイモーション制御モジュールの振動曲線を低レベルに抑えるとと
もに,トラバースモジュールの振動曲線も極小値に抑えており,本件発明の振動吸
収システムは両者の振動を同時に抑えることができるものである。このように,振
動吸収システムでは各モジュールをどのような配列や位置関係で接続するか,ま
た,モジュール間の接続に用いる振動絶縁体をダンパ,すなわちバネ定数K値の大
きい振動絶縁体を用いるか,アイソレータ,すなわちバネ定数K値の小さい振動絶
縁体を用いるかによって,振動吸収システムの周波数特性が大きく異なるものであ
り,その制振効果も著しく相違するものである。本件発明のディスクプレーヤは,
振動発生源であるトラバースモジュールの下部に,該系内にその振動を維持すべく
バネ定数K値の小さなアイソレータを介してトレイモーション制御モジュールを設
けると共に,トラバースモジュールの上部には当該系で発生した振動を減衰し,か
つ,その振動をその系の外方に伝達すべくバネ定数K値の大きなダンパを介して振
動吸収装置を設けたものであり,このような構成を採用することにより,発生源で
あるトラバースモジュールの振動を減少させてディスクの読み
取り安定性を向上させると共に,ケーシングの振動発生を抑えてノイズを低減さ
せ,かつ,振動吸収装置(ダイナミックアブソーバ)を有する従来型の欠点であっ
たノッキング現象(衝突,すなわち強い勢いでぶつかるような動作)やパッティン
グ現象(振動によってパタパタと物に当たるような動作)等をも抑制させるとい
う,従来のディスクプレーヤでは達成し得なかった顕著な作用効果を奏するもので
ある。
第4 被告の反論
   本件決定の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がな
い。
1 取消事由1(本件発明と刊行物1発明との一致点の認定の誤り)について
(1)刊行物1発明の認定の誤りについて
 刊行物1発明のディスク装置は,振動吸収システムとして見れば,①ケー
シング10,②シャーシ40,ベース43及びディスクトレイ4等並びに③金属板
44,スピンドルモータ45及び光学ヘッド移動機構48の3モジュールから成
り,モジュール①とモジュール②との間には緩衝部材7が介在され,モジュール②
とモジュール③との間にはインシュレータ441が介在されている。また,シャー
シ40とベース43との間には緩衝部材5が介在されているが,これらは,併せて
一つのモジュール(モジュール②)というべきである。刊行物1発明において,ベ
ース43の後方の両側部には,機構ユニット42のシャーシ40に対する回動支持
部として,軸431,432がそれぞれ突出形成されており,これらの軸431,
432は,シャーシ40に形成された軸孔433,434に回動可能に軸支されて
いる。これにより,機構ユニット42は,その後方部分がシャーシ40に対して回
動可能に軸支される。この機構ユニット42が軸431,432を中心に回動する
と,機構ユニット42の前方部分がシャーシ40に対して当該シャーシの厚さ方向
に変位(上昇又は降下)する。そして,上記軸431,432の少なくとも一方に
は,リング状の緩衝部材(ゴムワッシャー)5がベース43の側面とシャーシ40
の内面のそれぞれに密着した状態で装着されている。なお,機構ユニット42は,
ベース43,インシュレータ441,金属板44,スピンドルモータ45,ターン
テーブル46,光学ヘッド47及び光学ヘッド移動機構48を有するものである。
このように,ベース43が回動支持部において回動することにより,スピンドルモ
ータ45やターンテーブル46が配置されている機構ユニット42の前方部分が,
シャーシ40に対して上昇又は降下する。この動作によって,ディスクトレイ4上
に載置された光ディスク3をターンテーブル46上に装着したり,又はこれとは逆
に,ターンテーブル46上に装着されている光ディスク3をディスクトレイ4上に
戻すことができる。すなわち,上記回動支持部は,上記ディスクトレイ4と共にデ
ィスクローディング機構を構成しているものである。上記回動支持部は,ベース4
3に突出形成された軸431,432がシャーシ40の軸孔433,434に回動
可能に軸支されており,また,軸431,432の少なくとも一方には,リング状
の緩衝部材5がベース43の側面とシャーシ40の内面に密着した状態で装着され
て構成されている。このような回動支持部において軸支されたベース43は,軸4
31,432の軸方向に緩衝部材5の弾性変形分だけシャーシ40に対して変位可
能であるが,上記軸方向と直交する方向(例えば,前後方向又は上下方向)には,
緩衝部材5を介在することなくシャーシの軸孔433,434によって直接支持さ
れることにより拘束されているものである。そうすると,緩衝部材5が装着されて
いる回動支持部は,軸431,432の軸方向の振動に限って多少吸収する働きを
するが,それ以外のすべての方向の振動については全く吸収することができないも
のである。また,緩衝部材5が軸431,432の一方にだけ装着される場合に
は,上記軸方向の振動の一方向については振動を吸収しないことになる。したがっ
て,上記回動支持部に装着された緩衝部材5は,本件発明におけるアイソレータや
刊行物1発明のインシュレータ441のように,スピンドルモータ部で生ずるあら
ゆる方向の振動を吸収する振動吸収部材として働くものではなく,ベース43とシ
ャーシ40との間における軸431,432の軸方向のガタツキを防止するために
設けられたものである。
 他方,本件発明を見ると,そのディスクローディング機構については,特
許請求の範囲の【請求項1】に「トレイを支持し,かつ指令に応じてディスクトレ
イの挿入あるいは排出動作を実行するトレイモーション制御モジュール」という記
載がある。この記載によれば,本件発明の「ディスクプレーヤ」はディスクトレイ
を備えており,このディスクトレイは挿入又は排出動作をするものであることが明
らかである。そして,本件発明のようなディスクトレイを備えるディスクプレーヤ
においては,当該ディスクトレイ上に載置された光ディスクをターンテーブル上に
装着したり,又はその逆に,光ディスクをターンテーブルからディスクトレイ上に
戻すために,ディスクトレイの挿入あるいは排出動作を行う機構のほかに,ターン
テーブルとディスクトレイとを相対的に昇降させる機構(例えば,ディスクトレイ
に対してターンテーブルを昇降させる機構)を必要とすることは,当然のことであ
る。しかしながら,本件発明は,「ディスクプレーヤの振動吸収システム」に関す
る発明として明細書に開示されており,本件発明の構成に直接関係のないディスク
ローディング機構,特に,ターンテーブルとディスクトレイとを相対的に昇降させ
る機構については,明細書の発明の詳細な説明の欄や図面に説明されていないばか
りでなく,【請求項1】においても特定されていないものである。すなわち,本件
発明は,「ディスクプレーヤの振動吸収システム」に関するものであって,「ター
ンテーブルとディスクトレイとを相対的に昇降させる機構」については,発明を特
定する事項としていないものである。このような本件発明と対比すべき発明を,刊
行物1に記載された事項に基づいて認定するときには,ターンテーブルとディスク
トレイとを相対的に昇降させる機構の一部分である緩衝部材5に関することは,認
定の対象とする必要のない事項である。
 以上のように,刊行物1発明における回動支持部に設けられたリング状の
緩衝部材5は,振動吸収システムとして見たとき,本件発明におけるアイソレータ
のようにスピンドルモータ部で生ずる振動を吸収する部材に相当するものではない
から,刊行物1に記載された事項に基づいて,「ディスクプレーヤのための振動吸
収システム」に関する本件発明と対比すべき発明を認定するときは,この緩衝部材
5を備える回動支持部を構成するシャーシ40とベース43とは,別個の独立した
モジュールではなく,振動吸収システム上の一体物(一つのモジュール)と認定す
べきものである。したがって,本件決定の刊行物1発明の認定に,原告主張の誤り
はない。
 (2)一致点の認定の誤りについて
 上記のとおり,刊行物1発明において,シャーシ40とベース43とは一
つのモジュールとして認定すべきものであり,その「ディスクトレイ及びベースを
支持するシャーシ」は,スピンドルモータ45及び光学ヘッド移動機構48等が取
り付けられている金属板44をインシュレータ441を介して支持するものであっ
て,本件発明における「トレイモーション制御モジュール」に相当するものである
ことが明らかである。したがって,本件決定が,本件発明の「トレイモーション制
御モジュール」は,刊行物1発明の「ディスクトレイ及びベースを支持するシャー
シ」に相当すると認定した点に誤りはなく,本件発明と刊行物1発明との一致点の
認定にも誤りはないから,原告の取消事由1の主張は失当である。
2 取消事由2(本件発明と刊行物1発明との相違点(ⅰ)についての判断の誤
り)について
 刊行物1(甲4)には,「従来の技術の問題点」について,「【0019】
光ディスク3の寸法誤差の許容範囲は,規格で定められているが,この規格は光デ
ィスク3の回転速度が1倍速の場合を前提としたものである。そのため,そのよう
な光ディスク3を高速(1倍速を超える速度)でドライブした場合,光ディスク3
の寸法誤差や重心のずれに基づく偏心回転により,1倍速の場合に比べ,機構ユニ
ット22に大きな振動が生じる。また,光ディスク3の中には,規格外のもの(粗
悪なもの)もあり,この場合には,前記振動がより激しく生じる。【0020】ま
た,このような振動は,光ディスク3のターンテーブル26に設置する際の中心軸
のずれ(偏心)によっても生じる。このような振動は,機構ユニット22からシャ
ーシ20ヘ,さらには,シャーシ20から金属製のケーシング10B(底板11お
よび筐体14)へと伝達され,ケーシング10Bが共振して,騒音を発する。【0
021】特に,前述したように,機構ユニット22とシャーシ20の凹部との間に
は,間隙が形成されているため,高速回転による前述した機構ユニット22の振動
が生じると,機構ユニット22のシャーシ20に対するガタツキが生じ,より一層
大きな騒音が発生する」と記載され,「発明が解決すべき技術課題」について,
「【0022】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,機構ユニットの
シャーシに対する支持構造等を改善することにより,ディスクの偏心回転等による
振動や騒音の発生を抑制することができるディスク装置を提供することにある」と
記載されている。刊行物1の上記記載によれば,刊行物1発明は,図13に示され
た従来のものにおいて,シャーシ(20)に対する機構ユニット(22)の振動を
なるべく抑制して,これらの間のガタツキを防止することを技術課題とするもので
あり,光ディスクの回転により発生する振動はできるだけ外側方向へ,すなわち,
金属板(44)からベース(43)へ伝達しないようにすることが要求されるもの
であり,金属板(44)とベース(43)間に介在されている4個のインシュレー
タ(441)は,振動が金属板(44)からベース(43)へできるだけ伝わらな
いように機能するものと解するのが相当であるから,当業者は,刊行物1発明にお
いて用いられている「インシュレータ(441)」は,振動の伝達を抑制するもの
であって,バネ定数K値の比較的小さいものを用いているものと理解する。また,
ディスクプレーヤに通常使用されている「インシュレータ」と称する部品が,ディ
スクプレーヤの外部(ケーシング側)から与えられる振動や衝撃を,スピンドルモ
ータや光ピックアップ等を取り付けた基板(刊行物1発明の金属板(44)に相当
する)へ伝達しないように機能するものであることは,当該技術分野において周知
の事項である。すなわち,ディスクプレーヤにおいて使用されている「インシュレ
ータ」と称する部品は,振動の伝達を抑制する機能を有するものであり,バネ定数
K値の比較的小さなものが普通であるから,当業者は,刊行物1発明のディスクプ
レーヤにおいて,金属板(44)とベース(43)との間に介在されているインシ
ュレータ(441)は,「インシュレータ」という用語を用いている点から見て
も,バネ定数K値の比較的小さいものであることを理解する。
 したがって,本件決定が,相違点(ⅰ)の判断において,「振動を抑制するこ
とをその技術課題とするものであるから,インシュレータのバネ定数K値は当然小
さいものが用いられている」と認定している点に誤りはない。
3 取消事由3(本件発明と刊行物1発明との相違点(ⅱ)についての判断の誤
り)について
(1)刊行物2に記載された技術的事項の認定の誤りについて
 刊行物2(甲5)には,「本例では,ハウジング12内に磁気ディスクド
ライブ装置のシャーシ16が防振ゴムとネジとの組合わせなどでなるそれ自体は公
知の態様の結合手段14により取り付けられている。この結合手段14は比較的高
い周波数域の振動が伝播し難い(減衰し易い)特性を有する。シャーシ16の上に
は,磁気ヘッド18が固定された防振を施すべき機構ブロックたるキャリッジ20
と,フロッピディスク(図示せず)を回転するためのスピンドルモータ22が剛性
の高い複数のネジ24により組み付けられている。キャリッジ20は,スピンドル
モータ22上のディスク(図示せず)に対し,径方向にヘッド18を移動するよう
になっている。スピンドルモータ22はシャーシ16に,スピンドルモー夕22の
回転ブレによる比較的高周波数域の振動を伝播し易い結合手段,例えば複数のネジ
24によって取付けられている」(9頁),「磁気ディスクドライブ装置のシャー
シ16の下方には,第2図に詳細に示すような振動板28が弾性固定手段30を介
して固定されている。振動板28は,・・・側面に近い3点で弾性固定手段30を
介してシャーシ16の下方に固定されている。・・・この振動板に比較的広帯域の
周波数に対してフラットな共振特性を持たせるために,内部に多数の細長い孔が形
成されている。・・・上記孔の形状,配置および数は,最適な共振特性が得られる
よう実験的に決定する」(10頁第2段落),「シャーシ16と,振動板28を固
定する弾性固定手段30は,第2図(注,第3図とあるのは誤記と認める。)に示
すようなスタッド34と,圧縮バネ38と,ネジ36とから成り・・・このバネ3
8のバネ定数は弾性固定手段30が全体として比較的広い周波数域の振動の伝播が
良好となるような特性を持つよう実験的に選択する」(10頁最終段落~11頁第
1段落),「このディスクドライブ装置は,ハウジング12の外部からの衝撃を受
けると,これによる瞬時的な高周波域の振動は結合手段14によってその伝播が抑
制され,一方比較的低周波の振動は,ハウジング12,シャーシ16および全周波
数に対する伝達特性の良好な弾性固定手段30を介して振動板28に伝えられ
る。・・・このため,外部から加えられた振動のうちシャーシ16まで伝播する低
域振動の大部分は,振動板28へ伝えられ,振動板28の振動エネルギーとして吸
収される」(11頁第2段落~12頁第1段落),「一方,装置内の運動機構,例
えばスピンドルモータ22の回転ブレにより生じた内的要因による振動は・・・ス
ピンドルモータ22からシャーシ16,次に全周波数に対する伝達特性の良好な弾
性固定手段30を介して,制振板28へ伝えられ,外的要因による低周波振動と同
じように振動板28で吸収される。このためスピンドルモータ22の回転ブレによ
る振動は,キャリッジ20上のヘッド18へは伝えられず,常時安定な信号の記録
再生ができる」(12頁第2段落)との記載がある。
 刊行物2の上記記載並びに第1図及び第2図によれば,刊行物2には,
「ハウジング(12)内に比較的高い周波数域の振動が伝播し難い(減衰し易い)
特性を有する結合手段(14)を介してシャーシ(16)が取り付けられ,前記シ
ャーシ(16)上には磁気ヘッド(18)を備えるキャリッジ(20)とスピンド
ルモータ(22)が結合手段(24)により取り付けられている磁気ディスクドラ
イブ装置において,前記シャーシ(16)に対して,比較的広い周波数域の振動の
伝播が良好となるような特性を持つ弾性固定手段(30)を介して振動板(28)
を固定することにより,回転源であるスピンドルモータ(22)から生じた振動を
振動板(28)で吸収して減衰し,安定な信号の記録再生を可能にすること」(決
定謄本8頁第3段落)が記載されていることは明らかであり,また,磁気ディスク
ドライブ装置において,スピンドルモータ(22)で発生する振動は,シャーシ
(16)から弾性固定手段(30)を介して振動板(28)へ伝えられ,この振動
板(28)で吸収されることが記載されているから,「本件発明と同じ技術分野に
属する磁気ディスクドライブ装置において,回転源であるスピンドルモータからの
振動エネルギーを吸収してシャーシ(16)(トラバースモジュール)の振動を減
少させるために,該シャーシ(トラバースモジュール)上に比較的広い周波数域の
振動の伝播が良好となるような特性を持つ弾性固定手段(30)を介して振動板
(28)(振動吸収装置)を設けること」(同10頁下から第3段落)は,刊行物
2の上記記載から公知の事項であることが明らかである。ここで,本件決定の上記
公知の事項の認定における,「該シャーシ(トラバースモジュール)上に・・・振
動板(28)(振動吸収装置)を設ける」という記載は,「該シャーシに振動板を
設ける」ないし「該シャーシに対して振動板を設ける」という意味であって,シャ
ーシに対する振動板の上下位置を特定しようとするものではない。「上に」という
表現は,通常このような意味でも用いられている。
(2)刊行物3に記載された技術的事項の認定の誤りについて
 刊行物3(甲6)には,「第1図は本発明の光磁気ディスクドライブの構
造を示す概略断面図である。構成を説明すると1はドライブをコンピューターの補
助記憶装置として該コンピューターの内部あるいは外部に取り付ける際に用いるフ
レームである。このフレームに2の制振体Aを介してドライブ本体3を取り付け
る。制振体Aは通常防振ゴムを使用する。またドライブ本体には光学ヘッド,アク
セス機構,スピンドルモータ,回路基板等が含まれる。次にドライブ本体に4の制
振体Bをのせ,その上にカバー5を取り付ける」(2頁右上欄第2段落),「第2
図は本発明の光磁気ディスクドライブの分解斜視図である。この図で12の制振体
Aは・・・フレームの四隅に取り付ける。・・・またドライブ本体の上にのせる1
4の制振体Bは絶縁性があり,適度なバネ定数と粘性減衰係数を持つ防振ゴムを用
いる。さらにカバー15は本発明に重要な動吸振器を構成する部品であり所要の質
量を有する・・・。このカバーと制振体Bとにより動吸振器が構成される」(同最
終段落~左下欄),「外部からの振動はドライブの設置場所,取り付け場所におい
てフレームから制振体Aを介してドライブ本体に伝わる。ある周波数の振動,例え
ば数十Hzで制振体Aは共振するためドライブ本体も強制的に振動させられる。し
かしバネ定数と粘性減衰係数が最適化されている制振体Bとカバーが副振動系とし
て共振し,ドライブ本体をほぼ静止させることができる」(同右下欄第2段落)と
の記載がある。
 刊行物3の上記記載によれば,ドライブ本体(3,13)は,光学ヘッ
ド,アクセス機構,スピンドルモータ及び回路基板等を含んでおり,制振体A
(2,12)を介してフレーム(1,11)上に接続され,かつ,制振体B(4,
14)を介してカバー(5,15)を接続しているものであって,振動が伝達され
ても,制振体B(4,14)とカバー(5,15)の作用によってドライブ本体
(3,13)の振動を抑制してほぼ静止状態とするものであるから,これらの構成
を振動吸収システムとして見ると,前記ドライブ本体(3,13)は本件発明のト
ラバースモジュールに相当し,前記フレーム(1,11)は本件発明のトレイモー
ション制御モジュールに対応することが明らかである。なお,刊行物3に記載のも
のにおいて,フレーム(1,11)はディスクトレイを備えていることが明らかで
ないから,このフレームが本件発明のトレイモーション制御モジュールに相当する
とはいえず,本件決定では対応すると説示している。したがって,刊行物3に記載
された技術的事項に係る本件決定の認定に誤りはない。
4 取消事由4(本件発明の顕著な作用効果の看過)について
 刊行物2(甲5)に記載されたディスクプレーヤは,上記のとおり,振動発
生源であるシャーシ(16)(トラバースモジュール)に結合手段(14)(アイ
ソレータに対応)を介してハウジング(12)(トレイモーション制御モジュール
に対応)を設けると共に,前記シャーシ(16)に弾性固定手段(30)(ダンパ
に対応)を介して振動板(28)(振動吸収装置)を設けて成り,振動発生源であ
るシャーシ(16)(トラバースモジュール)の振動を減少させて,ディスクの記
録再生動作の安定性を向上させるという作用効果を奏するものである。また,刊行
物3(甲6)に記載されたディスクプレーヤは,上記のとおり,振動発生源である
ドライブ本体(3,13)(トラバースモジュール)の下部に制振体A(2,1
2)(アイソレータに対応)を介してフレーム(1,11)(トレイモーション制
御モジュールに対応)を設けると共に,前記ドライブ本体(3,13)の上部には
制振体B(4,14)(ダンパに対応)を介してカバー(5,15)(振動吸収装
置)を設けて成り,ドライブ本体(3,13)(トラバースモジュール)の振動を
減少させて,ディスクの記録再生動作の安定性を向上させるという作用効果を奏す
るものである。したがって,本件発明の作用効果は,刊行物2,3に記載されたも
のが奏する作用効果を超えるものではなく,刊行物2,3記載のものから当業者が
当然予測し得る範囲内のものである。本件明細書等には,図7に示されたシステム
に基づいて,ダイナミックアブソーバ(71)とトラバースモジュール(73)の
アセンブリ構成に係る製造,販売についての効果が記載されている(段落【001
2】)。しかしながら,上記効果は,トレイモーション制御モジュール(75)に
接続されたトラバースモジュール(73)に対して,ダイナミックアブソーバ(7
1)を接続した構成により生ずるものであり,刊行物2,3記載のものにおいて
も,これと類似した構成を備えているから,本件発明と同様の効果を生ずるもので
ある。すなわち,刊行物2記載のものでは,ハウジング(12)(トレイモーショ
ン制御モジュール(75)に対応する)に接続されたシャーシ(16)に対して,
振動板(28)を接続した構成を備えており,また,刊行物3記載のものでは,フ
レーム(1,11)(トレイモーション制御モジュール(75)に対応する)に接
続されたドライブ本体(3,13)に対して,カバー(5,15)を接続した構成
を備えている。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(本件発明と刊行物1発明との一致点の認定の誤り)について
(1)本件決定は,刊行物1(甲4)には,「ディスクトレイ(4)及びベース
(43)を支持し,かつ制御手段(CPU)からの指令に応じて前記ディスクトレ
イの挿入あるいは排出動作,及び前記ベースの上昇降下動作を実行する変位機構
(50)を搭載したシャーシ(40)と,ディスク装置(1A)の動作中に振動を
発生する回転源であるスピンドルモータ(45)を備え,弾性材料からなるインシ
ュレータ(441)を介して前記シャーシ(40)に支持されたベース(43)上
で接続された金属板(44)とを備えたディスク装置」(決定謄本6頁第6段落)
の発明が記載されていると認定した上,本件発明と刊行物1発明を対比して,「刊
行物1の発明(注,刊行物1発明)における『ディスクトレイ』,『ディスクトレ
イ及びベースを支持するシャーシ』,『ディスク装置』及び『金属板』は,それぞ
れ本件発明における『トレイ又はディスクトレイ』,『トレイモーション制御モジ
ュール』,『ディスクプレーヤ』及び『トラバースモジュール』に相当する」(同
9頁(4)対比)ものであるから,両者は,「トレイを支持し,かつ指令に応じてディ
スクトレイの挿入あるいは排出動作を実行するトレイモーション制御モジュール
と,ディスクプレーヤの動作中に振動を発生する回転源を備え,振動絶縁体を介し
て該トレーモーション制御モジュール上で接続されたトラバースモジュールとを備
えたディスクプレーヤ」(同)である点において一致すると認定した。
(2)本件決定の上記説示によれば,上記一致点の認定は,刊行物1発明のベー
ス43とシャーシ40が,一体として,本件発明のトレイモーション制御モジュー
ルに相当するものであるとの認定を前提とするものであるから,まず,本件発明の
構成について検討する。
  本件明細書等には,「トレイを支持し,かつ指令に応じてディスクトレイ
の挿入あるいは排出動作を実行するトレイモーション制御モジュールと,ディスク
プレーヤの動作中に振動を発生する回転源を備え,かつ,振動を発生する系内にそ
の振動を維持すべく,バネ定数K値の小さなアイソレータを介して該トレーモーシ
ョン制御モジュール上で接続されたトラバースモジュールと,前記系で発生した振
動を減衰し,かつその振動をその系の外方に伝達すべくバネ定数K値の大きなダン
パを介して,該トラバースモジュール上で接続された,前記回転源からの振動エネ
ルギーを吸収するための振動吸収装置とを備えたディスクプレーヤ」(特許請求の
範囲【請求項1】),「【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】ディスク
プレーヤの動作速度を飛躍的に高めるためには,ディスクプレーヤの高速動作中に
同ディスクプレーヤ内の回転源から生じる振動を抑えることが有効であるという点
については周知である。従来のディスクプレーヤの振動吸収システムについて述べ
ると,以下に述べるような4種類の典型的なシステムを挙げることができる」(段
落【0002】),「本発明は従来品を鑑みてなされたものであり,
その目的は高速動作中における振動を低減するために簡易にして効果的な構成を備
えたディスクプレーヤを提供することにある。【課題を解決するための手段】上記
した目的を達成するために,本発明はトレイを支持し,かつ指令に応じてディスク
トレイの挿入あるいは排出動作を実行するトレイモーション制御モジュールと,デ
ィスクプレーヤの動作中に振動を発生する回転源を備え,かつ,振動を発生する系
内にその振動を維持すべく,バネ定数K値の小さなアイソレータを介して該トレイ
モーション制御モジュール上で接続されたトラバースモジュールと,前記系で発生
した振動を減衰し,かつその振動をその系の外方に伝達すべくバネ定数K値の大き
なダンパを介して,該トラバースモジュール上で接続された,前記回転源からの振
動エネルギーを吸収するための振動吸収装置とを備えたことをその要旨とする。
【発明の実施の形態】図5,6に示すように,本発明の振動吸収システムは,ダン
パ52(K1,C1)にてトラバースモジュール53に接続されたダイナミックア
ブソーバ51及び,トラバースモジュール53をトレイモーション制御モジュール
55に接続するアイソレータ54(K2,C2)を使用している。・・・ダイナミ
ックアブソーバ51は,同ダイナミックアブソーバ51に接続された構成要素に対
して広範囲に移動でき,ディスクプレーヤの動作中振動エネルギー,又は衝撃エネ
ルギーの殆どを吸収することができる振動吸収装置,或いは衝撃吸収装置として形
成されている。アイソレータ54は,振動を同振動の発生源であるシステム内に維
持する小さいK値を持っている。ダンパ52は,振動を低減する一方,振動を発生
源であるシステムから外方へ伝達する大きなK値を持つ。本発明がダイナミックア
ブソーバ51をデイエスクプレーヤからの振動エネルギーを吸収する主構成部品と
して使用している。このような設計では,ディスクプレーヤが動作中に縦置された
としても,ダイナミックアブソーバ51はトレイモーション制御モジュール55に
接触することはなく,図4に示した従来の方法の欠点を回避できる。この構成には
トラバースモジュール53の振動を低減させ,ディスクを安定して読み取らせるこ
とができる。さらに,トレイモーション制御モジュール55に伝達された振動力も
また最小化されパッテイングノイズを防ぎ,コンピュータシステムのケーシングの
共振も防止する」(段落【0007】~【0010】)との記載がある。ところ
で,「モジュール」とは「装置・機械・システムを構成する部分で,機能的にまと
まった部分」(広辞苑第5版)を意味する語である。本件発明においては,「モジ
ュール」の用語について定義はされていないものの,本件明細書等から,「トレイ
モーション制御モジュール」とは,トレイの挿入・排出動作を行う一体の機構部分
(本件明細書等の特許請求の範囲【請求項1】)であって,ディスクの回転中はそ
れ自体では振動発生源とはならないものであること,「トラバースモジュール」と
は,少なくともディスクを回転させるスピンドルモータを備え,ディスク回転中に
振動発生源となり得る機構部分であり,両者はそれぞれ単独の別体として構成され
たもの(モジュール)であることが認められ,「モジュール」の用語が上記通常の
意味で使用されていることが明らかである。そうすると,本件明細書等の上記記載
によれば,本件発明は,高速回転中のディスクプレーヤの振動を有効に低減するこ
とを目的とするものであり,この目的を達成するために,ディスクプレーヤを,
「トレイを支持し,かつ指令に応じてディスクトレイの挿入あるいは排出動作を実
行するトレイモーション制御モジュール」,「ディスクプレーヤの動作中に振動を
発生する回転源を備え・・・たトラバースモジュール」及び「前記回転源からの振
動エネルギーを吸収するための振動吸収装置(ダイナミックアブソーバ)」の3モ
ジュールから成る構成とし,トレイモーション制御モジュール上にトラバースモジ
ュールをアイソレータを介して接続し,さらに,トラバースモジュール上に振動吸
収装置(ダイナミックアブソーバ)をダンパを介して接続した振動吸収システムと
いう構成を採用したものということができる。
(3)これに対し,刊行物1(甲4)には,「ディスク装置1Bにおいては,近
年,8倍速,12倍速のような光ディスク3を高速で回転するものが開発されてい
るが,この場合には,次のような問題がある。・・・光ディスク3を高速・・・で
ドライブした場合,光ディスク3の寸法誤差や重心のずれに基づく偏心回転によ
り,1倍速の場合に比べ,機構ユニット22に大きな振動が生じる」(段落【00
18】~【0019】),「シャーシと,ディスクを回転駆動するディスク回転駆
動手段および前記ディスクに記録された情報を再生する再生手段を有し,前記シャ
ーシに対しその後方部分が回動可能に支持された機構ユニットとを有する装置本体
を備えたディスク装置であって,前記機構ユニットの前記シャーシに対する回動支
持部は,機構ユニットの両側部にそれぞれ突出する軸で構成されており,前記軸の
少なくとも一方に,緩衝部材を装着するとともに,前記機構ユニットの前方部分を
付勢する付勢部材を設置したことを特徴とするディスク装置」(特許請求の範囲
【請求項1】),「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,機構ユニッ
トのシャーシに対する支持構造等を改善することにより,ディスクの偏心回転等に
よる振動や騒音の発生を抑制することができるディスク装置を提供することにあ
る」(段落【0022】),「ベース43の後方(装置本体2の奥部)側の両側部
には,それぞれ,機構ユニット42のシャーシ40に対する回動支持部として,軸
431,432が突出形成されている。これらの軸431,432は,それぞれ,
シャーシ40側に形成された軸孔433,434に挿入されている。これにより,
機構ユニット42は,その後方部分がシャーシ40に対し回動可能に軸支されてい
る。そして,機構ユニット42が軸431,432を中心に回動すると,機構ユニ
ット42の前方部分がシャーシ40に対し,シャーシ40の厚さ方向に変位する」
(段落【0050】),「図2~図4および図9に示すように,軸431,432
のうちの一方の軸431には,振動を吸収するためのリング状の緩衝部材(ゴムワ
ッシャー)5が装着されている。この緩衝部材5の厚さは,軸431,432付近
における間隙411の幅と同等かまたはそれより若干大きい値に設定され,これに
より緩衝部材5は,ベース43の側面と,シャーシ40の空間41に臨む内面との
間に挟持された状態,すなわち,ベース43の側面とシャーシ40の内面のそれぞ
れに密着した状態となる」(段落【0051】),「このような構成の緩衝部材5
によれば,第2層5bおよび第3層5cによる優れた摺動性により,シャーシ40
に対する機構ユニット42の回動をより円滑に行うことができるとともに,第1層
5aの優れた弾力性により,高い振動吸収機能(緩衝機能)を得ることができる。
なお,積層体の層数は,2層または4層以上であってもよい。また,各層の構成材
料の組み合わせは,前述したものに限定されない」(段落【0054】),「以上
のような緩衝部材5を設置することにより,例えば光ディスク3の偏心回転により
機構ユニット42が振動したとしても,その振動が緩衝部材5により吸収(緩和)
され,シャーシ40への伝搬が阻止または抑制される。従って,シャーシ40に対
する機構ユニット42のガタツキ,特に,機構ユニット42の後方部分のガタツキ
が防止され,ディスク装置1A全体の振動および騒音の発生を抑制する効果(制振
効果)が得られる。なお,このような緩衝部材5は,軸431,432の双方に装
着されていてもよい。また,ベース43の前方部分(装置本体2の手前側)であっ
て,軸431側(緩衝部材5が装着されているのと同じ側)の側部には,板バネよ
りなる付勢部材(バネ部材)6が当接し,機構ユニット42の前方部分を軸432
側の側方(図2中左方向)へ付勢している。この付勢部材6は,ビス6aによりシ
ャーシ40に固定されている。このような付勢部材6により機構ユニット42の前
方側部を横方向(1方向)に付勢することによって,機構ユニット42の前方部分
のガタツキを防止することができる。特に,前記緩衝部材5とこの付勢部材6の双
方を設置したことにより,機構ユニット42の後方部分と前方部分のそれぞれのガ
タツキを有効に防止することができる。また,付勢部材6は,光ディスク3の偏心
回転により生じる振動が最も大きく生じる部分(振幅が大きい部分)またはその近
傍に設けられているのが好ましく,すなわち,機構ユニット42の側部であって,
前記ディスク回転駆動手段(スピンドルモータ45)の近傍に設置されているのが
好ましい。これにより,前記効果がより有効に発揮される。なお,付勢部材6は,
湾曲突部6bを有し,この湾曲突部6bがベース43の側面へ当接している。これ
により,ベース43の側面との接触面積をできるだけ小さくすることができ,機構
ユニット42の回動に伴う摩擦抵抗をより小さくすることができる。また,付勢部
材6のベース43の側面への押圧力は,機構ユニット42の前方部分のガタツキを
十分に防止することができ,かつ機構ユニット42の回動を阻害しない程度に設定
される。なお,このような付勢部材6は,ベース43の両側部に設置されていても
よい。また,付勢部材6は,ベース43の前方端に,ベース43を後方へ向けて押
圧するように設置されていてもよい。また,緩衝部材5と付勢部材6とを機構ユニ
ット42の同じ側の側部に設けた場合には,ディスク装置1Aの姿勢にかかわら
ず,前述したような優れた制振効果を発揮する。すなわち,横置きのコンピュータ
本体等にディスク装置1Aを水平な姿勢で設置した場合はもちろんのこと,該コン
ピュータ本体を縦置きにした場合,すなわちディスク装置1Aが垂直な姿勢となっ
た場合でも,優れた制振効果を発揮する」(段落【0056】~【0063】)と
の記載がある。上記記載によれば,刊行物1発明は,本件発明と同様,高速回転中
のディスクプレーヤーの振動を有効に低減することを目的とするものであり,この
目的を達成するために,シャーシ40に対するベースのガタツキを防止する緩衝部
材5及び付勢部材6を用
いる構成を採用したものということができる。すなわち,本件発明と刊行物1発明
は,ディスクプレーヤの回転振動を低減するという共通の目的に対し,前者におい
てはダイナミックアブソーバを応用した振動吸収システムを,後者においては緩衝
部材5及び付勢部材6を採用した振動吸収システムを採用したものであると認めら
れる。
(4)被告は,刊行物1発明のディスク装置は,振動吸収システムとして見れ
ば,①ケーシング10,②シャーシ40,ベース43及びディスクトレイ4等並び
に③金属板44,スピンドルモータ45及び光学ヘッド移動機構48の3モジュー
ルから成り,シャーシ40とベース43との間には緩衝部材5が介在されている
が,緩衝部材5は,本件発明におけるアイソレータや刊行物1発明のインシュレー
タ441のように,スピンドルモータ部で生ずるあらゆる方向の振動を吸収する振
動吸収部材として働くものではなく,ベース43とシャーシ40との間における軸
431,432の軸方向のガタツキを防止するために設けられたものであり,ま
た,本件発明の構成にないターンテーブルとディスクトレイとを相対的に昇降させ
る機構の一部分である緩衝部材5に関することは,認定の対象とする必要のない事
項であるから,緩衝部材5は,振動を吸収する部材に相当するものではないと主張
する。しかしながら,刊行物1(甲4)の上記記載によれば,刊行物1発明の緩衝
部材5及び付勢部材6は,振動吸収部材に該当するから,本件発明のアイソレータ
ないしダンパに相当するものであり,これらを介して接続されたシャーシ40とベ
ース43は,振動吸収システム上,別個のモジュールを構成するというべきであ
り,緩衝部材5の果たす作用が,アイソレータやインシュレータとは異なるもので
あるとしても,刊行物1においては,緩衝部材5や付勢部材6はディスクプレーヤ
等の振動を吸収するための主要部材として記載されているものであり,本件発明の
ダイナミックアブソーバやインシュレータ等の振動吸収部材とは機能的に異なるこ
とをもって,これを捨象して対比することはできないというべきである。
(5)そこで,進んで,本件発明と刊行物1発明を対比して,刊行物1発明にお
ける「ディスクトレイ及びベースを支持するシャーシ」が本件発明における「トレ
イモーション制御モジュール」に相当するとした本件決定の認定の当否について検
討する。
  刊行物1発明のディスクプレーヤのトレイの挿入・排出動作について,刊
行物1(甲4)には,「ベース43の後方(装置本体2の奥部)側の両側部には,
それぞれ,機構ユニット42のシャーシ40に対する回動支持部として,軸43
1,432が突出形成されている。これらの軸431,432は,それぞれ,シャ
ーシ40側に形成された軸孔433,434に挿入されている。これにより,機構
ユニット42は,その後方部分がシャーシ40に対し回動可能に軸支されている。
そして,機構ユニット42が軸431,432を中心に回動すると,機構ユニット
42の前方部分がシャーシ40に対し,シャーシ40の厚さ方向に変位する」(段
落【0050】),「一方,機構ユニット42のベース43の前面には,カム溝5
6a,56bにそれぞれ挿入される突起(従動部材)57a,57bが形成されて
いる。これらの突起57a,57bは,カム溝56a,56bに沿って摺動し,上
下方向に移動する。すなわち,突起57a,57bが上溝561と係合している状
態では,機構ユニット42の前方側は,上昇した位置(上側位置)にあり,突起5
7a,57bが下溝563と係合している状態では,機構ユニット42の前方部分
は,下降した位置(下側位置)にある。扇形ギア53の上部には,ディスクトレイ
4の裏面に形成された第1の案内溝4cおよび第2の案内溝4dにそれぞれ挿入す
る突起531,532が形成されている。突起531は,横断面が円形をなし,突
起532は,横断面が半円形をなしている。ディスクトレイ4は・・・浅い凹状の
ディスク載置部4aを有しており,光ディスク3は,該ディスク載置部4a上に載
置され,所望に位置規制された状態で搬送される。・・・ディスクトレイ4の裏面
には,小ギア525と噛合するラックギア4bが形成されている。これにより,デ
ィスクトレイ4は,モータ51の駆動により,シャーシ40に対し前後方向に,光
ディスク3の装填位置と光ディスク3の排出位置との間を移動する。そして,光デ
ィスク3のローディング操作では,小ギア525が・・・回転し,それによりディ
スクトレイ4が後方に移動し,ディスク3が装置本体2内に運び込まれる。また,
ディスクトレイ4の裏面には,第1の案内溝4cと,第2の案内溝4dとが形成さ
れている。第1の案内溝4cは,ラックギア4bとほぼ平行に形成され,ディスク
トレイ4の前方側・・・において,ラックギア4bに接近
するように傾斜している。また,第2の案内溝4dは,所望に屈曲している。これ
ら第1の案内溝4cおよび第2の案内溝4dには,前記扇形ギア53の突起531
および532がそれぞれ挿入され,ディスクトレイ4の移動に伴う突起531,5
32の移動軌跡,すなわち扇形ギア53の挙動(動き)を規定する。シャーシ40
の上部には,ディスククランパ8が設置されている。このディスククランパ8は,
板状の支持部材80と,該支持部材80に回転可能に支持される回転子81とで構
成されている。支持部材80は,その両端をそれぞれシャーシ40の取り付け部4
0cにボス(またはリベット)で止めることにより,シャーシ40の上部に横方向
に架設されている。この支持部材80のほぼ中央部には,円形の開口が形成されて
いる。一方,回転子81は,円盤状をなしており,支持部材80の前記開口に係合
する外縁部と,前記開口よりターンテーブル46側へ突出する部分とを有してい
る。この回転子81は,ターンテーブル46に内蔵された永久磁石により吸着し得
る材料(強磁性体)で構成されている」(段落【0068】~【0075】),
「ディスク装置1Aの作用について説明する。ディスク装置1Aの非使用時には,
空のディスクトレイ4は,ケーシング10内(装置本体2内)に収納された状態
(ディスク装填位置)にある・・・この状態でイジェクト操作を行うと,モータ5
1が所定方向に回転し,減速機構52を介して小ギア525が図2中反時計回りに
回転する。小ギア525には,ディスクトレイ4の裏面のラックギア4bが噛合し
ていることから,ディスクトレイ4は,小ギア525の前記回転に伴って前方へ移
動し,開口121,16aを通過して,ケーシング10から外側に突出した位置
(ディスク排出位置)まで移動する。またこれと同時に,カム溝56a,56bの
上溝561に位置していた突起57a,57b・・・が,傾斜溝562を経て下溝
563へ移動する(図6参照)。これにより,機構ユニット42は,軸431,4
32を中心に回動し,機構ユニット42の前方側が上側位置から下側位置へ下降
(変位)する。そして,機構ユニット42に搭載されたターンテーブル46も,下
側位置へ移動し,ディスククランパ8の回転子81から所定距離離間する。なお,
このとき緩衝部材5および付勢部材6は,前述したように,ベース43に対し低い
摩擦であり,よって,機構ユニット42の円滑な回動を妨げることはない。引き出
されているディスクトレイ4のディスク載置部4aに光ディスク3を載置し,ロー
ディング操作を行うと,モータ51が前記と逆方向に回転し,減速機構52を介し
て小ギア525が図2中時計回りに回転(逆回転)する。これに伴い,ディスクト
レイ4が後方へ移動し,開口16a,122を通過して,前記ディスク装填位置ま
で移動する。これにより,ディスクトレイ4上に位置決めされた状態で載置された
光ディスク3も,装置本体2内のディスク装填位置へ搬送される。・・・ディスク
トレイ4がディスク装填位置に接近すると,扇形ギア53に形成された突起532
が挿入部4eより第2の案内溝4d内に入り,該溝4dに案内されて,扇形ギア5
3が図3中反時計方向に回転する。また,このとき突起531は,第1の案内溝4
cの前方側の端部付近においてラックギア4b側へ移動する。これにより,扇形ギ
ア53は,小ギア525と噛合し,小ギア525の回転力が伝達されて図3中反時
計方向に回転する・・・。この扇形ギア53の回転により,ラックギア54および
カム部材55が図6中左方向(図3中右方向)に移動し,カム溝56a,56bの
下溝563に位置していた突起57a,57b(図6参照)が,傾斜溝562を経
て上溝561へ移動する(図7参照)。これにより,機構ユニット42は,軸43
1,432を中心に回動し,機構ユニット42の前方側が下側位置から上側位置へ
上昇(変位)し,機構ユニット42は,ほぼ水平状態となる。この機構ユニット4
2の変位によって,ターンテーブル46のセンタハブ部46aが光ディスク3の中
心孔3aに嵌合し,ターンテーブル46がディスク3の中心部分を支持して持ち上
げるとともに,ターンテーブル46に内蔵された永久磁石が回転子81を吸着し,
ターンテーブル46と回転子81との間に光ディスク3の中心部が挟持され,固定
される」(段落【0099】~【0107】),「再生を中止し,イジェクト操作
を行うと,ディスク装置1Aの各機構が上述したイジェクト操作と同様に作動し,
ディスク3は,ターンテーブル46および回転子81によるクランプが解除され,
ディスクトレイ4に載って排出される」(段落【0113】)との記載がある。上
記記載によれば,刊行物1発明のディスクプレーヤのトレイの挿入・排出動作は,
機構ユニット42のベース43が上下方向に移動することによって行われるが,そ
の際,ベース43上に接続されたスピンドルモータ45を備えた金属板44も一体
として上下方向に移動する構成となっている。したがって,刊行物1発明におい
て,スピンドルモータ45を備えた金属板44は,ディスクの挿入・排出動作を行
う機構の一部となっており,「トレイを支持し,かつ指令に応じてディスクトレイ
の挿入あるいは排出動作を実行するトレイモーション制御モジュール」と「ディス
クプレーヤの動作中に振動を発生する回転源を備え・・・たトラバースモジュー
ル」を別個の独立したモジュールとした構造を採用したものとは認められない。
  以上検討したところを総合すると,刊行物1発明のシャーシ40とベース
43は,振動吸収システム上,別個のモジュールを構成するというべきであって,
これを一つのモジュールであるということはできず,また,刊行物1発明におい
て,金属板44は,本件発明ではトラバースモジュール上に存在する回転源である
スピンドルモータ45を備えると同時に,ディスクの挿入・排出動作を行う機構の
一部ともなっているのであり,このように一体となっている構成の一部であるトレ
イの挿入・排出動作を行う機構部分のみを取り上げて,これを独立した「トレイモ
ーション制御モジュール」として認定することは,本来刊行物1発明にない構成を
認定することにほかならず,許されないというべきである。
  したがって,刊行物1発明のベース43とシャーシ40が,一体として,
本件発明のトレイモーション制御モジュールに相当するものであるとした本件決定
の認定は誤りであり,これを前提とした本件決定の上記一致点の認定も誤りという
ほかない。
(6)以上のとおり,本件発明と刊行物1発明との一致点の認定は誤りであり,
この誤りが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,原告の取消事
由1の主張は理由がある。
2 よって,その余の点について判断するまでもなく,本件決定は取消しを免れ
ず,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官 篠  原  勝  美
    裁判官 岡  本     岳
    裁判官 早  田  尚  貴

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