弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京北簡易裁判所に差し戻す。
         理    由
 本件控訴の趣意は、検察官岩下肇提出の控訴趣意書に記載されたとおりであるか
ら、これを引用する。
 所論は、要するに、本件公訴は、反則者たる被告人が通告書の受領を拒んだた
め、道路交通法一三〇条二号に従い提起されたものであるのに、原判決が、本件は
通告書の受領を拒んだ場合に該当しないから、本件公訴提起の手続はその規定に違
反して無効であるとし、刑訴法三三八条四号により本件公訴を棄却したのは、証拠
を無視した認定に基き、かつ、明らかに法令の解釈適用を誤り、不法に公訴を棄却
したものであるから、同法三七八条二号所定の事由があり、原判決は破棄を免れな
いというのである。
 本件公訴は、「被告人は、昭和四八年一〇月二一日午前一一時〇五分頃東京都北
区ab丁目c番付近道路において、信号機の表示する「止まれ」の信号に従わない
で、普通乗用自動車を運転通行したものである。」との事実にかかわるところ、被
告人が通告書の受領を拒んだため通告をすることができなかつたとし、道路交通法
一三〇条二号に該当するものとして、同条但書により、通告手続を経ず、直ちに提
起されたものであることは、一件記録により明らかである。
 ところで原判決が本件公訴を棄却した趣意は、およそ道路交通法一三〇条二号に
いう通告書の受領を拒んだというためには、たとえ反則者があらかじめ受領を拒否
する意向を表明しているような場合であつても、前提として通告書が反則者の面前
に現実に提示されることを要するのであり、本件の場合、電話で被告人に対し、通
告書を交付するから出頭されたい旨告げられ、口頭で受領を促されただけで、現実
に通告書が提示されなかつたのみならず、これに対し、被告人は、もつぱら反則行
為をしたことを認めない旨答えただけで、通告書の受領を拒んだ事実もないという
ものと理解される。
 そこで、一件記録を精査して検討するに、交通反則通告書交付嘱託並びに回答
書、交通反則通告書、調査結果報告書、司法警察員作成の電話聴取書、被告人の司
法警察員調書及び原審第四回公判期日に取調べがなされた証人A及び同Bの供述を
総合すると、次の事実を認めることができる。すなわち、被告人は、交通取締中の
王子警察署所属のA巡査から、公訴事実に係る信号無視の反則行為をしたとして、
告知書の交付を受けたが、当初から右交通違反の事実を否認し、告知書に指定され
た通告を受けるための日時、場所に出頭せず、かつ反則金相当額の仮納付もしなか
つた。そこで警視庁交通反則通告所から被告人に対し、その住所に宛て配達証明郵
便により前記反則事実に係る通告書を発送したが、配送の際被告人不在のため配達
することができず、取扱い郵便局における留置期間も経過して還付された。次い
で、同通告所からの交付方嘱託に基き、被告人住所地所轄の滝野川警察署の担当者
B巡査から被告人の勤務先へ電話連絡した結果、被告人と電話による交信がなされ
たが、その際、同巡査は前記反則行為に係る通告書を受領するため同署へ出頭され
たい旨を告げ、これに対し被告人は、「俺は違反をしていない。出頭もできない。
通告書も受け取らない。」と答え、そのため同巡査は通告不能として処理し、通告
書は前記通告所へ返戻された。その結果、本件公訴が提起されたものである。もつ
とも、被告人は原審公判廷において、B巡査との電話交信の内容は単に反則事実の
認否の問答をしただけである旨供述しているけれども、同巡査の所属する滝野川署
が本件に関係したのはただ通告書交付の嘱託を受けたのみであつて、同巡査の職務
はもつぱら通告書を被告人に交付する事務で、同巡査の職務上の関心は被告人が通
告書を受領するか否かに向けられていた筈であり、反則事実の認否を問うことは同
巡査の職務外のことに属するから、前記認定に反する被告人の前記供述の内容はき
わめて不自然であつて措信できない。
 <要旨>前認定の事実によると、通告書の交付を担当したB巡査は、被告人に面接
することなく電話で交信し、滝野川署に出頭して通告書を受領するよう口頭
で促したもので、被告人の面前に通告書が提示されたことはないけれども、これに
対し被告人は、反則事実がないことを理由に、通告書を受領する意思がない旨明示
の回答をしたものであり、それが真意で受領を拒否する趣旨であることは、被告人
が当初の告知書の受領すらも渋つたこと、及び、後に被告人が捜査官に対し、被疑
事実につき反則金支払いの意思はなく正式裁判で争いたいとの趣旨を一貫して供述
していることに照らしても明瞭である。
 かように、電話で通告書の受領を促されたのに対し、受領拒否の態度を明確にし
ている場合、さらに被告人の面前に通告書を提示して重ねて受領を促さなければ道
路交通法一三〇条二号にいう受領を拒んだことにならないと解すべきなんらの根拠
もないし、また、同法の反則処理手続において、第一次的な通告方法として、反則
者が告知書に指定の日時、場所に出頭して通告書を受領することを予定する同法の
規定の趣旨にかんがみ、被告人が右期日に出頭せず、同法施行令に定める配達証明
郵便による送付も効を奏しなかつた後、さらに通告書を交付する手段として、住所
地所轄の警察署に受領のため出頭するよう求めた点も不当とはいえない。
 そして通告を受ける者が、通告書の宛名に人違いがある場合や通告書受領のため
不当に過大な費用支弁を余儀なくされる場合等正当な理由がある場合を除き、通告
書の受領を拒んだときは、さらに所定の通告手続を経ることなく、道路交通法一三
〇条二号及び但書により、直ちに公訴を提起することができるものであり、通告に
係る反則行為をしたことがないことは、通告書の受領自体を拒む正当の理由になら
ないものであつて、このことは手続の性質上明らかである。
 そうすると、被告人は正当の理由がなく通告書の受領を拒んだものであり、その
ため、道路交通法所定の通告をすることができなかつたとして、通告処理手続を経
ることなく直ちに提起された本件公訴は、この点に関する手続上の違法はないし、
記録を精査しても他に本件公訴提起を無効とする手続規定の違背は見当たらない。
そこで、刑訴法三三八条四号に該るとして本件公訴を棄却した原判決は、道路交通
法一三〇条の解釈を誤るとともに前提事実を誤認して不法に公訴を棄却したものと
いうべきであるから、論旨は理由がある。
 よつて刑訴法三九七条一項、三七八条二号後段により原判決を破棄し、同法三九
八条により本件を原裁判所に差戻すこととして、主文のとおり判決をする。
 (裁判長裁判官 寺尾正二 裁判官 渡辺惺 裁判官 田尾健二郎)

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