弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士加藤行吉、同工藤祐正の上告理由及び上告人Aの上告理由につ
いて。
 上告人は本件土地(農地)の所有者であること、上告人は被上告人に対し本件土
地を昭和二三年一一月下旬、期間を昭和二八年一一月二〇日迄の五年間とする賃貸
借契約を締結し、昭和二五年以降の小作料を年四三〇円と定めたこと、上告人は被
上告人に対し右期間の満了前である昭和二八年一〇月二五日内容証明郵便を以て右
賃貸借契約更新拒絶の通知をしたこと、上告人は農地法二〇条の規定に基づき右更
新拒絶についての許可申請を昭和二九年二月二二日長野県知事に提出したが、同年
五月一三日不許可となつたこと、以上の事実は原判決の確定するところである。
 上告人が第一審以来主張するところは、右農地法二〇条の規定は、低廉な小作料
の下に土地賃貸借の継続を地主に強制するものであり、また地主なる身分に基づき
その経済的地位を著しく抑圧し、一般土地の所有者と農地の所有者とを差別待遇す
るものであつて、憲法二九条、一四条の趣旨に違背し、違憲無効のものである。さ
れば、右長野県知事の更新拒絶についての不許可処分も無効のものであり、従つて、
本件賃貸借については当然に民法が適用される結果、右賃貸借は前示期間の満了に
よりすでに消滅に帰しているというのであつて、本上告論旨の要点とするところも、
ひつきょう右農地法二〇条の違憲性の理由付けに外ならない。
 思うに地主の賃貸借更新拒絶に対する都道府県知事の許可は農地法二〇条二項所
定の場合でなければしてはならないのであつて、不許可の場合には、農地法八五条
一項一号による農林大臣への訴願によつて、あるいは裁判所に対する行政事件訴訟
の提起によつて、これを是正することができるのであるから、農地法二〇条は地主
に対し、必ずしも土地賃貸借の継続を強制し、あるいはこれによつて地主に経済的
な不利益を与えて一般土地の所有者と不当に差別待遇しているものとは云えない。
尤も、農地法二〇条は一項において農地賃貸借の更新拒絶の通知を都道府県知事の
許可にかゝらしめ、しかも二項においてその許可は同項一号ないし四号の場合でな
ければしてはならないものとし、更に三項において都道府県知事が許可を与えよう
とするときはあらかじめ都道府県農業会議の意見を聞かなければならないものとし、
更に五項において右許可を受けないでした行為はその効力を生じないものとしてい
るのであるから、農地所有者の所有権の行使または処分が右規定によりある程度不
自由になつていることは疑がなく、その限りにおいて農地所有者の地位が一般土地
の所有者に比して不利益になつていることは認めざるを得ないところである。しか
し、農業経営の民主化の為め小作農の自作農化の促進、小作農の地位の安定向上を
重要施策としている現状の下では、右程度の不自由さは公共の福祉に適合する合理
的な制限と認むべきであり、また、右のような農地所有者の不利益も公共の福祉を
維持する上において甘受しなければならない程度のものと認むべきである。されば
農地法二〇条を憲法二九条、一四条の趣旨に違背する違憲無効のものとする所論非
難は当を得ないものであつて、論旨はその理由がないものと云うべきである。
 なお、論旨は前示更新拒絶の通知竝びにこれに対する前示不許可処分とは何ら関
係のない農地法の所論各規定の憲法上の効力を云為し、延いて農地法全体の違憲性
を強調し、これを以て右更新拒絶通知に対する前示不許可処分を違憲無効のもので
あることをるゝ主張せんとする。しかし、ある法律関係の違憲であるか否かはこれ
に適用される当該法規の違憲なりや否やの判断に即すべきものであり、その埒外に
おいて当該法律関係に何ら関係のない法規の憲法上の効力を云為し、あるいは、そ
れら法規の属する法律全体の違憲性に論及して当該法律関係の違憲無効を主張する
が如きは上告理由として許されないところであると解すべきである。それ故所論は
採用のかぎりではない。
 よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員の一致で主文のとおり判
決する。
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    垂   水   克   已
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    高   木   常   七
            裁判官    石   坂   修   一

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛