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平成24年12月12日判決言渡
平成24年(行ウ)第831号天皇の衆議院の解散等に関する内閣の助言と承認
の無効確認請求事件
主文
1本件各訴えをいずれも却下する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
1請求
別紙2(訴状写し)の第1に記載されているとおり。
2事案の概要等
本件は,平成24年11月16日の衆議院の解散(以下「本件解散」とい
う。)を受けて,同年12月16日に施行することが同月4日に公示された衆
議院議員の総選挙(以下「本件選挙」といい,本件選挙の公示を以下「本件公
示」という。)の選挙人である原告らが,①内閣が天皇に対して同年11月1
6日にした本件解散に関する助言と承認(以下「本件解散の助言と承認」とい
う。)は,最高裁平成22年(行ツ)第207号同23年3月23日大法廷判
決・民集65巻2号755頁によりいわゆる違憲状態にあるとされた衆議院小
選挙区選出議員の選挙区の区割基準及び選挙区割りに関する法令の規定が改正
されていないのに本件選挙を行うことを決定したものであって,内閣に与えら
れた解散権の裁量の範囲から逸脱する違法無効な処分というべきである,②上
記①のとおり本件解散に関する助言と承認が無効なものである以上,内閣が天
皇に対して平成24年11月16日にした本件公示に関する助言と承認(以下
「本件公示の助言と承認」という。)もまた違法無効な処分というべきである
などと主張して,本件解散の助言と承認及び本件公示の助言と承認がいずれも
無効であることの確認を求めるものである。
本件各訴えに係る請求の原因は,別紙2(訴状写し)の第2に記載されてい
るとおりである。
3当裁判所の判断
(1)衆議院の解散ないしこれについての内閣の助言と承認の効力に関して,裁
判所は審査権を有しないものというべきである(最高裁昭和30年(オ)第
96号同35年6月8日大法廷判決・民集14巻7号1206頁参照)から,
本件各訴えのうち本件解散の助言と承認の無効確認を求める部分は,法律上
の争訟(裁判所法3条1項)に当たらず,不適法なものというべきである。
(2)公職選挙法は,①衆議院議員又は参議院議員の選挙について,他の各種の
選挙と同様に,その効力及び当選の効力に関する訴訟として特別の類型の訴
訟を定める一方,その訴訟の出訴期間を当該選挙の日から30日以内に限定
し,第1審の管轄裁判所も高等裁判所とし(同法204条,208条,21
7条),②これらの訴訟において,裁判所は,当該選挙が選挙の規定に違反
していた場合であっても,選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるときに限
り,その選挙の全部又は一部を無効とする判決をすべきものとし(同法20
5条1項,209条1項),③これらの訴訟の判決は,事件を受理した日か
ら100日以内にするように努めなければならず(同法213条1項),裁
判所は,上記訴訟については,他の訴訟の順序にかかわらず速やかにその裁
判をしなければならないものとしている(同条2項)。また,④同法は,同
法の規定による選挙の管理及び執行に関する行為に処分に当たるものが含ま
れることを前提としつつ,このような行為を行政手続法第2章及び第3章の
規定の適用の対象外とし,又は行政不服審査法による不服申立ての対象外と
している(同法264条の2,265条)。
このような同法の規定に照らせば,同法は,衆議院議員又は参議院議員の
選挙を含め,各種の選挙の施行に係る手続中の個々の行為の適否は,全て選
挙の終了後に同法所定の訴訟において争わせることとし,これらの個々の行
為のそれぞれについて個別的に抗告訴訟を提起することを許容していないも
のと解するのが相当であり,例えば,都道府県知事の選挙における候補者の
立候補の届出(同法86条の4)を受理しないとする行為については,その
取消しの訴えを提起することはできず,同法202条以下の規定によりその
違法を理由として選挙の無効を争うべきものと解される(最高裁昭和38年
(オ)第563号同年9月26日第一小法廷判決・民集17巻8号1060
頁参照)。そして,例えば,地方公共団体の長の選挙の期日の告示は,選挙
の執行の手続の一環を成すものであって,それについての違法は選挙の効力
に関する訴訟等について定める同法205条1項の「選挙の規定に違反する
こと」に含まれると解するのが相当であるところ(最高裁昭和31年(オ)
第606号同32年3月19日第三小法廷判決・民集11巻3号527頁参
照),衆議院議員の総選挙の施行の公示は,総選挙の期日を定めるとともに
これを周知させる行為であって,その内容及び性格において地方公共団体の
長の選挙の期日の告示と異なるところはなく,それをすべき期限等について
も同法に定められていることからすると(同法31条参照),衆議院議員の
総選挙の施行の公示については,我が国の法制度の下におけるその重要性に
鑑み最高法規である憲法に関係する規定が設けられているものとしても,や
はり選挙の執行の一環としての性格を有するものというべきであり,それに
ついての違法に関し,地方公共団体の長の選挙の期日の告示を例に挙げて既
に述べたところと異なって解すべき根拠は見いだし難い。
そうすると,本件各訴えのうち本件公示の助言と承認が無効であることの
確認を求める部分もまた,不適法なものというべきである。
4結論
以上の次第であって,本件各訴えはいずれも不適法であり,その不備を補
正することができないから,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法140条を適用
して,口頭弁論を経ないでこれらを却下することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官八木一洋
裁判官田中一彦
裁判官横井靖世

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