弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
       事   実
 控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人らの申請を却下する。申請費用は
第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」旨の判決を求め、被控訴人ら代理人ら
は、控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の主張及び疏明関係は、次に付加するほか、原判決事実摘示のとおりで
あるから、これを引用する。
一 被控訴人らの主張
(一) 不当労働行為に関する主張の補正
 控訴人が、懲戒解雇事由として挙げる職場離脱とは、被控訴人Aについては別表
(一)、被控訴人Bについては別表(二)の各実施年月日欄記載の日における同時
間欄記載の時間のそれを指すが、そのうち被控訴人Bにかかる昭和五〇年一月二〇
日及び二二日の職場離脱を除いては、すべて支部(総評全国金属労働組合神奈川地
方本部東京流機支部)委員会の決定に従つて指名ストライキに参加したものであ
る。右各ストライキは、前記各別表のストライキ権欄記載の日に同欄記載の目的を
もつて確立され、通告年月日欄記載の日に控訴人に通告されたストライキ権に基づ
いてなされたものであり、なんら違法ではない。また、控訴人らと同様ストライキ
に参加した者が、別表(三)のとおり他にもあるのに、被控訴人両名のみが懲戒解
雇されるのは明らかに被控訴人両名を他と差別して不利益に待遇したものである。
被控訴人Bの昭和五〇年一月二〇日及び二二日の職場離脱は、控訴人が同月一八日
突然第一次合理化案を提示したことに対応するため、上部機関である神奈川地方本
部の指導を仰ぐ必要上、二〇日の場合には控訴会社C課長の承諾を得、二二日の場
合には控訴会社に電話して承諾を得たうえでしたものであるから、なんら責められ
るべきものではない。他方、控訴人は、昭和四九年七月ころ以来支部において同様
のストライキが実施されてきたのに、昭和五一年二月二七日までは右ストライキを
違法であると警告を発したことはなく、したがつて右ストライキをなんら違法視し
ていなかつたこと、控訴人は昭和四九年暮に経営危機に陥り、昭和五〇年一月に第
一次合理化案を支部に提示して以来、組合担当の役員及び顧問を外部から導入し、
団体交渉をいたずらに拒否したり、組合のビラ、立看板を一方的に撤去したり、組
合活動家の食堂等会社施設利用を制限したりして、組合対策を著しく強化したこ
と、前記のように控訴人が違法ストの警告を発した昭和五一年二月二七日は、支部
が控訴人の団体交渉拒否等につき神奈川県地方労働委員会に救済命令の申立をした
同年同月一二日から間もない時期であり、また、被控訴人らが解雇された同年五月
二六日は、右救済命令申立事件について右委員会が審問を終了し、救済命令が発せ
られる直前であつたことに照らすと、控訴人は被控訴人らの正当にして活発な組合
活動を嫌忌し、同人らを排除して組合に打撃を与える目的で、被控訴人らに対して
懲戒解雇を通告したものであつて、これが不当労働行為にあたることは明らかであ
る。
(二) 解雇権濫用の主張の補正
 被控訴人による指名ストは、控訴人らの正常な業務の運営を阻害する程のもので
はなく、また、控訴人もみずから右事実を認めているのにもかかわらず、右指名ス
トを理由として被控訴人らを極刑ともいうべき懲戒解雇に処したことは、解雇権の
濫用にあたるというべきである。
(三) 請求原因の追加
(懲戒解雇手続の就業規則違反)
 控訴会社では、昭和三四年四月一日から施行された就業規則が改訂されて、昭和
五〇年一〇月一日から施行されたが、従前の就業規則には、懲戒事由として第五〇
条に一四の事項が列挙され、第五二条には、「会社は………懲戒に処する必要あり
と認めた場合、従業員代表との間に諮問機関を設け、当該機関を通じて決定す
る。」旨規定されていたのに、改訂された就業規則は、第八八条に二七の懲戒解雇
事由が列挙され、右諮問機関についての定めが消滅している。ところで、被控訴人
Bの懲戒事由とされている指名ストライキ参加三六回のうち二八回、被控訴人Aに
ついても一九回のうち三回が、従前の就業規則施行中のものであるから、控訴人が
これらを理由に被控訴人らを懲戒解雇するには、従前の就業規則第五二条所定の諮
問機関を設け、当該機関を通じて懲戒の決定をすべきである。けだし、従前の就業
規則第五二条は、懲戒解雇という最も重大な労働条件にかかわるものであつて、労
働条件の基準を定めたものであり、使用者たる控訴人の一方的な改訂によつて、被
控訴人らの既得の権利を奪うことは許されないからである。仮に右のようにいえな
いとしても、法律不遡及の原則の精神からいつても、労使関係における信義則から
いつても、従前の就業規則施行中の行為についてはその規則を適用すべきである。
ところが、控訴人は右諮問機関を通ずることなく、被控訴人らに対して懲戒解雇の
通告をしたのであるから、本件懲戒解雇は無効である。
(四) 違法ストライキの主張に対する答弁
 被控訴人らが行つた指名ストライキを違法とする控訴人の主張を争う。
二 控訴人の主張
(一) 不当労働行為の主張に対する答弁
 控訴人の被控訴人らに対する懲戒解雇の事由が、被控訴人ら主張の職場離脱であ
り、右職場離脱の理由とするところも被控訴人ら主張のとおりであることを認める
が、被控訴人Bが控訴人側の承諾を得たとする点は否認し、職場離脱が正当な組合
活動であるとの主張は争う。被控訴人ら主張のストライキが違法であることは、次
に主張するとおりである。
(二) ストライキの違法性
 被控訴人らが職場離脱の理由とした指名ストライキは、以下に述べるとおり違法
であり、ひいて被控訴人らがストライキの名目で職場を離脱し、又は他の者を離脱
させたことは、正当の争議行為ではなく、就業規則所定の懲戒事由に該当する。し
たがつて、控訴人の本件懲戒解雇は適法有効である。
 被控訴人Aが参加した昭和五〇年九月一一日から昭和五一年二月二三日までの一
二回にわたるストライキは被控訴人らによれば、昭和五〇年一月二五日に不当合理
化反対権利擁護を目的として確立されたストライキ権に基づくというのであるが、
控訴人の合理化問題は昭和五〇年八月ころをもつて落着したのであつて、右ストラ
イキ当時、なんらそれを実施しなければならない事情にはなかつた。昭和五一年四
月二〇日から同年五月二一日までの七回のストライキも、被控訴人らによれば、昭
和五一年三月二二日に、不当労働行為撤回地労委全面勝利に関して確立されたスト
ライキ権に基づくというのであるから、控訴人の管理処分しうる範囲外の事項をス
トライキの目的としたこと自明である。右のとおり、被控訴人Aの参加した指名ス
トライキは、いずれもその正当目的を欠くものであり、その通告書に記載された目
的も、組合用務とするもの一〇回、不当労働行為撤回抗議とするもの二回、単なる
抗議とするもの一回、目的不明のものが二回ある。そして、ストライキ参加の名目
で職場を離脱した人員数も、被控訴人A単独の場合が七回、同被控訴人ほか一名の
場合が三回、同二名の場合が六回、その他が三回という小人数であるばかりでな
く、右の者らは、すべてストライキに名を藉りてその実ストライキとは直接関係の
ない組合の用務に従事し、もつて職場を離脱したのである。
 次に被控訴人Bについていえば、昭和四九年一一月一八日から同年一二月一〇日
までの間に参加した四回のストライキは、被控訴人らによれば、昭和四九年一一月
一一日に冬季一時金要求のために確立されたストライキ権に基づくというのである
が、右ストライキ実施当時、団体交渉が行詰つた状態にはなく、労使間の争議状態
は存在しなかつた(なお、このときの一時金の協定は、同年一二月一七日に締結さ
れた。)。昭和五〇年一月二七日から同年七月二一日までの二二回にわたるストラ
イキは、被控訴人らによれば、昭和五〇年一月二五日に不当合理化反対、権利擁護
を目的として確立されたストライキ権をその根拠とするものであるが、控訴人は合
理化案提案後、組合と相当頻繁に団体交渉を行ない、その間、組合との交渉が行詰
まりそうなときは、提案を撤回するなどして、収拾して来たし、特に昭和五〇年四
月二八日、一時帰休を協定した後は、合理化に対する労使間の対立は全くなかつ
た。それゆえ、昭和五〇年五月六日から同年七月二一日までの七回については、ス
トライキ目的を欠くものであつた。また、同年一二月八日のストライキは、被控訴
人らによれば、同年一〇月三〇日冬季一時金の要求のために確立したストライキ権
に基づくというのであるが、ストライキ通告書に記載されたストライキ目的は、組
合用務であり、その実態も日本インガーソル社に押掛けたというものである。昭和
五一年三月二三日から同年五月八日までの七回にわたるストライキは、被控訴人A
の昭和五一年四月二〇日から同年五月二一日までのストライキと全く同じ事情にあ
る。結局、被控訴人Bが参加したストライキも、すべてストライキとしての正当目
的を欠くものであつた。このことは、右各ストライキの通告書に記載されたストラ
イキの目的が組合用務となつているもの一三回、不当労働行為撤回要求抗議となつ
ているもの四回のほかに、目的不明のものが一九回もあることからみても、またス
トライキ参加者が、被控訴人B単独の場合一九回、同被控訴人ほか一名の場合六
回、同二名の場合二回、同三名ないし一一名の場合九回であり、職場離脱中、スト
ライキと関係のない組合用務に従事していたことからみても、明らかである。
 このように、被控訴人らのいうストライキが実施された当時、支部と控訴人との
間に争議状態は存在しなかつたし、また、支部は労使の交渉を尽さないで安易にス
トライキ権を確立し、被訴人らはストライキ権確立を奇貨として、各自単独で又は
せいぜい二、三名でストライキと称して職場を離脱した場合が多く、この程度では
集団的労務提供拒否の実体を欠くものであつて、一部で業務に支障を来したもの
の、正常な業務の運営を阻害する程のものではなかつたのである。すなわち、被控
訴人らのいうストライキは、争議行為をもつて目すべき実体を備えず、単に、参加
者を組合活動に従事させることを目的とするものであつた点において、目的の正当
性を欠き、また支部がストライキを行うに当つては、少くとも二四時間以前に目的
を示して控訴人に通告するという確立された労務慣行に反して抜打的に行われた点
において、手段の正当性を欠くものであつたというべきであるが、仮にこれらの点
を措くとしても、なんら労使交渉が行われていない段階や、交渉が決裂する可能性
もないときに行なつたものであつて、ストライキ権の濫用というほかないものであ
る。したがつて、被控訴人らのストライキは、いずれの点からみても違法であるか
ら、被控訴人らが自ら職場を離脱し、又は他の者をして離脱させたことは、就業規
則に反し、なんら免責事由を有するものではない。
 なお、被控訴人Bの昭和五〇年一月二〇日及び二二日の職場離脱は、被控訴人ら
によれば、組合用務のためというのであるから、それが職場離脱を正当化するもの
でないことは論をまたない。
 控訴人としては、被控訴人らによる一連の指名ストについて疑問を抱きながら
も、労働法関係の知識に乏しかつたこと、労使関係がそれほど紛糾していたわけで
もなかつたことから、特に問題としないままに経過し、会社経営が危機に直面し、
一時帰休希望退職者募集などの打開策が打出されるのに対抗して、組合側のビラ貼
り、集会、指名スト等が頻繁に行なわれるに及んで、識者の意見を聞き、はじめて
右指名ストが違法であることを知つたものであつて、右指名ストに対する警告、本
件懲戒解雇の時期が被控訴人ら主張の救済命令申立事件の審理の時期と重なつたこ
とは、全く偶然のことにすぎない。
(三) 就業規則違反の主張に対する答弁
 控訴会社の就業規則が被控訴人ら主張のとおり改訂施行されたこと、改訂前後の
懲戒解雇に関する定めが、被控訴人ら主張のとおりであることは認めるが、その余
の主張については争う。
三 疏明関係(省略)
       理   由
一 控訴人が被控訴人ら主張のとおりの株式会社であること、被控訴人らがその主
張のとおり控訴人に雇われて稼働して来たこと、被控訴人らがそれぞれその主張の
とおり支部の執行委員長の地位にあつたこと、もしくは現にその地位にあること、
控訴人が昭和五一年五月二六日被控訴人両名に対し、それぞれ懲戒解雇する旨意思
表示をしたこと、その理由は、被控訴人Aについては昭和五〇年九月一一日から同
五一年五月二一日までの間、被控訴人Bについては昭和四九年二月一八日から同五
一年五月八日までの間、無断で職場を離脱し、また他の者をして離脱させたことに
あること、控訴人と支部との間には、昭和五〇年二月二八日合意された本件協定が
あり、その文言は、「会社(控訴人)がその責任において行う組合員の配転、出
向、帰休、希望退職、退職勧告、解雇及び工場閉鎖、会社解散等、労働条件の変更
をする場合は、事前に組合と充分協議する。」というものであるが、控訴人が被控
訴人らに対して、本件懲戒解雇の意思表示をするについて、右協定に基づく事前協
議を経ていないこと、以上の事実は当事者間に争いがない。
二 被控訴人らは、控訴人が被控訴人らに対してした本件解雇の意思表示が、本件
協定に基づく事前協議を経ていないから、右協定違反として、手続的に無効である
と主張するので、この点について判断する。
 いずれも成立につき争いのない疏甲第一五三号証、疏乙第四三ないし五三、五五
ないし五七、六一号証、被控訴人B本人尋問の結果(原審及び当審)により真正に
成立したと認める疏甲第五一号証、原審における控訴会社代表者本人尋問の結果及
び当審証人Dの証言により真正に成立したと認める疏乙第四二号証、第五八ないし
六〇号証、右各証言及び尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると、控訴人は、
昭和四八年暮ころからいわゆる石油シヨツクに伴つて経営状態が悪化し、その後も
主力製品であるクローラードリルの販売数が減少して在庫数が適正な範囲を越え、
やがては毎月の資金繰りにも事欠くほど深刻な経営危機に陥つたこと、控訴人は、
その建て直しを図り、昭和五〇年一月中旬減産を目的とする従業員の一時帰休や、
管理職の賃金減額などを中心とする合理化計画を樹て、同月一八日支部に対して協
力を求めると共に、同月二一日には一時帰休者の氏名及びその帰休期間と帰休割合
とを通告したこと、そこで支部は同日直ちに控訴人に対し、「会社が会社の責任に
おいてなす従業員の解雇、希望退職、配転、出向、帰休、工場閉鎖、会社解散(更
生法、商法、整理、破産を含む)等、労働条件の変更を伴う行為をなす場合は、事
前に組合と協議し、組合の同意を得なければならない。」との協定案を提示してそ
の締結を要求したこと、控訴人と支部との間で右協定案をめぐつて同年一月下旬か
ら二月中旬にわたり数回の団体交渉が開かれたが、控訴人は、組合との事前の協議
ならば格別、組合の同意を求める提案は到底受け容れられないとし、また、その対
象は「従業員」ではなく「組合員」に限定されるべきであるとして、この点におけ
る支部の主張と対立し、交渉は難航したこと、しかし控訴人の経営危機は深刻で、
製品在庫数の過剰のため従業員の就労を一時停止して減産しなければならない程緊
迫した様相を呈したことから、支部としてもとりあず控訴人の言い分に妥協して協
定を成立させることとし、同年二月二八日控訴人に対してその意向を通知した結
果、控訴人の意向に沿つて修正された本件協定が成立したこと(なおその調印は三
月一日にされた。)、以上の諸事実を一応認めることができる。
 右認定事実によれば、本件協定は控訴人の経営危機を理由とする従業員の一時帰
休など合理化の実施を目前に控えて、組合員の地位に危惧の念を抱いた支部の要請
により交渉の末、締結されたものであつて、支部も控訴人も、その適用対象として
は、多数の従業員を包摂する、いわゆる合理化の実施の場合を想定したものである
ことは極めて明白である。そのうえ、協定文には「会社がその責任に於て行う組合
員の配転、出向、帰休、希望退職、退職勧告解雇及び工場閉鎖、会社解散等労働条
件の変更をする場合」とあり、そこには、会社以外の者の責に帰すべき事由に基づ
いてなされるものは含まれていない(希望退職というのは、会社の要請に応じて任
意退職することの意であり、退職者の募集と読み替えても差し支えない。)から、
右に掲げられた解雇も控訴人の責に帰すべき事情に基づいてなす解雇等の趣旨に解
するほかはない。右に指摘した本件協定締結の際の当事者の意識及び本件協定文言
の客観的意義のほか、前認定の本件協定成立の事情に鑑みれば、右協定は合理化実
施の場合のみに限定すべきではないとしても、控訴人側の事情で組合員に身分上の
変更又は労働条件の変更を伴う人事的措置を行う際に適用されるべきものであつ
て、個々の従業員の就業規則所定懲戒事由に該当する有責行為に基づいて懲戒処分
をする場合には、その適用がないと解するのが相当である。被控訴人らは、協定中
に挙示された解雇には懲戒解雇をも含むと主張するけれども、右主張は、前認定の
本件協定成立の経緯にそわないし(当審における被控訴人B本人尋問の結果中に
は、協定の交渉中、懲戒処分のことは念頭になかつた旨の供述もある。)、また、
成立に争いのない疏甲第一五〇号証によれば、その当時の控訴人の就業規則には懲
戒の種類として懲戒解雇のほか、格下げ、出勤停止、昇給停止、減給、譴責が定め
られていたことが一応認められるのに、懲戒解雇のみが通常解雇と共に「解雇」と
して協定中に採り入れられ、他の懲戒については協定に採り入れなかつたとするに
は納得し難いものがある。原審及び当審における被控訴人B本人尋問の結果中、前
記被控訴人らの主張にそうような供述部分は右説示に照して採用することができな
い。
 そうとすれば、控訴人が被控訴人らに対する懲戒解雇の意思表示をするに先立つ
て、これにつき支部との協議を経なかつたからといつて、右意思表示を無効としな
ければならない筋合はないというべきである。この点の被控訴人らの主張は理由が
なく採用することができない。
三 次に、控訴人が本件懲戒解雇の事由とする被控訴人らの職場離脱とは、被控訴
人Aについては別表(一)、被控訴人Bについては別表(二)、の各実施年月日欄
記載の日に、同時間欄記載の時間、支部の行なつた指名時限ストライキに参加した
ことによる(但し、被控訴人Bの昭和五〇年一月二〇日及び二二日については組合
用務のための)職場離脱を指すことは、当事者間に争いがない。
 控訴人は、右各ストライキは正当目的を欠くか又はストライキ権の濫用であつて
違法であり、したがつてこれを理由に職場離脱したことは懲戒事由に当ると主張す
るのに対し、被控訴人らは右主張を争うと共に、本件懲戒解雇が不当労働行為か又
は解雇権の濫用に当ると主張する。そこで、以下右主張の当否につき判断する。
 前掲各証拠及び成立につき争いのない疏甲第四、一〇、一一、一六、一八ないし
二〇、二五ないし二九、三二ないし三四、三六ないし四六、四八ないし七八、八一
ないし八四、八六ないし九七、九九ないし一一五、一一七ないし一二二、一二四、
一二六ないし一三二、一三四ないし一四七、一五六ないし一五八、一六〇ないし一
六二、一六五、一七六、一八四、一八七ないし一八九、一九三ないし一九五、一九
七、一九九、二〇七、二一〇、二一二、二一三、二一七、二三四、二三七、二三
八、二四〇、二四五、二四八、二四九、二六三、二六四、二六七、二七一、二七
三、二七七ないし二七九、二八二、二八四、二八五、二八七、二九一、二九二、二
九四、三〇八号証、疏乙第二ないし四一、四三号証、同第六五号証の一ないし五、
原本の存在とその成立に争いのない甲第一七八ないし一八二号証、前掲被控訴人B
本人尋問の結果により真正に成立したと認める甲第七、一五、三〇五、三〇六号
証、当審(第一回)における被控訴人A本人尋問の結果により真正に成立したと認
める疏甲第一五五、一八三号証、その方式趣旨から真正に成立したと認められる疎
甲第八、一六六、一八五、一八六、一九〇、一九一、一九八、二〇四ないし二〇
六、二一一、二一四、二一五、二一八、二二〇ないし二二四、二二六、二三五、二
四二、二四三、二四七、二五一、二五九、二六二、二六八、二七二、二八三、二八
六、二八八、二九三、二九五ないし二九八、三〇〇、三〇四号証、その方式及び趣
旨から原本の存在及び成立が認められる疎甲第一七七号証、当審における証人Cの
証言及び被控訴人A本人(第一、二回)尋問の結果を総合すると、以下(一)ない
し(五)の事実を一応認めることができ、この認定を動かすに足りる証拠はない。
(一) 被控訴人Bの昭和四九年一一月一八日から同年一二月一〇日までの別表
(二)1ないし4の四回にわたる職場離脱について
 控訴人は、昭和四九年一一月一日、支部から同年度の年末一時金(賞与)の支給
等に関する要求の申入を受けたが、折柄の経営危機のため、支給の目途が立たない
ことを理由に、団体交渉に応じないので、支部は強い不満抱き、同月一一日右要求
実現を目的とするストライキ権の確立(同盟罷業をすべきことの決定とその具体的
実行についての執行委員会への委任)をしたうえ、同日控訴人と交渉をしたが、具
体的回答が得られなかつた(なお、ストライキ権の確立については、同月一四日付
書面によつて控訴人に通告された。)。その後同月二二日までの四回にわたる団体
交渉においても、控訴人が回答を留保したため、支部では同月二六日午後一時から
三〇分間、翌二七日の団体交渉を控えての組合員全員による時限ストライキを実行
し、二七日の団体交渉で控訴人から示された年末一時金の金額が低額であつたた
め、更に同月二九日午後一時以降四時三〇分までの組合員全員による時限ストライ
キを行ない、また同年一二月三日以降無期限の午前八時三〇分から一〇分間の時限
ストライキに入つた。そして、ようやく同月一七日に至つて交渉が妥結し協定書の
調印に至つた。その間にあつて、支部は控訴人に対し、昭和四九年一一月二〇日付
をもつて、被控訴人Bを含めた四名の者が同月一八日午後一時から一時三〇分まで
ストライキを行なつた旨事後通告し、また同月二六日付通告書をもつて、同被控訴
人を含めて八名の者が同日午後一時三〇分から二時まで組合用務のためストライキ
を行なう旨、同年一二月三日付通告書をもつて、同被控訴人一名が同日午後一時か
ら四時三〇分まで組合用務のためストライキを行なう旨、同月一〇日付通告書をも
つて、同被控訴人一名が同日午後一時から四時三〇分まで指名ストライキを行なう
旨を通告し、いずれもそのとおりの指名ストライキを実施した。しかして、被控訴
人Bの右四回にわたるストライキ参加による職場離脱は、いずれも支部執行委員会
の指名に従つたものである。
(二) 被控訴人Bの昭和五〇年一月二〇日及び二二日の別表(二)5及び6の二
回の職場離脱について
 被控訴人Bは昭和五〇年一月二〇日午前九時三〇分から午後四時三〇分まで及び
同年同月二二日午後一時から一時三〇分までの二回にわたり職場離脱をしたが、そ
のうち前者については、支部から控訴人宛に、同被控訴人とEを組合用務のため外
出させることを通知する旨の同日付通知書が、また、後者については、支部から控
訴人宛に、同被控訴人を含む八名の者をして右日時に会議を行なわせる旨の同日付
通知書が、それぞれ届けられ、控訴会社C課長がこれを異議なく受領した。被控訴
人Bとしては、それに先立つ同月一八日、控訴人から支部に対し合理化案が提示さ
れ、その当時支部執行委員長として右合理化案に対処する策を講ずるのに奔走して
いたため、前示のとおり職場を離脱したものである。
(三) 被控訴人Bの昭和五〇年一月二七日から同年一二月八日までの別表(二)
7ないし29の二三回にわたる職場離脱、及び被控訴人Aの同年九月一一日から同
五一年二月二三日までの別表(一)1ないし12の一二回にわたる職場離脱につい

 前示のように、昭和四八年暮ころから経営危機に陥つた控訴人は、その建て直し
のため従業員の一時帰休を実施することとして、昭和五〇年一月二一日支部に対
し、一時帰休者の氏名とその実施期間、及び帰休割合を示して、その実施を通告し
たが、更に、同月二五日には、合理化の一環として従業員の配置転換をするため、
対象者に対し辞令書の交付を行なつた。一方、支部は、同月二一日控訴人から合理
化実施の通知を受けるや、翌二二日控訴人との間で、合理化計画の実施に当つては
支部の同意を要する旨の協定を求めて団体交渉をしたのを始めとして、上部機関で
ある神奈川地方本部の指導により、合理化反対、権利擁護のためのストライキ権の
確立を図り、同月二五日支部大会を開催して、ストライキを行なう旨及びその具体
的時期、方法を執行委員会に委ねる旨の決議をし、即日ストライキ権の確立につい
て控訴人に通告したほか、同月二七日控訴人に対し、控訴人側がすでに同年二月一
日に行なうことを予定していた配置転換発令及び一時帰休実施通告の各撤回を申し
入れると共に、同日、引続いて団体交渉が行なわれた。控訴人は、合理化計画実施
について支部の要求する同意約款の締結については拒否しつつも、先に通告した一
時帰休を含む合理化計画の実施を一時中止することとし、同月二九日その旨を支部
に通知した。その後も、控訴人と支部との間に団体交渉が重ねられ、同年二月二八
日前示のとおり事前協議についての合意(本件協定)が成立し、翌三月一日協定書
への調印が行われた。控訴人は、右協定が成立したので、一時中止していた合理化
計画を実施に移すこととし、希望退職者の募集、課長職以上の賃金削減、従業員の
昇給停止等、実施要領を記載した同月四日付の書面を従業員に配布してその告知を
したうえ、同月八日希望退職者の募集に応ずる意思の有無を調査した。丁度そのこ
ろ、労働界においては、昭和五〇年度のいわゆる春季闘争の時期に当つており、支
部は、同月四日控訴人に対し賃金引上要求の申入をしたところであつたので、控訴
人の合理化計画実施から組合員の権利を擁護することと春季賃上要求とを目的とし
て、控訴人に対して団体交渉をしばしば要求し、他方において活発に広報活動を行
つた。そして、控訴人が従業員個々に接して退職希望の有無又は配転に応ずる意思
の有無を直接確かめていることについては、事前協議協定に反するとして強く反発
し、それに抗議する意味で同月一八日午後一時から二時まで全組合員による時限ス
トライキを決行した。控訴人は、右同日開かれた団体交渉において、経営危機を楯
に、賃上要求に応じかねる旨を回答し、従業員各個の意思確認行為に対する支部の
抗議に対しては、本人の意思確認後、発令前に支部と協議すれば足り、協定違反で
はないとの見解を示し、支部との間で鋭く意見が対立した。このように、賃金引上
についても、また合理化策の進め方についても、労使間に妥協点を見出すことがで
きないまま、団体交渉が繰り返されているうちに、同年四月一四日、控訴人から支
部に対し、更に合理化策として、同月二四日以降約二か月にわたり、一週間に三日
の帰休日を設定して実施することが通告された。支部は、事前になんら協議をする
ことなく、右通告をしてきた控訴人に強い不満を抱き、その実現に強硬に反対した
ため、右一時帰休は同年五月一日以降に延期された。このような経過を辿りつつ、
なおも支部の要求による団体交渉が繰り返されて、ようやく昭和五〇年一〇月六日
に至り、賃金引上交渉が妥結し、協定書の調印を終えた。しかし、附帯交渉事項と
して、昭和四九年度冬季一時金要求のとき以来懸案となつていた就労時間短縮(週
休二日制)については、又もや継続審議となつた。そこで支部は、右問題に、合理
化問題をも含めた事項について闘争を継続することとし、引続き団体交渉を申し入
れ(なお、同年九月に支部役員の改選があつたので、支部は同年一〇月一四日書面
をもつて控訴人に対し、先に確立されたストライキ権の行使を続行する旨を通告し
た。)、同月二〇日控訴人と交渉したが、その席で、控訴人から時間短縮問題につ
いては、委員会を設置して審議決定をすることが提案された。これについて支部は
反対し、団体交渉の場で検討すべきことを主張し、その後も団体交渉を申し入れ、
交渉の場は設定されたものの、右意見の対立で空転するのみであつた。
 ところで、支部は、同年一〇月三〇日控訴人に対し、同年度の年末一時金(賞
与)支給について申し入れると共に、これについてのストライキ権の確立を通告
し、同年一一月六日、同月一八日、同月二二日同年一二月一日、それぞれ控訴人と
の団体交渉をし、翌二日午後三時以降三〇分間、同月五日午後三時以降三〇分間、
の各組合員全員による時限ストライキを行ない、また、同年一二月三日以降は組合
員全員の時間外労働拒否をするなどの争議行為を経て、同月一八日、年末一時金
(賞与)についての協議が成立した。しかし、時間短縮問題については、妥結に至
らず、支部から控訴人に対し、翌一九日及び二四日と二度にわたる団体交渉の申入
があつたが実現しないまま新年を迎え、ようやく昭和五一年一月二八日にいたつ
て、団体交渉が開かれた。その席上、控訴人から、毎月第一、第三土曜日を休日と
する隔週五日制その他の提案をし、支部の協力を求める旨の要請があつた。しか
し、同案は、休日数が増加し、年間を通じての労働時間数は若干短縮されるもの
の、一日の実働時間を二〇分間延長するものであつたので、支部は団体交渉を継続
して右案の検討をすることの申入をした。これに対して控訴人は、支部が一日の労
働時間をこれまでどおり据置くことに固執する限り検討の余地はなく、控訴人とし
ては、右案を同年五月実施に移す予定である旨を回答し、実質的に支部の申出を拒
否した。控訴人の強硬な態度から、控訴人が支部の意向を無視して右案どおりに実
行する意図のあることを察した支部は、この問題について控訴人が団体交渉を拒否
しているとし(後示の控訴人による支部の活動規制をも含めて)、不当労働行為に
当ると主張して、同年二月一二日神奈川県地方労働委員会に対し、控訴人を相手方
として団体交渉に応ずべき旨(及びその他の)命令を求める不当労働行為救済申立
をした。右申立後も、支部は団体交渉を申し入れ、同月一四日両者話し合つたけれ
ども、進展しなかつたので、支部は同年三月一九日臨時大会を開催し、控訴人が時
間短縮問題について団体交渉を再開することの実現を目的としてストライキ権を確
立し、その旨を同月二二日控訴人に通告した。なお控訴人は、支部が不当労働行為
救済申立をした後、八日を経た同年二月二〇日支部に対し、昭和三八年六月二二日
の支部の依頼に応じて約一二年間にわたり行なわれてきた組合費の給料天引を、同
年五月分以降行なわない旨を通告し、以後天引を中止した。
 上述のとおり、控訴人と支部との間には、控訴人が昭和五〇年一月二一日に合理
化実施を通告して以来、同問題及び時間短縮(週休二日制)問題が懸案事項とさ
れ、支部は昭和五〇年四月二五日のストライキ権確立を背景にして、春季賃上要求
や年末一時金(賞与)要求をも加えながら、断続的に控訴人と団体交渉を繰返して
来たが、その間にあつて支部は前出のストライキ権確立を根拠に、別表(二)7な
いし29の二三回、及び別表(一)1ないし12の一二回の各指名時限ストライキ
を行なつてきたものである。そして、右各ストライキを行なうについて、支部は、
当日又は期日前に、控訴人に対してその旨を書面で通告したが、別表(二)7、1
4、20、21、28、29及び別表(一)1ないし3、5ないし11の各ストラ
イキの通告書には、「組合用務のため」ストライキを行う旨記載され、また、スト
ライキに参加すべきことを指名された者は、別表(二)15記載の場合が被控訴人
Bほか九名、同9、12の場合が同被控訴人ほか七名、同10の場合が同被控訴人
ほか六名、同29の場合が同被控訴人ほか四名、同17の場合が同被控訴人ほか二
名、同7、8、19の場合が同被控訴人ほか一名で他の一三回はすべて被控訴人B
一名だけであり、また別表(一)5の場合は被控訴人Aほか四名、同3、4、6、
8の場合が同被控訴人ほか二名、同7の場合が同被控訴人ほか一名、他の五回はす
べて被控訴人A一名だけである。被控訴人らは右各指名に基づいて各当該ストライ
キに参加し、職場を離脱したものである。
(四) 被控訴人Bの昭和五一年三月二三日から同年五月八日までの別表(二)3
0ないし36の七回、及び被控訴人Aの昭和五一年四月二〇日から同年五月二一日
までの別表(一)13ないし19の各職場離脱について
 支部は、控訴人が提案した隔週五日制の強行を阻止するため控訴人に対し、時間
短縮問題について団体交渉に応ずることを求めて、前示のとおり地方労働委員会に
救済申立をしたほか、その実現を目指して昭和五一年三月一九日ストライキ権を確
立し、同月二二日控訴人に通告したうえ、同日開かれた昭和五一年度春季賃上要求
のための団体交渉において、賃上要求の申入に合せて時間短縮問題につき独自の妥
協案を提示したところ、控訴人は同月三一日付書面で右提案を拒否する旨回答し
た。支部は、折り返し同年四月七日付書面をもつて、先の提案を撤回する旨と新た
に団体交渉を求める旨を申し入れたけれども、控訴人はなんら応答せず、また、控
訴人は先の団体交渉の席で、賃上要求については四月一〇日に回答する旨予告した
のにもかかわらず、同月九日に至り、予告日における回答が不能であることを通報
してきた。支部は、その要求に対する控訴人の対応の仕方に不満を抱き、同月一三
日昭和五一年度春季賃上要求に関してストライキ権を確立し、即日控訴人に通告し
たところ、翌一四日の団体交渉で賃上要求に対する回答があつた。しかし、支部の
承諾するところとならず、その後も引続き団体交渉が開かれ、賃上問題に合せて時
間短縮問題について討議され、五月一九日の交渉を経て賃上問題については妥結し
たものの、時間短縮問題は依然両者の対立が続いた。このような状況のもとで、支
部は昭和五一年三月一九日のストライキ権確立を根拠に同月二三日から同年五月二
四日までの間において、別表(一)13ないし19、別表(二)30ないし36
(別表(一)16と同(二)34、別表(一)17と同(二)35、別表(一)1
8と同(二)36は、それぞれ同一のもの)計一〇回の指名ストライキを行つた。
右各ストライキについては支部から控訴人に対し、当日又は期日の前に書面をもつ
て、昭和五一年三月一九日のストライキ権確立に基づく旨を記載して通告された
が、その被指名者は、別表(一)17(別表(二)35と同じ)の場合が被控訴人
らほか八名、別表(一)16(別表(二)34と同じ)の場合が被控訴人らほか五
名、別表(一)18(別表(二)36と同じ)の場合が被控訴人両名、別表(二)
30、33の場合が被控訴人Bほか一名、別表(二)31、32がいずれも被控訴
人Bのみ、別表(一)14、19の場合が被控訴人Aほか二名、別表(二)13、
15の場合が被控訴人Aのみである。被控訴人らは右各指名に基づき、各ストライ
キに参加し、職場を離脱したものである。
(五) 支部の活動に対する控訴人の対応について
 控訴人は、土木建設機械の製造を目的とする株式会社であり、特にクローラード
リルについては唯一の専門製造業者であつて、その本社事務所及び工場を東京都大
田区に置いていたけれども、昭和四九年三月現在地に移転した。ところで、昭和四
八年秋のいわゆる石油シヨツクの影響を受けて、控訴人は製品のクローラードリル
の販売数が減少し、昭和四九年一二月末には在庫数が平常時の約四倍にも達し、経
営が危機に瀕して合理化を余儀なくされる事態に立ち至り、その合理化策をめぐつ
て支部との間に前記のような長期間にわたる紛争が続くことになつたのである。
 支部は、昭和三八年五月ころ控訴人の従業員により東京流機製造労働組合の名称
のもとに結成され、昭和四〇年三月二六日の組合臨時大会決議に基づいて、総評全
国金属労働組合本部に加盟してその支部となり、その後、昭和四九年三月、控訴人
の事務所、工場の移転に伴つて神奈川地方本部に移籍し、その支部となつた。
 支部と控訴人の労使関係は、支部の結成以来、これといつた問題もなく経過して
来たが、控訴人が経営危機に直面し、合理化を推進する事態となつたことから、支
部も組合員の利益擁護を目的とした活発な運動を展開し、控訴人に対し種々要求す
るようになつて、両者の利害の対立が顕著となり、控訴人は支部の行動に対して従
来とは異なり厳しい態度で臨むようになつた。そして控訴人は、すでに昭和四九年
度においてもいわゆる春季闘争のさなかにあつた同年五月一七日支部に対し、争議
中に会社建物に立ち入ることを禁止する旨及び会社建造物内外に貼り付けたビラを
撤去するよう通告し、同年六月二二日には、正午の休憩時間におけるビラ貼り等の
組合活動が、疲労回復のための休憩制度の目的に反すると同時に、会社施設の管理
権の侵害、建造物損壊に当ることを理由に、その禁止を通告したほか、同様趣旨の
警告を数回繰り返し、従来大目に見ていた会社構内における組合活動を規制するよ
うになつた。昭和五〇年一月八日控訴人から支部への合理化実施申入があり、つい
で同月二一日前述したとおり、一時帰休が発表され、かつ、いわゆる春季闘争期に
入つたのに伴い、支部の活動が活発になつた同年三月、控訴人は労務担当常務取締
役にFを就任させ、労務担当顧問としてGを採用して、同人らに支部との交渉その
他組合に関する事項を専管させた。そのころから控訴人は支部に対し、前年の春闘
時期におけるよりも強硬な態度で会社建造物に貼付したビラ、会社構内に設置した
立看板、会社構内に掲揚した赤旗の各撤去要求、会社施設の無断使用禁止、会社構
内におけるビラ配布及び時間内組合活動の禁止等の通告ないし警告を発し、これに
違反したビラや立看板、赤旗などを撤去するなどし、これらに対して支部が抗議す
るという状態が、控訴人の被控訴人らに対する本件懲戒解雇の通告のなされた昭和
五一年五月二六日ころまでひんぱんに反覆継続した。右状況の中で、昭和五〇年七
月八日控訴人は支部委員長被控訴人B、同副委員長E、同書記長Hの三名を、支部
が控訴人の拒否にも拘らず、会社の食堂で集会を開いたこと、会社構内に控訴人の
名誉を傷つけ、信用を損う事実無根の事柄を記載した立看板を掲示したことを理由
に、その責任者として譴責の懲戒処分に付したほか、会社構内でビラを配布した者
に対して、同年一〇月二五日(二名)、一二月一五日(七名)、昭和五一年一月二
一日(五名)、二月七日(二名)、三月九日(二名)、四月七日(二名)、同月八
日(二名)、同月一四日(四名)、同月一七日(一名)、同月二〇日(一名)、同
月二二日(一名)、五月一一日(六名)、それぞれ就業規則に反するとして警告を
発した。支部の活動に対する控訴人の規制が厳しくなつたので、支部は、前示の時
間短縮問題にかかる団体交渉を控訴人が引延していることをも含めて、右活動規制
を不当労働行為として、前述のとおり同年二月一二日神奈川地方労働委員会に対し
不当労働行為救済申立をした。その後控訴人は支部に対し、前述したように昭和五
一年二月二〇日組合費の給与から天引することの中止を通告し、同月二七日になつ
て前示した昭和五〇年七月二一日以降の「組合用務のため」を目的とする指名スト
ライキについて、これまで格別異議を述べることがなかつたのに、これを違法であ
る旨警告した。この警告に対し支部は、従来行つてきた指名時限ストライキが正当
な行為であるとの見解に立ち、その後も前示のとおり昭和五一年三月一九日確立し
たストライキ権に基づき指名時限ストライキを続けた(但し、その通告書に「組合
用務のため」として通告したものはない。)ところ、前支部委員長の被控訴人Bと
現支部委員長の被控訴人Aに対して本件懲戒解雇の通告がなされた。
四 右認定事実によれば、控訴人が違法ストライキと主張する各指名ストライキの
実施された時期には、控訴人と支部との間に懸案事項について団体交渉が行なわ
れ、これをめぐつて争議状態にあつたということはできるけれども、右各指名スト
ライキのうち、控訴人が違法ストライキであるとの警告を発した昭和五一年二月二
七日以前のそれは、支部にとつて争議を有利に展開させるため、控訴人の業務を阻
害し、控訴人に圧力をかけることに直接の目的があつたのではなく、被指名者をし
てストライキの名目で職場を離脱させ、支部の用務に従事させることを意図したも
のであることが推認される。けだし、右各ストライキの被指名者の数は、一名又は
二、三名の場合が大部分であり、通告書に「組合用務のため」と記載したものが少
なからずあり、前掲疏乙第六五号証の一、二及び当審における被控訴人ら各本人尋
問の結果(被控訴人Aについては第一回)によれば、各被指名者のほとんどが支部
役員であり、かつストライキ参加による職場離脱の間、他労組への支援要請、官公
署、法律事務所などの訪問等に従事したものであることが認められるなどの諸事実
からみて、右各ストライキは、被指名者が組合用務に従事するために職場を離脱す
る名目を作り出すことに、真の意図があつたと認めるのを相当とするからである。
当審における被控訴人B本人尋問の結果も右判断を裏付けるものということができ
る。このようなストライキは、正当目的を具えたものとはいいがたく、むしろスト
ライキ権を濫用したものといわざるを得ない。
 しかしながら、支部は右各ストライキをするについて、その期日、時間、被指名
者を明示した通告書を、しかもそのうちの相当数については「組合用務のため」、
「会議に出席させるため」等と明記して、その大部分は当日に控訴人に交付してい
たのであるが、これに対して控訴人は会社施設へのビラ貼り、その無許可利用、会
社構内でのビラ配布等については従来支部に対して再三警告を与え、その参加者に
対してときに懲戒処分に付しているにもかかわらず、右ストライキの実施について
は、前示警告を発した昭和五一年二月二七日までは、右通告書を受領するに当り、
別段の異議を留め又は警告を発することなく、その実施を静観していたこと前述の
とおりであることのほか、前掲疏乙第六五号証の一ないし五によれば、このような
指名時限ストライキは昭和四九年一一月以来、別表(一)、(二)挙示のほかにも
かなり行なわれてきたことが認められることに照らせば、控訴人は従来被控訴人ら
がストライキに名を藉りて就業時間中に組合活動をすることについて、これがその
参加人数、時間からみて会社の正常な運営を殆んど阻害しなかつたところから、黙
示の承諾を与えていたものというべく、しからずとするも、被控訴人らからそう受
取られてもやむを得ない事情にあつたということができるから、これを被控訴人ら
の懲戒処分の事由とすることは著しく当を失したものであり、まして、最も重い処
分である懲戒解雇の事由とすることは、明らかに懲戒権の範囲を逸脱したものとい
わなければならない。控訴人がストライキ通告に対して異議を述べなかつたこと
が、たとい右ストライキを適法であると誤解したことによるものであつたとして
も、右判断に相違を来たすものとはいい難い。
 次に、前示警告後に実行された別表(一)13ないし19、同(二)30ないし
36の指名時限ストライキについてみるに、これらはいずれも昭和五一年三月一九
日確立されたストライキ権に基づくものであり、その目的は、当時控訴人と支部と
の間において争議の対象となつていた労働時間短縮問題について控訴人が団体交渉
に応ずることの要求を実現することにあつたこと前示のとおりである。もつとも前
掲疏乙第六五号証の四、五によれば、支部は右ストライキ権確立以来同年五月まで
僅か二か月余の間に、別表(一)、(二)記載の一〇回を含めて合計二二回もの頻
度をもつて指名時限ストライキを行なつたこと、その被指名者の数は一名又は二、
三名の場合が多く、また被指名者はすべて組合役員であると共に、ストライキ参加
中は組合用務に従事したことが疏明され、これらの事実に、既に支部は労働時間短
縮問題についての団体交渉を求めて労働委員会に対し救済命令の申立をしていた前
示の事実をも合せ考えると、右各ストライキもそれ以前の場合と同様、その真の目
的は、支部役員がストライキに名を藉りて組合用務を行うため職場を離脱すること
にあつたのではないかとの疑いがない訳ではない。しかしながら、その当時控訴人
は、その提案した第一、第三土曜日休日制を、支部の承諾が得られないまま、同年
五月から実施に移すことを表明し、それを阻止するために支部が団体交渉を要求し
ても応じないという態度を持し、その施行期限が刻々迫つていた時期にあつたこと
及び同年五月に入つてからも支部から控訴人に対して抗議が継続してなされていた
ことに徴すると、そのころ実施した各指名時限ストライキを、正当目的を欠き又は
ストライキ権の濫用であると断ずるにはいまだ疏明が足りないというほかなく、ま
た前掲疏乙第六五号証の四、五によれば、右各ストライキの通告はその大部分がそ
の当日になされていることが一応認められるが、従前のストライキについて被控訴
人主張のとおり事前通告の慣行が存在したことについては疏明がなく、かえつて従
前のストライキ通告はその当日なされたものが多かつたこと前述したとおりである
から、その通告方法をもつて右各ストライキを違法とすることはできない。そうす
ると、昭和五一年三月一九日確立されたストライキ権に基づいて実行した各指名ス
トライキをもつて違法ストライキであるとする控訴人の主張は理由がないというべ
きである。
 してみれば、別表(一)及び(二)記載の被控訴人らの職場離脱を理由としてな
された本件懲戒解雇は、懲戒権の範囲を逸脱したものというべきであり、前述のと
おりの本件懲戒解雇がなされるにいたつた経緯、殊に前記違法ストの警告書の発せ
られた時期が支部において神奈川県地方労働委員会に対して不当労働行為救済命令
の申立をした直後のことであつたこと及び本件懲戒解雇のなされた時期が右救済命
令申立事件についての右委員会の審問が終了して同委員会の命令が発せられる直前
であつたこと(なお、成立に争いのない疏甲第一七号証によれば、同委員会は同年
六月一八日控訴人に対して支部との団体交渉に応ずるべきこと、組合費の給料天引
廃止の通知の撤回等を命ずる救済命令を発したことが一応認められる。)に照らせ
ば、本件懲戒解雇は、控訴人が支部の組合活動の中心をなしていた被控訴人らを嫌
悪し、同人らを支部から排除して、もつて支部に打撃を与えることを意図してなさ
れたものといわざるを得ない。それゆえ、本件懲戒解雇は不当労働行為にあたるか
ら、無効ということになり、したがつて、その余の判断をまつまでもなく、被控訴
人らと控訴人との間には、雇傭関係が存続することに帰する。
五 次に、本件懲戒解雇通告当時における被控訴人らの賃金額及び本件仮処分申請
の保全の必要性については、原判決理由の三、賃金債権と保全の必要性の説示(原
判決一八枚目裏二行目から一九枚目表初行までのとおりであるから、これを引用す
る。
六 以上のとおり、被控訴人らの本件仮処分申請は理由があるからこれを認容する
のが相当であり、これと結論を同じくする原判決は、結局において相当であるとい
わなければならない。
 よつて、本件控訴は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について
民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 森綱郎 新田圭一 真栄田哲)
(別表省略)

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