弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告理由第三点について。
 控訴審において請求の一部が減縮された場合に控訴棄却の判決をしても違法でな
いことは、当裁判所の判例(昭和二四年(オ)一四一号同年一一月八日第三小法廷
判決)の示すところによつて明らかであるから、論旨は理由がない。
 その余の論旨はすべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する
法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、
又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官小林俊三の少数意見を除く外、その余の裁判官一致の意見に
よるものである。
 裁判官小林俊三の少数意見は次のとおりである。
 上告理由第三点について。
 民事の控訴審で被控訴人(勝訴原告)が請求の一部を減縮したときは、第一審判
決の主文は、減縮された請求の趣旨に適合しないこととなるから、控訴判決の主文
にこれを明らかにする方法をとらなければならないものと考える。民事の控訴審の
続審としての性格からいつても控訴審において請求の範囲に変動を生じたときは、
これを主文に明らかにすることは控訴審の当然の責務であり使命でもある。そして
主文は判決のもつとも重要な部分であるから、第一審判決として正しかつたからと
いつて、控訴審ですでに明らかになつた主文の不一致をそのまま放置していいとい
う理由は納得できない。控訴判決の理由を見れば解るといつたところで、そのまま
控訴棄却の判決があつた場合は、第一審判決の正本の主文が一応物をいうのである
から、強制執行その他について不測の間違を生じ関係人に迷惑を及ぼすことがない
とはいえまい。或はそういう間違があつた場合は、当事者はそれぞれの手段をとれ
ば直ぐ事実は判明するから差支ないという趣旨と思われるが、一体何故そうまでし
てかかる場合をそのまま是認しなければならないのか。むしろ判決の主文が言葉の
上でも真実に正しく合うように、また民事訴訟のすべての関係人に主文を一見すれ
ば判るようにするのが正しい解釈であると考える。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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