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平成24年(行ス)第67号執行停止申立却下決定に対する抗告事件
主文
1本件抗告を棄却する。
2抗告費用は抗告人らの負担とする。
理由
1本件抗告の趣旨及び理由
本件抗告の趣旨は,「原決定を取り消す。(主位的申立て)内閣が平成24
年11月16日に天皇に対してした衆議院の解散に関する助言と承認を前提と
する同日付けの衆議院議員総選挙の公示に関する助言と承認の続行手続である
平成24年12月16日の選挙の執行は,本案訴訟の判決確定までこれを停止
する。(予備的申立て)平成24年12月4日公示の衆議院議員総選挙の執行
は,本案訴訟の判決確定までこれを停止する。」との決定を求めるものであり,
その理由は,即時抗告申立書の第3に記載のとおりである。
2事案の概要
内閣は,平成24年11月16日,天皇に対し,衆議院の解散に関する助言
と承認及び衆議院議員の総選挙(以下「本件選挙」という。)の施行の公示に
関する助言と承認(以下「本件各助言と承認」という。)をした。これに対し
て,本件選挙の選挙人である抗告人らは,本件各助言と承認はいずれも内閣の
裁量権の範囲を逸脱して行われた重大かつ明白な違憲違法な行政処分であると
して,行政事件訴訟法に基づく抗告訴訟である無効確認の訴えとして,本件各
助言と承認の無効確認を求める訴訟(以下「本案訴訟」という。)を提起した。
本件は,抗告人らが,本件選挙の執行は本件各助言と承認の続行手続に当た
るとして,行政事件訴訟法38条3項において準用する同法25条2項に基づ
き,本案訴訟の判決確定に至るまで,その停止を求める事案である。
原審は,本案訴訟のうち,本件選挙の施行の公示に関する内閣の助言と承認
の無効確認を求める部分は公職選挙法が選挙の施行に係る手続中の個々の行為
について個別的に抗告訴訟を提起することを許容していないから不適法であり,
衆議院の解散に関する内閣の助言と承認の無効確認を求める部分は裁判所法3
条1項の法律上の争訟に当たらないから不適法であり,したがって,本案訴訟
に伴う本件執行停止の申立ては不適法であるとして,抗告人らの申立てを却下
したので,抗告人らが抗告した。
3当裁判所の判断
本案訴訟は,行政事件訴訟法3条4項,36条に基づく無効確認の訴えとし
て,内閣がした本件各助言と承認の無効確認を求めるものである。
ところで,行政事件訴訟法に規定する無効確認の訴えにおける確認の対象と
なる行政庁の処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,
その行為によって,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定するこ
とが法律上認められているものをいう(最高裁昭和39年10月29日判決・
民集18巻8号1809頁,最高裁昭和30年2月24日判決・民集9巻2号
217頁参照)。この観点から本件各助言と承認について考察すると,本件各
助言と承認は,天皇が憲法7条3号に規定する衆議院を解散する国事行為及び
同条4号に規定する国会議員総選挙施行の公示の国事行為を行うにつき,憲法
3条に基づいて行われる天皇に対する内閣の助言と承認であり,これらはいず
れも,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定する行為ということ
はできないものであり,行政庁の処分に当たるものということはできない。し
たがって,本件各助言と承認の無効確認を求める本案訴訟は,確認の対象につ
いて処分性を欠き,不適法である。
本件各助言と承認の無効確認を求める本案訴訟は,行政事件訴訟法3条1項
に規定する抗告訴訟として提起されたものであり,裁判所法3条1項に規定す
る法律上の争訟であることを要するものである。そこで,当該本案訴訟が法律
上の争訟に係る訴訟ということができるかどうかについて検討する。法津上の
争訟とは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争で
あって,かつ,それが法令の適用により終局的に解決することができるものを
いう(最高裁昭和56年4月7日判決・民集35巻3号443頁参照)。この
観点から本件各助言と承認について考察すると,本件各助言と承認は,天皇が
衆議院を解散する国事行為及び本件選挙施行の公示の国事行為を行うについて,
内閣が天皇に対して行う助言と承認であり,それらの無効確認を求める本案訴
訟は,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争に係る
訴訟であるということはできない。したがって,本件各助言と承認の無効確認
を求める本案訴訟は,法律上の争訟に係る訴訟に該当せず,不適法である。
以上のとおり,本案訴訟は処分性及び法律上の争訟性を欠く不適法なもので
あり,したがって,これに基づく本件執行停止の申立ても不適法であって,却
下を免れない。よって,本件執行停止の申立てを却下した原決定の結論は相当
であり,本件抗告は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとお
り決定する。
平成24年12月12日
東京高等裁判所第10民事部
裁判長裁判官園尾隆司
裁判官今泉秀和
裁判官森脇江津子

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