弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     各原判決を破棄する。
     被告人Aを懲役六月及び罰金拾万円に処する。
     被告人Bを懲役四月及び罰金五万円に処する。
     被告人等において右罰金を完納することができないときは金千円を一日
に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。
     但し被告人等に対し本裁判確定の日より各三年間右懲役刑の執行を猶予
する。
     押収に係るブルージルコン二百六十七個(昭和三十年押第一二二三号の
一)は被告人両名より、外国製腕時計エニカ百七十個(昭和三十年押第一二二四号
の一)は被告人Aより各没収する。
     原審の訴訟費用は全部被告人Bの負担とする。
         理    由
 本件各控訴の趣意は東京地方検察庁検事正代理検事山内繁雄作成の控訴趣意書
(二通)記載のとおりであるからこれを引用し、これに対し当裁判所は次のように
判断する。
 各原判決が被告人等に対する物品税法違反の点を無罪とした理由は、物品税は関
税と異り内国貨物に賦課するもので、外国貨物は本邦に到着した後関税を納付し輸
入を許可されて始めて内国貨物となるのであり、輸入許可前は外国貨物であるから
未だ物品税賦課の対象とならない。從つて物品税は関税を納付し輸入が許可され内
国貨物となつた貨物を保税地域より引取る際課税され、その課税標準も到着価格に
関税を加えた国内卸売価格に賦課される旨規定している。故に関税逋脱による不正
輸入の場合も保税地域外における陸揚又は保税地域より保税地域外えの不正引取に
より輸入が完成し、外国貨物が内国消費地域に搬入されて始めて内国貨物として物
品税の対象となる。本件時計及びブルージルコンは保税地域内である東京税関C税
関支署旅具検査室で発見されたのであるから輸入が許可さるるや否や未定の外国貨
物で物品税賦課の対象とならないから物品税逋脱犯の予備乃至未遂罪は成立する余
地がないというのである。
 しかし物品税法第一条及び同法施行規則第一条は物品名を掲げて物品税課税の対
象としているだけで、課税物件につき外国貨物、内国貨物の区別はしていない。そ
して外国から物品を輸入する場合には、その物品に対し関税を課することは関税法
第三条に定めるところであり、時計は物品税法第一条第二種戌類第五十号に、ブル
ージルユン(貴石)は同条第一種第一号に各規定する物品税課税品であるから、こ
れを輸入する場合には、これに対し所定の関税が課せられる外所定の物品税が課せ
られることは当然である。只課税標準について物品税法第三条第一項但書には、保
税地域より引取らるる物品にして引取人より税金を徴収するものについては引取の
際における価格とすと規定してあり、同法施行規則第十二条には、保税地域より引
取らるる第一種又は第二種の物品にして引取人より税金を徴収するものの価格は、
関税定率法第四条の規定に準じて算出したる価格に当該物品に課せらるべき関税に
相当する金額を加えたる金額によると規定してあるため、物品を輸入する際の物品
税は関税を納付し輸入が許可され、その物品を保税地域より引取る際課税されるも
ので、関税賦課の後に物品税の賦課があつて、両者は別個の手続により時間的にも
前後の関係があるような感があり、原判決もこの見地に立つて、物品税は関税を納
付し輸入が許可され物品を保税地域より引取る際課税されるものであり、関税逋脱
による不正輸入の場合も保税地域外における陸揚又は保税地域内より保税地域外え
の不正引取により輸入が完成し、外国貨物が内国消費地域に搬入されて始めて物品
税の対象となると説明しているのである。仍て先ず関税及び物品税課税の手続につ
いて考えて見ると、関税については、物品を輸入しようとする者は輸入申告書を税
関に提出し(関税法第六十七条同法施行規則第五十九条)税関はこれを審査して課
税価格を決定告知し申告者よりこれを徴収した後輸入の許可をし、(関税法第四
条、関税定率法第四条、関税法第八条、同施行令第三条、第四条、関税法第六条、
同法第七十二条)一方物品税については、引取人が物品税品引取申告書を税関に提
出し(物品税法第八条第二項、同法施行規則第十七条第三十九条)その徴収は税関
が関税を徴収するとき関税法施行令第三条及び第四条に準じ同時に徴収することに
なるのである(明治三十八年勅令第五十六号税関ニ於少ル内国税賦課徴収ニ関スル
件、明治四十四年法律第四十五号酒税等ノ徴収ニ関スル法律第三条、明治四十四年
勅令第百八十六号酒税等ノ徴収ニ関スル件第二条―但し以上の三件は昭和三十年七
月一日以降は昭和三十年法律第三十七号輸入品に対する内国消費税の徴収等に関す
る法律及び昭和三十年政令第百号輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律
施行令の各施行により廃止された)而して記録によると本件犯行当時D空港は保税
地域に指定されてはいなかつたが事実上保税地域と看做して輸入品に対する関税及
び物品税の賦課徴収に関する事務を行つて居り外国より来航せる旅客は税関職員の
案内及び説明に従つて、自己の携帯品の申告を一通の「入出国者携帯物件申告書」
によつてなし、税関職員が右申告書の記載内容と現物とを対照して関税及び物品税
の額を決定告知し、これを納付させた後輸入を許可し輸入品の引渡をなすこととな
つていて、輸入申告と物品税品引取申告とは別個になすものではなく、輸入許可前
に同一手続によつてなされ、また関税及び物品税の賦課徴収も同一の手続によつて
同時になされるものであることが明らかである。このことは前記法令の趣旨にも合
致し、手続の煩雑を避け事務の能率を上げ得るばかりでなく、旅客の便宜を図るこ
とともなつて最も合理的な措置ということができる。若し原判決の如く保税地域を
経由してなす不正輸入の場合には保税地域内より保税地域外えの引取により輸入が
完成し、外国貨物が同国消費地域に搬入され内国貨物とならなければ物品税を課す
ることができないとすれば、保税地域内で不正輸入であることを発見しながら、物
品税を課することも犯則事件の取締をすることもできない結果となり、輸入品に対
する物品税課税の目的は達せられないこととなる。のみならず正規の通関手続を経
て物品を輸入する者は前記の如く関税と同時に物品税を納付した上輸入の許可を受
けて物品の引渡を受けているのに、不正輸入をする者は保税地域外に搬入されるま
では物品税を納付する義務がないという結果になり到着首肯し難い。要するに原判
決は物品税法施行規則第十二条の文理に拘泥した結果、物品税法第三条第一項但書
の「引取の際」の意義を(物品税法第十条第一項但書においては物品税の納期につ
いて同一文言を使用している)引取の後と同意義に誤解したものである。尚原判決
はその解釈の根拠として物品税法第十条第四項を挙げているが、これは関税法第七
十三条第一項の規定により保税地域より引取る物品に対する物品税に関する規定で
あり、関税法第七十三条第一項は、外国貨物を輸入申告の後輸入の許可前に、関税
額に相当する担保を提供して税関長の承認を受けて引取る場合の規定で、関税は後
日輸入の許可がある際納付すればよいことになるから、従つて物品税もこれに相当
する担保を提供しておけば、後日輸入の許可があつた際納付すればよいという趣旨
で、輸入許可前に貨物の引取を認める例外の場合の規定であるから、これを根拠と
して通常の場合の輸入品に対する物品税賦課の時期を論ずるのは正当でない。(物
品税法第十条第四項は、昭和三十年七月一日以降は前記輸入品に対する内国消費税
の徴収等に関する法律の施行により、同法附則において削除した)以上の如く保税
地域を経由して物品を輸入する場合の物品税は、保税地域より引取る際に課せられ
るのであつて、関税を納付し輸入が許可された後であることを条件とするものでは
ない。そしてこのことは正規の通関手続を経て輸入する場合であると否とを問わな
いのである。故に原判決が本件外国産ブルージルコンは保税地域内であるC税関支
署旅具検査室で発見されたのであるから、輸入が許可さるるや否や未定の外国貨物
で物品税の対象とはならないとしたのは法令の解釈を誤つたものといわなければな
らない。
 而して物品税法第十八条はその第一項第二号において「詐偽その他不正の行為を
以て物品税を逋脱し又はその逋脱を図りたる者」を処罰する旨規定しており、「そ
の逋脱を図り」とは犯罪の実行行為に着手しこれを遂げなかつた場合即ち未遂の場
合は勿論、犯罪の実行行為の着手には到らないが、犯罪の実行行為に接着近接した
<要旨>段階に到つた場合をも包含するものと解すべきところ各原判決の拳示した証
拠によれば被告人両名は共謀の上、外国産の貴石であるブルージルコンを税
関の許可を受けないで輸入し、該物品に対する関税及び物品税を逋脱せんことを企
て、また被告人Aは単独で税関の許可を受けないで外国製腕時計を輸入し、該物品
に対する関税及び物品税を逋脱せんことを企て、昭和三十年六月七日被告人Aにお
いて、泰国バシコツク市より外国製腕時計及び外国産の貴石であるブルージルコン
を携帯の上、E会社所属の航空機に搭乗し、同月九日午後七時三十分頃D空港に到
着し、自己の着衣及び携帯鞄内等にこれを隠匿して所定の申告及び納税等の通関手
続を経ないで、不正の行為を以て本邦内に搬入しようとしたが、同空港内東京税関
C税関支署旅具検査室において税関職員に発見され、その目的を遂げなかつた事実
を認めることができるから、被告人等の所為は不正の行為により関税を免れようと
してその犯罪の実行に着手しこれを遂げなかつた外、不正の行為を以て物品税の逋
脱を図つたものというべきである。然るに各原判決は冒頭掲記の如く保税地域内よ
り保税地域外えの不正引取により輸入が完成し、外国貨物が内国消費地域に搬入さ
れ内国貨物となつて始めて物品税の対象となり、それ以前は物品税の対象とならな
いものとして物品税法違反の点を無罪としたのは法令の解釈適用を誤つたものであ
り、その誤が判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、論旨は理由があり、原判
決はいずれも破棄を免れない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条により各原判決を破棄し、同法第
四百条但書により更に次のように判決する。
 罪となるべき事実
 被告人両名は共謀の上、税関の許可を受けないで不正の行為により外国産貴石を
輸入し該物品に対する関税及び物品税を通脱せんことを企て、また被告人Aは単独
で税関の許可を受けないで不正の行為により外国製腕時計を輸入し、該物品に対す
る関税及び物品税を逋脱せんことを企て、昭和三十年六月七日被告人Aにおいて、
泰国バンコツク市より外国製腕時計百七十個(関税額十三万二千八百四十円、物品
税額五万七千五百六十円)及び外国産貴石であるブルージルコンニ百六十七個(関
税額四万五千五百七十円)物品税額十万二百六十円、を携帯の上、E会社所属の航
空機に搭乗し、同月九日午後七時三十分頃東京a所在D空港に到着し、自己の着衣
及び携帯鞄内等にこれを隠匿し、所定の申告及び納税等の通関手続を経ずにこれを
本邦内に搬入しようとしたが、同空港内東京税関C税関支署旅具検査室において、
税関職員に発見され以て被告人Aは外国製腕時計及びブルージルコンに対する関税
十七万八千四百十円及び物品税十五万七千八百二十円逋脱の、被告人Bは右ブルー
ジルコンに対する関税四万五千五百七十円及び物品税十万二百六十円逋脱の目的を
遂げなかつたものである。
 右事実を認定した証拠は、当審証人F及び同Gの証言を附加する外被告人A及び
被告人Bに対する各原判決の挙示した証拠と同一であるからいずれもこれを引用す
る。法律に照すと被告人等の所為中関税法違反の点は包括して関税法第百十条第二
項第一項罰金等臨時措置法第二条に、物品税法違反の点は包括して物品税法第十八
条第一項第二号罰金等臨時措置法第二条に各該当するところ、外国産ブルージルコ
ンに対する関税法違反及び物品税法違反の点は被告人両名の共謀に係るものである
から刑法第六十条を適用する。而して以上は一個の行為で数個の罪名に触れる場合
であるから同法第五十四条第一項前段第十条により被告人Aについては犯情重い関
税法違反の罪の刑に、被告人Bについては犯情重い物品税法違反罪の刑にそれぞれ
従い、なお被告人等に対しては懲役及び罰金を併科することとし、その所定刑期及
び罰金額の範囲内で被告人Aを懲役六月及び罰金十万円に、被告人Bを懲役四月及
び罰金五万円に各処し、被告人等が右罰金を完納することができないときは刑法第
十八条により金千円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置し、同法第二
十五条第一項により被告人両名に対し本裁判確定の日より各三年間右懲役刑の執行
を猶予する。押収に係る外国製腕時計エニカ百七十個は本件関税法違反の犯罪に係
るもので被告人Aの所有であり、外国産ブルージルユン二百六十七個は本件関税法
違反の犯罪に係るもので被告人Bの所有であつて、いずれも関税法第百十八条第一
項但書の場合に該当しないから同条第一項本文に従いこれを没収し、原審の訴訟費
用は刑事訴訟法第百八十一条第一項本文に従い全部被告人Bをして負担せしめる。
 よつて主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 大塚今比古 判事 渡辺辰吉 判事 江碕太郎)

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