弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件非常上告を棄却する。
         理    由
 本件非常上告趣意について。
 被告人は、昭和三〇年六月二七日函館市a町b番地A方倉庫において北緯三〇度
以北の北太平洋において農林大臣の許可なく猟獲した膃肭獣の獣皮二二八枚を所持
したものであるとの事実について、臘虎膃肭獣猟獲取締法一条、五条、六条同法施
行規則四条、昭和二五年農林省令一一一号六条を適用されて略式命令を受け、該命
令はその頃確定したことは明白である。
 検察官は、本件申立の理由として、原略式命令が農林省令一一一号二条、四条、
六条後段を適用していることを前提として、製造された臘虎、膃肭獣の獣皮の所持
を処罰する趣旨であつたと解すべきであるところ、これら関係規定は昭和二七年八
月一五日公布の法律三〇六号地方自治法の一部を改正する法律により昭和二八年九
月一日以降廃絶に帰したのであつて、無罪たるべき者に略式命令を発した違法があ
るといい、更に当裁判所の釈明命令に対しては、前記省令二条、四条を適用した旨
の非難は撤回し、海上で猟獲した膃肭獣を皮剥、塩蔵することも獣皮の製造であり、
その獣皮を所持することは、同令六条後段に該当するが、同条の右部分は前記地方
自治法の改正により廃絶に帰したのであつて、本件略式命令は処罰すべからざる者
を処罰した違法があると釈明している。
 よつてまず本件申立書記載の理由について審按すると原略式命令は、罪となるべ
き事実として「北緯三〇度以北の北太平洋において農林大臣の許可なく猟獲した膃
肭獣の獣皮を所持した」旨記載し、卒然とこれを読めば都道府県知事の検査、証票
交付を受けない獣皮を所持したかのように解せられる嫌もないではないが、「都道
府県知事の検査云々」の文言もなく、却つて「北緯三〇度以北の北太平洋上におけ
る不法猟獲」なる文言が附加されていること、その適条においては、前記農林省令
一一一号三条(証票の交付等)、四条(獣皮製造の制限)を適用せず、却つて臘虎
膃肭獣猟獲取締法施行規則四条(不法猟獲)を適用しているところを見ると、原略
式命令は「北緯三〇度以北の北太平洋上において農林大臣の許可なく猟獲された膃
肭獣を所持した」という犯罪事実を認定して前記省令六条前段等に問擬したものと
解すべきであつて、所論のように「製造した膃肭獣の獣皮を所持した」という犯罪
事実を認定して、前記省令六条後段を適用、処罰したものと解することはできない。
従つて原略式命令は、前記地方自治法の改正とは関係なくなお当時効力のあつた法
令を適用したのであつて、廃止された法令を適用したのではないから、右と異る前
提の下に原略式命令を攻撃する所論は、採用の限りではない。
 次に検察官が釈明書において主張する理由につき審案する。記録によると被告人
は、昭和三〇年四月一〇日頃Bを通じてCと称する船乗りが密猟し、皮剥、塩蔵に
した原皮を加工、製造するよう委託を受け、これをA方倉庫に保管所持していたの
であるが、このように腐敗防止のために海上で猟獲後直ちに皮を剥ぎ、塩漬にした
に止まる原皮は、未だ前記省令六条後段にいう製造した獣皮に該当するということ
はできない。猟獲直後の海上において直ちに都道府県知事の検査と証票の交付を受
けることは到底不可能であつてこのような不可能事に罰則を以て臨んでいたものと
解することはできないからである。所論は既に皮を剥いだものは膃肭獣そのもので
はないから製造された獣皮という外はないと主張するのであるが、徒らに文理に拘
泥して右のように解釈することは、密猟を取り締ろうとする法令の法意を無視し、
また密猟した原皮であることは熟知している毛布業者の密猟の幇助的な所為をも不
問に附しようとするものであつて到底採用に値しない。
 よつて刑訴四五七条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
 本件公判出席検察官 安平政吉。
  昭和三二年六月七日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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