弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人下山四郎、同井上卓一の上告趣意第一点について。
 元来控訴審では、特別の規定で、被告人のためにする弁論は弁護人でなければこ
れをすることができず且つ弁護人は、公判期日に控訴趣意書に基きその弁論をしな
ければならないものとされ、また、被告人は、裁判所が被告人の権利保護のため重
要であると認め被告人の出頭を命ずる場合の外、公判期日に出頭することを要しな
いものとされている。従つて控訴裁判所では必ずしも所論のように常に事実の取調
に被告人を立ち合わせ被告人に弁論の機会を与えなければならないものということ
はできない。そして、控訴審は旧刑訴のような覆審でもないから、このことは裁判
所がその取調の結果第一審判決を破棄し更らに自ら判決をする場合でも同様である
といわなければならない。もつとも、控訴審で事実の取調の一方法として証人の尋
問をし、これを裁判の資料とするような場合には、憲法三七条二項の刑事被告人の
権利保護のため特に被告人をこれに立ち会わせその証人を審問する機会を与えなけ
ればならないものと解するを相当とする。
 本件記録によると、原審は第二回公判で本件につき事実の取調をする旨を宣し、
第三回公判で公判外の書面による証拠決定に基いて証人としてB及びCを尋問し、
しかもこれら証人の供述を事実認定の資料に供したこと、並びに、右証人尋問が行
われた公判には被告人が出頭しておらず且つその後においても特に被告人に対しこ
れら証人の供述の内容を知らせる手続を執らなかつたことは所論のとおりである。
しかしながら、本件では、前記公判期日における証人の取調は、もともと弁護人の
申請した証人の尋問であつて、各被告人にはいずれも右公判期日の召喚状が適法に
送達され(記録九二六丁、九二七丁参照)且つ被告人の弁護人は同公判期日に出頭
して右各証人に対しそれぞれ尋問もしていることが記録上明白であるから、被告人
の前記憲法上の権利保護に充分な機会を与えたものといわなければならない。され
ば、原審の手続には所論の違法があるとはいえない。
 なお所論の判例違反の主張は、その判例を何等具体的に示していないから上告適
法の理由として採るをえない。(刑訴規則二五三条参照)
 同第二点及び同第三点について。
 所論は理由不備(第二点)と量刑不当(第三点)との主張であつて刑訴四〇五条
にあたらないからいずれも採用できない。
 被告人Dの弁護人山下卯吉、同清原邦一の上告趣意第一点について。
 本件においては、被告人選任の弁護人は所論証人の取調に立ち会つて尋問をして
おるのであるから憲法の保障する弁護権の行使を制限したということはできない。
その余の論旨は単なる訴訟法違背の主張であつて刑訴四〇五条にあたらない。いず
れも採用できない
 同第二点について。
 前掲被告人A弁護人下山四郎、同井上卓一の上告趣意第一点において説示したと
おりであるから所論は採用できない。
 同第三点乃至第五点について。
 所論は原判決の単なる訴訟手続違背(第三点)と事実誤認(第四点)と又は量刑
不当(第五点)との主張であつて刑訴四〇五条にあたらないからいずれも採用でき
ない。
 被告人Dの弁護人五井節蔵の上告趣意(同第八点を除く)について。
 所論はいずれも憲法違反を主張するけれども、その実は訴訟法違背又は事案誤認
(第一点乃至第一二点)或は量刑不当(第一三点)の主張に過ぎないから刑訴四〇
五条にあたらない。(第一点所論検察官の意見は聴かれていること、第二点所論判
決宣告期日の召喚状は被告人に送達されていること、同第六点所論原判決が恐喝と
して認定した事実は第一審判決が詐欺として認定した事実の一部であつて所論のよ
うに無罪を言渡したものでないこと、最後に同第七点所論Fに関する公訴事実は昭
和二一年一一月より同二二年一〇月迄の詐欺の事実であつて原判決判示第一(一)
の詐欺の連続犯の一部に属するものと認められることはいずれも記録上明である。)
それ故所論はいずれも採用できない。
 同第八点について。
 所論が採用に値しないことは前掲被告人A弁護人下山四郎、同井上卓一の上告趣
意第一点について説示した通りである。
 被告人Dの弁護人林頼三郎の上告趣意について。
 所論引用の判例は当該事実関係において、包括一罪を認めたもので連続一罪を認
あたものではないから本件には適切でない。それ故所論は採用できない。
 被告人Dの上告趣意について。
 所論は原審の単なる訴訟手続違背と証拠の取捨判断とを攻撃して原判決の事実誤
認を主張するものであつて採るをえない。
 よつて刑訴四〇八条に従い主文の通り判決する。
 この判決は裁判官真野毅及び同小林俊三の後記各意見を除く他の裁判官全員一致
の意見である。
 被告人Aの弁護人下山四郎、同井上卓一の上告趣意第一点に関する裁判官真野毅
の意見は次のとおりである。
 所論のごとく、「控訴審の審判については、特別の定めがある場合のほかは総則
の規定の適用があることは自明であるし、又第一審の公判に関する規定が準用され
ることは刑訴法第四〇四条に規定するところである」というのは、毫も疑いの余地
がない。しかし、所論のごとく「証人尋問の場合、それが法廷外で行われた場合と
法廷内で行われた場合とを問わず、いやしくも被告人がこれに立ち会わなかつたと
きは、被告人に証人の供述の内容を知る機会を与えたものでなければ、その供述を
採つて事実認定の資料に供することは許されない。このことは刑訴一五九条の規定
の精神から明らかである」というのは、誤つている。刑訴一五九条は総則の規定で
あり第一審にも控訴審にも適用があるが、それは裁判所外、公判期日外における証
人尋問に被告人等が立ち会わなかつたときに、被告人等に「証人の供述の内容を知
る機会を与えなければならない」という特例の手続を定めたものである。本来証人
尋問は原則として、公判期日に裁判所において、裁判所によつて行われ、証人の供
述そのものが証拠とせられるべき筋合のものである。ただ実際の必要からして、例
外として、誰人尋問が公判期日外に、裁判所外において、受命裁判官又は受託裁判
官によつて行われ(同一五八条)、この証人の尋問の結果を記載した書面がさらに
公判期日に裁判所によつて書証として取調べられることになる(同三〇三条)。そ
して前記一五九条は、かかる変則例外的な証人尋問に立ち会わなかつた被告人等を
保護するために特別の手続を定めたに過ぎないものである。それ故正常な原則どお
り公判期日に裁判所により証人尋問が行われ、その供述が証拠とされる場合には、
たとい被告人が現実に公判に立ち会わなかつたときでも、前記一五九条の適用はな
く、従つて特に「証人の供述の内容を知る機会を与えなければならない」というこ
とはない。かように被告人が公判期日における証人尋問に立ち会わない事態は、単
に控訴審においてのみ生ずるばかりではなく(同三九〇条)、第一審においても同
様に生ずるわけである(同二八四条、二八五条)。多数意見はこの点に関する判断
を全然遺脱している。
 さらに、所論は『この証人の尋問が行われた公判には被告人は出頭していないし、
又その後において被告人に対しこれら証人の供述の内容を知る機会が与えられても
いないことは……憲法三七条二項が定めた「刑事被告人は、すべての証人に対して
審問する機会を充分に与へられ」るという保障を侵したものである』と主張する。
しかしながら、原審の各公判期日についてはそれぞれ被告人に召喚状が送達されて
おり、従つて被告人は当該証人尋問につき憲法三七条二項に基く刑訴一五七条(こ
の規定は公判期日におけると否とを問わず適用があり且つ控訴審にも適用がある)
の定めている立会権及び審問権を行使し得る機会はすでに与えられたものである。
ただ被告人は、その機会が与えられたにかかわらず控訴審においては立会義務なき
がままに(同三九〇条)、自ら公判期日に出頭せず証人尋問権を行使しなかつたま
でのことである。また裁判所が被告人の証人尋問を不法に妨げたような事実は記録
上にもなく、また論旨も主張してはいないし、なお弁護人は該公判に出頭し証人を
現に尋問している。それ故、前記違憲の主張は理由なきものである。
 次に、所論は「公判期日に事実の取調を行つたとき、それを事実認定の基礎とす
るためには、被告人の弁論をも許さなければならない」「然るに右事実の取調が行
われた公判期日には被告人は出頭していなかつたし、その後においても右事実の取
調について被告人に弁論の機会が与えられていない」のは公判手続に違背する違法
があると主張する。そして、わたくしは控訴審においても本件のごとく証人尋問と
いう事実の取調が行われた場合においては、被告人の基本的人権を擁護する必要上
その限りにおいて、刑訴三八八条にかかわらず、被告人は同二九三条により意見を
陳述することができるものと解するを相当とする。しかし、本件においては前述の
ように当該公判期日について被告人に召喚状は送達されており、従つて被告人は事
実の取調に関し意見を陳述し得る機会はすでに与えられたものである。ただ被告人
はその機会が与えられたにかかわらず自ら公判期日に出頭せず意見陳述権を行使し
なかつたまでのことに過ぎない。それ故原審の公判手続にはこの点において違法は
ない。論旨はすべて採るを得ない。
 被告人Aの弁護人下山四郎、同井上卓一の上告趣意第一点について、裁判官小林
俊三の意見は次のごとくである。
 弁護人下山四郎外一名の上告趣意第一点についての判決理由のうち、冒頭の一般
的な説示の部分につき意見を述べる。
 控訴審においては、被告人は常に公判期日に召喚を受け、出頭の機会を与えられ
なければならない。また控訴審において新しい証拠調をする場合には、被告人はこ
れについて常に最終の弁論をする機会を与えられなければならない。その理由は次
のごとくである。
 (一)(1)新刑訴法における控訴審の性格は、明らかに事後審であるが、これ
に添う限りにおいては、訴訟記録と原審にもいて取調べた証拠に現われている事実
に即して、さらに審査的又は補充的な事実の取調をもすることができると解しなけ
ればならない(刑訴三九三条)。
 すなわちこの限度において控訴審は、部分的な続審となる場合があるのである。
従つて控訴審は、法律審としての性格に徹することなく、法律審たる性格が強いけ
れども、なおその性格の中に事実審たる部分を含んでいると見なければならない。
この意味において、控訴審においては、事後審と法律審とは、もちろん同義語では
ないのである。(2)刑訴法は、控訴審における被告人について、特に裁判所が被
告人の出頭を命ずる場合の外、公判期日に出頭することを要しないと定めているの
みであつて(三九〇条)、被告人が公判期日に出頭する機会を与えられなくともよ
いとする規定は存在しない(参照四〇九条刑訴規則二四四条二六五条)。
 また控訴審においては、弁護人でなければ弁論をすることができないと定められ
ているからといつて(三八八条)、直ちに、被告人は公判期日に出頭の機会を与え
られないでもよいということにはならない。これを反対に解する考え方は、控訴審
をもつて、事後審なるが故に、法律審とするに傾くか、或は事後審なるが故に事実
調特に新しい証拠調をする場合においでも、被告人に対し、正規の方式による審理
を必要としないという前提に立つのであろう。わが国の裁判所の現実の面からいつ
ても、新しい控訴審の性格を右のように解し、これを観念的に貫こうとするには、
これと不可分であるべき第一審を中心とし重点とする組織は、そのようには確立さ
れていない(3)刑事訴訟は、いうまでもなく、原告たる検察官と被訴追者たる被
告人が、互いに攻撃防禦の方式によつて訴訟を進行してゆく仕組である。弁護人の
地位は、特に控訴審においては、主として被告人に法律的智識の面を補充して、法
律家である検察官と均等の力を保たせる意図をもつ被告人の補助者であつて、訴訟
上代理権をもちまた、ある種の固有権をもつているけれども、補助者であることに
は変りはない。訴訟上の利害関係を直接担い、判決に帰結した成果を一身に負うの
は被告人その者であるから、控訴審においても、公判における被告人の地位を副次
的存在と見るのは正しくないと考える。(4)そこで控訴審において、弁護人が控
訴趣意書に基いて弁論するに止まる場合においても、被告人は法廷に出頭し、その
経過を見まもり、また弁護人と連絡して、弁護人の弁論の内容を補強することは、
被告人の防禦方法の裏ずけであつてこの関係だけからいつても、被告人は公判期日
に出頭する重大な利害をもつのである。まして裁判所が事実の取調をする場合には
(私は三九三条の事実の取調は単なる調査と意義を異にすると考える)、その進行
の各段階において、被告人の利害はさらにより以上重大であり、防禦の機会を常に
もつことを必要とする。このような意味からいつて、被告人は常に控訴審の公判期
日に出頭する機会を与えられなければならないのである。このためになんら控訴審
の性格を損うものではない。(5)第一審の公判期日においては、被告人の出頭は
義務であると同時に権利の一面をもつている。しかるに控訴審においては、刑訴三
九〇条本文に「被告人は公判期旧に出頭することを要しない」と規定し、特定の場
合の外は、被告人に出頭の義務を免除している。さすれば、被告人には、前述のよ
うな公判期日に出頭する権利の面が残ることとなるから、その機会を与えられるこ
とは、正しく被告人の権利であるといわなければならない。もし控訴審においては、
特定の場合の外、被告人に、必ずしも常に、公判期日に出頭する機会を与えないで
もよいという趣旨ならば、法が「出頭することを要しない」と、被告人の任意とす
るような消極的表現をする訳がなく、上告審のように、「公判期日に被告人を召喚
することを要しない」(四〇九条)と定める筈である。また刑訴規則二四四条に、
控訴審が、公判期日を指定したときは、検察官は、速やかに被告人を控訴裁判所所
在地の監獄に移さなけれはならない」と定めたことは、さして意味がないこととな
るであろう(参照刑訴規則二六五条)。(6)控訴審において、被告人に公判期日
に出頭する機会を与えるためには、現在の方式は召喚状を発するのであるが、召喚
状の送達を受けた被告人が、なお公判に出頭すると否とが任意であるのは、控訴審
という特定の訴訟手続において、特に出頭の義務を免除したのに過ぎない。これに
よつて、なんら召喚状の性質効力を害するとはいえない。以上の理由により控訴審
において、被告人は常に公判期日に出頭の機会を与えられなければならないのであ
る。
 (二)次に真野裁判官の控訴審における新しい証拠調と被告人の弁論の機会との
関係及びこれについての本件に対する意見判断(同裁判官の意見末段)に同調する
外、次のように加える。前に述べたように控訴審が事後審としての線に添う限りに
おいて、詳言すれば控訴申立が理由ありや否やを調査するため必要な限りにおいて、
控訴裁判所は事実の取調をする場合があり、それに従つてまた新しい証拠の取調を
必要とする場合があるのである。このような新しい証拠調をする限りにおいては、
控訴審は事後審の軌道における補充的事実審であり、部分的続審であるから、この
限度においてはできる限り被告人を第一審における証拠調の方式の地位に置くべき
であつて、被告人は各種の防禦方法を行うことができるものと解しなければならな
い。かくして、控訴審の裁判所は、原審の資料と、新しい証拠調を行つたときは、
その結果とを合せた事実認定に基ずき、破棄自判をする場合もあり得るのであるか
ら、当事者たる被告人の地位からいつて、かかる新しい証拠調を行つた場合には、
証拠調が終つた後、被告人に対して、常に最終の弁論の機会をも与えなければなら
ないのである。
  昭和二七年二月六日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    眞   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    小   林   俊   三

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