弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原決定を取消す。
     本件刑執行猶予言渡取消請求を棄却する。
         理    由
 本件特別抗告申立理由は、末尾添付の書面記載のとおりである。
 よつて案ずるに、本件関係記録によれば、被告人Aは、(一)昭和二三年四月頃
法定の除外理由なく、需要者割当証明書と引換えないで指定生産資材を譲り受けた
臨時物資需給調整法違反の罪につき、昭和二五年七月一〇日金沢地方裁判所におい
て、懲役六月及び罰金三万円、但し懲役刑につき三年間執行猶予の判決言渡を受け、
これに控訴の申立をなし、同二五年一二月二二日名古屋高等裁判所金沢支部におい
て控訴棄却の判決言渡があり、この判決は同二六年一月六日確定したこと、(二)
同二四年七月頃Bより数回に現金五〇万円を騙取した行為の詐欺罪及び同二五年六
月七日頃Cのため保管中の現金四万円を擅に自己の債務の弁済に当てた行為の横領
罪につき、同二五年一二月二二日金沢地方裁判所において懲役一〇月但し三年間執
行猶予の判決言渡を受け、この判決も右(一)の判決と同様同二六年一月六日確定
したものであることが明らかである。そしてまた検察官から右(一)(二)の確定
裁判における刑執行猶予言渡取消請求を受けた金沢簡易裁判所は、右請求が刑法二
六条(昭和二八年法律一九五号による改正前のもの)各号に該当しないとして請求
棄却の決定をなし、検察官からの即時抗告により名古屋高等裁判所金沢支部は、右
(一)(二)の場合は「相互に二者共に刑法二六条(同上)二号に所謂猶予の言渡
前に犯した他の罪につき禁錮以上の刑に処せられたときに該当するもの」と認め、
請求棄却の決定を取消し、右(一)(二)の各執行猶予言渡を取消す旨の決定をし
たものであることが認められる。
 本件特別抗告理由は、原決定の判断は所論引用の高等裁判所判例に相反するもの
であり、その刑法二六条(同上)二号についての見解は誤りであつて、本件刑執行
猶予言渡の取消をなしたことは憲法三一条に違反する旨主張する。しかして所論引
用の各判例に示されている見解は、刑法二六条(同上)二号にいう「猶予ノ言渡前
ニ犯シタル他ノ罪ニ付禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルトキ」とは、その罪につき禁錮
以上の実刑を言渡された場合を指すものであつて、刑の執行猶予の言渡があつた場
合を含まない趣旨に帰着するものというの外ないのであるから、原決定の刑法二六
条(同上)二号に関する前示見解が右判例と相反するものであることは論をまたな
い。そして右判例の見解は原決定後において当裁判所屡次の判例の是認するところ
である。(斎藤裁判官は反対意見を表明している)
 されば原決定は所論引用の判例と相反する判断をしたものというべきであるから、
この点において本件特別抗告は理由があり、他の論旨につき判断するまでもなく原
決定はこれを取消すべきものといわなければならない。
 なお当裁判所は更に本件刑執行猶予取消請求についてその当否を判断するに、現
在において刑の執行猶予取消について規定している刑法二六条及び同二六条ノ二(
昭和二八年法律第一九五号により改正又は追加せられたもの)によれば、前示(一)
(二)の場合における刑の執行猶予の言渡を取消すべきなにらの理由がないものと
認められるのであるから、本件刑執行猶予言渡取消請求は理由がないものとして棄
却を免れない。
 よつて刑訴四三四条、四二六条二項により、裁判官斎藤悠輔の反対意見を除き、
全員一致の意見で主文のとおり決定する。
 裁判官斎藤悠輔の反対意見は、次のとおりである。
 わたくしは、刑法二五条一項一号の「前ニ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコトナキ
者」とは、その刑につき執行猶予の言渡あると否とを問わないものと解する。この
見解は、当裁判所の大法廷判決においてわたくしの意見として屡々述べたところで
ある(判例集七巻六号一四〇八頁以下、一〇巻五号七六四頁以下、一一巻二号五〇
七頁以下参照)。従つて、改正前の刑法二六条一項二号の規定も同一に解すべきこ
というまでもない。されば改正前における同号に関する原決定は正当であつて、本
件申立はその理由がないものといわざるを得ない。
  昭和三三年三月一七日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    入   江   俊   郎

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