弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士中村喜一、同逸見惣作の上告理由第一点、同海野普吉、同柳沼
八郎の上告理由第一点について。
 しかし、本件記録によれば、候補者Aの屋号が「中田」である証拠がないとの原
判示は、これを肯認することができる。しかのみならず、原判決は、その判決理由
中の請求原因第二(1)(イ)について甲第一号証の一ないし七は、投票用紙を上
下逆にして「田中」と記載したものと認定し、同(ロ)について甲第二号証は、左
端から「田中」と記載されたものと認定したものであつて、その認定は、原判決の
説示に照しこれを首肯することができるから、「中田」が候補者Aの屋号であるか
否かは、原判決の右認定に影響のない事柄であり、また、選挙人が候補者の屋号を
記載するがごときは異例に属するから、本件候補者中に中田なる姓の候補者が一人
も存しない以上特別の事由の認められない本件においては、原判決理由中の請求原
因第二(1)(ハ)について甲第三号証の「中田C」とある票は、単に「田中C」
の誤記とみるべきで他の候補者の姓と田中Cの名との混記でない旨判断したのは正
当である。また、同(ヌ)中の甲第二〇号証に対する原判決の判断もその説示に照
し、これを正当として是認することができ所論の違法は認められない。
 同中村喜一、同逸見惣作の上告理由第二点、同海野普吉、同柳沼八郎の上告理由
第三点、同小野清一郎、同竹内誠の上告理由第二点について。
 原判決が本件において不在者投票の違法なもの二八票、代理投票中違法なもの一
四七票あつたことを確定したことは、所論のとおりである。しかし、右の違法は、
本件当選無効竝びに別件選挙無効の原因でないことも原判決の判示したところであ
つて、その判断は、当裁判所も結局これを正当として是認することができる。され
ば、公職選挙法二〇九条によれば、当選訴訟の提起があつた場合においてその選挙
が無効である場合に該当するときは、裁判所は、その選挙の全部又は一部の無効を
判決しなければならないのではあるが、原判決は、前示のように右の場合に該当し
ないとし、その判断はこれを正当として是認することができるから、原判決がかか
る選挙無効の判決を言渡さなかつたのは当然であつて、所論の違法は認められない。
 同小野清一郎、同竹内誠の上告理由第一点について。
 原判決理由中の請求原因第二(1)の(ホ)及び(ト)についての原判決の判断
は、その説示に照しこれを首肯することができ、その間に経験則に反する点は認め
られない。それ故、所論は採るを得ない。
 同海野普吉、同柳沼八郎の上告理由第二点、同吉田賢雄の上告理由について。
 しかし、原判決は、被告(被上告人)の訴願裁決による田中Cの得票二、二六四
票中争となつている二九票につき独自の立場で一々その有効、無効を判断した上、
原判示のごとく無効投票と認めた甲第八号証の一ないし五の五票、甲第一四号証、
甲第一七号証の各一票合計七票を控除し、同人の有効得票を二、二五七票としたも
のであつて、何等異議、訴願に対する決定又は裁決に拘束され若しくは計算違をし
た等の違法は認められない。それ故、所論は採るを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫

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