弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人倉谷海道及び同河野太郎の上告趣意について。
 原判決に挙げている証拠を綜合すると、所論の領得の意思に関する証拠(第一審
公判廷における被告人の判示同旨の供述)を除いても、「被告人が昭和二二年六月
一八日夜A旅館に投宿し、同夜其の隣室に宿り合せていた全く未知の客Bのレイン
コートの内ポケツトから、ひそかに同人所有の現金二六二二円五〇銭在中の革製二
ツ折財布一個を抜き取りこれを隠して持つていた」という事実は、肯認し得られる
のである。そして一件記録によれば、被告人は原審公判に至つて、忽然として「そ
れは交際のきつかけを作るために隠したのである」と主張し出したのである。なる
ほどかゝる主張のようなことも不完全な人間の住むこの世の中では全然起り得ない
ことではないであろう。しかし冒頭に述べたような事実があつたとしたら、それが
盗んだのではなくて交際のきつかけを作るために隠したに過ぎないということが判
明するまでは、普通の人は誰でもそれは泥棒したのだと考えるであろう。これが、
吾々の常識であり又日常生活の経験則の教えるところである。
 元来訴訟上の証明は、自然科学者の用いるような実験に基くいわゆる論理的証明
ではなくして、いわゆる歴史的証明である。論理的証明は「真実」そのものを目標
とするに反し、歴史的証明は「真実の高度な蓋然性」をもつて満足する。言いかえ
れば、通常人なら誰でも疑を差挾まない程度に真実らしいとの確信を得ることで証
明ができたとするものである。だから論理的証明に対しては当時の科学の水準にお
いては反証というものを容れる余地は存在し得ないが、歴史的証明である訴訟上の
証明に対しては通常反証の余地が残されている。そこで前説示のような事実が、原
判決挙示の証拠によつて肯定せられ得る本件にあつては、被告人に窃盗の意思すな
わち領得の意思があつたということが通常人なら誰れにも容易に推断し得られるの
であるから、右推断を覆えすに足る新たな事実が反証せられない限り、判示事実に
関する原審の認定は到底動かし得ないところである。しかるに論旨は恰も原審に論
理的証明でも要求するかのように、或は領得の意思については警察における被告人
の自白を唯一の証拠としてこれを認定したとか、或はその自白は警察官の強制拷問
によるものであるとか主張し、強いて原判決の憲法違反論を試みるのであるが、領
得の意思の点に関しては、前説示の通り本件の具体的事実関係によつて容易に推断
されるところであるから、むしろ消極的にこれを否定すべき事実の証明こそ必要で
あるが、かゝる証明に役立つ資料は何等存在しないのである。しかも、原審は所論
警察における被告人の自白はこれを事実認定の資料に供してはいないのであつてこ
の事は判文を一読すれば直ちに了解し得るのである。そればかりでなく、所論被告
人の自白が取調警察官の強制拷問によるものであるということも、記録上これを窺
い知ることができない。なお、原審が倉谷弁護人の為した被告人の父Cに対する証
人訊問申請を却下したことは原審公判調書の記載により明らかであるけれども、そ
の訊問事項が果して所論の通り被告人の性情思想素行の点にあつたかどうかは不明
である。しかし、仮に所論の通りであつたとしても、さような事項は案件の裁判上
必ずしも重要な事項でないことは、前段の説明によつて、既に明らかであるから、
原審が該証人を取調べなかつたとしても、これがため所論のような違法を招来すべ
き筈がない。それゆえ、論旨はいづれもその理由がない。
 よつて刑訴第四四六条に従い主文の通り判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 下秀雄関与
  昭和二三年八月五日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    齋   藤   悠   輔

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