弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人和田正平の上告理由第一、二点について。
 旧民法施行当時において、遺言を以て家督相続人の指定がなされた場合に、遺言
者の死亡により、その遺言が効力を生じたときは、被指定者は遺言者の家督相続を
なして戸主となるとともに、遺言者が有した権利義務を包括的に承継したが、この
権利義務の承継は、被指定者が家督相続をした効果であつて、家督相続人指定の遺
言の直接の効果として生じたのではない。家督相続人の指定そのものには、財産を
承継せしめる旨の意思表示を包含してはいないのである。ところで、民法の改正に
より、家督相続が廃止せられたので、新法施行後に遺言者が死亡したときは、家督
相続人指定の遺言は、特段の事情のない限り、その効力を生ずる余地なく、従つて
家督相続の効果たる遺言者の権利義務の承継もまた生じないこととなつたといわな
ければならない。
 以上の如く新法施行後に遺言者が死亡した場合には、家督相続人指定の遺言は原
則として無効となるが、これを包括的遺贈に転換して有効と認めることができるか
どうかを次に考察しなければならない。思うに、家督相続人指定の遺言と包括遺贈
とは全く別個の観念であり、前者に後者の意思表示が包含せられているとは云えな
いのであるから、前者を後者として有効とするがためには、遺言書の解釈により、
遺言に表示せられたところを通じて後者の意思表示が看取される場合でなければな
らない。本件において、原審の確定したところを、原判文に徴すれば、亡Dは、昭
和一五年七月二六日公正証書による遺言をなしたが、右遺言書には、訴外Eを家督
相続人に指定する旨及び被上告人等その他に対し財産の一部を遺贈する旨の記載が
あるけれども、他にDに包括遺贈の意思があつたことを看取するに足る表示行為と
目すべき事実上の記載がないというのであるから、原審が包括遺贈の表示があつた
とは認められないと判断したことは正当である。なお、原審は、亡Dは昭和一六年
一〇月二八日右遺言事項中被上告人その他に対する遺贈に関する部分を取り消す旨
の遺言をなした事実を確定したが、この事実と前示遺言書の記載とによれば、Dが
Eに財産を遺贈する意思があつたことを窺いうるようであるが、このことから要式
行為である遺言の効力を判定することはできない。又本件遺言につき、家庭裁判所
によつて遺言執行者が選任せられたことから、直ちに、右遺言には、財産を承継せ
しめる意思表示が包含せられていると言いえないことは当然である。原判決の説く
ところは、上記の趣旨と異るものがあるが、本件遺言書には、Eをして財産を承継
せしめる意思が表示せられていないとする結論においては、正当なるに帰するから
所論は結局採用し難い。
 同第三点について。
 遺言につき遺言執行者がある場合には、遺言に関係ある財産については相続人は
処分の権能を失い(民法一〇一三条)、独り遺言執行者のみが遺言に必要な一切の
行為をする権利義務を有するのであつて(同一〇一二条)、遺言執行者はその資格
において自己の名を以て他人のため訴訟の当事者となりうるものと云わなければな
らない。本件において、被上告人等は本件不動産は亡Dの所有であつたが、その死
亡により共有持分権を有するに至つたと主張し、遺言執行者たる上告人にその確認
を求めるものであるところ、上告人は右不動産は遺言によりすべて訴外Eの所有に
帰したと主張して被上告人の権利を争うものである。従つて本件が被上告人の勝訴
に確定すれば、所論の如く、遺言は執行すべき内容を有せず、遺言執行者はその要
なきに帰するけれども、若し敗訴すれば、本件不動産はすべて遺言によりEに帰属
したものとして執行せられることとなるのである。かゝる場合においては、被上告
人等は遺言執行者たる上告人に対し本件不動産について共有持分権の確認を求める
利益があり、その効果はEに及ぶものといわなければならない。所論はこれを採用
することができない。
 同第四点について。
 原判決には所論の如き違法のないことは、上記説明に照らし自ら明らかである。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    島           保
            裁判官    小   林   俊   三

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