弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     被告人Aに関する本件上告を棄却する。
     原判決並びに第一審判決中被告人Bに関する部分を破棄し、同事件を富
山地方裁判所に差し戻す。
         理    由
 被告人B、同Aの弁護人中村領策の上告趣意(後記)は、憲法違反を主張するけ
れども、その実質は刑訴四一一条に該当する事由のあることを主張するに帰するの
であつて、上告適法の理由とならない。
 職権を以つて調査するに、被告人Bに対する関係において第一審判決並びに原判
決には次のような違法がある。即ち、第一審判決は同被告人に対する判示事実を認
定する証拠として、検察官作成にかかるAの供述調書三通を挙示しているけれども、
記録を精査しても同被告人又はその弁護人が明示的に右供述調書三通を証拠とする
ことに同意した形跡はなく、第一審裁判所がこの点について意見を聴いた事跡も認
められない。尤も、第一審第六回公判期日において、検察官が右供述調書三通の証
拠調請求をしたのに対し主任弁護人が「右証拠調に異議なし」と述べ、裁判官は「
右を採用する旨決定を言渡し、自らこれを朗読」して取調を為したこと(但し、証
拠調の直後に裁判官が被告人の意見を聴いた旨の記載はない)及び爾余の証拠調を
終了するに際し、主任弁護人は検察官と共に「他に証拠なし」と陳述していること
がわかる(但し、第一審裁判所が刑訴規則二〇四条の告知をした旨の記載はない)。
しかし、主任弁護人のこれらの陳述によつて同弁護人及び被告人が黙示的に前記供
述調書三通を証拠とすることに同意したものと解することができるであらうか。帰
するところは意思表示の解釈の問題である。よつて、この点について審究するに、
記録上次のような事実を認めることができる。即ち、右供述調書三通は被告人Bに
対する本件収賄の事実(第一審判決の摘示する第一の(一)の事実)に関する証拠
とし第一審判決に挙示されたものと認められるのであるが、同被告人は終始右収賄
の事実を争つて来たのであつて、検察官は第一審第一回公判期日に右の事実を立証
するため司法警察員作成にかかるAの供述調書を証拠とすることにつき同被告人の
同意を求めたが、その同意を得ることができなかつた。そこで、検察官の請求によ
り右Aは同第三回公判期日に証人として喚問されたのであるが、同人は判示饗応の
事実を肯定しなかつたので、検察官は右証言に偽証の疑ありとして、逮捕状を得て
同人を拘束した上取調をなした。その結果として同人は昭和二四年七月二二日、二
三日検察官に対し曩に同人が第三回公判期日においてなした証言を変更し、判示饗
応の事実を肯認するに至つた。この供述を録取したのが、前記供述調書三通である
(Aは偽証罪として起訴され、別件として同一裁判所に繋属するに至つた)
 以上の次第であるから、本件収賄罪の成否を決する重要な証拠である右供述調書
三通について、被告人B及びその主任弁護人が供述者たるAを直接尋問する機会を
与えられることなく、客易く、これを証拠とすることに同意するとは考えられない。
殊に主任弁護人は曩に第一回公判期日において司法警察員作成にかかるAの供述調
書を証拠とすることに同意していないばかりでなく、被告人が明かに同意した他の
供述調書については「証拠とすることに同意する」ということの外に別に「証拠調
請求には異議がない」と陳述しているところから見るならば、同第六回公判期日に
前記供述調書三通について主任弁護人が「証拠調に異議なし」と述べた一事を以つ
て、同弁護人及び被告人Bが右供述調書三通を証拠とすることに黙示的に同意した
ものとは到底解することはできない。して見ると、爾余の証拠調を終了するにあた
り、主任弁護人が「他に証拠なき旨」陳述したからとて、他に特段の事情の認めら
れない本件においては、それによつて右供述調書三通が証拠能力を有するに至るも
のと解することは許されない。(前記第六回公判期日たる昭和二四年九月一日に第
一審裁判所は公判外においてAに対する前記偽証被告事件を被告人Bに対する本件
被告事件と併合審理する旨決定し、同公判期日には両被告事件が既に併合されたも
のとして審理を進めたことは同公判調書の記載に徴して明かであるが同公判期日に
はAは出頭せず、被告人Bについてのみ審理がなされ、同期日を以つて同被告人に
対する弁論は終結されており、第七回公判期日にはAに対してのみ審理がなされ、
同人は被告人Bに対して極めて不利な供述をしているのであるが、村岡被告人は同
公判期日に出頭する機会を与えられていなかつた。そして第八回公判(判決言渡)
期日に同被告人はAと共に有罪の判決を言渡されたものであることは記録上明かで
ある。従つて、被告人Bは第三回公判期日において、Aに対し直接尋問の機会を与
えられたとはいえ、その後に作成された前記供述調書三通については、遂に同人を
公判廷で直接尋問する機会を与えられなかつた)。
 して見ると、第一審判決が被告人Bの判示事実を認定するにあたり前記供述調書
三通を証拠としたことは刑訴三二〇条三二六条の解釈適用を誤つたものというべく、
かゝる証拠能力なき供述調書を引用して第一審判決の事実認定を是認した原判決も
亦失当であり且右の違法は本件収賄罪の成否に消長を及ぼすべき性質のものである
から、刑訴四一一条一号に該当するものといわなければならない。
 よつて、被告人Bに関しては、弁護人清瀬一郎の上告趣意(後記)につき判断す
るまでもなく、刑訴四一三条に則り原判決及び第一審判決中同被告人に関する部分
を破棄し、同事件を第一審裁判所たる富山地方裁判所に差し戻すのを相当とすベく
被告人Aに関しては刑訴四一四条三九六条に則り本件上告を棄却するのを相当と認
め、全裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。
 検察官 平出禾関与
  昭和二七年一一月二一日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛