弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決および第一審判決を破棄する。
     被告人を懲役八月に処する。
     但し第一審における未決勾留日数中一〇〇日を右本刑に算入する。
     第一審および原審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人海野普吉、同位田亮次連名の上告趣意第一点乃至第三点は、単なる法令違
反、事実誤認の主張にすぎず、適法な上告理由に当らない。(本件において被告人
の共犯と認定されたAにつき、「嫌疑なし」との理由による不起訴処分が為された
としても、これをもつて刑訴四一一条四号の再審の請求をすることができる場合に
当るものとは解し難く、また記録を精査しても、判決に影響を及ぼすべき重大な事
実の誤認があるものとは認められない。)
 しかし職権をもつて調査するに、原判決は、本件差押にかかる船舶(機帆船B丸)
および貨物が被告人以外の第三者の所有に属することを認定しながら、これにつき
被告人に対し旧関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前の関税法をいう。以
下同じ。)八三条一項により没収を言い渡した第一審判決を是認しているのである
が、同条項により被告人以外の第三者所有物を没収することは、憲法三一条および
二九条に違反し許されないと解すべきであることは、当裁判所の判例(昭和三〇年
(あ)第九九五号、同三七年一一月二八日大法廷判決)とするところであるから、
この点において原判決およびその是認した第一審判決は破棄を免れない。
 よつて刑訴四一〇条一項本文、四〇五条一号、四一三条但書により、原判決およ
び第一審判決を破棄し、被告事件につき更に判決する。
 原審の是認する第一審判決の確定した事実に法律を適用すると、被告人の同判示
所為は、関税法附則一三項により従前の例によるものとされた旧関税法七六条二項
後段、一項、刑法六〇条に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、所定刑期範囲
内で被告人を懲役八月に処し、未決勾留日数の本刑算入につき同法二一条、訴訟費
用の負担につき刑訴一八一条一項本文を各適用して、主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官下飯坂潤夫、同高木常七、同石坂修一、同山田作之助の反対
または少数意見があるほか、裁判官全員一致の意見によるものである。
 裁判官下飯坂潤夫の反対意見は、次のとおりである。
 わたくしは、第三者所有物の没収を違憲とする多数意見に賛成しえない。その理
由は、昭和三〇年(あ)第二九六一号、同三七年一一月二八日言渡大法廷判決にお
けるわたくしの反対意見と同趣旨であるから、これを引用する。
 裁判官高木常七の少数意見は、次のとおりである。
 わたくしは、第三者所有物の没收を違憲とする多数意見に賛同しえない。その理
由は、昭和二八年(あ)第三〇二六号、同三五年一〇月一九日大法廷判決(刑集一
四巻一二号一五七四頁)におけるわたくしの補足意見と同趣旨であるから、これを
引用する。
 裁判官石坂修一の反対意見は、次の通りである。
 本件に関する多数意見に反対する理由は、わたくしが先に昭和三〇年(あ)第二
九六一号、同三七年一一月二八日言渡の大法廷判決に示した反対意見につきて居る
から、これを引用する。
 裁判官山田作之助の少数意見は、次のとおりである。
 没收の点に関するわたくしの意見は、昭和三〇年(あ)第二九六一号、同三七年
一一月二八日言渡大法廷判決におけるわたくしの少数意見と同趣旨であるから、こ
れを引用する。
 検察官村上朝一公判出席
  昭和三八年一月三〇日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    横   田   喜 三 郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    高   木   常   七
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊

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