弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人伊藤宏行の上告趣意は、量刑不当の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告
理由にあたらない(量刑不当の所論について考えるに、本件事故当時における被告
人の飲酒酩酊の程度、被告人には酩酊運転一件を含む道路交通法違反五件の罰金の
前科があること等の情状にかんがみれば、必ずしも原判決を破棄しなければ著しく
正義に反するものとは認められない。)。
 よつて、刑訴法四一四条、三九六条により主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官色川幸太郎の反対意見があるほか、全員一致の意見によるも
のである。
 裁判官色川幸太郎の反対意見は、次のとおりである。
 わたくしは、弁護人の上告趣意が刑訴法四〇五条の上告理由にあたらないことに
ついては、多数意見と見解を同じくするものであるが、本件は、刑の量定が甚だし
く不当であつて、同法四一一条二号を適用して原判決を破棄すべきものと考える。
 すなわち、記録を調査すると、本件は、被告人が酒に酔つて普通乗用自動車を運
転し、A運転の軽四輪乗用自動車に追突し、よつて、同人に加療約八〇日を要する
頸部挫傷等の傷害を負わせたというものであるところ、被告人は、当時、そのアル
コールの身体保有度(呼気一リツトルにつき二、〇〇ミリグラム)の示すように、
高度に酩酊し、自動車を運転するには極めて危険な状態にあり、厳にこれを避ける
べきであつたこと、また、被告人は、これまでに酩酊運転一件を含む道路交通法違
反の罰金五件(前示酩酊運転のほかに速度違反一件、駐車関係の違反三件)がある
こと等は、多数意見の指摘するとおり、量刑上軽視しえない情状であるといわなけ
ればならない。
 しかしながら、被告人は、本件犯行後、被害者Aに対して謝罪と慰籍に努めると
ともに、損害賠償に誠意を示し、本件第一審判決前においてAと示談をし、被告人
において同人の治療費を負担することにしたほか、勤務先から借財をして、同人の
休業補償費その他としてすでに八七万余円の支払いをなし、同人もまた被告人の誠
意を認めて、もはや被告人に対しては処罰を望まない旨の心境を表明しているもの
であること、被告人は、本件犯行当時、B新聞社名古屋支局長の地位にあつたもの
であるから、その社会的な立場からも本件のような飲酒運転については、一般人に
もまして非難可能性が存在するものというべきではあるが、他面において、本件犯
行の結果、一朝にして支局長の職を解かれ、かつ、本件につき実刑判決が確定すれ
ば、当然退社を余儀なくされるものであることその他、深刻な社会的な制裁を加え
られているその情状は、これまた無視すべきではない。
 もとより、今日の社会において、一般に、本件のような危険な酩酊運転およびそ
の際の業務上過失致死傷事件については、行為者の責任は厳しく追究されるべきで
あつて、行為者の個人的な情状を重視するのあまり、その処遇が軽きに失すること
がないよう配慮すべきではあるが、しかし、量刑は、同種事犯に対する一般の量刑
状況に照らし、特段の理由もないのに著しく均衡を失するものであつてはならない
ことも、科刑上当然の要請である。本件において、前記のような諸点その他の記録
上認められる諸般の情状を総合して考察したうえ 酩酊運転に伴うこの種業務上過
失傷害事件に関する一般の量刑状況(これは、量刑事例の調査として各種刊行物に
おいて公けにされているところや、当裁判所における多数の同種上告事件の審査等
を通じて、うかがい知ることができるところである。) をも考慮すれば、被告人
に対し懲役刑を選択し、かつこれに実刑を科することはまことにやむをえないとこ
ろであるが、第一審判決が言い渡した懲役一年の刑は、上述の諸点に照らし、甚だ
重いものがあり、その全説示に徴しても、これを肯認すべき特段の理由があるとは
到底認められず、さらに、第一審判決を維持する原判決がこの点について判示して
いるところも、首肯するに足りないのである。以上の次第であるから、原判決はこ
れを破棄しなければ著しく正義に反すると認めざるをえない。
 検祭官 佐藤忠雄 公判出席
  昭和四五年五月二二日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    村   上   朝   一

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