弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人A、同補助参加人Cの上告理由第一について。
 原判決は、本件買収は、昭和三四年一二月一一日に群馬県知事がした買収令書の
交付によつて、その効力を生じた旨を判示しているのであるが、論旨は右令書の交
付による買収は無効である旨を主張するのである。
 (其一)論旨は令書交付は公告が無効であることを条件としており、かかる条件
附令書の交付による買収は無効であるというのである。
 原判決の確定するところによれば、群馬県知事は、右の土地について昭和二三年
一一月一二日付の群馬県報に令書交付に代わる公告をし、その後、昭和三四年一二
月一一日に至り、あらためて買収令書を上告人に交付したというのである。若し当
初の公告による買収が有効であれば、令書の交付は無駄な行為に帰するわけである
が、そのために、公告が無効な場合に、所論のように令書交付による買収を無効と
しなければならない理由はない。論旨は理由がない。
 (其二)論旨は、原判決は農地法施行法二条一項の解釈を誤つている旨を主張す
るのである。右施行法一条は、旧自作農創設特別措置法を廃止するとともに、同法
二条一項一号は、買収計画の公告のあつた農地については、なお従前の例により買
収する旨を規定している。この規定は、本件のような場合を予想しているとは解さ
れないが、さればといつて、本件の場合のように、原判示のような事情によつて令
書の交付が遅延した場合に、その適用を否定すべき理由もない。論旨は理由がない。
 (其三)論旨は、本件土地については、さきに買収売渡が完結しているから農地
法施行法二条一項の適用の余地はなく、本件買収令書は、根拠法令を欠き無効であ
るというのである。しかし、原判決は、昭和二五年当時に買収処分は完結していな
いとしているのであつて、その判旨は十分に首肯することができる。原判示のよう
な事情のもとにおいては、当時所有権の移転登記が完了していても、その移転登記
によつて買収処分が完結したものと解することはできない。
 論旨はまた、昭和三四年一二月一一日の令書で同二二年一〇月二日を買収期日と
する買収は、その内容が実現不能であるから無効であるというのである。しかし、
令書記載の買収時期を経過しているからといつて令書の交付により買収の効力を生
じないものとはいえない。所論のように、本件令書がその内容において実現不能と
いうことはできない。論旨は理由がない。
 (其四)論旨は、原判示のように、本件農地の買収の効力が昭和三四年一二月に
その効力を生ずるものと解するならば、その間著しい価格の騰貴があり、本件買収
対価は憲法二九条三項にいう正当な補償にあたらないというのである。しかし、昭
和二八年一二月二三日当裁判所大法廷判決(民集七巻一三号一五二三頁)は、自作
農創設特別措置法所定の買収対価は、憲法二九条三項にいう正当な補償にあたる旨
を判示するとともに、諸物価の値上りに応じて買収対価を増額しなければならない
ものではない旨を判示しているのみならず、本件農地の買収対価はすでに当初の買
収計画で定められており、換言すれば、当時からその価格をもつて買収することが
予定されていたのであるから、たまたま買収令書の交付が遅延したからといつて、
令書交付の時期において価格を算定すべき理由はない。
 以上説明するように、本件買収令書の交付による買攻の無効を主張する論旨はす
べて理由がない。
 上告人及び上告人補助参加人の上告理由第二及び同上告状記載の上告理由(一)
について。
 論旨は、原判決が本件四号地に関する上告人の訴を却下したのを違法と主張し、
右農地の公告による買収の無効確認を求める利益に失われていないというのである。
 論旨はまず、令書の交付が無効であることを前提とするのであるが、その理由が
ないことは前段説明のとおりである。
 次に論旨は、原判決が、かりに山林部分が上告人主張の四号地に含まれていても、
本件買収を全部無効とすべきではないとしたのを非難するのである。しかし、旧自
作農創設特別措置法による買収は現実の土地の買収であり、買収される土地が山林
部分を含まず、その区域が現実に明らかである以上、地番の上で不明確な点があつ
ても買収を無効とすべき理由はない。上告人主張の山林が公図上四号地に含まれて
いるといないとにかかわらず、山林は買収されなかつたのであるから、その部分を
除く本件農地の買収を無効とすべき理由はない。論旨は理由がない。
 上告人及び上告人補助参加人の上告理由第三、同上告状記載の上告理由(二)に
ついて。
 論旨は、原判決が、上告人の三号地に関する損害賠償請求について、時効期間経
過により請求権が消滅した旨を判示したのを非難するのである。
 原判決はこの点について、上告人は損害の賠償を請求し得べき事実を、遅くも昭
和三〇年中に確知したものである旨を認定し、三〇年末より時効期間を計算してい
るのである。違法な行政処分を不法行為として損害賠償を請求するについて、当該
処分が取り消されることを必要としないのは勿論のことであるから、所論のように、
群馬県知事が、本件三号地の売渡処分の一部を取り消した昭和三四年六月二四日頃
を起算日とすべき理由はない。原判決が損害賠償を請求し得べき事実を上告人が確
知した昭和三〇年末から起算したのは正当であつて論旨は理由がない。
 上告人及び上告人補助参加人の上告理由第四、同上告状記載の上告理由(三)に
ついて。
 本案の裁判について本件上告が理由がないことは前述のとおりであるから、訴訟
費用の裁判に対する不服申立はゆるされない(昭和二九年一月二八日第一小法廷判
決、民集八巻一号三〇八頁)。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助

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